全日本大学対抗選手権は3日目に入りトラック部門の最終日となった。早大は中野慎詞(スポ1=岩手・紫波総合)がルーキーながらインカレ初優勝の快挙を達成。タンデムスプリントでも安倍大成(スポ2=岩手・紫波総合)、川副雷斗(スポ1=熊本・九州学院)組が優勝を決め、トラック種目で躍進を果たした。
(記事 喜柳純平)
男子スプリント、中野が1年生王者に輝く!
中野は早大から14年ぶりにスプリントを制した
男子スプリントの出走者は田中克尚(スポ3=岡山工)と中野。最初に1/4決勝に登場した田中は相手に先にスパートをかけられ追いかける苦しい展開に。猛然と追い上げたがタイヤ一つ分届かず、敗れた。一方中野はゴール手前で後ろを確認できるほどの余裕をもって、通過。続く1/2決勝では先行して逃げ切り、ゴール手前での差し切りなど引き出しの多さもみせ決勝に進んだ。
迎えた決勝の1本目。スタートから先行し、逃げ切りを図り、一本目を先取した。ただ二本目では相手に差し切られ勝負は三本目に持ち込まれる。「まずいとかそういう気持ちは無かった」(中野)。最後のレースは残り200メートルを過ぎでロングスパートを仕掛けるとそのままスピード落とすことはなくゴール。盤石の強さを大舞台でも証明しインカレ初優勝を決めた。
「すごい嬉しい」(中野)。終わってみれば、中野の強さが際立ったレースとなった。追い込まれても動じない自信、多様なレース戦略が中野を支えている。それでも、謙虚な姿勢は崩さない。自分の力を冷静に分析し、周囲に感謝しながら努力ができる。目指すところは世界。現状に甘えることなくトレーニングを続けていく。
(記事 喜柳純平 写真 曽祢真衣)
女子スプリントは惜しくも2位
小泉の二冠はならなかった
女子スプリントには小泉が出場。500メートルを優勝した勢いそのままにラウンドを勝ち上がり、決勝に挑んだ。
相手は予選をトップで通過の西島(鹿屋体育大学)。一本目はラストの追い込みでなんとか差すことに成功。「勝てるな」(小泉)。有利な展開で始まった二本目だったが、ここを取ることができない。疲労もたまっていた小泉には苦しい状況に追い込まれる。三本目は差しが決まらず、500に続く二冠を逃した。
「勝つ気持ちを取り戻せた」(小泉)。スプリントは取れなかったが、昨年の不調からは完全に復活。今後のレースでも成績を残していきたいところだ。
(記事、写真 喜柳純平)
安倍・川副組がタンデム優勝!法大の3連覇止めた
早大は昨年3位に終わった悔しさを晴らした
「よくやったよ! 」。バックストレートで待ち構えていた部員たちが、安倍大成(スポ2=岩手・紫波総合)、川副雷斗(スポ1=熊本・九州学院)に駆け寄った。
タンデムスプリントで早大に実に6年ぶりの優勝をもたらした二人。快進撃は予選のフライングタイムトライアルから始まった。12番出走の安倍・川副組は12秒784で大会記録および学連記録を更新。しかし、わずか数分後には3連覇のかかる鈴木陸来・高橋綜一郎(法大)に記録を塗り替えられてしまう。
順当に勝ち進み、迎えた決勝。相手はやはり鈴木・高橋組だった。「先行すれば勝てると思っていたが、1本目は相手に先に掛けられてしまった」(安倍)と思惑通りにいかない。2本先取の決勝、1回戦で敗れ窮地に立たされた。ここで二人は話し合い、プランをまくりに絞った。「吹っ切れた」と安倍の加速力が上がり、2回戦はまくらずとも先行逃げ切りの展開で1本取り返した。勝負は3回戦にもつれたが、先行する法大ペアに対し温めていたまくりで対応、見事差し切った。
川副は大きく両手を上げ、喜びをあらわにした。昨年全日本学生選手権トラックで優勝した時にはハンドルから手を離さなかった安倍も、今回ばかりは拳を突き挙げた。「最高です」と揃ってはにかんだ。一昨年は5位、昨年は3位と勝ち切れずにいた早大のタンデムスプリントだが、先輩から後輩へ受け継がれてきた意志がついに結実した。喜びもつかの間、「次からは僕らが挑戦される側」と気を引き締めた川副。ルーキーながら優勝の重みを背負う覚悟はできている。
(記事、写真 曽祢真衣)
結果
▽タンデム・スプリント
安倍大成・川副雷斗 1位
▽男子スプリント
中野慎詞 1位
田中克尚 5位
▽女子スプリント
小泉夢菜 2位
池田ゆめこ 予選敗退
▽1キロメートルタイムトライアル
納家一樹 15位 1分5秒720
佐藤啓斗 19位 1分7秒394
コメント
佐藤啓斗(スポ4=青森・八戸工)
――インカレまでのシーズンを振り返って
今回4年の最後のインカレということで1キロ一本に絞って練習をしてきました。
――絞った時期は
2か月ほど前です
――絞った理由は
1キロ以外は得意でもないですし、それ以外は後輩に任せた方が良いと思ったからです。
――ケイリンに出場されませんでした
安倍(大成、スポ2=岩手・紫波総合)君がすごい最近結果を出していましたので、調子のいい彼にわ任せた方がいいと思いました。
――1キロのレースを振り返って
