応援部員たちが必ず通らなければならない厳しい新人時代。数多くの挫折を味わったり、辞めたくなったりすることもたくさんあるだろう。そんな新人たちに、人を応援することの楽しさを伝え、応援人生をかけがえのない思い出にするサポート役を担う新人監督たちを取材した。応援時の凛とした姿とは異なる、同期、そして部員や選手に向けられた笑顔には、愛が溢れていた。
応援部らしい凛々しい表情をしている3人
――今までの3年間を振り返ってみていかがですか。
西田 そうですね…。1年生の頃からいろいろ言っていくと、まずはしんどいなっていうのが1番あって。入ったときに「応援部楽しいよ」ってめちゃくちゃ言われて入った瞬間に「気合いがない」って怒られたので(笑)。
2年生になって、実際に新歓に携わるようになって、コロナでいろいろできなくなってしまった面もあるんですが、応援部の魅力を伝えていく上で、「応援部はやっぱ他の団体と違って、つらいことはいろいろあるけど、その上で達成感とかいろいろあるな」と考えるようになって。2年生になって、「まだまだ自分が甘いな」と考えることもあったし、逆に、下級生を指導していく中で、1年生と一緒に応援をしていく喜びが大きいなあと思って。それで3年生になって新人監督補佐を志望させていただくようになって、今年に新人監督になったのが自分の経緯です。
宇多村 えー、私は、今3年間を振り返ると、やっぱり1番に思い浮かぶのが同期の顔とか、同期と見た景色とかで。それはチアリーダーズの同期ももちろんそうなんですけど、リーダーと吹奏楽団の存在があって、今ここにいられてるなとすごく思っているので、本当に今年1年がすごく楽しみで。この3年間の苦楽を共にしてきて、やっと見られる四年生での景色というのが、みんなの個性が爆発してくれるんじゃないかと思って、本当に楽しみです。
西田 めっちゃ良いこと言うな(笑)。
一同 (笑)。
上西 私も同期の存在がすごく大きくて。私は、野球のルールも知らずに応援部に入ったんですが、最初は周りの圧が凄すぎて、全然応援も楽しめなくて。嫌なこともいっぱいあったんですが、そういうことも同期と言い合っているのが楽しかったり、上級生にいろいろ気にかけてもらったり、下級生が死ぬほど可愛かったり。そうですね。人が好きで、何とか3年間続けてこられたっていう感じです。
――お互いの印象はいかがですか。
西田 そうですね。またこの人たちかみたいな(笑)。昨年も同じメンバーだったので。でもこの人たちと一緒にやれるのは楽しいなあと思いましたね。
宇多村 (笑)。西田は本当に周りを巻き込むのが上手で。ついていこうと思えるし、自分が新人だったら多分入りたいだろうなって思うから、すごく尊敬している部分もある。上西はアイディア力がすごくあるので、本当に刺激をもらえるし、企画もすごくて。自分にないものを持ってるから、本当に尊敬しています。
上西 私もめちゃくちゃ尊敬してます(笑)。
一同 (笑)。
――応援部の1番の魅力は
西田 やっぱ人をめちゃくちゃ大切にするっていうのが、1番あって。 やっぱ愛だなって。愛って聞くと、恥ずかしいみたいなイメージがあると思うんですが、そんなことなくて。全力の愛を自分たちも注ごうと思っていて。1年生一人一人に対して、どう成長させていくかとか、厳しい中でも、どうやって乗り越えていくかなど、相手のことを1番考えているのが大きいと思っていて。だから、辞めるって言ったときも、そのまま辞めさせるのではなくて、相談に乗ったりとか、自分の場合は1年生の家まで行って、何が原因かとかをいろいろ話し合って。ただただ厳しくするだけだと全員辞めちゃうと思うんですが、自分も辞めたいと思ったときは同期の支えもありましたし、やっぱ上級生が絶対に見捨てないというか、そこも愛だなと思っていて。ただ厳しいのも愛だなと思っているので。
一同 (笑)。
――今までで1番辛かったときはいつですか
西田 やる気がないって怒られたときですかね(笑)。でもやっていく中で、上級生の姿を見て、やっぱ熱いなって。自分がかけてもらった言葉で1番嬉しかったのが、「お前らは全然ダメダメだけど、絶対に見捨てねえ」って言われたときに、アツって思って。やっぱただただ怒るだけじゃなくて、自分を見てくれているんだなって思ったらめちゃくちゃ嬉しくて。新歓のときもそうなんですが、早稲田って人数が多いので、たくさんいる中の1人になってしまいがちなんですが、応援部はそうじゃなくて、一人一人を見てくれているのが1番嬉しかったですね。
宇多村 私は、部員昇格が12月にあるんですが、新人の部員昇格前が1番きつくて。いろいろ覚えた時期ではあるんですが、やっぱり部員になるって大きく違うなあと思っていて。上級生から怒られることも多くなってきて、本当に憧れている上級生みたいになれるんだろうかっていうことも思ったので。どうしようみたいな葛藤は結構ありました。
