対談第1回は、主にトラックで戦っている4年生の手嶋将大(スポ4=千葉・国分)、JCF(日本自転車競技連盟)の強化指定選手に選ばれた後藤悠(スポ3=岩手・紫波総合)と、スプリントで総体2位の実績をもつルーキー田中克尚(スポ1=岡山工)。それぞれの思いを胸に学生日本一を決する舞台に挑むこの三名に、春シーズンの振り返りと意気込みを伺った。
※この取材は8月8日に行われたものです。
「充実したシーズンだった」(後藤)
ことしの国体は故郷・岩手での開催となった後藤
――春シーズンを振り返っていかがでしたか
手嶋 春のシーズンは4年生ということで、就職活動などがあって前半はあまり自転車に乗る時間を割くことができませんでした。5月いっぱいまでは自分の思い通りに練習できないという感じでしたし、調子も上がりませんでした。そこから教育実習をやって3週間空いた後、それまではいろいろな練習に手を出していたんですけど、もう時間が無いので絞って、やれることだけ集中してやるという風にしました。それから徐々にコンディションが上がっていって、久々に個人戦(全日本学生選手権トラック)で自己ベストを更新することができました。その流れできて、インカレに向けて最後の悪あがきという感じで今シーズン上がってきているのではないかなと思います。
後藤 春は、東日本(東日本学生選手権トラック)は合宿で出られなくて、ことしは岩手で国体があるので岩手の合宿と、あとJCFの強化指定選手に選ばれてその合宿と、ワセダの合宿もありました。月に3、4回合宿があるときもあって、内容の濃い練習ができたと思います。充実したシーズンでした。
田中克 高校はみんなで練習をしていたんですけど、大学に入ってからはみんなで練習をする機会が少なくなりました。一人だと練習に身が入らないので、あまりできていないなと思います。
――高校までの練習と変化した点はありますか
田中克 朝練習がすごく早いです。
一同 (笑)。
――朝の練習は何時から行っているのですか
田中克 5時からです。高校の時は6時45分スタートで30分しかしていなかったんですけど、大学に入ってからは朝も早いし時間も長くなりました。
――春のシーズンで印象に残ったレースはありましたか
手嶋 自分も大学のレースは今シーズン東日本と個人戦とお台場(全日本学生RCS第5戦・WANGANサイクルフェスティバル湾岸クリテリウム)しか出ていなくてトラックに集中していたので、一番個人戦が印象に残っています。久しぶりに自分のベストを出したというのと、ちゃんと根拠あっての良いタイムだったので、最後のインカレに向けた良いイメージができたと思います。
後藤 自分も個人戦くらいしかことしは出ていないので、個人戦ですかね。そのときのベストタイムを出せたんですけど、それでも順位が4番か5番でした。スプリントのレベルが上がってきているので、このままじゃ勝てないなと思いました。
田中克 東日本と個人戦に出て、大学に入ってあまり練習ができていなかった分タイムがそんなに良くなかったので、これから頑張っていくしかないなと思っています。
――他の部員さんのレースで印象に残っているものはありますか
後藤 六大学(東京六大学対抗競技大会)のときのスプリントで、田中克がきょねんインカレ(全日本大学対抗選手権)3位だった明大の曽我さんに奇襲で勝ったのが印象的でした。
――今シーズン新しく取り入れた練習などはありましたか
手嶋 途中から、父親からアドバイスを受けてインターバルメニューをやりました。自分より強い選手がやっているメニューなんですけど、インターバルメニューは恐らく自分に合っていて、強い選手のメニューでも成し遂げられました。なので自分の得意を伸ばすという意味で、単発というよりは回数を増やして強度を上げて練習をしました。
後藤 きょねんまでと比べてウエイトを増やしました。逆に自転車に乗っている時間は減らして、自分が他の選手と比べて弱いと分かった腹筋や体幹の部分を鍛えました。
田中克 僕も大学に入ってからウエイトをするようになりました。高校の時はあまり重たいギアを踏んでいなかったのですが、大学ではみんな踏んでいるので、ウエイトでしっかり鍛えて重たいギアも踏めるようになれたらいいなと思います。
