第三回に登場するのは、野球部・菊池聡太主務(商4=福岡・東筑)と応援部・玉城大基学生誘導対策責任者(基理4=沖縄・昭和薬科大付)。別の部ではありながらも親交のある2人の対談を実施し、秋季リーグ戦の運営、集客活動について語っていただいた。
※この取材は10月19日に行われたものです。
早稲田キャンパスで知り合った2人は両部の最上級生に
出会いを語り合う菊池(左)と玉城
――自己紹介をお願いします
菊池 早稲田大学野球部主務の菊池聡太と申します。4年生で学部は商学部、福岡の東筑高校出身です。よろしくお願いします。
玉城 早稲田大学応援部で、4年生で、学生誘導対策責任者を務めております玉城大基です。学部は基幹理工学部に所属しております。よろしくお願いします。
――お互いに面識、交流はありましたか
玉城 俺最初声かけたんだっけ? 違う?
菊池 そうかも。確か赤嶺(大哉、教4=東京・早実)と一緒にいて。
玉城 飲み行ったんだっけ? 違う?
菊池 一番最初は違うかも。でも先にキャンパスの前で声かけてもらって。
玉城 戸山キャンパス? 東伏見キャンパス?
菊池 早稲田の本キャン(早稲田キャンパス)の前で。
玉城 俺声かけたんだっけ?
菊池 多分そう。
玉城 覚えてない(笑)。
菊池 大哉が確かいて。
玉城 野球部の赤嶺大哉選手というピッチャーがいて、彼は沖縄県出身なんですね。私も沖縄県出身で、赤嶺大哉の従兄弟が私中高6年間一緒で、結構仲が良いんですね。そういうつながりがあって、元々お互いを何となく知っている感じで、菊池がたまたま一緒に歩いていて、声をかけた感じです。
――お二人の役職での仕事を教えてください
菊池 野球部の主務はリーグ戦の運営だったり、OB関係のことだったり、あとはチームの方だと、練習のスケジュールをいつにするか相談して決めるというのと、オープン戦を組んだり審判を呼んだりしています。個人的に学年に2人マネジャーがいて、会計と広報でいるので、自分は会計の方を担当して、決算を報告会に向けて準備しています。
玉城 私は学生誘導対策責任者という長い役職名なのですが、元々はですね、学生誘導といって、神宮球場内大変混雑する早慶戦でその人員整理をしていたというのが元々の役職の役割なのですが、今はどちらかというと神宮球場にどうやって現役学生を動員するか、早稲田文化をどう現役学生に発信していくか、そこにフォーカスして活動しております。直近ですと早慶戦がございますので、早慶戦にどうやって現役学生を呼ぶか、現役学生に関わらず、色々な人をどう動員するかといったことを考えて実行しております。
リーグ戦の運営を、集客を語る
ベンチ内でスコアを書く菊池(左)と指揮台でセンターリーダーを務める玉城
――今年はどのような取り組みを行っていますか
玉城 今年やっていることとして、まず1つ大きなものは競技スポーツセンターと協力して観戦ツアーを行っています。体育各部の早慶戦に現役の学生を動員する取り組みを行っています。こちらは皆さんにWasedaメールで配信されていますので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。あともう1つやっていることとしましては、集客について考えるのですが、応援部の部員一人一人がそれぞれの知り合いを神宮球場に連れてくる、そういう意識付けだったり、それを実行に移させたりといったことに力を入れています。
菊池 野球部として行っていることは、TwitterやInstagramなどの公式SNSを使って、カウントダウンの動画を上げるなど、どちらかといえば今までのファンの方向けではあるかもしれませんが、リーグ戦の周知などを行っています。
――活動の中で心掛けていることはありますか
玉城 応援部は広報部門という専門の分野がいて、広報媒体などで集客などを行ったりしているのですが、私は現役の学生にいかに寄り添えるかどうかということを心掛けています。応援部という部活動に所属していながら、その他のコミュニティに所属している人たちも引き込むわけですから、やはりいろいろな人間関係とか価値観を大事にして、一つ一つの人間関係を大切にしていきたいと思っていますし、そのネットワークを広げていきたいと常に思っていますので、そういったことを意識して、日頃の部活動に取り組んでいます。
菊池 マネジャーとしては最終的に選手がより良い環境で練習ができるように、何もなくキャンプが終えられるようにつなげたいと思っていますが、結局野球が強くないと応援に来てもらえないと思っています。早慶戦とかで優勝決定戦とかになるとすごく観客が増えると思うので、最終的にはそこに持っていけるようにしたいです。結果はなかなか見えないですが…。
玉城 いやいや、菊池の努力は目に見えているよ!
