心に刻む悔しさ、胸に誓う成長

馬術

 長きにわたる全日本学生大会(全日本)もいよいよ終局。最後の大会である全日本学生賞典総合馬術競技大会(総合)に早大の精鋭騎手陣が挑んだ。1日目の調教審査を団体4位で折り返し、表彰台を射程圏内に捉える位置につける。しかし、2日目の耐久審査、余力審査で順位を下げてしまい最終的に団体は6位という悔しい結果に。個人で上位を狙っていた佐々紫苑(スポ2=神奈川・日女体大)も7位に留まった早大は各々がさらなる成長を胸に誓い、大会は閉幕を迎えた。

 昨年4位に終わった早大が目指す終着点はその一歩先、表彰台。あとわずかのところで逃した前年の悔しさを知る大澤佳純主将(教4=神奈川・桐蔭学園)を筆頭に4人が総合にエントリーした。だが直前にそのうちの1名が騎乗する稲玄の跛行(はこう)により棄権、早大は3人のみでの戦いを余儀なくされる。最初の調教審査は苦手とする馬場馬術(馬場)。目標達成への道のりにいきなり暗雲が立ち込むかに思われた。しかし、ここで底力を見せ表彰台を狙える4位につけると、2日目の耐久審査に向け良い流れをつくる。迎えた耐久審査のクロスカントリー。各校に失権者が相次ぐ中、団体で入賞するためには早大の全員が完走することが求められる。「一人でも欠けたら入賞できない」(佐々)。それでも選手たちはこの重圧に屈することなく難しいタスクを遂行していく。工藤千明(人3=東京・三鷹)、大澤が丁寧に走り切り、最後の佐々も減点なしの見事な快走。団体順位こそ落としたものの、逆転表彰台への望みを残し、最後の余力審査へと戦いの場は移される。

減点なしでクロスカントリーを完走した佐々と稲隆

 余力審査として課されるのは早大が得意とする障害飛越競技(障害)。目標の表彰台に近づくためにはここで大きく巻き返したいところ。トップバッターとして臨んだ工藤であったが4番のダブル障害で反抗により減点となってしまう。これが響き総減点14で走行を終えると、続く大澤主将も減点12が付く。上位との差が離れてしまった中、チームの思いを背負い登場したのはエースの佐々。「絶対に(減点)0でいきたい」。強い気持ちを胸に、佐々が最後の走行に挑む。しかし、連戦の疲労が相棒の稲隆に襲い掛かる。不安定な走り。リズムをつくることができない。結果は減点12。これにより早大は団体6位で今大会を終えると共に、個人での表彰台を目指していた佐々も7位という悔しい結末を迎えることとなった。

最後の全日本に臨んだ大澤主将とアイシングラ―

 「ほとんど自分の仕事ができなかった」(工藤)、「本当に不甲斐ない」(佐々)と各々が露わにした表彰台に上れなかった悔しさ。この思いは次なる成長への糧になる。早大馬術部の今季の戦いも残りわずかとなった。次戦は4年生にとってラストマッチとなる伝統の早慶戦。永遠のライバルを倒すため、大澤主将は静かにその闘志を語った。「とにかく優勝したい」。思い描くは歓喜の輪――。全ての経験を力に、ワセダの騎手たちは熱く、挑戦する。

(記事 桝田大暉、写真 石田耕大、川浪康太郎)

結果

▽全日本学生賞典総合馬術競技大会 団体結果

6位 早大

▽全日本学生賞典総合馬術競技大会 個人結果(入賞者のみ)

7位 佐々・稲隆

▽全日本学生大会 3種目総合団体結果

5位 早大

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コメント

大澤佳純主将(教4=神奈川・桐蔭学園)

――全日本での障害、馬場、総合それぞれの目標を教えてください

特に障害で上位を狙えると思っていたので、障害は3位以内を目指したいと思っていて、他の競技も全員の力を出し切れば3位以内を狙えたので、障害の3位入賞と総合で3位入賞を目指していました。

――大会前の馬の調整はうまくいきましたか

正直、ワセダはことし2頭棄権していて、馬の状態自体はよくなかったです。

――きのうまでの障害と馬場の結果については

特に障害が残念だったのと、自分自身も馬の体調不良で棄権しましたし、佐々も工藤も力を出し切れなかったので、そこが特に悔しかったです。滑り出しもよくなかったですし、暗い気持ちのまま馬場を迎えてしまいました。ただ、後藤(寛佳副将、政経4=東京・早実)が個人で入賞したので、それは部員みんな嬉しいことでした。