――春と比べて成長した点はありますか
手嶋 体力がアップしたことと、自転車に乗れていることです。春先までは自転車に乗っていても、あまりフィットしないというか進まない感じだったんですけど、6月くらいからは進むようになってきました。その進ませるうまさと力が4、5月と比べると成長した点だと思います。
後藤 ダッシュ力がついたと思います。
田中克 実感はあまりないですが、ウエイトを始めたころよりは重たい重量にも対応できるようになってきました。
――先輩から刺激やアドバイスをもらったことはありますか
田中克 ウエイトとかで森さん(浩輔主将、スポ4=神奈川・横浜)に教えてもらったことなどはあります。
――JCFの強化指定選手になったのはいつ頃からなのでしょうか
後藤 4月です。
――代表合宿はどのようなことをしたのですか
後藤 基本的にはベロドロームで決められたメニューをこなしたりウエイトをやったりという感じです。他の合宿と比べると、練習の負荷が大きくてインターバルが長かったです。
――スポーツ科学部で学んだことが練習などに生かされたことはありますか
手嶋 全部生きていると思います。これはやっぱり、最近入学した田中克尚君に聞きたいですね(笑)。
田中克 脚にもたくさんある筋肉について学んで、自転車ではどこを使うからどこを鍛えればいいみたいな勉強が役に立っています。
「優しくて良い先輩」(田中克)
和やかな雰囲気で対談は行われた
――ここからは普段の生活についても聞かせてください。7月の期末テストはいかがでしたか
手嶋 僕は4年生なのでテストというものが1つしかなくて。まあ可もなく不可もなく、なんとか、抑えきったという感じですね。あとは天命を待つのみです(笑)。
後藤 自分はちょっと危ないかもしれないですね(笑)。2年生までは順調にとってきたんですけど、3年生になっては教職のテストだけはヤバかったですね。
田中克 僕は、高校のときに比べたらテストは思ったより簡単だなあと。
手嶋 おうおう(笑)。
――ゼミではどういう勉強をしていますか
手嶋 僕はビジネスコースなんですけど、ゼミの先生は教育の先生で、基本はスポーツ倫理学やドーピングやスポーツの組織はどうあるべきかとかスポーツの教育などについてみんなで話し合ったり、プレゼンしたり。まあでも4年次は就活などでみんな忙しいのであまり参加していないですね。3年次まではそういうことをやっていました。
後藤 自分は医化学の川上先生のゼミですね。バイオメカニズムとか動作解析とかを専門にしているゼミで、いまはエクセルとか使ってデータをまとめてる感じですね。
――田中克選手は入学してから4ヶ月経ちましたが、大学生活には慣れましたか
田中克 1限を取ってないので比較的ゆっくり学校に行けるので、まあ楽かなー?と思いますね(笑)。
――スポーツ科学部のクラスはどんな感じですか
田中克 うーん、いまのところあんまり・・・(笑)。
手嶋 野活あったじゃん(笑)。
田中克 あ、そうですね(笑)。楽しかったです。
――岡山県出身ということで、上京してみた感想はいかがですか
手嶋 おー、聞きたいね(笑)。
田中克 そうですね。都心にはあまり行ってないので、ここらへんは岡山と変わらないかなー、と(笑)。
――手嶋選手は就活などでお忙しいと思いますが、オフの日はどうされていますか
手嶋 部活は基本月曜日がオフなんですけど、友達と予定が合って遊ぶ日をオフにしているので、大体部活がオフの日は練習とか。あとはアニメ見たり、動画見たりゴロゴロして過ごしたり。友達と遊ぶときはだいたい千葉の方に飯食いに行ったりしますね。まあどちらかというと部屋で寝るか、アニメ見るか(笑)。
――アニメはどういうのが好きなんですか
手嶋 いやー、どうなんですかね、ほのぼのといいますか、まあ癒しを求めてるんで(笑)。癒し系のアニメですかね。日々の疲れを癒しています。声優とか最近きてますね。
――後藤さんは何をされていますか
後藤 うーん、なんにも・・・してないですね(笑)。オフの日ですよね・・・あ、でも接骨院行ってマッサージしてもらったりとか。それか寝るか遊びに行くか。お酒とかもあんまり飲まないんで飲みに行ったりもしないですね。
――田中克選手はいかがですか