菊池 ありがとうございます(笑)。今は結構いい感じになりつつあって。すぐには目に見えない部分での取り組みが多いですね。
――新型コロナウイルスなどによる制約で苦労したことはありますか
菊池 めちゃくちゃあります。
玉城 めちゃくちゃある菊池くんからで。
菊池 今年の1月に野球部でクラスターが起きて、その時に大学でも部活動のガイドラインができていなくて、ちょうど試験期間も被ってしまって。何人以上出たら部員全員自宅待機とかもなかったのですが、とりあえず全部止めて自宅待機にさせて、各学部と競スポなどいろんなところに連絡したのが今年一発目に大変なことでした。基本的にはコロナ関係ですが、部員1人が感染したら2、3人も芋づる式に感染していくので、そうならないように、濃厚接触者を出さないようにできることをしました。寮だったら、今まで4人1組でご飯を食べていたのを1人にするとか濃厚接触者を出さない取り組みを寮内とグラウンドでもやっていて、これが一番効果がありました。あと苦労したことは、春5位だったことがシンプルにきつくて、「ああ、5位か…」というところからの夏のキャンプがあって、今年は初めて南魚沼市に行きました。これは同期の岩井(寛汰副務、スポ4=大阪・早稲田摂陵)というマネジャーが頑張ってくれて、なんとか成功して今に至ります。
――リーグ戦関連で苦労したことはありますか
菊池 今年はちょっとルールが緩くなったんですよ。感染者が1人でも出たらだめとかではなくて。去年まではメンバーの中に1人でもいたら試合ができなかったんですけど、それが緩くなったおかげで少し楽になりました。運営面でも前までは選手と観客が接触OKで緩めなところもありました。それが、バスを降りて野球場に入るときや出る時に接触できなくなりました。選手にもベンチにいる時にマスクつけさせるとか、そういうところは大変だったと思います。
玉城 菊池は主務なので部活動全体の運営だったり大変さだと思うんですけど、私は学対責任者としての難しさをお話ししようと思います。やはり学生を神宮球場だったりその他の応援活動場所に呼ぶのが私の役割ですが、神宮球場以外だと観客の動員の制限があったりしました。あとは春だとわれわれは外野にいるのに内野に呼ぶ、観客はわれわれに呼ばれたのにわれわれは外野にいるという状況が発生したりとか。今でも集客活動こそできるのですが、応援方法が制限されたりしているので、観客をあおったりができない中で、人を呼ばなければいけない。でも人を呼んだら思うように応援できない。このもどかしさの中で私の役割を遂行していかなければいけないことが非常に難しかったです。あとは、神宮球場でのわれわれの在り方。昔はもう少し応援部が好き放題できた神宮球場だったのですが、やっぱりコロナ禍で神宮球場側や野球連盟、神宮球場を運営している委託業者などからいろいろと制限を受けてしまっているところで、われわれが今までやってきたやり方が制限されてしまっているので、部活動全体として見た時に寂しいと思いますね。
――2019年まで学生応援席があったと思うのですが、こちらの復活は先送りになりますか
玉城 まだ復活はしないです。
菊池 まだ復活しないですね。
――現在の集客状況についてはどのように感じていますか
玉城 だいぶ入っている印象ですね。
菊池 入っていますね。
玉城 コロナ禍で応援方法が制限されている中では、立教戦では1万人ちょっと入っていましたし。内野席でも応援部がいる側といない側で分かれていると思うんですけれども、応援部がいる側だけで概算ですけども結構入っている印象でしたね。なので、多くなっていると思います。
菊池 去年だと上限も5000人と決まっていて、それでも「人入っているな」という印象でした。今年は上限もなくなってパンパンに入っている感じです。
――コロナ以前に比べるとやはり来場者数は少なくなっていますか
菊池 応援席のエリアを囲っている分、そもそも入れる人数が少し少なくなっている状況ですね。前は応援部が通路を行き来できる分、前の方まで観客の方が入れたんですけども、そこが完全に応援部ゾーンとなっているのが惜しいなと感じます。
――今は応援席のエリアと客席のエリアが分かれている状況となっていますが、観客が前の方の座席まで着席できる元の形態に戻っていきたい気持ちは強いですか
玉城 それはその通りですね。
――今秋から内野応援席が復活して観客と応援部の距離が近くなりましたが、野球部として、応援部としてそれぞれどのように感じていますか
玉城 早稲田の応援部として、応援「団」じゃなくて応援「部」であることを大事にしているんですね。応援「団」というと自分たちの有志でやっているイメージを持っているのですが、応援「部」というと応援部員以外の学生を巻き込んで全体で大きな応援をつくりあげることをわれわれは大事にしています。昨シーズンまでは外野での応援だったので、なかなか難しい部分もありましたが、内野に戻ってくると(観客の方に)声を出したり手拍子をあおることはできないながらも、われわれの曲に合わせて自然と観客の方々が手拍子をしてくださったり盛り上がってくださったりするところを見ると、「少しずつ戻ってきてるな」という気持ちになります。
菊池 野球部から見ると、去年までの外野からの応援も良かったのですが、内野に近い方が球場との一体感は感じられますね。特に点が入った時の『紺碧の空』の盛り上がり方が外野の時とは違う感じがするので、選手にとっても後押しになっているなと感じます。
これからを見据えて
ポスターの写真を見せながら早慶戦への思いを語る玉城
――お2人とも間もなく引退を迎えますが、後輩に託したいことはコロナ以前の原型に戻すことになりますか
玉城 そうですね。元に戻していってほしい気がしますけど、(菊池に対して)どうですか?