上西 私は、最初は野球応援が本当に辛くて。いつも半泣きで野球応援をしていました(笑)。でも、1個下の後輩が一生懸命頑張っているのがすごく嬉しくて。私も頑張らなきゃなとすごく刺激をもらっていました。
笑い合う新人監督3人
――コロナ禍ではありますが、六大学との交流は考えていますか
西田 そうですね、めちゃくちゃ考えています。応援部の強みなので、逆に六大学で集まれるのは。新歓とかで「六大学交流あるよ」とか言っても、あまり想像つかないじゃないですか。でも全然そんなことなくて。自分は、他大と電話したりとか、LINEをしたりとか。よく会ったり食事をしたりもしますし。逆に新歓でそれをどうアピールしていくかっていうのを考えていて。他大学と一緒に動画を作ったりとか。昨年は、Instagramを見ればわかるんですけど、東大とか立教とかと一緒にコラボもしました。めちゃくちゃ仲良いですよ。(笑)。
宇多村 チアは、六大学の吹奏楽団とチアで1個のステージを作る合同演奏会っていうのがあって。そこがきっかけで仲良くなることが多くて、私も何校かの子たちとはやりとりをしたり、リーグ戦の前に対戦する相手の学校の子とコラボをしたりすることもあって。ただ、今の1個下とか2個下の子たちとは本当に交流がないので、そこをどうしていくかの話もしています。
上西 吹奏楽団も合同演奏会がきっかけになることが多いんですが、私たちは結局1回も出られなくて。だから、今までみたいな繋がりはあまりないかなって感じはするんですけど、例年は、楽器ごとでも、六大学の楽器ごとで集まってお食事会をしたりとか、新歓をやったりしていて。楽器ごとでは結構交流があるかなと思います。
西田 応援でも結構関わることが多くて。早慶戦だと野球のイメージが強いと思うんですが、例えばバレーの早慶戦とか、アメフトとか、そこで相手校とどんな応援をしていくかとか、どういうスケジューリングでいくかとか、そういうことで仲良くなることもあるんじゃないかと思います。リーダーの場合は、1個下の交流会がないと思って、新歓のときに、1年生が入ってきたらすぐ他大学の下級生と一緒にzoomを開いて、自己紹介をして、他大学との交流を作りました。
チューチュートレインのポーズをしている3人
――新入生が部活を続けたいと感じるように意識していることはありますか
西田 むずいなあ(笑)。勧誘をするときに、自分自身が一番応援部を楽しんでいる姿を見せたいなあと思っていて。そうですね、応援部は上下関係が厳しいとか、昭和みたいなイメージがやっぱりあるので、それをどう覆えせるかっていうのを1番考えていましたね。だから食事に行ったときも、応援部の話というよりは、日常生活の話をしたり、練習以外での同期でのエピソードを話したりして、まずは応援部のイメージを覆すところから始めていましたね。
宇多村 そうですね。応援部って聞くと、さっき西田が言っていたように硬いイメージもあるし、敷居が高いというか、入りづらいかなって。チアとかは特に、私自身が未経験だったのもあって、ちょっと怖いなという思いがあったので。絶対そういう風に感じさせないように、同じ目線に立って考えるっていうのはとても意識していたのと、やっぱり退部者も例年すごく多くて、どうしても辞めたいってなってしまうので、入部して1ヶ月ぐらいは、特によく話しかけたりとか、あまり辛いという風に感じさせないような距離感を意識していました。
――入部を考えている新入生の方にメッセージをお願いします
西田 応援部って、自分が応援するのももちろんそうなんだけど、その先に誰かが絶対いるから、その人のために、喜んだり泣いたりできる経験って、大学生の今しかできないんじゃないかなと思っていて。そこに関してはどの団体にも負けないかなと思うから、そういう経験をみんなにもしてほしいなと思うし、4年間で出会う人たちが本当にかけがえのないものになるので、ぜひその一員になってくれたらいいなあって思っています。
上西 吹奏楽をやっていた人って、日本の人口の25人に1人とかいるんですよ。だからめちゃくちゃ多いんですけど(笑)。でも、毎年応援部に入ってくれるのって毎年20人いれば万歳みたいな感じで。なんかもったいないなあと思うので。音で、誰かを応援できるってすごく尊いなあって。
一同 (笑)。
上西 だから、吹奏楽人口のみなさんは、ぜひここで泣いて笑って、感情豊かな4年間を一緒に過ごしたいなあって思っています。
(記事 平野里歩、写真 横山勝興)
◆ 西田健太朗(にしだ・けんたろう)
2000(平12)年2月21日生まれ。愛媛・愛光高等学校出身。教育学部4年。マイブームは銭湯に行くこと。お風呂上がりはフルーツ牛乳派とのこと。
◆ 上西杏奈(かみにし・あんな)
2001(平13)年1月13日生まれ。神奈川・山手学院出身。教育学部4年。マイブームはYouTubeで大食いの動画をひたすら見ること。
◆ 宇多村桃子(うたむら・ももこ)
2001(平13)年2月28日生まれ。兵庫・神戸高等学校出身。商学部4年。マイブームはInstagramで美味しそうな食べ放題のお店をひたすら保存すること。