晴れやかな寒空の下、野球部、応援部の早大と慶大の現役そしてOB部員が古関裕而氏の故郷・福島に集結した。『紺碧の空』を始め、『ひかる青雲』慶大応援歌『我ぞ覇者』など様々な名応援歌を作曲した古関裕而氏の野球殿堂入りを記念して福島で開催された全早慶戦福島大会。青空から試合を見守る古関裕而氏にまるで吉報を届けるかのように、何度も『紺碧の空』を響かせる試合展開となった。
午前11時15分、エール交換と校旗掲揚が始まると全早慶戦の始まりを告げる。ひと月前神宮で熱戦を繰り広げた両校が健闘を称えあうべくエールを交換。エール交換後は応援部吹奏楽団と福島・桜の聖母学院高校の吹奏楽部が一塁側応援席から『オリンピックマーチ』など古関メロディを披露。最後には、『早慶讃歌』を披露し、試合開始を迎えた。
『早慶讃歌』を肩を組んで歌う応援部も「オール早稲田」だ
全早慶戦は現役部員とOB部員の混成チームによって結成される。現役部員と卒業生が交わったのは、グラウンドだけでない。応援席も「オール早稲田」だ。2回には、平井利彰氏(平28商卒)がこの試合OBとして初めて指揮台に上がった。
そして、4回。早稲田大学の指揮台に上がったのは葛西順一応援部部長(昭52教卒)。「22年部長を務めて初めて指揮台に上がった」と述べた葛西部長。「何としても勝ちたい」と勝利への思いを指揮台から観客に伝えた。そして、後を継ぐように井上皓介氏(令5法卒)が「葛西先生がこんな熱い気持ちを伝えてくれているんだ!この回点を取るしかないだろ!」と声を上げる。葛西部長と井上氏の熱い思いがグラウンドにも伝わったのか、この回『紺碧の空』が鳴りやまない展開となる。先頭打者が出塁すると『スパークリングマーチ』『コンバットマーチ』でチャンスを後押し、早大野球部OBである丸山壮史(令4スポ卒=現ENEOS)が適時打を放つとこの日初めての得点『紺碧』が福島の地に響き渡る。『紺碧の空』の演奏が終わっても、応援は終わらない。興奮冷めやらぬまま得点時の校歌が『紺碧の空』の後に演奏された。現役部員と卒業生が一斉に指揮台で肩を組み、校歌を熱唱。六大学野球秋季リーグ戦では見られなかったパターンであったが、『紺碧の空』の後に続く校歌で慶大を圧倒。連続適時打で何度も何度も部員とOBが肩を組んで『紺碧の空』と校歌を熱唱した。打者一巡の猛攻を野球部が見せて、応援部が『紺碧の空』を熱唱する様子はまさに古関裕而氏に『紺碧の空』をたくさん聞かせようとしているようであった。
現役部員とOB、OGが一斉に肩を組み『紺碧の空』を歌う
その後も続々と応援部OBが指揮台に上がり、エールを送る。6回に指揮台に上がった泉川創太氏(令2政経卒)が学生注目(学注)で声を上げたように、「OBならではの攻める応援」を各OBが披露した。8回には三宅風雅氏(令4社卒)が決死の応援を見せる。8回表こそ、4回以来の得点をあげて、『紺碧の空』と校歌を熱唱する一塁側応援席であったが、その裏、早大の投手陣がつかまる。慶大が早大を追いかけ、詰め寄られる展開であったが、三宅氏は動じずに「我々が圧倒しているんだ!」と鼓舞すると、「大きな声と拍手で圧倒するぞ」と呼びかけ『ダイナマイトマーチ』を披露。そんな中1点差まで追い上げられてしまう。それでも、「窮地になっても勝つのが早稲田だろ」と学注でエールを送る。全早大応援席の決死の応援も実り、同点に追いつかれずに8回を終える。そして2回から8回まで素晴らしい応援を見せてくれたOBから現役の永田新代表委員主将(教4=静岡・掛川西)にバトンタッチ。9回裏も先頭打者を四球で許し、逆転の流れを感じる展開であったが、永田が神宮球場さながらの迫力を見せる。「負ける気がしない!」と永田が学注で叫ぶと、『ダイナマイトマーチ』をグラウンドに送り続ける。ピンチこそ招いたが『ダイナマイトマーチ』が届き、逃げ切りに成功した全早大となった。
ピンチで声を張り上げる三宅氏
『ダイナマイトマーチ』のテクを振る永田
福島の地でゆかりの『紺碧の空』を数えきれないほど流し、これ以上ない福島凱旋となった早大応援部。OBと現役部員の混合チームがみられるというのが全早慶戦の見どころの一つであるがそれはグラウンドだけでなく、応援席も同じであった。永田が試合後、「先輩方の洗練された技術を感じた」と振り返ったように間違いなく現役部員にも刺激となった試合となった。現役部員とOB、OGが「一丸」となり応援を行い、応援の伝統を継承していく様子がそこにはあった。
(記事 橋本聖、写真 横山勝興)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません。
永田新代表委員主将(教4=静岡・掛川西)
――試合を終えた率直な感想を教えてください
やはり、慶應相手に久しぶりに勝つことができて嬉しかったです。
――福島に響き渡った『紺碧の空』はいかがでしたか
福島は古関先生の故郷ということもあって、古関先生には沢山お世話になっていて、恩返しをしたいと思っていたので、沢山『紺碧の空』を響かせることができてよかったです。
――OB、OGの方と作り上げた応援についてはいかがですか
OBの方々の学生注目を聞いていて、先輩方の洗練された技術を感じたので、後輩たちにとっても学びの多い応援であったのではないかと思います。
――久しぶりにお話しされたOBの方はいらっしゃいますか
井上(皓介氏、令5法卒)さんや木部(昌平氏、令5教卒)さんと社会人の話など他愛のない会話をさせていただきました。
――ビックイニングとなった4回の応援についてはいかがですか
4回は葛西先生(昭52教卒)が指揮台に上がられて、その回に6点入ったのは非常に大きいなと思います。1回で6点取ること自体最近なかったと思うので、気持ちの良い応援ができてとても嬉しかったです。
――得点『紺碧』の後に校歌が続いていましたね
やはり嬉しかったです。僕らの代は得点『紺碧』の後に校歌を流さなかったのですが、最後の全早慶戦だけは校歌を使おうということで。最後の最後で一番楽しく得点校歌を歌うことができてよかったです。
――ピンチで力強い『ダイナマイトマーチ』を披露されていましたが、ご自身の応援を振り返っていかがですか
神宮と変わらず、自分の持ち味を生かして、観客の方々の気持ちを引き出せる応援ができたのではないかと思います。
――福島の球場に足を運んでくださったお客様にメッセージをお願いします
応援ありがとうございました。ぜひ神宮球場にもお越しください。