早くも日差しが照りつけているこの季節。東日本学生選手権はことしで55回目をむかえ、2日間に渡って開催された。ゴールデンウィークに行われた強化合宿の直後だっただけに、調整がききにくかったワセダ。しかし男女計12名が参加したうち、特に新戦力が健闘を見せる。男子スクラッチと男子ケイリンの2種目で1年生が優勝に輝くなど、全日本大学対抗選手権(インカレ)に向けての明るい材料を得ることができた。
男子スクラッチ決勝にのぼりつめたのは孫﨑大樹(スポ1=京都・北桑田)と中井啄(スポ2=宮城・仙台二)。中井はメイン集団で何度もアタックを繰り返すも、うまくいかずに終盤で脚を消耗してしまう。一方の孫﨑は前半にアタックを仕掛けてスプリンターの脚を削りつつ、後方で様子をうかがって自分の脚を貯めにかかった。この戦法が功を奏す。孫﨑の狙い通り、レースが大きく動いたのは、残り5周に迫ったところだった。孫﨑を含む3人が飛び出して逃げ集団を形成。メイン集団に吸収されることなく競い続け、ラストまで及んだ。勝負の行方のわからない熱戦が繰り広げられ、観客も固唾を飲んで見守る展開へ。そしてついにゴールの瞬間。数十センチの差を制したのはルーキーの孫﨑だった。たちまち拍手と歓声が湧き起こり、会場はこの日一番の盛り上がりを見せる。「自分の思い通りに持ち味を活かせる展開に持っていくことができた」と、孫﨑はやりきったという表情で満足気にレースを振り返った。
快走を爆発させた孫﨑
男子スプリントには2年生の後藤悠(スポ2=岩手・紫波総合)がエントリー。決勝進出を懸ける1/2決勝まで順当に駒を進めた後藤。2人だけで競り合い、3本中2本先着した方が勝利、という形式だ。対戦したのはきょねんの東京六大学対抗競技会で敗北を喫した相手である明大の橋本瑠偉。まずは互いに一本ずつ取り合い、勝敗が掛かった3本目を迎えた。会場にも緊張が走る。後藤は全力でスパートをかけた。しかしあと一漕ぎが及ばず、惜しくも雪辱を果たすことはかなわなかった。「駆け引きの面では自分が勝っていた」と振り返るように、僅差ゆえの悔しさを噛みしめた。また、男子ケイリンで優勝を飾ったのは期待のルーキー・佐藤啓斗(スポ1=青森・八戸工)だ。序盤は先頭につけ、良いスタートを切る。そして中盤は内側を走り、他をけん制。ラストは粘り強さを発揮してトップフィニッシュを決めた。「まだまだ実力不足」と謙虚さをのぞかせた佐藤。しかし、「ストイックなところがある」(手嶋(将大、スポ3=千葉・国分))と上級生も評するように、佐藤はこの先さらに実力をつけ、チームに欠かせない戦力となってくるだろう。
接戦の末、見事表彰台にあがった佐藤
若い力の奮闘が光り、好発進と言える試合内容となった今大会。1年生ながら優勝をつかみとった二人は今回の結果が自信となったはずだ。しかしワセダが照準を合わせたいのはあくまで9月に控えるインカレ。それまでまだまだ時間もあり、伸びしろは十分だ。インカレ優勝に向け、チーム一丸となって全力で走り抜けていきたい。
(記事 寺脇知佳、写真 井上莉沙、寒竹咲月)
結果
▽男子
OPEN200mタイムトライアル 手嶋 1位、森 6位
スプリント 後藤 3位
チームパーシュート 予選5位
4kmインディヴィデュアルパーシュート 伊藤 予選12位
チームスプリント 2位
ケイリン 佐藤 優勝、手嶋 10位
ポイントレース 八田 16位、塩田 予選1組12位、岩田 予選2組DNF
スクラッチ 孫﨑 優勝、中井 15位、足立 予選2組14位
▽女子
3kmインディヴィデュアルパーシュート 中嶋 4位、池田 6位
スクラッチ 中嶋 5位、池田 6位
500mタイムトライアル 中嶋 4位、池田 6位
コメント
孫﨑大樹(スポ1=京都・北桑田)
――今大会の位置付けは
大学入って2回目のトラックのレースで、東日本は全国の一個手前の位置付けだと思っていたので、ゴールデンウィークの合宿で追い込んだ自分の調子を見ることと、自分の東日本での実力を見るのにもいい大会だったので、順位を狙ったレースをしようと思いました。
――スクラッチでは優勝となりましたが、いまのお気持ちは
