昇格はないものの、収穫あり

自転車

 あいにくの雨の中、3月8日に全日本学生RCS最終戦・第9回明治神宮外苑学生クリテリウムが行われた。今年度最後となるこの試合に早大からは伊藤和輝主将(スポ2=東京・昭和一学園)を始めとする計11名がエントリー。グループ1に挑んだ金子智哉(商2=神奈川・相模原)がレースを引っ張り会場を沸かせる場面もあったが、力及ばず入賞は果たせなかった。他方、グループ2では伊藤、足立一真(文4=東京・早稲田)が4位に入る活躍を見せる。昇格者は現れなかったものの次年度に望みをつなぐ結果となった。

最終戦で健闘した伊藤主将

 悪天候ながら多くの観客が集まり、にわかに熱を帯びる明治神宮外苑。1.5kmという長さのコースで、曲がった後に逆コーナーが待っているなど難易度は高め。トラックが主戦場ながら今大会に参加した伊藤は8ラップで順位を競うグループ2Bのレースに出場。「前半に踏んでしまうといっぱいいっぱいになってしまう」と考え、後方からアタックのチャンスを狙う。全体的に落ち着いた展開であったが、残り周回数が少なくなってきた6周目、朝日大の選手が逃げた。プロトンはそれを容認せずクイックなレースへと切り替わる。集団の動きに呼応した伊藤はじりじりと順位を上げ、最後の直線でスプリント勝負に打って出る。惜しくも先頭集団に追い付くことはできず、4位でフィニッシュした。

逃げに追い付く金子

 「有力なチームが逃げたらそれに乗る」(金子)。走力の高い選手が集うため、20周と他グループに比べてラップ数が多いグループ1。序盤は逃げが出ては潰され、なかなか戦況の変わらない状態が続いたが、11周目に中大と法大の選手が飛び出す。集団は逃げを容認し先頭集団とその他に分かれた。読みが当たった金子は言葉通り徐々に前へ出て、アタックのチャンスをうかがう。その機会が訪れたのは16周目。「行けそうな気がした」(金子)。自分の感覚を信じ集団から抜け出た金子は先頭集団に加わる。このままいけるか――。そう思われたが、スタミナが持たず失速。最終順位15位と結果は奮わなかった。

 「徐々に上げていっているつもりではいるのですが、周りもレベルアップしているので、上げ足りない」と今季の自分自身を冷静に分析した伊藤。来季に向け課題はまだまだありそうだ。しかし、「クリテリウムの力もついていることを感じる1年」(金子)、「平たんでのレースのスピードを上げることができるようになってきた」(岩田宗也(スポ1=広島城北))などポジティブな声も多く、実りの年となった選手も少なくないことがうかがえる。新シーズンで成長を見せつけることができるのか。早大自転車部の新たな挑戦が始まる。

(記事 佐藤諒、写真 副島美沙子、井上莉沙)

結果

▽グループ3A

後藤 6位

▽グループ3B

森 DNF

▽グループ2A

足立 4位、井上 14位

▽グループ2B

伊藤主将 4位、八田 15位、手嶋 DNF

▽女子

合田 11位、中嶋 DNF

▽グループ1

金子 15位、塩田 24位、岩田 33位

コメント

伊藤和輝主将(スポ2=東京・昭和一学園)

――きょうはグループ2のレースとなりましたが、走った感想はいかがでしたか

まず前年度のレースが雪で中止になっていますので、3年生を含めて現役生は全員が初めて走るコースでした。ヘアピン(カーブ)があって、舗装路が一部悪い区間があり、そこがスタートフィニッシュラインということも考慮しました。初めてのレースという事で、序盤からコンディションが整っていた訳ではないです。

――コースの難易度に関してはどうでしたか

このコースは90度コーナーなどあり単純なコースではなくて、曲がった後に逆コーナーという、シンプルなのにそこまでシンプルではないという何とも難しいコースでした。どこのポジションにいれば前に上がりやすいか、といったコース特性がはっきりしているので、そういうところを攻略できればかなり走れるコースだと思いました。

――それに対して自身のレースの組み立て方はどのようなものを用意していたのでしょうか

やはりトラックの4km(インディヴィデュアル・パーシュート)もそうなんですが、前半に踏んでしまうといっぱいいっぱいになってしまうので、レースになるとスピードも変わりますし集団の動きもクイックになるので、様子見ということで数周は後ろにいました。

――グループ2ですが鹿屋体育大の選手など、力のある選手も参加していました。その点についてはいかがでしょうか

前半数周の間に逃げられてしまっては困るので、そこは願ってしかいなかったですが、後半は周回数を重ねるごとに徐々に徐々に上げていって、しっかり位置取りも考えて、集団の前方でどのような動きをしたら楽に走れるのかを考慮していました。グループ2で走ったとはいえクラス1の選手で、(全日本)RCSのポイントランキングには関係ないのですが、やはりレースを走る上では山本大喜(鹿屋体育大)と原田さん(裕成、鹿屋体育大)、青野(将大、法大)と人数の多い法大に注意して走っていました。

――後半集団の先頭に上がっていきましたが、人数のいた鹿屋体育大、法大に注意していたのですか

見てなかったことはないのですが、そこはレースなので想定内です。詳しくは分からないですが、誰がどのような動きをするかは予想しながら踏んだり休んだりと作戦を組み立てて走っていました。

