2月末に行われた関東学生馬術新人競技大会で優勝を果たし、新体制の好スタートを切った早大馬術部。そんな馬術部は4月1日から3日にかけて行われた東京六大学競技大会に参加し、2013年以来の優勝を目指す戦いに臨んだ。大学対抗の団体戦となった今大会では、新人馬場馬術競技(新人馬場)、馬場馬術と障害馬術からなる複合馬術競技、学生章典馬場馬術競技(学典馬場)、新人障害馬術競技(新人障害)、中障害馬術競技(中障害)の5競技を実施。各競技での選手個人の順位に基づいてポイントが与えられ、その合計得点で団体順位を決定した。早大は、初日の新人馬場で首位発進を決めると、その後も3年生を中心に躍動し、全競技で選手が入賞。着実にポイントを重ねていき、9年ぶりの大会総合優勝を果たした。前回優勝時の大会には明大が不参加だったため、全大学参加の大会では1978年以来実に44年ぶりの優勝となった。
突風が吹くなか初日に行われた新人馬場には、早大から計4組が出場した。高得点率が期待されていた坂藤仁美(教3=東京・順天)と如月、マギー絵莉加(政経3=東京・国際)とロッキーロイヤルのコンビは共に落ち着いた演技を披露。特に坂藤は、騎乗予定だったココドロが入厩届未提出により出場不可となり、騎乗馬を如月に急きょ変更した上でのパフォーマンスとなった。両組共に決して満足できる演技ではなかったと振り返るが、結果的には62%を超える総得点率をマーク。見事1位と2位に輝き、早大は首位で初日を終えた。
新人馬場で優勝した坂藤と如月
天候にも恵まれた2日目は、複合馬術競技馬場馬術(複合馬場)と学典馬場の2競技が行われた。複合馬場には早大から3組が出場。しかし上位3組を前年王者の明大に独占され、複合では明大にリードを許すかたちとなってしまう。一方の学典馬場では、初日に好成績を残したマギーとロッキーロイヤルのコンビが再び健闘。マギーにとっては初挑戦の難易度の演技となったが、前日に続いて一体感のあるパフォーマンスを披露した。得点率も62%を超え、3位にランクイン。この時点で、団体成績は1位慶大は50ポイント、2位早大は36ポイント、3位明大は20ポイント。勝負の行方は、最終日の障害3競技に持ち越されることとなった。
馬場馬術で好成績を残したマギーとロッキーロイヤル
最終日、優勝をかけた熱戦は冷たい雨と寒さのなかで繰り広げられた。最初に行われた複合障害では馬場での悔しさをバネに早大の選手が奮闘。馬場で明大の3組に惜しくも敗北を喫した吉田光佑(スポ3=東福岡)とアルボアの組は、総減点0で走行を終え2位の席を勝ち取った。馬場では8位だった栗田春香(政経2=東京・頌栄女学院)とアイシングラーも他選手との接戦を制して4位に順位を上げ、幸先良く大量得点に成功した。続く新人障害でも早大の勢いは止まらない。5選手が2反抗により失権となる波乱の展開のなか、坂藤とプリンチペスコ、糸山大樹(政経1=熊本・済々黌)と稲嵐は安定した走行で経路を完走。両コンビとも総減点0にまとめ、1位と2位を飾った。そして迎えた、最終競技の中障害。悲願の優勝へ向けて予断を許さないこの状況でも、早大の人馬たちは闘志を抱き続けた。鶴見汐花副将(スポ3=栃木・佐野日大中教校)と稲嵐、吉田とアルボアはいずれも総減点0で完走し、決勝戦にあたるジャンプオフへと駒を進める。ジャンプオフでも、両組共に次々と障害物を飛び越えていったが、吉田とアルボアは惜しくも1つだけ障害物を落下させ総減点4の5位。一方、鶴見と稲嵐はここでも総減点0の走行を見せ、タイムも最速で堂々の1位に。早大に15ポイントをもたらし、早大の団体総合優勝を決定づけた。
中障害で優勝した鶴見副将と稲嵐
約半世紀越しの悲願を叶えた早大馬術部。馬と共に素晴らしいパフォーマンスを披露し、上位にランクインした選手はもちろん、他の選手も着実にチームのポイントを積み上げ、全員でつかんだ真の優勝となった。新体制になってからの大規模大会を2連勝で飾った早大馬術部が次に見据えるのは、来月に行われる関東学生競技大会(関東学生)。全日本学生大会への出場権もかかったこの大会に向けて、人馬たちは再び準備を進めていくことになる。最高の結果に終わった今大会でも、反省を口にし改善を誓った選手たち。次の戦いに向けさらなる高みを目指していく彼らの姿から、今後も目が離せない。
