男子トラックはほろ苦い結果に

自転車

 いよいよ始まった大学自転車界最高峰の大会、全日本大学対抗選手権(インカレ)。先に3日間の日程でトラック種目が行われた。岩手合宿での乗り込みを経て『大学対抗得点総合3位』以上を掲げて乗り込んだが、男子は多数の種目で学連新記録が出るハイレベルな戦いで表彰台に上がることができず、上位校との差を痛感したほろ苦い結果に終わった。

 男子スプリントに出場したのは今季ここまで順調に結果を残してきた後藤悠(スポ1=岩手・紫波総合)。先月の全日本学生トラックでも同種目で3位入賞をしており、インカレでも好成績が期待された。予選では10秒792をマークし、全体4位で通過する。1/8決勝では藤根俊貴(順大)との同郷対決を制し、1/4決勝へと駒を進めた。ここで勝てば4位以内が確定するところだったが、相手に先行を許してしまう。後藤もすぐさま追撃を試みるが、あと少しのところで捉えることができなかった。今シーズンはスタミナを課題に挙げていた後藤だが、「まだ届かない」と悔しさをにじませる。脚力は本人も自信を持っているように十分大学トップレベルで通用しているが、今回はインカレに対する他大学の本気をまざまざと見せつけられた。

今シーズンは着実な成長を見せた後藤

 4kmチーム・パーシュート(団抜き)にはこれまでと同様に佐々木勇輔主将(教4=埼玉・早大本庄)、谷口雄太郎(スポ4=東京・昭和一学園)、伊藤和輝(スポ2=東京・昭和一学園)、そして塩田航平(スポ1=埼玉・栄北)の4人が挑んだ。佐々木は「最初に少し突っ込み過ぎた」と振り返ったが、5月に行われた東日本トラックと比べて格段に4人の走りの精度が向上。終わってみれば4分23秒696でこれまでの早大記録を塗り替える好走を見せた。しかし他大学が4分10秒台を連発する中で、早大の最終成績は全体7位に終わった。「失敗はほぼなかった」という会心のレースをもってしても超えられない高いカベを感じずにはいられなかった。

4kmチーム・パーシュートでは早大新記録を更新した

 結果を見るならば今回の男子トラックは振るわなかったが、一方で個々の競技において着実な成長もあった。今回出場を果たしたタンデム・スプリントでは7位、昨年は着外になってしまった団抜き、チーム・スプリントでも入賞にこぎつけた。選手たちの地力は決して劣っていないだけに、どうやって他大学との差を埋めていくか、今回の結果を生かしていかなければいけない。下級生主体のトラック班にはまだまだ伸びしろがある。「みんなが次につなげていかなければいけない」(谷口)と総括したように、次こそは一番高い表彰台に上がり、ワセダの校歌をとどろかせて欲しい。

(記事 高柳龍太郎、写真 副島美沙子、目良夕貴)

結果

▽男子

スプリント 後藤 7位

タンデム・スプリント 早大(森、手嶋) 8位

4kmインディヴィデュアル・パーシュート 伊藤 8位

ポイントレース 塩田 12位

ケイリン 森 予選3位 敗者復活戦3位

チーム・スプリント 早大(谷口、手嶋、後藤) 7位

4kmチーム・パーシュート 早大(佐々木主将、谷口、伊藤、塩田) 7位

1kmタイムトライアル 手嶋 13位、谷口 21位

総合成績

▽男子

トラック総合 9位

コメント

佐々木勇輔(教4=埼玉・早大本庄)

――団抜きはいかがでしたか

タイムは順当なタイムだったと思います。(タイムを)これ以上出すことはできないと思いますし、失敗はほぼ無かったと思うので。最初に少し突っ込み過ぎて僕の1回目がちょっと速かったですが、逆にあれより遅かったらタイムが出たかというとそれも難しいと思います。ほぼメンバーのベストだったと思います。

