最終回となる第3回にお届けするのはロードを支柱である佐々木勇輔(教3=埼玉・早大本庄)と全日本学生ロードで初優勝を果たした合田祐美子(スポ3=岡山・朝日塾)の3年生コンビ。3年目を迎えた今、自身の成長、そして全日本大学対抗選手権(インカレ)への意気込みを語ってもらった。
※この取材は8月19日に行われたものです。
「3年目にやっと結果が出た」
ロードレース優勝を狙う佐々木
――まず今季を振り返って
佐々木 大事な試合で落車、パンクなどがあって、その影響で結果を残せていないなと思います。ただ、練習のモチベーションが落ちるわけではなく、伸び悩んでいるわけでもなくて、力が試合で出せていないというだけなので、毎回試合のたびに次こそは次こそはと思っています。
――白馬クリテリウム、お台場サイクルフェスティバル湾岸クリテリウムでは手ごたえのある走りができたか
佐々木 もともとクリテリウムが得意なのもあったんですけど、白馬、お台場はコンディションが悪くなくて、それなりに手ごたえをつかめたなと思います
――合田選手はいかがですか
合田 シーズンに入って、今月末にあるインカレが目標になっていたんですけど、試合ごとに波はありますが、自分のパフォーマンスレベルはそこに向けては順調に上げていけているかなと思います。
――全日本学生女子ロードで優勝。初のビックタイトルを手にしました
合田 最初の内は自分が鹿屋の選手と同じレベルで戦えるとは思っていなかったですし、ゴール勝負に持ち込めるとは思っていなかったです。自分が積極的に行くというよりは必死に付いていくというレースだったんですけど、初めてロードで優勝できたので、インカレではもっと積極的に、自分のやってきたことを信じて自分らしい走りができたら良いなと思っています。
――佐々木選手から見てこの合田選手の結果は
佐々木 僕も個人戦はシーズンで一番勝ちが狙えると思っていたので、自分も勝てればなと思っていました。あとロード班に付いてきて練習を結構一緒にしているので、強くなっているというのは分かっていたんですけど、結果に出て良かったです。でも最後の周にトップで戻ってきたときは驚きましたけど(笑)。応援しました。勝つかもなと思ったので、その時は気になって頂上(ゴール地点)まで行っちゃいました。
合田 唯一来てくれました(笑)。3年目にして初めてでした。
佐々木 でも行った時には本人が勝ったのか分かっていなくて。後に写真で見たらそんなに僅差ではないのに。たぶん…。
合田 意識が無かったんですね(笑)。
――佐々木選手はその後、日本選手権ロードへ出場されました
佐々木 12周の内7周を走ってその結果だけ見たらダメなのかなというかんじなんですけど、逆に順位をつけるなら26位くらいまで残れたので、それは悪くないんじゃないかなと思います。あれだけ上りしかないコース、きょねんまでの自分だったらまったく歯が立たず1、2周目とかで切れていたかもしれないなと思うと、今シーズン上りを改善するように練習してきた成果が出たかなと思います。ただ僕よりも長く走った学生は3人いるので、そこと比べると悔しいです。でもあのレースは厳しかったと言われるんですけど、時間が経って振り返ると、上りしかないせいで学生のような個人で参加している選手はいつもより有利だったんじゃないかなと思っていて。チームプレーができないんですよ、あのコース。強い選手が人数を揃えているところも登坂力がないと意味ないですし。
――8月、大町美麻ロードに出場しましたが、完走はできませんでした
佐々木 4周くらいは逃げに入っていて最初の方は結構良かったんですけど、熱中症のような状態になってしまってしまいました。それで体と気持ちが切れてしまいました。体調管理が甘かったかなと思います。自覚症状が無かったにしろそこはもう少し気を付けなくてはいけなかったなと思います。インカレに向けても教訓です。
――合田さんは今季、安定した成績を残せています
合田 まだトラックでは目標が出せていないんですけど、1、2年の頃と比べると試合に対してがちがちに緊張することもなくなったし、自分にプレッシャーをかけることもなくなりました。練習をしっかりやってきたから本番しっかり走れるようになったというか、そういうのが結果につながっているのかなと思います。
――トラックではなくロードで結果が出ていることについて
合田 周りからはトラックではなくロードと、佐々木さんからも言われるんですけど、高校で競技を初めてトラック中心でやって、好きになったのがバンクだったんですよ。でも大学入って1年目から自分が走ったことのない長距離を一緒に練習させてもらって結構ロードも楽しいなというか苦しいけど楽しいなという感覚が芽生えたりしてしました。どっちにしぼるというのは今の段階では無理なんですけど、今まで走ってきたことがこの3年目でやっと結果に出るというか、周りからも認めてもらえてそこは嬉しいですね。