最優秀選手賞を受賞した鶴見副将
総合優勝し写真に納まる馬術部一同
(記事、写真 横山勝興)
※記事中の学年は昨年度のものです。
ポイント表
順位 | 優勝 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 |
学生章典 中障害・複合 | 15 | 12 | 10 | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 |
新人馬場 新人障害 | 10 | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
※新人馬場、学生章典は各大学の上位2選手、複合、新人障害、中障害は各大学の上位3選手をポイント対象とし、新人障害、中障害において大学内最下位の選手が10位以内に入った場合、繰り上げてポイントを与える。
結果
▽団体成績
優勝 早稲田大学 113ポイント
2位 慶應義塾大学 99ポイント
3位 明治大学 75ポイント
▽新人馬場馬術競技
優勝 坂藤、如月 総得点率63.595% 10ポイント
2位 マギー、ロッキーロイヤル 総得点率62.548% 9ポイント
16位 金子、グランダーマ 総得点率51.282%
20秒E 栗田、稲彩
▽複合馬術競技馬場馬術
4位 吉田、アルボア 総得点率62.39%
6位 髙田、デクスター 総得点率61.59%
8位 栗田、アイシングラー 総得点率59.28%
▽複合馬術競技障害飛越
馬場4位 吉田、アルボア タイム72.70 タイム減点0 障害減点0 総減点0
馬場6位 髙田、デクスター タイム122.77 タイム減点16.0 障害減点8 総減点24.0
馬場8位 栗田、アイシングラー タイム90.29 タイム減点3.2 障害減点4 総減点7.2
▽複合馬術競技(最終結果)
2位 吉田、アルボア 12ポイント
4位 栗田、アイシングラー 9ポイント
9位 髙田、デクスター 4ポイント
▽学生章典馬場馬術競技
3位 マギー、ロッキーロイヤル 総得点率62.372% 10ポイント
8位 鶴見、稲彩 総得点率59.615% 5ポイント
16位 髙田、如月 総得点率56.474% 3ポイント
▽新人障害馬術競技
優勝 坂藤、プリンチペスコ タイム50.09 タイム減点0 障害減点0 総減点0 10ポイント
2位 糸山、稲嵐 タイム50.62 タイム減点0 障害減点0 総減点0 9ポイント
7位 吉實、アイシングラー タイム60.84 タイム減点0 障害減点4 総減点4 4ポイント
8位 熊田、デクスター タイム47.36 タイム減点0 障害減点12 総減点12
▽中障害馬術競技
優勝 鶴見、稲嵐 タイム72.92 タイム減点0 障害減点0 総減点0、JOタイム47.15 タイム減点0 障害減点0 総減点0 15ポイント
5位 吉田、アルボア タイム70.35 タイム減点0 障害減点0 総減点0、JOタイム48.28 タイム減点0 障害減点4 総減点4 8ポイント
8位 髙田、プリンチペスコ タイム70.27 タイム減点0 障害減点8 総減点8 5ポイント
コメント
髙田雅主将(人3=大阪女学院)
――団体総合優勝という結果を振り返っていかがですか
今年は(騎乗馬変更の)アクシデントが初日にあって、そこからみんなの頑張りがありました。それぞれの頑張りがあったからこそ、つかみ取れた優勝だったと感じています。
――今大会にはどのような目標を持って臨まれましたか
S1課目と複合と中障害の3種目で3頭の馬と組ませていただきました。3種目出る分、私がポイントを取れれば勝利にもつながる状況だったので、全種目でベストを尽くしてポイントを稼ぐという目標は立てていました。特に中障害で乗ったプリンチペスコは、去年の六大学で120センチメートルの高さに初めて挑戦したので、1年越しにどれだけ成長したかを確かめようと思っていました。
