秋の涼しさが心地いい夕方の東伏見にて、応援部リーダー、吹奏楽団、チアリーダーズの3パートが一堂に会する総合練習が行われた。東京六大学野球秋季リーグ戦、伝統の早慶戦が一週間後に迫る。優勝決定戦となるこの一戦になんとしても勝つ、と意気込むのは野球部のみならず応援部員も同じか、あるいはそれ以上である。応援の力で早稲田を勝たせる。それを体現してきた応援部の気合をこの総合練習に見た。
早稲田大学のスポーツの拠点、東伏見キャンパス。その体育館にて応援部の早慶戦に向けた総合練習が行われた。会場には裏の野球場から小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)も姿を見せた。正月の箱根駅伝応援以来大きな活動をすることがなかった応援部、合宿も中止となった為、ことしの新学期が始まってから3パート全員揃っての大規模な練習も行われてこなかった。この日も全員マスクを着用するなど感染症対策を怠ることなく練習に臨み、リーダー上級生が熱の入った下級生同士に離れるように指示を出す姿も見られた。吹奏楽団の音出しの確認とチアリーダーズ演技が終わると、全体集合となり宮川隼代表委員主将が前に出て部員一人ひとりと目を合わせ、部員はそれに応えるように視線で気合をぶつける。主将の言葉に全員分の返事が体育館にこだまする。その後は応援企画責任者である佐川太一(スポ4=栃木・大田原)の指揮で実際の明治神宮野球場(神宮球場)の応援席を想定した練習がスタートする。ことし新たに作成された『大校旗』と『新勁艸(けいそう)旗』の二本の校旗の入場が荘厳に執り行われると、早慶戦第一試合一回表、守備回の練習から始まる。部員を投手捕手に見立てて一球一球全力で声を出して応援する。守備回では応援曲を演奏することができないため、部員の声とハリセンを使ってマウンドまで応援を届ける。
拡声器で全体に指示を出す佐川
続く攻撃回は大久保友博学生誘導対策責任者(政経4=千葉南)の学生注目(学注)から始まった。例年ならば観客と一体となって応援するために、客席に向けて行う学注であるが、ことしは部員のみによる外野席での応援となったため、学注の言葉も部員に届けることになる。この日の大久保の学注は応援部がS N Sで実施した「写真で大応援企画」という早大ファンから神宮球場の写真を募集して作成されたモザイクアートを野球部に届けてきたエピソードであった。この企画、結果1000枚を超える写真が集まり、球場で声を出して応援できない早大ファンの想いを形にしたものであった。ドラフト一位指名を受けた早川隆久(スポ4=千葉・木更津総合)を絡めて応援席を盛り上げると、『早稲田健児』『スパークリングマーチ』そして『コンバットマーチ』などの応援曲を神宮球場さながらの迫力で行った。その後守備回、攻撃回の配置や3パートの動きを確認すると、メドレー練習に移る。
3パート全員と目を合わせる宮川
吹奏楽団の椅子を端に寄せ、リーダーとチアリーダーズが体育館いっぱいに広がって『コンバットマーチ』と『紺碧の空』をひたすら繰り返し練習するのがメドレー練習である。吹奏楽団がこの二曲の演奏、リーダー下級生は曲に合わせて手を叩く「屏風拍手」を、チアリーダーズはダンスを約30分間一度も止まることなく行った。リーダー下級生には谷下豪リーダー練習責任者(政経4=東京・早大学院)の鋭い目が光り、この夏入部したばかりの新人も必死に食らいつく。練習開始から約4時間が経過した時、『得点校歌』(得点した時に入るテンポのはやい校歌)を最後に長い練習は終了となった。早慶戦前に3パート揃って練習するのはこの日が最初で最後。再び全員が集合し主将の宮川が全員と目を合わせる。緊張感のある時間が1分間ほど流れたのち「絶対優勝!」「解散!」。その言葉を放った宮川の背中は厳しくも愛のある、最後の戦いに挑む主将の姿であった。
(記事・写真 市原健 取材 佐藤桃子、吉田美結)
コメント
宮川隼代表委員主将(人4=千葉・稲毛)
――今日の練習で主将として全体に求めていたものは何ですか
夏合宿や春の早慶戦が無く、バンドとチアの新人が応援部らしい練習を忘れかけていました。リーダーは結構仕上げてきたのですが、バンドとチアも巻き込んだ練習を行いたかったですね。3パート、四学年が一体となっていくぞという雰囲気を出したかったです。
――新人監督としてリーダー新人の動きはどうでしたか