――佐々木選手から見て、合田選手の成長は
佐々木 練習で1年生の時は付いて来られなくて合宿に行っても車に途中で乗っていたりとかそういう対応が必要だったんですけど、いまはロード班の練習のペース自体は上がっていると思うんですけど、ある程度付いてくることができています。一緒に練習できるレベルになっているのが、女子選手なので本当に信じられないくらいの成長だと思います。男子の1年生が離れるようなスピードで走っていてもついてくることがあるので強いなと思います。
――男子と一緒に練習するのはいかがですか
合田 1年目は自分的にやる気に満ちていたので苦しい場面の方が多かったんですけど、先輩の選手が強かったので刺激になっていました。自分の練習としては良かったんですけど、意識的には待ってもらうことが多くて迷惑じゃないかなと思うことがありましたが、そこは先輩方とか同級生に恵まれていたので、そういう練習があったおかげで今があるなと思いますね。
――ことしは女子部員、昨年マネージャーが入りましたが
合田 自分が1年の時に部に入った時じゃ、自分以外に女子がいるなんて想像もつかなかったですね。女子は女子で選手もいて会話があったり、試合とか合宿で部屋が一緒だとモチベーションアップになったりリラックスできたり良い影響になっているかなと思います。
――上級生という部類になって、後輩を指導する立場でもあります。その面で意識していること、心がけていることはありますか
佐々木 ちょっと考えさせてください(笑)。
合田 そんなに(笑)。スパッと言いそうなのに。
佐々木 結構大事な話題だから。自分が1年生の時、2年生の時どうされていたのか、なにが良かったのかっていうのは最近いつも考えていることなんです。学生の部活、指導者は上級生で完ぺきじゃない部分もあるので、変えていかなきゃいけないところ見習わないといけないところ両方あると思うんですよ。なので自分が1年生のときに先輩にしてもらってこれは良かったと思うことを思い出したりしてそれが後輩にできればと思っています。あとは、もちろん自分でも考えてそれ以上のことが後輩にできればと。きのうまでのロード合宿ははじめて自分より上の学年の選手がいない合宿で、メニューを立てたのは僕ですし練習を仕切っていたのは僕です。それはどうやったら後輩に良いのかを考えながらやっていたつもりなんですけど、どれだけできているのかわからないので不安ですね。後輩が結果を出してくれれば自分のやっていたことが間違っていなかったと思うので、少しでもそうしてもらえるように頑張ってもらえるようにしたいです。きついメニューを与えるのは簡単ですけどモチベーションを殺さないように練習を作るというのを考えてやっていきたいですし、きのうまでの合宿では自分でもやっていたつもりです。
合田 すごい…あとから言うのはあれなんですけど(笑)、全然そういう存在になれてないという、下級生の方がしっかりしているなという部分もたまにあったりするので。練習に関しては自分のことで精一杯な部分もあったりして、1年の女子も入ってきたんですけど周りを見るということはできていない部分が多いので、これから頑張っていきたいです。
「走りは良くなっている」
――個人の練習メニューを決めることに関して、何を意識していますか
佐々木 僕が特殊なんですけど、付属校の自転車部は一生懸命に競技をやる部活ではなかったので、その時からメニューは自分で考えていました。練習メニューを自分で決められるというのは他の部員がどう思っているかわからないんですけど、たぶんみんな長所だと思っているんじゃないかと思います。少なくとも僕は、長所だと思っています。メニューを決めるときには昨年の秋くらいからパワーメーターを使っていて、そこでそこまでと(メニュー)を決める基準が違ってきました。そこまでは経験だとか感覚とかを自分の中で使って、どうすれば次の試合に良いかを考えていたんですけど、それを入れてからは科学的なトレーニングよりの練習が多くなっています。強度と時間を細かく指定して走ったりとか、管理されたかんじで練習しているので体調の整えやすく成果も出ているので、効果は出ています。詳しくここで言うのは難しいですけど(笑)。昨年までの僕は自転車選手として前を引けない選手だったんですけど、1つ1つのレースの中で自分がレースを作っている時間が長くなっていると思うので、結果に出ていないのは良くないと思っているんですけど、走りは良くなっていると思います。