久々に、自分の思い通りで持ち味を活かせる展開に持っていくことができて優勝できたので、合宿が非常にいい感じに仕上がってるな、これからのレースでも十分活躍できるなと自分の仕上がり具合を確認できました。
――1年生での優勝となりましたが、自信にもつながったのではないでしょうか
そうですね。大学で1年目で、4年生の人たちと力の差があるなと思っていたんですけど、それなりに戦えることが確認できて自信につながりました。
――改めてレースを振り返って
自分のレース前に考えていた展開にドンピシャにはまって、自分でつくることができたので、きょうは非常にいいレースができたと思います。
――どのようなプランで臨まれたのですか
スプリンターという最後のゴール勝負に賭けている選手が予選のときから見られて、ギアもある程度重いギアできていたので、スピードの緩急、アタックをかけて集団が緩んでというのを何回か繰り返してスプリンターたちの足を削るような展開を前半やって、自分自身もしっかりと休んで後半勝負、というふうに持っていこうとしてたら、本当にそういう展開になりました。中盤もしっかり集団の後ろで安全に、かつ足を休められるようなことができたので、後半の逃げにつながったのかなと思いました。
――逃げ集団に入ってからは、どのようなことを意識されていましたか
ラスト1周のときに先行してるとスプリントでまくられる可能性があるので、先頭に行く距離を調整したり後ろとの間隔も確認して、というふうに本当に理想のかたちで冷静に落ち着いて考えられました。
――中井選手との連携はいかがでしたか
まだ東日本大会ということで、あまり連携して勝っていてはダメだなと思って個人個人で狙って、あまり意識せずに走りました。
――きょうのレースに点数をつけるなら
本当はマークが厳しくても全員をちぎるくらいの力が欲しいので、展開としてはよかったんですけど力はまだまだなので、つけるとしたら八十点くらいですかね。
――チームパーシュートの出来は
チームとしての練習はあまりやっていなくて合わせてなかったのですが、まだまだインカレに向けて伸びしろがあるのでそこを詰めていったら上位四校にそれなりに対抗できると思っています。自分自身もそうですし、チームとしてももう少し詰めてインカレでは表彰台を狙っていけるようなチームづくりができればなと思います。
――合宿ではどのようなことに重点をおいて練習されましたか
団体追い抜きというのはチームの足踏みを揃えないと走れない種目なので、まずは誰がどういう走りができるのかどういう走り方をするのかがわかるようなチームの練習をメインにして、あとは先にある個人戦、2人一1でやるマディソンという競技があるんですがそれもチームプレーが重要なので、メインはチームプレーを練習しました。
――次戦への意気込みをお願いします
ここで結果を出したのはいいんですけど、インカレの本戦で出せないと意味がないのでインカレでしっかりと優勝狙っていけるようにしていけたらなと思います。
佐藤啓斗(スポ1=青森・八戸工)
――今大会の位置付けは
大学入学して間もないので、インカレに向けての出発点、という位置付けだと思っています。
――優勝された男子ケイリンについて振り返っていかがですか
実力がまだまだだったので、とにかく対戦の仕方や様子を見て、自分が一番力の出せる走り方をしたいです。決勝も気力で乗り切ったという感じでした。
――1年生での優勝となりましたが、自信にも繋がったのではないでしょうか
まだまだ実力が追いついていないので、インカレに向けて実力をつけていきたいと思います。
――チームスプリントを振り返っていかがですか
3走だったのですが、まだまだ実力不足で、練習のときも着いていけなかったりしたので、こちらもインカレに向けて実力をつけます。
――合宿ではどのようなことに重点をおいて練習されましたか
チームスプリントを主に練習したのですが、実力が伴っていなかったのが今回の結果につながってしまったと思います。
――ではその実力をつけるために具体的な改善点はなんでしょうか
やっぱり団体競技なので、先輩方についていけるように、打ち合わせをしたり、ついていけるように練習を重ねていきたいです。
――収穫点はありましたか
走り方や技術で個人競技では結果を出せましたが、団体種目では実力不足が露呈してしまったので、ケイリンの1位に慢心せずにこれからも努力していきたいです。