――総合の結果についてはいかがですか

すごく悔しいです。総合は1頭棄権してしまって、そこは仕方ないことだったんですが、他の3頭はゴールを切れたのでそれはよかったです。

――引退試合となる早慶戦への思いや意気込みを聞かせてください

早慶戦は2年連続で負けているので、とにかく優勝したいです。それだけは最後の最後に決めたいなと思っています。全日本で悔しい結果は沢山あるんですが、それをしっかり最後に生かしていけたらと思います。

――今後、後輩に期待することは何ですか

後輩に対しては、ことし悔しい結果になってしまったのですが、色んなハプニングもありましたけどそれを含めてワセダの実力だと思っているので、そこをしっかり受け止めてもらってらいねんもっと力を出し切って馬もケガなく病気なく帰ってきてほしいなと思います。

工藤千明(人3=東京・三鷹)

――全日本を終えられて、いまお気持ちはいかがですか

私はほとんど自分の仕事ができなかったので、残念の一言です。でも馬は障害とクロスカントリーの二種目に出てすごく頑張ってくれたので、いまできる精一杯だったと思います。

――いずれも表彰台には届きませんでしたが、それについてはいかがですか

それが自分の実力だと思うので。乗っていたエナジー(稲帥)は一生懸命頑張ってくれて、障害の方は微妙でしたけど、クロスカントリーはいままで乗ってきた中で一番よかったので、それで満足です。

――6月の関東から成長を感じたところはありましたか

いま乗っている馬との息が合ってきたと思います。どう乗っていけばいいのか分かったところが一番大きいです。

――逆に課題として挙げられるところはありますか

クロスカントリーの場合は2分弱タイムオーバーしてしまったことと、障害では落下や反抗があったので、そのあたりをいかに少なくできるか、人次第だと思うので、そこが課題ですね。

――4年生の引退試合となる早慶戦も控えていますが、どのような意気込みで臨みますか

中障害に今回と同じ稲帥と出る予定なので、いかに落ち着いて落下を少なく回れるかが課題だと思います。

佐々紫苑(スポ2=神奈川・日女大付)

――団体6位、個人7位に終わった結果を振り返っていかがでしょうか

私は個人で勝つことを狙っていたので、勝つべきだったなと反省しています。

――やはり納得がいかない結果だったのでしょうか

(納得が)いかないですね。

――昨年は団体4位だったこの大会ですが、チームとしてどのような目標をもってこの大会に臨まれましたか

今大会は団体で3位以内に入れたらいいねと頑張っていたので、団体としても個人としてもちょっと残念です。それでも、誰もケガが無かったのでそれが一番よかったです。

――個人としても表彰台を狙っていたのですね

はい、本当に7位は不本意ですね。

――河野貴大(スポ2=東京・東農大一)選手の棄権により3人のみで戦わなければいけないという苦しい展開になってしまいましたね

そうですね、団体は3人なので1人でも欠けたら入賞できないというプレッシャーは口に出さなくても各々感じていました。ですが、普段から練習をしているチームワークでお互いを信頼して最後まで頑張りました。

――1日目の調教審査を終えて団体4位という順位はどのように捉えていましたか

馬場(馬術)は思っていたよりそこそこいいねという感じでした。うちの馬たちはどうしても馬場が得意な馬じゃなく、私が乗っていた馬もテンションが上がっちゃうのでちょっと心配だったのですが、まあ良いところについているかなという感じでした。初日はよかったですね。

――減点なしで終えることができた耐久審査を振り返っていかがでしょうか

難易度的には難しいコースではなかったですが、他の大学で人馬転倒があって嫌な空気が流れていたのでそれを断ち切るためにという緊張感がありました。稲隆が頑張ってくれて私も気持ちよく走れたなと思います。

――昨年は失権になってしまった最後の余力審査で意識したことはありますか

普通総合は3日間でやるのですが、きょうは耐久審査と余力審査を1日でやるかたちだったので稲隆の疲れがなかなか取れませんでした。乗っていて「疲れているな」という印象でバラバラと走っていたので、そこを私がもうちょっと助けてあげられたらよかったですが、うまくリズムを作れないままに(障害を)3つ落としてしまいました。

――個人での表彰台を狙える位置についていたからこその悔しさもあるということでしょうか

絶対に(減点)0でいきたいと思っていました。それに団体の最後の番になっていて、それは一番頑張ってほしいという皆の思いを背負っての出走順だったので、皆ができなかった分を頑張らなきゃいけないポジションだったのに3つも落としてしまったのが本当に不甲斐ないです。

――今季は残りわずかとなりましたが、残りの試合ではどのようなことを意識していきますか

馬は少しずつ私のことを信じてきてくれていてお互いに助け合うことはできているのですが、やっぱり馬が助けてくれることが多いので、きょうみたいに馬がへとへとに疲れている時は私がもっと助けられるようになりたいと思います。