――今回のタイムは早大の新記録となりました

そうですね。ことし出せるベストのタイムは出せたと思います。

――他の大学との差はどこにあったのでしょうか

まず個々の能力ももちろん足りないと思いますし、それから練習回数であったり、種目を絞るということであったり、団抜きに絞ってもっと練習すべきということがうちは全然できていないので。それから機材の差だったり、条件の差は上位3チームとはあったかなと思います。逆に手の届く範囲で明大に負けたのは少し悔しいですね。明治もうちと同じように、他の種目がメインになっている人を集めた団抜きメンバーで、おそらく団抜きの練習だけに集中することはできなかったと思うので。そういう意味で、明大と2秒差で負けたということは悔しいです。見える範囲で悔しいというのはそこですね。

――トラック全体の結果を見て主将としていかがでしょうか

いまひとつだったなというのはあると思います。表彰台は合田(祐美子、スポ4=岡山・朝日塾中教校)さんのポイントレースだけで男子はありませんでした。表彰台を(1つか2つは欲しかったと思います。ただ、逆に言えばそれぞれ大きく落としたという訳でもないと思うので。特に4kmインディヴィデュアル・パーシュートとチーム・スプリントは7位なんですが、きょねんは失格と(隊列が)ばらけて着外でした。そういうところで一応順位が残ったのは良かったと思います。

――では期待が持てたとすればそういった部分でしょうか

期待が持てたというほどでもないんですが、チーム種目の2つは出すべき結果は出せたと思います。

――ポイントレースでは選手を直前まで悩んだということでしたが

僕で行っていれば、おそらく4位か5位という結果はついていたとは思います。けれどもそれで大学対抗得点が4点か5点入ったとして、どれだけのプラスがあるのかなと思いますし、僕はことしで終わりですし、ポイントレースは国体で走って最後だと思います。それを考えたら、やっぱり僕は塩田を出したこと自体は間違いではなかったと思っています。確かに思った順位は取ってくれなかったですけど、ここで一回そういうのを経験しておくのも大事ですし、インカレという大舞台がそれにふさわしいのかというのはみんな引っかかる部分だとは思うんですが、学校対抗の4、5点と、塩田という選手ひとりと、この部の先のことを考えたときに、間違えた選択では決して無かったと思います。先につながる選択だったと思います。塩田にこの経験は確実に生かして欲しいですし、落ち込み過ぎず、結果を出せなかったということすぐ受け止めて欲しいなと思います。

――最後にあすのロードへの意気込みを伺いたいと思います

OBの方もかなり期待して下さっているようなので、あんまり自分が自分がというのも無いんですが、やっぱり外から見れば僕がエースですし、作戦はいろいろありますが、気持ちとしては優勝するつもりで走ります。

――インカレにかける思いというのは感じますか

トラックに関しては、うちは上級生が少ないですよね。やっぱり下級生中心の布陣で、実力はそんなに劣っているとは思わないです。やっぱりその負けた部分というのは、気持ちの部分で他のチームの気持ちがインカレでは大きいということで、特に1年生は足りない部分だと思います。トラックの結果を見て感じるのはそういうことですね。4年生になっても分からないこともありますからね(笑)。分かってくれるといいなという感じですね。

谷口雄太郎(スポ4=東京・昭和一学園)

――最後のインカレはいかがでしたか

きのうで僕は実質最後でしたが、走った後はあまり実感が無く、終わってしまったんだな、としか思わなかったですね。宿舎に帰ってゆっくりしてから、ワセダで走るのが最後と思うと、ふと寂しくなりました。もしかしたら早慶戦などで走るかもしれませんが、ちゃんとした競技としてみんなと走るのが最後だと思うと寂しいです。あと、悔しい思いが残って終わってしまいました。

――悔しい思いというのは

きょねんのインカレでのタイムを更新するという目標を立てていたのですが、それができなかったのは悔いが残りますね。

――やはりきょねんのタイムは超えたかった

超えたかったですね。目標としていましたし、入賞もそういったタイムだったので。やはり出さなければ戦えませんでした。出せなかった自分が残念です。

――インカレ前の対談では調子が上がってきているとおっしゃっていましたが調子はいかがでしたか

その時までは調子が上がっていました。あの後に伊豆ベロドローム合宿に行ったら調子がとても悪くて。インカレに来てからも合宿の時ほど調子が上がらないという状態でした。自分のコンディション調整不足なのかわかりませんが、最後の最後で残念です。