まだまだですね。心の奥底から「お前ら頑張った」と言えるような、より気迫が見える動きをあと一週間で何とか出してほしいですね。
――新人にとっては今回の早慶戦が全競技、活動の中で初めての早慶戦ですが、新人たちにどんな姿を見せてほしいですか
リーダー新人が各パートや二年生、三年生、四年生に対して影響を与えるような、気迫せまるものを球場についてから見せてほしいですね。バンドとチアに関してはまだ応援部らしいことが出来ていないので、早慶戦で応援部らしさを感じてもらいたい。次の世代にまで応援部の魂を引き継いでいってもらえるような応援をしてほしいです。
――早慶戦に向けて意気込みをお願いします
優勝しかないと思うので、三パート、四学年全員で優勝を勝ち取りに行きたい。この記事を見ていただいている方にも応援していただきたいです。
佐川太一連盟常任委員兼広報責任者(スポ4=栃木・大田原)
――今日の練習で目標としていたところはどんなところですか
目標は二つあって、最初の神宮想定のところでやったのは、動きの確認みたいな、初めて全部員でできるんで、コンバットの入りで何人入るんだよとか、最後だったら、リーダー全員とチア全員で入って、仮に得点入ったときはチアの時だと紺碧に入れないので、とかそういう諸々の確認をやってました。もう一つが最後のやつで、早慶戦に向けて気持ちを一つにするじゃないですけど、俺たちの応援で勝たせるんだみたいなところを3パートで作れればなと思ってやってました。
――その中で達成できたこととできなかったことは何ですか
難しいな、僕自身一生懸命自分のことになっちゃって全体をあんまり見れてないところもあるんですけど、確認みたいなところは結構疑問点じゃないですけど改善点がいっぱい出てきたんでやっといて良かったなというところで、ある程度確認の部分は達成できたかなと思っています。最後の3パートのところは、やっぱり最初が確認みたいな、ちょっとふわっと緩い感じで入っちゃったんで、いくぞという感じにはなってなくて、まだまだなのかなと思いつつ、そこは一週間気持ちを、早慶戦本番になったら高まってくると思うのでそれを一回にすればいいかなと思ってるんで、そこの積み上げをこの一週間でやっていきたいと思っています。
――一週間で課題を仕上げていかれると思うんですけど、具体的に練習はあとどれくらいできますか
リーダーの練習がまだ何回かできるので、そこでとにかくリーダーが肝だと思ってるんで。リーダーで盛り上げるぞっていうところを作って気持ち一つでいければいいかなと思っています。確認の部分はこれからみんなで話して詰めていければ、今日の疑問点をつぶして良い応援になるんじゃないかなと思います。
――具体的に下級生にどのような言葉をかけられますか
体調管理を一番頑張ってほしいなと思っていて、そもそも、やるべきことはしっかりやってあとは出すだけなんで120%の力を出せるように体調管理とかそういう本当にしょうもないことだと思うんですけど、あとは今週末の練習をちゃんとやりきって、やりきった状態で臨む。一回表の応援席につくときと違うときの顔つきって全然違うと思うんで俺らは全部やることやってやり残したことはないぞという状態で立つつもりだと思ってるんでそういう言葉をかけたいと思います。
――早慶戦への意気込みをお願いします
もうこんなチャンスは四年間でもないし、最後の最後野球部の頑張りでここまで連れてきてもらったんで最後応援部で後押しして優勝できるように頑張りたいです。
井田隆之応援企画責任者(政経4=東京・早大学院)
――今日の練習で目標としていたところを教えてください
早慶戦まであと一週間ということでこれが本当に最後の練習になるので、この中で楽団に限らずコロナによる人数制限とかで平日に練習できないというのがあって、やっぱり今日この一発でどうにかして完成させたいっていうような想いで臨んでいました。なのでまず3パートとしての団結感であったり、あとは企画などで変更している部分があるのでそういう部分がしっかりできているかという二つの意味合いかな、って思います。
――どれぐらい達成できたと思われますか
そうですね。二つあるうちの細かい確認をする、という部分では正直まだまだミスも部員たちの中では多くて、例えば慶應と合わせて一緒に演奏するなどの企画も吹奏楽団ではやってるんですけど、そういうところはまだまだなのでどうにかしてこれから詰めていかなければな、と思っているのでその点はまだまだですね。ただ3パート、部員内で一致団結する、という点に関してはコロナの影響でずっと3パートで活動することができていなかった中、やっとこういった形でしっかりと部員だけで練習することができたのでその点では大きく進歩したかな、と思います。