合田 参考にしていることは特にはないんですけど、高校は部ではなかったので父にやってもらっていました。大学1年目もコーチはいないし相談していたりして、いまも結構自分でメニューは立てるんですけど、たまにアドバイスはもらったりしています。基本的に大体次の試合まではどういうかんじにするかは考えるんですけど、体調管理が上手くいかなかったり、トレーニングとか休養とかのバランスが上手くいっていないことはあります。ただ1、2年に比べると自分自身のこととか、どういうことをすれば競技に良いかも、不十分なこともあるんですけどわかってきました。
――食事はどうしていますか
合田 私はゼミで栄養系に行ったんですけど、そこで結構スポーツ系の栄養学をやるのでただ食べるだけじゃなく内容を気にするようになりました。いままでは甘いものが好きでご飯と1:1くらいのレベルだったんですけど(笑)、体作りのためにはいけないなと思って。
佐々木 僕は普通の栄養学的には褒められた食事をしていないと思います。ロード選手のトレーニング量は他のスポーツと桁が違ったりするで、僕が1日使ってハードなトレーニングをすると消費するのが3500カロリーで、普通の人の2.5倍くらい食べなくてはいけないんですね。なので炭水化物の量が異常に多かったり、そういう食事をしなくてはいけないというのがあります。
――個人的なイメージですが、自転車選手はすごくパスタを食べていると
佐々木 他の人に聞いたらいいと思います、僕は毎晩のようにパスタを食べています(笑)。
――味を変えて
佐々木 味も変えないです。飽きるとかも感じないです。食べなきゃいけないというのが強くて。もともとたくさん食べるわけではないんですけど、食べなきゃ痩せて過ぎてしまうので。特にことしは上れるようにしなくてはいけないのがあって、昨年より1,2キロ落としているんですけど、でも落としすぎてはいけないので毎日2、3回体重は測っています。それで食べる量とかを1回1回判断しています。
「インカレでは出し切りたい」
個人ロードで優勝し、二冠がかかる合田
――インカレに向けてお伺いしていきます。合宿中、中心的に取り組んだことを教えてください。
佐々木 僕はトラックの合宿は行ってないというか、行かせないでもらいました。チームスプリントにも出るんですけど、ことしはロードで結果を出すというつもりでやってきているので、ロードに比重を置かせてもらっています。なのでロード合宿しか行ってません。ロード合宿では距離を伸ばしすぎずにしっかり強度を上げたりペースを上げる、レースを想定した練習をしました。ロード合宿に行った5人はみんな体調を崩さずに帰ってこれたと思いますし、かつ、しっかり追い込めたと思うので、悪く無い練習ができたんじゃないかなと思います。結果はインカレでロード班が走ってどれくらいの結果が出せるかでわかると思います。
合田 私は、トラック合宿だけでした。インカレでトラックでは個抜きを目標にしているのでその練習だったり、初めて女子の後輩もできてチーム競技もできるので、チームスプリントの練習をやったりしました。でも毎日同じだと体もそうですし、気持ち的にもあれなので日によってやること変えて、メリハリをつけて自分なりにできたかなとは思います。
――チームスプリントは初めてですか
合田 そうですね。正式に競技としてやるのは初めてです。
――後輩とチームを組むのはいかがですか
合田 今までほんと一人だったので。チームっていう響きから嬉しいです(笑)。
――男子のチームスプリントはいかがですか
佐々木 僕は3走なので。3走はとにかくついていって、最後全力で走ればいいだけなので、難しいのは1走2走のあたりです。1走2走がどれだけ練習してくれてるのかわからないんですけど、こっちにいる間に合わせた感じではそんなに悪くはないと思います。ただ、やっぱりきょねんまでの佐々木さん(龍、平25スポ卒=神奈川・横浜)と今井さん(一誠、平25社卒=東京・昭和一学園)がいたころと比べてしまえば良い順位は難しいんじゃないかなと思います。他の学校もしっかり短距離選手でそろえてくるはずですし、うちの部の人数的に手薄になってしまってるのは仕方ないんじゃないかなと思いますね。その分、チースプのメンバー三人とも他の種目もあるので、それぞれそっちで頑張るってことだと思います。
――インカレは他の大会と雰囲気というか何か違う
佐々木 僕は学生として自転車をやっている以上、インカレに重きを置いてインカレで結果を残すことを目標にして走ることはいいことだと思ってます。別に悪いことだとは思っていません。僕自身もそうしてますし、みんながそうしてくる大会であるということもわかってます。全員が必ず全力で走る試合というのはもちろん緊張もしますけど、そういう試合があるのはすごいいいことだと思うんですよね。他のスポーツがどうなのかあまり詳しくないですけど、やっぱり大学生の自転車競技の中でインカレが他の試合とちょっと格が違うという風に位置付けられてるのは、僕は好きですね。それを目標にして練習するっていうのは。ただ、自分は今まで2年間どっちかというと脚を引っ張るような結果しか出していないので、ことしこそはロードで結果を残したいですね。