――体調不良といったことはありましたか

体調が悪かった訳ではありませんでした。全体的に疲れが残ってしまったのか、いつもの自分ではない走りだったので。みんなで合わせなくてはいけない期間に不調になってしまったので、足を引っ張ってしまいましたし…。本当に自分ではないような感覚でした。すごく悔しいですし、申し訳なかったです。

――そういったことは始めての経験ですか

僕はあまり調子の波がないタイプなので、それなりに調子が悪くても走っていたのですが、今回は本当に走れませんでした。始めてのことでしたね。

――周りから声をかけられたりはしましたか

勇輔(佐々木主将)からは「不調ならしょうがないけど、いつものお前になれよ」と言われたんですけど。ベロドローム合宿の時ほどひどくはありませんでしたが、完全ではなかったので足を引っ張ってしまいました。

――悔いが残りますね

そうですね、悔しいですね。でも、設定タイムには届いているので、いまのワセダのベストだったのではないかなと思います。僕が最後離れてしまって、3人でゴールをしたので、そこは4人でゴールできたら一番良かったのではないかなとは思います。後輩に頼るかたちになってしまったので、申し訳ないですね。

――きょねんはどちらもアクシデントがあったということもありましたが、今回はどちらも7位入賞とポイントを獲得することができました

きょねんは両方アクシデントが発生してしまって、着外になってしまったので。それに比べたら良かったとは思いますが、やはり1位とのタイム差を考えると、ベロドロームという場所でのタイムの想定をして練習をするべきだったと本番になって、結果を見て思いました。

――他大のほうが調子を上げてきていたということでしょうか

代替わりをしてすぐにミーティングをして目標タイムを決めたのですが、団抜きでは4分20秒を切るというのが目標でした。そのくらいを出せば上位入賞できるだろうと思っていたのですが、多くの大学がそういったタイムで走ってきたので、そこからもう判断ミスだったのかなと思いました。きょう優勝した中大が(4分)10秒を出しましたし、そういった世界になっているんだなと。そこから差が出てしまったと感じました。自分たちの代はこれで終わりになりますが、来年、再来年とそういったタイムを目指していってほしいです。

――トラック班の主将として感じたことはありますか

監督もおっしゃっていましたが、ロードの選手の練習量が圧倒的に減ってしまいますし、合わせる時間も限られてしまうので、団抜きは団抜きで構成するべきだと思いました。そこを分けて練習できるくらいに一人一人の強化をするべきなのではないかなと。いまは入ってくる流れではあるので、一人一人の強化をしていけば、可能だと思うので。弱い選手が入っているわけではなく、みんなが良い所を持っています。僕はもう代替わりで終わってしまいますが、まだ卒業までありますし、伝えていければと思っています。

――トラックの全体の結果を見て

掲げていた目標に届かなかったので、『喝』ですね。もちろん自分にも喝です。後藤も頑張っていましたが、個人戦(全日本学生トラック)や東日本(東日本学生トラック)に比べるとみんなが調子を上げてきている中でのまれてしまい、あまり良い結果が残せなかったと思いますし。タンデム・スプリントも、ことしはレースに参加できたというのはありますが、競走競技で負けてしまう結果だったので。伊藤和輝(スポ2=東京・昭和一学園)も調子を上げていたとは思いますが、周りが速く、順位がそこそこになってしまいました。手嶋将大(スポ2=千葉・国分)は1kmタイムトライアルでベストは出しましたが、順位としては2秒、3秒と速いペースで走らないと入賞できませんでした。みんなが次につなげなければいけない大会でした。来年、再来年につなげなければいけない悔いの残る大会だったのではないかなと思います。

森浩輔(スポ2=神奈川・横浜)

――ケイリンのレースを振り返って

ケイリンは、予選は展開としては自分の思っていた通りで最後までいけたのですが、中大の宮本(隼輔)選手に完全に実力で劣ってしまっていて。それについていけなくて、最終的には自分の思っているレース展開ができず、敗れてしまいました。敗者復活戦も、タンデム・スプリントで疲れていたのもあったのかもしれないですけれど、スピードを持続させることができなかったので、とにかくケイリンは実力不足を実感しました。