田中克 僕も基本・・・寝てますね(笑)。まあたまに友達と遊びに行ったり、あとはゲームとかしますね。
手嶋 三人ともドライなんでね(笑)。
――朝練が5時のときは何時くらいに就寝しますか
田中克 朝練があるからといって早く寝たりはしないですね(笑)。いつもと同じ睡眠時間で、まあいつも12時くらいに寝ますかね。
――お互いの印象について教えてください
手嶋 田中克は・・・常にヘラヘラしてるというか(笑)。微笑んでるイメージですね(笑)。まあでも、すごく素直といいますか、顔から性格がにじみでていますね(笑)。僕はアパートに住んでいて一年生と関わる機会があまりないのでまだそんなに深くは分からないですね。
――レースの印象はいかがですか
手嶋 高校の頃に比べるとまだちょっとくすぶっているかな、と思いますね。今後に期待ですね。
後藤 高校のときからインターハイとかで準優勝していたので名前は知っていて。自分は田中克の先輩とも知り合いなんですけど、その人ともまたジャンルが違うという印象ですね。レースはきのうの六大学で初めて見たのでまだ評価しがたいので、インカレに期待ですね。
――田中克選手は、先輩の印象についていかがですか
田中克 先輩はみんな体がデカいな、と。あとはみんな優しくて良い先輩です。
手嶋、後藤 (笑)。
――トラック班のメンバーで普段お話することはありますか
手嶋 まあトラックのメンバーは馴れ馴れしくもなくいい具合で仲良くやってるんで。練習するにしてもいつも一緒なんで、適度に気持ち良い距離で接しているな、と僕自身は感じてますけど(笑)。
後藤 まあ雰囲気は悪くはないんじゃないかなと。僕が後輩にどう思われてるかはわからないですけど(笑)。
――先輩のプレーの印象や普段とのギャップはありますか
田中克 いやー、特に別に、そんなに(笑)。
手嶋 情けないなあ(笑)。後藤とかはあるんじゃないの、レースのときはいかついとか。
一同 (笑)。
――ことしの主将や新しいチームの印象は
手嶋 そうですね、主将はきょねんから主務をやっていて、主務からの主将という感じで。やっぱり自転車部自体の運営も含めて誰よりも上手く回していて、自転車部の雰囲気の全体も見回していていますね。3、4年前までは自転車部自体が組織って感じだったんですけどいまは班に分かれてる状態で、その中でどうしようとかっていうのを考えていてくれていたり。実際3、4年生はきょねんよりも成長しているので、そこの部分はトラック班としてもうまく回ってるかなも感じますね。
――1年生が入ってきて、部の雰囲気はいかがですか
後藤 みんな個性が強いですね(笑)。でもそんなに我が強かったりするような和を乱すような人がいないので、接しやすいですね。
――田中克選手はいつごろ自転車競技を始められたのですか
田中克 幼い頃からの先輩が高校に入学していて、僕もそのことは知らず入学したんですけど、会ったら誘われて、それで入りましたね。特にどの部活に入ろうか決めてなかったんで。
――それまでは中学のときは何をやっていたんですか
田中克 中学はバスケやってましたね。高校でもバスケ部はあったんですけど、すごい厳しいって聞いて、それが嫌だなって思って。
――自転車部も厳しいんじゃないんですか
田中克 そうですね、入ったら厳しかったです(笑)。
「4年生の意地」(手嶋)
インカレについて語る手嶋
――先日の六大学は伊豆ベロドロームでの開催でした。インカレと同会場でしたが、収穫はありましたか
手嶋 最低限のノルマをクリアしたのが収穫です。あと、会場に慣れていなかったのですが、六大学とその翌日のベロドロームでの練習で結構コーナーの感覚などをつかめました。その二日間でインカレに向けて練習もできましたし、特別なスキルの部分もうまくできたので、有意義に過ごせたと思います。
後藤 インカレでどのくらいのギアを使うかという目星も付きましたし、インカレまでに今やらなければいけないことも分かったので良かったです。チーム・スプリントでも初めてのメンバーでの挑戦だったのですが、初めてにしては70点か80点くらいの走りができたと思います。
田中克 久しぶりにベロドロームを走って、六大学はあまりタイムも出せませんでした。でも翌日の練習で感覚が戻ってきたので、インカレではタイムを出せるようになるかなと思っています。