――早慶戦までの一週間でそれらの課題点をどのように仕上げていきますか
今晩もzoomで打ち合わせがあったり、とずっと詰めていく予定なんですけど、コロナもあってこの後練習がないので、とにかく個人個人にやるべきことを指示しながら、3年生にも頑張ってもらってどうにかして完成させたいな、って思っています。
――ご自身でも太鼓を叩かれていました
リーダーが全員でコンバットマーチを披露する時にその関係で叩くこともあるのですが、やはり楽器なので楽団と一緒に素晴らしい演奏を届けるためにも心を入れて叩いています。
――最後に、早慶戦への意気込みをお願いします。
優勝あるのみだと思っています。4年間優勝できていないので。一個上が優勝できずに悔しい面もあったかな、と思うので自分たちはコロナの中で試合ができていること自体も嬉しいのですが、ここで優勝して来年以降の希望にもなればいいかな、と思います。
吉野絵里菜応援企画責任者(政経4=米国・ウォルトウィットマン)
――きょうの練習で目標としていたところは
本年度は全員で応援することができていなくて、球場でも100人の制限の中で毎回やっていました。通常であれば秋リーグ(東京六大学秋季リーグ戦)の始めは合宿があって、全員で総合練習のようなものを行って、秋リーグ始めるぞ、となります。しかし、そういうものもできず、きょうは初めて3パート全員で行うので、まずは一体感などを生むこと。あとは、外野でも早慶戦応援にむけて、それを完璧にできるようにもろもろの確認をすること。最後に長いメドレーをやったのですが、それは4学年で気持ちを一つにして絶対に今年優勝するぞという4年生の思いを伝えるというのもあったのですが、下級生の気持ちも受け取るというそういう場を作ることが目的でした。
――目標はどれくらい達成できましたか
個人的にはもうちょっとできたなと反省している点があるので80%くらいです。全体としては下級生の表情など見て思いが伝わっているのだなという部分もあったので、100%でできたのではないかと思います。
――反省している点とは具体的にどこですか
早慶戦で何ができるのか決まるのがかなり直前で、計画自体も時間がない中詰めていたので、抜け目があったところは事前に詰めれたなと、自分の中で責任者として事前にみれたなというふうに思います。それに加えて自分も途中でバテてしまった時もあったので、それは状況に甘えずもうちょっと全力でできたのではないかと思っています。
――きょうの練習の中で最も大切にしていたところは何ですか
部員が一人もおいていかれないようにすることです。席が横に広がっていると端っこの方はあまり元気がないなどが起きてしまうので、試合中でも応援部がひとつの団体としてまとまれるように端っこの子などに声をかけにいったりして、全員が同じ方向を見ているようにすることを気をつけました。
――下級生に対してどんな言葉をかけましたか
試合を想定した練習なので、具体的な言葉をかけるのが自分の中で好きではなくて、姿で見せるということを心掛けています。自分が行って大きな声を出して、誰よりも大きい声でやることで下級生を奮い立たせるというか、間接的に働きかけをします。
――早慶戦までの1週間、どのように仕上げますか
きょう見つかった課題点を必ず潰すこと、早慶戦までに修正することに加えて、そういった業務的な面だけに追われずに、気持ちの面で全員がまとまれるようにしていきたいなと思っています。
――拡声器でお声かけしていましたが、どんなことをお話していましたか
全体に向けた修正点の発信などが主です。
――最後に、早慶戦への意気込みをお聞かせください
私たちの代は新人から一度も優勝したことがなくて、一個上も一度も優勝したことがないということで、優勝するぞという思いをずっと持って4年間過ごしてきました。この4年生の秋(秋季リーグ戦)、春(春季リーグ戦)はできなかった応援が秋はできるようになって、野球部もいい調子で、これは優勝するしかないと思っています。新人は9月から入ったばかりでまだ半年も経っていませんが、そういった1年生たちもまとまって全員で、まずは土曜日に勝たないと優勝の道がないので、土曜日勝ちたいなと思っています。