――馬場での演技を振り返っていかがですか
如月と出たS1課目は、私の経験が浅くて技量が足りなかったこともあって、馬のポテンシャルを生かせるような演技ができず、心残りに感じています。複合馬場で一緒に出たデクスターは、若い馬でやんちゃな部分があるので、私がそこに合わせた乗り方ができれば良かったと思っています。これから良い成績を取るための改善点が次々と見つかりました。
――障害についてはいかがでしたか
複合障害でデクスターに乗っていて、人が馬とどのようにコミュニケーションをとっていくか折り合いをつけることの大切さに気づかされました。中障害に一緒に出たプリンチペスコは1年越しに技量を見る場だったにもかかわらず、そこまで成長していなかったことを思い知らされました。
――次の試合に向けた修正点も馬とのコミュニケーションになりますか
そうですね。普段の運動もそうですが、接し方や乗り方は自分が変えないと馬が変わらないところもあるので、一旦反省会を自分のなかで開いて、次に何をすべきかを冷静に考えて計画を立てていこうと思います。
――来月の関東学生に向けてチームとしてどう準備を進めていきたいですか
馬術は個人スポーツの一面もあるのでワンマンになりがちなのですが、サポートしてくれる人たちがいて、どの選手も意識の引き上げをしてこそチームの力になると思っています。なので、みんながかかわって関東学生に挑めるようにしていきたいと思っています。
坂藤仁美(教3=東京・順天)
――団体総合優勝という結果を振り返っていかがですか
去年ギリギリで負けてしまったこともあって今回勝つことができたのは良かったと思います。
――今大会にはどのような目標を持って臨まれましたか
今回は学生戦なので、チームのために(ポイントを)稼ぐことが一番の目標でした。
――初日の新人馬場での演技を振り返っていかがですか
(試合前に)予想外のことが起こったりもして、(代わった)馬も最初の入場のときは物見をしてしまって前に進まなくなったりもしましたが、その後は集中してくれました。駈歩区間では馬も人もやっと普通に演技ができたと思います。ただ同じ経路を踏んだ前の別の試合の方が良くて、内容的には残念でした。それでも、結果が出たことは良かったです。
――騎乗する馬がココドロから如月に急きょ変更となりましたが、どう対応しましたか
急でしたが、如月とは前から練習させてもらっていたので、私にとって大きなダメージはそこまでなく対応できました。
――最終日の新人障害を振り返っていかがですか
今までプリンチペスコと出させてもらっていた試合より(障害の)高さが少し低めだったのでタイム勝負だと思って、早く帰ってくることを第一に走行しました。細かい部分に関してはあまり良くなかったのですが、馬を信じて早く帰ってくることができたのは良かったです。
――次の試合に向けて準備をどう進めていきたいですか
本番で何が起こるか分からなかったりするので、どんな馬に乗っても結果が出せるように経験、練習を積んでいきたいと思います。
マギー絵莉加(政経3=東京・国際)
――今大会での演技を振り返っていかがですか
私が今回出させていただいたのが(馬場馬術の)L1課目とS1課目で、どちらの競技もロッキーロイヤルという馬で出ました。ロッキーロイヤルは、私が2年生のときに来た馬で、来た当初からずっと担当していたので、個人的にはどの馬よりも思い入れがあって、能力もとても高い馬です。2年生のときにも一緒に何試合か出させてもらっていたときは、全然馬の能力を生かし切れずに結果も悪かったのですが、今回上級生になって元々乗っていた同期の吉田(光佑、スポ3=東福岡)が「乗ってもいいよ」とチャンスをくれました。彼がほとんど馬の世話をしてくれて良い状態にしてくれて、L1課目は2位、S1課目は3位という結果でした。馬の能力的にはもう少し上にもいけたかなと思います。
――初日の新人馬場での演技を振り返っていかがですか