――今季のケイリンの調子は

東日本(東日本学生トラック)と個人戦(全日本学生トラック)で走らせていただいたのですが、自分の思い描いているような走りができなかったので、申し訳ないなという気持ちです。

――タンデム・スプリント8位という結果はどのようにお考えですか

一応最低限の目標をそこに置いていたので、それはよかったと思うのですが、対戦(形式)はやはり走り慣れていないというところもあって、あまり納得できる結果ではなかったです。

――きょうのレースを振り返って

やはり怖さが出てしまったかなと思います。

――何に対する怖さでしょうか

やはり自分ひとりで走っている時の感覚と見えている視界やハンドル操作が異なってくるので、怖かったです。

――手嶋 (将大、スポ2=千葉・国分) 選手との連携や調整は

もともとは、手嶋(将大、スポ2=千葉・国分)が後ろで自分が前で昨年からことしの個人戦までやっていたのですが、入れ替えてやってみようとのことで、やってみるとタイムは結構でるようになったので、きょねんより少しは成長はあったと思います。

――レースプランとしてはどのようなものだったのでしょう

とりあえず先行しようという話で、先行するか、後ろにいて一気に前に出るという展開をしようと2人で話していたのですが、なかなかできずにこのような結果となってしまいました。

――トラックチーム全体の結果はどのようにお考えですか

僕はいろいろ言える立場ではないですけれど、結果としてはトラック総合ポイントで8点で、7位と8位しかとれなかったので、そこはあまり納得できるところではないかと思います。

――今後に向け、今大会で得た収穫や課題は何かありましたか

ケイリンは自分の実力不足を実感したので、走り方を含め、そういったところの力の無さを感じましたし、できるだけつめていきたいなと思いました。タンデム・スプリントは、もう少し走り慣れていきたいです。

後藤悠(スポ1=岩手・紫波総合)

――はじめてのインカレはいかがでしたか

いままで出てきた大会と違って、他の選手がかなり仕上げてきていて、全然通用しなかったなと思いました。(レース環境が)平等な条件だったので力の差があらわになったって感じですね。

――やはりインカレに照準を合わせているのを感じましたか

はい。あんなに(タイムが)出るとは思わなかったので。

――今季は予選で10秒7後半から10秒8をマークしています

そうですね。でももう一段速く行けると思っていました。それがちょっと残念だったんですが、タイムというよりも対戦で平面からのダッシュが他の選手より全然練習が足りていなくて、そこを改善していきたいです。

――1/8決勝で対戦した選手は同じ岩手県出身の選手でした

そうですね、高校の先輩でした。力の差がけっこうある人だったので、ずっと先行して、前に出させないという作戦で安全に行きました。

――スタミナや戦略面を課題に挙げていましたが、インカレではどのくらい克服できたでしょうか

思ったより全然克服できていなかったですね。岩手合宿の時にけっこうやったんですけど、やっぱり期間が短かったかなと思います。もう少し時間があったら上位の方に行けたかなと思います。

――決勝の試合を見て、上位陣に勝てるイメージを持てましたか

ダッシュ力では勝てるんですけど、そこからの持続力がまだ届かないと実感しますね。トップスピードの維持ができないなと思います。

――この後のシーズンはどういった面を意識していきますか

1kmを走れるように、いままでと練習も変えて行きたいと思いますね。

――ことしトラック班で積み上げたものは出せましたか

いや、あんまり出せなかったですね。チーム・スプリントもスタートでミスしてしまいましたし、ピストにあまり乗り込めていなかったかなと思います。

――チーム・スプリントはいかがでしたか

チーム・スプリントは7位だったんですが、スタートミスでもう少し上位を狙えたところで足を引っ張ってしまいました。

――3人の合わせは十分にできていたのですか

なんとか、といった感じですね。

――対談で「楽しみたいです」と言っていましたが、楽しめましたか

まあまあ楽しめましたね(笑)。