自分ではミスがなかったつもりでしたが、タイムの方は全然出ていなかったので、練習の仕方そのものに問題があったのかなと今は思っています。
――目標タイムはありましたか
1分5秒台でした
――最後のインカレになりました
私は結果を残せませんでしたが、早大は現時点で3位に入賞していますし、部の対抗ですので、それだけで十分かなと思います。
――後輩達の活躍もひかりました
なかなか先輩が活躍できない中、後輩に任せると言うのも恥ずかしいことですが、それでも結果を出してくれればよかったかなと思います。
――4年間を振り返っていかがですか
なかなか調子の良い時と悪い時が交互に来てインカレでも結果を出せる時と出せない時があって、安定できなかったのが残念です。
――同期や、後輩達にメッセージはありますか
感謝することしかできないです。
田中克尚(スポ3=岡山工)
――スプリント1/4決勝のレースプランはありました
相手が先に仕掛けてくるのはなんとなく分かっていたので、それに合わせて自分もついていこうかなと思ったんですけど、思ったより自分の足が疲れていて、追いつけなかったので、そこが少し悔しかったです。
――離れてしまったのは連戦の影響もありましたか
そうですね。ただ、アップ不足もあったかもしれないですね。疲労も多少あったのでそれで追いつかなかったです。
――5位、8位決定戦に進まれました
最初にくじを引く前は1/4よりもギアを重たくして、ペダルを踏んで、先行して最後まで前で展開していこうと思ったんですけど、くじを引いて4番手だったので、4番手を引いた時にコーチがこれは最初傾斜を使って一気に行けば、いけると言われたので、その作戦を使って、上から一気に行ったという感じでした。
――くじ引きによっては違う走り方になっていたのですか
そうですね。
――以前もこのような走りが見られましたが、くじ引きの影響が大きいのですか
くじ引きが結構大きいですね。自分が外の場合は傾斜も使って一気に加速できるので、くじ引き次第ではそういう展開も考えています。
―― 5位に関しては
調子も良かったら、中野君(慎詞、スポ1=岩手・紫波総合)と当たることもできたと思うので、5位、8位決定戦で5位が取れたのは良かったですけど、やはり決勝には残りたかったですね。
――中野選手が優勝されましたがそれに関してはいかがですか
いつも練習相手にもなってもらっているので、本当に優勝してくれてとても嬉しいです。
――これでトラックの全日程が終了しました。トラック長としては振り返って
団体種目の、団抜きもチームスプリントももう少し順位を上げることができたかなと思っているので、そこは来年修正して1位を取れるように頑張っていきたいです。
――ロード班に向けて
1-2-3を決めて、総合順位をひっくり返すぐらい頑張ってほしいです。
安倍大成(スポ2=岩手・紫波総合)・川副雷斗(スポ1=熊本・九州学院)
――優勝した瞬間の気持ちを聞かせてください
安倍・川副 ありがとうございます。最高でした。
――決勝3本目を終えてバックストレートで部員たちに迎えられた時、なんと声を掛けられましたか
安倍 「お前よくやったよ」って。
――決勝にはどのようなプランを立てて臨みましたか
安倍 先行すれば勝てるとは思っていたんですけど、一本目は相手に先に掛けられてしまってうまくいかなくて。自分たちの掛かりもあまりよくなくてまずいなと。1本目を終えた時にプランを決めました。これしかやらないと。まくり、差しのプランだったんですけど、それだけやると決めて他のことはやらなくていいと考えたら、吹っ切れました。それで僕はめちゃくちゃ調子が上がりました。
――それは安倍選手が決めたのですか
川副 二人で話し合って差しでいこうと決めました。ですけど、2本目は走っているうちに展開が変わってきてしまって。僕らが先行したら勝ててしまうような展開になってしまったので、結局先行しました。そうしたら一番いいタイムが出ました。
――3本目はまくりでした
安倍 そうですね。3本目は僕らが2本目ですごく速かったので相手は先行しかないと考えて前に出たと思いますが、僕らにはまくるというプランがあったのでそれに絞って走りました。
――決勝の相手はインカレ3連覇のかかる鈴木陸来・高橋綜一郎組(法大)でしたが、その点は意識しましたか
安倍・川副 そういうことはあまり重要視しませんでした。ですが、ワセダは昔はとても強くて最近ぼちぼちだったんですが、強いワセダを見せることができたので、復活したと思ってもらいたいです。
――昨年のインカレでは中井琢(平30スポ卒)・安倍組が3位でした。中井OBは「ここで優勝したら安倍のためにならない」という印象的な言葉を残していますが、実際に今年優勝してご本人はどう感じていますか
安倍 残してくれた優勝を取ることができて良かったと思います。
――川副選手は1年生にしてインカレ優勝を経験されたわけですが、今後にどう生かしていきますか