菊池 今度の早慶戦のような内野と外野に応援部がいる形態に戻してほしいです。
玉城 われわれが1年生の時の早慶戦の盛り上がりを復活させてほしいです。多分われわれの先輩方の時代だともっと盛り上がっていたと思うので、六大学野球というものと応援というものを盛り上げて早稲田全体も盛り上げていってほしいなと思います。
菊池 全然関係ないですけど、学生注目を久々に近くで見たら結構面白いな思いました。今までは遠くで何を言っているか聞こえない状態だったんですけど、たまに応援部の方に行ってみたりするとやってたりするので。
玉城 何戦? 東大戦? 印象に残った学注(学生注目)は?
菊池 東大戦での玉城の「お母さんありがとうコール」ですね。母の日だっけ?
玉城 応援席に来てて。
菊池 そうだそうだ、お母さんが来てて。「あの人が母親です!」それで「お母さんコール」で、お母さんありがとうなんちゃらちゃらみたいな。
玉城 やってましたね。
菊池 あれは面白かったです。
玉城 (笑)。
――早慶戦がさらに盛り上がるために必要だと思っていることはありますか
玉城 神宮球場の応援席に来ることの価値をもっと上げたいです。昔の学生って変な話やることがないので、とりあえず「週末神宮球場行こうか」みたいな感じだったと思うんですけど、今はいろいろな楽しいものがあると思うんですね。野球応援はとても楽しいんですけど、それ以外にも魅力的なコンテンツがたくさんあるので、神宮球場の応援席に来ること自体にもっと価値をつけていく、そして学生がもっと来たいと思えるような空間をつくり上げていく必要があると思いますね。
――具体的な方法は思いついていますか
玉城 例えば、連盟などとの兼ね合いは抜きにして考えると、例えば早稲田の有名なパフォサー(パフォーマンスサークル)や有名なOBをたくさん呼んで何かやってもらったりすることですかね。コロナ禍だと難しいことは多くあると思うんですけども、将来的には応援部が持っている伝統ややり方は残しつつも、今の時代に合わせて適切な形で組み込んでいくことが早稲田を盛り上げることには必要なことだと思います。
――コロナ以前の早慶戦ではサークルの方をお呼びしていましたよね
玉城 そうですね、ああいったことを通常のリーグ戦でもできたらなと思います。ただ今はなかなか難しいですね。
――菊池さんは、早慶戦がさらに盛り上がるために必要だと思っていることはありますか
菊池 年配の方が来てくれるのもありがたいんですけど、早稲田の学生が来てくれるのが一番盛り上がると思うので、サークルがパフォーマンスしてほしいですね。今はバスを借りて早稲田キャンパスから神宮まで走らせて学生に簡単に来てもらおうという企画をやっていて、神宮に来る敷居はこれからも下げていきたいですね。
玉城 早慶戦と早稲田祭が同日開催なんですよね。どうしても対立構造になっちゃうんですよ。早慶戦に行くか、早稲田祭に行くか。でも早稲田文化を大いに楽しむ意味では、私としても早稲田祭に行ってほしくないという気持ちはないんですね。それはそれで早稲田を楽しんでいるので。早慶戦に行くことも早稲田文化なので、つなげたいなという思いがあって、3年前にもやっていたんですが今年度もバス企画をやるということで調整を進めていて、大隈講堂の前から神宮球場を往復して早稲田祭を楽しみつつ早慶戦に行くということができればいいなと思います。
――これまでの役職の活動で楽しかったことはありますか
菊池 自分はリーグ戦の運営が楽しかったですね。他校の主務やマネジャーとつながりが深くなって、そこで仲良くなったマネジャーのみんなと遊びに行ったりもしています。基本部内でやっていることは地味なことだったり陰でやることが多い中で神宮に行くと新たなつながりができたのが、すごく楽しかったです。
――運営として具体的にどのような活動をしていましたか
菊池 朝からの流れで言うと、まず球場に来て記者席などの準備をして、メーカーから来たボールの検査をして、あとは東京六大学野球のホームページで速報が上がっていると思うんですけど、それもマネジャーが打ち込んでいますね。試合前のノックのタイムキーパーや整列の指示もマネジャーが仕切っていますし、特に1試合目は開始時刻より前に始めてはいけないことになっているので、そこの時間管理もしています。