ロッキーロイヤルはS課目に使っている馬で、新人馬場のL1課目は馬にとって少しレベルの低い課目でした。それで本来ならL1課目の方が簡単そうに感じるかもしれませんが、馬がホットになって走ってしまったりして、忙しくない分(馬を)コントロールするのが難しい面がありました。2日目のS1課目は馬に引っ張っていってもらう感じでしたが、1日目のL1課目は自分がフォローする意識で挑みました。でも結果的には馬の良い状態を持続することができなくて、反省の残る試合になったと思います。
――2日目の学典馬場についてはいかがですか
(経路を)踏み始めたのが3カ月くらい前で、私にとって初めてのレベルの試合でした。この3カ月間、コーチの方や同期の吉田、外部の方にも練習を見ていただいたので、それを生かせるように挑みました。
――今大会でのロッキーロイヤルとの相性はいかがでしたか
今までは馬がトップで走っていたこともあって、自分が(馬の走りを)抑えようとしていた面がありましたが、今回に関しては「馬に全部頑張ってもらおう」という意識で臨めました。ロッキーロイヤルは頼りがいがあって、すごく相性は良かったと思います。
――次の試合に向けて準備をどう進めていきたいですか
今回は直前まで吉田に乗ってもらって大会で乗り替わっただけだったので、試合に出させてもらっている限りは自分でできることを増やして、今まで彼が作ってくれたクオリティを自分で最初から作れるようにしていきたいなと思います。
鶴見汐花副将(スポ2=栃木・佐野日大中教校)
――団体総合優勝という結果を振り返っていかがですか
去年の早慶戦が終わってから新体制になって、髙田主将を筆頭に団体としての結束をより強めた体制になったので、六大学の団体優勝を取れたことはすごくうれしく思います。
――2日目の学典馬場での演技を振り返っていかがですか
コンビを組んで1年強になりますが、自己ベストが出せたのでそこはうれしかったです。全体の順位としては低いですが、今までやってきたどの演技のなかでも一番良い演技ができたので、これからさらに上を目指していきたいと思います。
――最終日の中障害についてはいかがですか
普段130センチメートル(の障害物を)飛んでいる馬なので、今日は120センチメートルということで少し気が楽でした。ですが団体優勝がかかっていた試合だったので、緊張感を持ちながら臨みました。馬が頑張ってくれて(障害物を)落とさずに帰ってこれたので良かったです。
――最優秀選手に選出された感想は
2種目しか出ていませんが、最後の中障害で勝って(早大の選手のなかで最多得点が)同点になったので、最後に優勝した私が最優秀選手になりました。本当に皆さんのサポートがあって取ることのできた最優秀選手賞だったと思います。
――次の試合に向けて準備をどう進めていきたいですか
次の大きな大会が関東学生なので、障害の方はこのまま(良い状態を)維持してきたいと思っています。馬場の方は精度をより上げていきたいです。関東学生も団体戦なので、チームワークを深めていきたいと思います。
糸山大樹(政経1=熊本・済々黌)
――団体総合優勝という結果を振り返っていかがですか
初めての六大学大会で本当にうれしい結果で終われたことは良かったと感じています。来年以降、先輩たちが抜けても優勝できるように今年1年間も頑張っていきたいと思います。
――1年生唯一の出場となりましたが、どのような経緯で出場が決まったのですか
1月くらいにだれがどの馬に乗るかを決めるための選考会をして、その結果出させてもらうことになりました。
――今大会での演技を振り返っていかがですか
僕が乗った馬が、去年の全日本でも3位になるくらいの馬で、今回の新人障害は馬的には勝って当たり前だったのですが、優勝できなくて僕が不甲斐なかったと感じています。悔しいです。
――今大会での稲嵐との相性はいかがでしたか
試合会場に行くと練習とは全然違って、僕がついていけてなくて馬に迷惑を掛けてしまったなと思います。
――次の試合に向けて準備をどう進めていきたいですか
(馬を)手綱で引っ張ってしまうので、そこは直したいなと思います。あと、自分なりにこの1年間一通りやってきたつもりではあるのですが、思い描いていた成長曲線にはまだまだ届いていないので、馬の邪魔をしないようにしていきたいと思っています。