――このレースがシーズン最終戦となります。今シーズンを振り返っていかがでしたか

昨年度の東京国体からあまり成績が伸びず、昨年7月にあった個人戦トラック(全日本学生選手権トラック)も4位に終わってしまいました。練習不足ということだったのですが、全日本大学対抗選手権(インカレ)もその調子もままいってしまい、いい結果が残せなかったです。後半、長崎国体では予期せぬ天候のハプニングで4kmの予選が減ってしまったのですが、そこで予選を上がることができ、あそこが少しポイントが切り替わった場所かなと個人的には思っています。あそこから徐々に上げていっているつもりではいるのですが、周りもレベルアップしているので、上げ足りないところがこういうところで4位という結果で終わってしまったのかなと思います。

――来シーズンに向けて、まず先日行われた合宿はいかがでしたか

1日雨で潰れてしまったのですが、天候に恵まれて最終日もしっかり乗る事ができたので、合宿全体としては目標の距離を達成する事ができていい合宿だったと思います。

――来シーズンの個人目標についてはいかがでしょうか

やはり大学生の頂点であるインカレで、きょねんは8位という結果だったのでことしは3位という結果を目指して、表彰台に乗れるようにことし1年頑張っていこうかと思います。

――チームの方針についてはどうでしょうか

3月に伊豆ベロドロームで合宿があるので、そこと鴨川での合宿を受けて4月にはどのような体制で行くかをしっかり決めていかないと絞った練習ができないので、目標を定めてやっていきたいです。

金子智哉(スポ2=神奈川・相模原)

――今日のレースを振り返って

途中ブリッジできて追いついていけて展開は良かったのですが圧倒的な力の差でその後ちぎれてしまいました。しかし、展開は良かったのであとは力を付けるだけだなって課題が見えました。

――その課題のために何をしようと考えていますか

いままでやって来た練習でここまで実力が付いてきたことを考えるとやり方は間違っていないと思うので、更にまた同じことを着実にやっていけたらなと思います。

――早いレースでしたがどのような展開を考えていましたか

鹿屋体育大中心で動いていくっていうのは予想していたので鹿屋とか有力なチームが逃げたらそれに乗る。後ろでは塩田(航平、スポ1=埼玉栄)と岩田(宗也、スポ1=広島城北)が残って、そっちはそっちでスプリントで塩田を上位に(送る)という作戦でした。

――今回は上手く立ち回れていたように見えましたが、感触などはいかがでしたか

飛び出したタイミングも良かったので。ただ追いつくのに足を使ったため追いついてから引けなくなってしまってそれで結局ちぎれたので、逃げに最初から乗れていないと厳しかったなって思います。

――飛び出しのタイミングっていうのはどのように見極めたのですか

なんでしょう…、なんか行けそうな気がしたんですよね(笑)。感覚でした。

――きょうで今シーズンが終わりますが振り返っていかがでしたか

今シーズンはRCSでは結局クラス1には上がれなかったのですが、結局100キロ越えのロードレースがメインでやっているので。クリテリウムの力もついていることを感じる1年でした。

――最後に合宿を最近したとうかがったのですがいかがでしたか

ほかの大学と比べてまだみんなが距離を乗れる強い身体ではなく、全体のレベルに合わせようとすると他大よりも練習の質が落ちてしまいます。他の大学がやっているようなきついトレーニングに耐えられるような身体を作らないといけないので、そこから始めないといけないなと思いました。

岩田宗也(スポ1=広島城北)

——クラス1で出場されましたが

もともと、伊藤さん(伊藤和輝)がエントリーでしたが、伊藤さんとしてはクラス2に出場したいという気持ちがあったみたいです。これはロード班の主将と全体の主将である金子さん(金子智哉)と伊藤さんが話し合って、

——きょうの役割は

主に塩田のサポートという役割でした。この大会は上位2名が大学対抗のポイントになるので、三人目の僕はアシストとしてチームを支えることが求められました。作戦としては、金子さんが逃げをして、僕が塩田の集団内の位置取りをするという作戦でした。

——その中で速いレース展開になりました

今までで一番ではないかというくらいの速さでした。僕も力不足で塩田を支えきれなかった部分があったので、そこは反省して次に生かしていきたいです。

——大きな集団で意識したことは

序盤からペースが上がっていたので、離されないということを意識していました。中盤からは後半の位置取りの準備として体力を温存して、ラスト5周目から塩田を後ろにつけて位置取りをして前に行かせようと考えていました。

——実際に後半は振り返っていかがでしたか

実際には残り2周で強豪校がアタックをかけてきて。法大などとの位置取りの勝負に負けてしまい、結果として塩田を一人で行かせてしまったことに関してはとても反省しています。

——要因は

集団内で上がっていくようにしていたせいで、強い選手たちが両サイドから飛び出してくるのに対応することができなかったのが要因です。

——RCS(全日本学生RCS)の今季を振り返ってみていかがでしたか

僕はクリテリウムなどの平たんな道でのレースはあまり得意ではないのですが、行田(全日本学生RCS埼玉クリテリウム行田ラウンド)や六大学(東京六大学対抗ロード)を通して、平たんでのレースのスピードを上げることができるようになってきたので良かったです。

——合宿が先日行われたそうですね

冬場だとどうしても乗る量が減ってしまうので、長距離陣は主に乗り込みを行いました。夏くらいの持久力が合宿によってついたかなと思います。

——すぐに来シーズンが始まりますが、ご自身の抱負をお聞かせください

これからは6月に行われる全日本(全日本学生選手権個人ロード)に向けて着実に力をつけていきたいです。全日本は出場権も獲得しなければいけないので、確実に獲得して大きな大会である全日本にまずは標準を合わせたいです。そして8月のインカレ(全日本大学対抗選手権)でチームに貢献できる走りをしたいと思います。