川副 今回のインカレは正直勝てると思っていたので勝てて良かったです。ただ危ないところはけっこうありました。今回までは挑戦者でしたけど、次から僕らが挑戦される側になるので、負けないように頑張っていきます。
――来季もペアは継続しますか
安倍 はい。
川副 まあ考えておきます。
一同(笑)
小泉夢菜(スポ2=埼玉・浦和工)
――スプリントの目標はありましたか
始まる前はスプリント種目は苦手意識を持っていたので、どうなるかなという心配の気持ちの方が大きかったです。
――苦手意識とは
去年のインカレでスプリントに出た時に失格で順位がなかったからです。
――スプリントの決勝までレースを振り返って
調子が良いのかなと思っていました。
――決勝のレースプランはありましたか
初日からの疲労が溜まっていたので、本数を減らしたいから3本目に持ち込まないように2本で決めようとは思っていました。
――先に1本目をとりましたがその時の気持ちは
勝てるなと思って、2本目に臨もうと思いましたが難しかったです。
――疲労感も残っていたのですね
すごい疲労が蓄積されていました。いつもだったらいけるかなというところも全然行けなかったですね。
――2位に関しては
実力だから仕方ないと考えています。
――チームメイトの応援もありました
集中しすぎていて、聞こえませんでしたが、終わった後に色んな人から、他の大学の人からも応援したよと言ってくださった人もいて、すごい嬉しかったです。
――これで小泉さんのインカレの全種目が終了しました。振り返ってどうですか
500は絶対に勝ちたいという思いで、今回インカレに臨んできてそれがとれたことはすごい自信にもなりました。またスプリントをする上でも500の優勝があるから、自信を持って自分からいけば大丈夫と思って戦えたことが良かったのかなと思っています。
――今後に向けて
今回のインカレでやっと勝つという気持ちを取り戻せて、負けて悔しいという思いも出てきたので、このままの調子で頑張りたいなと思います。
中野慎詞(スポ1=岩手・紫波総合)
――優勝おめでとうございます。今の気持ちを教えてください
すごい嬉しいです。決勝は3本勝負になるくらい力の差がないどっちが勝つかという勝負になりました。今まで決勝で3本勝負になるということが経験がなかったのですごい緊張して、とにかく勝ちたいという思いしかなかったので、勝てて嬉しいです。
――インカレに向けてはどういった調整もされてきましたか
3週間連続で個人戦トラックとジャパントラックとJICF国際トラックという大会が続いて、すごい疲労が溜まっていました。一度一気に調子が落ちて、全然走れないくらいまで調子が良くなかったのですが、調子が悪い時は悪いなりに自分でウエイトの重量も変えて、軽くしてみたりだとか、そういうことをして、徐々に調子をあげれるような感じになりました。あとは食べて寝るだけです。(笑)
――スプリントでの決勝までのレースを振り返って
そうですね。予選は10秒フラットから9秒ぐらいを狙ってレースをしましたがまだコーナリングだっだりそういうので練習不足などがありました。3コーナーで滑ってしまってスプリントレーンを外すミスがありました。まだまだ課題の残る走りをしてしまったので、そこは切り替えて対戦で勝っていこうと思い、1/8、1/4、1/2と戦いました。今まで戦ってきた中で、対戦の内容としては前のミスを今回修正できて、冷静になってレースをすることができたかなと思います。
――決勝のレースで1対1になった時の気持ちは
勝つしかないなと思いました。これは勝つしかない。特にまずいとかそういう気持ちは無かったです。1対1になってもらっておかしくないような力だったので、なったらなったで勝てる自分の中で最終兵器という展開を持っていたので、それができたので勝つことができました。
――その展開を持っていたから最後も自信を持って戦えたのですか
これはどういう展開になってもらって勝てるというインだろうがアウトだろうが勝てる自信を持っていきました。
――これで中野さんのインカレ種目が終わりました。振り返っていかがですか
そうですね。やはり高校と違って大学として出るというのはすごい他の大学をみても、チームとして応援もすごいですし、インターハイとは違って独特の雰囲気もあるなと思いました。あとは自分は結構自由にやらせてもらっているというか、自分の思ったようにここ座りたい、とかあるのですが僕が動き始めたら自転車を持ってくれる、とかマネージャーさんトレーナーさんをはじめとするサポートしていただいたスタッフの方々が僕の行動などをみて、すぐ察して対応していただいて、僕はすごい自由にできたので、こういう成績もおさめられたのかなと思います。
――最後に今後の目標を聞かせてください
今後は優勝したということは追われる立場でもありますし、僕は世界で戦える選手になりたいと思っているので、まだまだこの結果に満足しないで、もっと上をみてトレーニングをしていきたいと考えています。