合田 兄が陸上やっていたので、観客がいっぱいいるイメージを持ってたんですけど、自転車競技の普段の大会とかだとそんないないじゃないですか(笑)。でもやっぱりインカレになるとOBの方も来て下さるし、うちの両親も来てくれます。応援してくれる人がいる中で走れるので、いつも以上に力を発揮できて、トラックもそうなんですけど、ロードもゴール直前に声をかけてもらってゴールの勝負で力出し切れたりとか、そういう経験をこの2年間でもありました。そういう中で自分が走れるので、大きな大会だなと思うし、やっぱりこのインカレで出し切りたいっていう思いがあります。
――では今現在の自身の調子はいかがですか
佐々木 僕はロード選手としては成長出来ていると思っています。きょねんの自分よりはずっと走れてると思っていますが、ことしは試合の結果がいまいちついてきていないのが不安要素です。でも練習の中では結果が出せるんじゃないかなと思いながら練習ができているので、調子はいいはずです。あとはインカレのロード当日にいいコンディションでいられるかに気を配らなきゃなと思ってます。
――インカレのロードは日大と鹿屋体大が総合優勝争いでペースコントロールをすると思います
佐々木 ことしここまで結果が出てないのと、きょねんまでのインカレで結果が出せていないということがあるので。とにかくことしのインカレで絶対結果を出さなきゃいけないと思っています。100パーセントそのために走ります。なので、あまり序盤から暴れたりはしないつもりです。
――様子を見ながらという感じですか
佐々木 そうですね。きょねんのインカレも一昨年のインカレも、さらにその前も、序盤からいってる選手が勝っているインカレはないので。インカレで勝つためにはどういう走りをすればいいのかは誰もがわかってると思うんですけど、僕もそのように走ります。
――合田さんはいかがですか
合田 あと1週間ちょっとになったので、練習練習っていうよりは、体調管理、コンディションに気を付けながら、ベストな状態でその日を迎えられるようにしていくのが今一番ですね。
――前回のインカレロードでは途中で鹿屋体大から遅れてしまって、その後のグループになっていたと思います。今回また日体大と鹿屋体大の強い人たちがいる中でどう走っていきたいと思っていますか
合田 未だにロードレースの走り方が全然わかっていなくて、自分の中でどういうプランとかもなくて、多分ほんとに直感で走ってる感じなんですよ(笑)。思ったときに動く、みたいな感じで。一応イメージトレーニングというか、イメージ的にどういうゴールにしたいかっていうのは考えていはいるんです。でも最後に誰が残っているとかは大体わかっていて、そこでどういう風に走るかっていうのは、直前までは色々考えているんですけど、その時になったらもうその時かなというか。それが多分自分ですね。考えないっていうか、考えないっていったらちょっとあれなんですけど、任せて走る感じですかね。
――改めて、目標を教えてください
佐々木 インカレのロード優勝です。チースプはメンバーのベストを出せればいいと思っています。
合田 トラックだと3kmで4分台切るくらいで表彰台に上りたいです。ロードはコース的にも厳しいと思うんですけど、やるからには優勝目指して走り切りたいと思います。
――インカレに向けての意気込みを
佐々木 チームの為にも自分の為にもインカレのロードは優勝したいです。
合田 最高の状態で試合に臨んで、自分の悔いのないような走りをしたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 植田涼介、目良夕貴)
◆佐々木勇輔(ささき・ゆうすけ)
1992年(平4)10月11日生まれのO型。178センチ、64キロ。埼玉・早大本庄高出身。教育学部3年。専門はロード。インタビューの中で自分のマシンへの愛を語ってくれた佐々木選手。大学1年秋から乗っている今のバイクが見た目も性能も気に入っているそう。愛車と共にインカレロード優勝、期待しています!
◆合田祐美子(ごうだ・ゆみこ)
1992年(平4)11月15日生まれのA型。158センチ。岡山・朝日塾高出身。スポーツ科学部3年。専門はトラック中距離、ロード。今のマイブームを尋ねると「ほんと最近なんですけど」と前置きをして花火を見に行くことと答えた合田選手。夏といえば花火、ということで自宅近くの西武園で上がる花火を一人は気にせず、楽しんでいると笑顔で語ってくれました。