――玉城さんは、これまでの役職の活動で楽しかったことはありますか
玉城 部活動中もそれ以外でも、いろいろな方とのネットワークやつながりを個人的には大事にしたいと思って日々活動してきました。役職上必要なことではありますが、私個人としてもそういったつながりを、外部の方々との関わりを持っていくこと自体が楽しかったです。オフィシャルな活動ですと、野球部員と一緒に神宮に来たお客さんに対して声掛けをしていて、オフィシャルな活動以外ですと飲み会を開催したりしてネットワークを広げていく、それがやはり楽しかったですね。
――やりがいを感じるのも、人とのつながりを持つことになりますか
玉城 そうですね。
――菊池さんがやりがいを感じるのはどのような時ですか
菊池 仕事自体へのやりがいはあまり普段は感じることがないんですけど、もともと応援部の『紺碧の空』や応援が好きだったこともあって、リーグ戦で応援を聞いたり勝った時に『紺碧の空』を聞くと良かったなと思うことが多くて。それ以外だと自由にしているときにみんなと楽しくできるのがすごくやりがいになっています。
――早慶戦に向けて取り組んでいきたいことはありますか
玉城 いっぱいあります。残り2週間くらいしかないんですけど、やっぱり私はお客さんを見たいですね。体育各部であったり、サークルの皆さんに声掛けをしてお客さんを集める。そういったことをやっていきたいし、先ほど言ったように早稲田と神宮を結ぶバス企画もそうですし、役職の仕事に立ち返ってという点から言うと、人をたくさん明治神宮に呼んで早慶戦を盛り上げる。これに尽きますね。
菊池 まずは立教を応援することですね(笑)。早慶戦を優勝決定戦にすることと、そこに勝つためのコンディションを整えるということが一番ですね。
――早慶戦で観客の皆さんに協力をお願いしたいことはありますか
玉城 応援にもう少しのってほしいですね(笑)。われわれは神宮球場で「もっと声出せ」とか「もっと叩いてください」とも言えないので、みんなで盛り上がっていけたらより良い応援席になるのではないでしょうか。
菊池 とにかく応援に来てくださいという感じですね。より多くの人に来てもらってそれを選手の力に変えたいという思いがあるので、来てもらって、一挙手一投足に盛り上がってもらいたいですね。
――最後に観客の皆さんに向けてメッセージをお願いします。
菊池 春5位というのもあって応援してくれる皆さんにとっても残念に思われる方も多かったと思いますが、ここまで上位で来ていて早慶戦では感動を与えられるような試合をできるような準備をしているのでぜひ応援に来てください。
玉城 普段来ていただいている観客の方々に対して、いつも一緒に応援できることが本当に楽しいことなので、感謝の気持ちを伝えたいです。まだ来たことない学生さんたちに関しては、本当に神宮球場に来てほしいですね。日常生活でも感動するシーンがもちろんたくさんあると思うんですけど、神宮球場で味わう勝利、慶應を倒したときに味わう勝利、そしてみんなで歌う『紺碧の空』に勝るものはないんじゃないかなと思います。
菊池 ないです。
玉城 我々が早慶戦に向けてポスターを作成したんですけど、ポスターに「人生変えたきゃ神宮来い」って書いてあるんですね。これを早稲田に張りまくっているんですけど、人生変わるんじゃないですか、神宮来たら(笑)。(菊池に対して)変わります?
菊池 変わります(笑)。
玉城 そのくらい盛り上がっていただきたいですね。ぜひ神宮球場にいらしてください。そこで伝えたいことはすべて伝わると思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 藤田珠江、横松さくら、横山勝興、橋本聖)
早慶戦に向けた目標を書いていただきました! おのおのの目標を掲げ、早慶戦に挑みます!
◆菊池聡太(きくち・そうた)(※写真左)
2000(平12)年9月12日生まれ。福岡・東筑高出身。商学部4年。野球部所属。役職は主務。マイブームはゴルフの動画を見ることだそうです!
◆玉城大基(たまき・だいき)
2000(平12)年9月23日生まれ。沖縄・昭和薬科大付高出身。基幹理工学部4年。応援部所属。役職は学生誘導対策責任者。マイブームはないそうですが、今は部活のことを熱心に考えている時間が多いそうです!