――次戦への意気込みをお願いします
インカレはもちろん優勝を目指すことなのですが、団体種目でもこれから頑張っていきたいので、先輩方の走りを見本に、頑張っていきたいです。
後藤悠(スポ2=岩手・紫波総合)
――今大会を振り返っていかがでしたか
合宿が終わってすぐの大会だったので、調整があまり上手くできなかったのですが、思ったより実力がついてきたのかなとは思います。
――合宿で重点的で練習したことは何ですか
前半は岩手の方で合宿をしていて、地元のケイリンの選手と一緒にやらせていただいて負荷の高い練習ができました。後半の泉崎の方の大学の合宿ではチーム・スプリントの練習をやっていたのでそれがしっかり出せたかなと思います。
――チーム・スプリントでは準優勝という結果でしたが、それについてはいかがですか
あと1秒くらい縮められるとは思うんですけど、(チームとして)合わせた練習がまだしっかりと積めていなかったので現段階では良い方だったと思います。
――個人として意識したことはありますか
きのうより重いギアを使って、二走目が楽に走れることを後半は意識していました。
――スプリントでは明大の橋本瑠偉選手に僅差で負けてしまいましたが、その点はいかがですか
きょねんの東京六大学対抗競技会でも対戦した選手で、駆け引きの面では自分が勝っていたんですが、実力差で負けたのでもう少し自分が力をつけるしかないかなと思います。
――タイムについてはいかがですか
予選は今までに使ったことのないギアに挑戦した割には良いタイムだったかなと思います。
――スプリントに関して、今後に向けた反省点や改善点がありましたら教えて下さい
改善点としてはディスクホイールを使いこなせていないので、そのホイールを使いこなした上で走ればもっと良い勝負ができると思います。
――ディスクホイールを普段使うことは少ないのですか
本番しか使わないのでまだ慣れていないです。
――今回の大会に向けた目標はありましたか
特に無かったです。個人戦や全日本大学対抗選手権(インカレ)が始まっていくので、それに向けて良い感じに走りたいと思っていました。
――今後の試合の予定について教えて下さい
しばらく無くて、7月あたりになると思います。
――最後に今後の意気込みをお願いします
ことしはインカレなどで活躍できるように頑張ります。
手嶋将大(スポ3=千葉・国分)
――今大会の位置付けは
ゴールデンウィークに福島で強化合宿をしましたのですが、調整して挑んだわけではなく、できる力でそのまま行こう、というかたちで今大会に挑みました。
――合宿ではどのようなことに重点をおいて練習されましたか
キャパシティーというか基礎をあげる、というのと、インカレに向けてのチームスプリントの合わせをしました。まだ新チームというか、3人が新しいメンバーなので、慣らしという感じです。インカレの場合は周長が違うので、このチームスプリントの周長は考えずに、インカレに合わせて練習をしました。
――1年生の印象はいかがですか
優勝した二人とも、真面目で向上心あります。特に短距離の佐藤くんは上を目指していて、ストイックなところがあるので、個人競技では負けているので刺激をもらっています。
――200メートルタイムトライアルの一位を振り返っていかがですか
オープンではなく本戦の方でギリギリ入賞入れるか入れないかなので、タイムも良くなかったですし、満足はしてないです。
――チームスプリントを振り返って
2、3走が力不足でした。はじめにゆっくり走り、2、3走やさしくというかたちで入っていって、それがある程度はまったので2位になったのだと思います。
――ケイリンの出来はいかがでしたか
ケイリンはまだあまり走っていないので、技術不足が結構見えたと思います。
――改善点はありましたか
体力をあげていかないと、個人戦、インカレに向けて戦えないかな、ということを痛感しました。
――具体的な改善点はありますか
一年生の健闘が一番の収穫だったかな、と思います。
――次戦への意気込みをお願いします
しばらくトラック主体で行くので、個人トラックで、種目は決まってないんですけれど、表彰台を目指しているので頑張っていきたいです。