――意識している他の大学や選手はいますか
手嶋 基本的に個人というかタイム競技なので、優勝や入賞のタイムは想定するのですが、そのタイムに合わせて自分はどうするかを考えています。総合得点3位を目指しているのですが、自分がどうするかしか考えていないです。
後藤 自分も特に考えていないです。いま中大、鹿屋体大、朝日大、日大などみんなスプリントで強いですし、誰が勝ってもおかしくない状況です。一強という感じではないので、意識はしていないです。
田中克 他大の1年生に負けないようにしたいです。1年生のなかでは一番を目指したいです。
――手嶋選手にとっては最後のインカレになりますが、昨年までと異なる思いはありますか
手嶋 変わると思っていたんですけど、きょねん気持ちがすごく入っていたのもあって、あまり変わらないです。とりあえず最後自分のベストなパフォーマンスをするということと、チーム・スプリントがこのメンバーで走ることはもう一生ないと思うので、そこを最後みんなで満足できる結果を出すために頑張りたいです。4年生の意地を見せて今後続く3、2年生にアピールしたいです。
――後藤選手は昨年体調不良の中のインカレになりましたが、ことしの調子は今のところいかがですか
後藤 調子は悪くないと思います。ことしは膝や腰を痛めることが最近多くて、それをきちんとケアすれば万全の状態で臨めると思います。
――田中克選手は初めてのインカレになりますがどのような思いですか
田中克 とりあえず頑張って入賞を目指しています。
――具体的なタイムや順位の目標を教えてください
手嶋 タイムは、チーム・スプリントは46秒台で走りたいです。1キロメートルタイムトライアルは最低1分4秒と考えていますが、1分3秒を目指しています。
後藤 自分もチーム・スプリントは同じ46秒台が目標です。47秒8か9くらいはこの間出せたので、あと1秒は縮められると思います。スプリントはことし初めに目標にしていた10秒2で学連新記録を出せたらいいなと思っています。
田中克 タイムは、スプリントで10秒6くらいは出せたらいいなと思っています。入賞を目標にしています。
――インカレに向けて意気込みをお願いします
手嶋 まずは一生で最後のインカレなので、本番までの日々を悔いのないように過ごしたいです。やることをちゃんとやっていればおのずと結果はついてくると思うので、残りの日々をインカレに向けて確実にやっていきたいです。インカレがどうこうというよりはそれまでの準備をしっかりしてきたいと思います。
後藤 きょねんから冬場もやろうと決めたことはちゃんと積み重ねてきたので、残りの日々はやるだけのことをやります。インカレは、楽しめればいいなと思います。
田中克 1年生で初めてのインカレなので挑戦という感じで、今後につながるかたちにできればいいなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 寺脇知佳、橋本望)
(左)から「挑戦」(田中克)、「戦走」(手嶋)、「明鏡」(後藤)
◆手嶋将大(てじま・まさひろ)(※写真中央)
1994(平6)年8月9日生まれ。172センチ。千葉・国分高出身。スポーツ科学部4年。トークを引率した最年長の手嶋選手。色紙にはまず下半分に『走』のみを書き、『なにそう』にしようかなと悩んだ末、上半分には『戦』と書いてくれました。上手いですね。インカレという『戦走』をぜひ勝ち抜いてください!
◆後藤悠(ごとう・ゆう)(※写真右)
1995(平7)年4月8日生まれ。171センチ。岩手・紫波総合高出身。スポーツ科学部3年。冷静沈着な様子でインタビューを受けてくれた後藤選手。ご自身にぴったりの『明鏡』を即決してくれました。インカレでは曇りない心で颯爽と走り抜いて欲しいですね。
◆田中克尚(たなか・かつひさ)(※写真左)
1998(平10)年2月10日生まれ。166センチ。岡山工高出身。スポーツ科学部1年。終始絶えない微笑みが印象的だった田中選手。書き順を吟味しながら、『挑戦』の二文字を書いてくれました。平常の穏やかな表情から一転、大学初めてのインカレではどのような表情に切り替わるのでしょうか。注目です。