東京箱根間往復大学駅伝(箱根)。ことしで92回目を数える新春の一大イベントだ。沿道からの大きな声援を受けて各大学のランナーが217.1キロメートルを駆け抜けた。その往復路ともにスタートとゴールでランナーを送り迎えた応援部。そして応援部の送り迎えをした自動車部。ことしも応援部と自動車部の連携に密着した。いまここに、もうひとつの箱根路がある。
例年、雪の残る箱根の山を走行していた自動車部。ことしは暖冬のため雪の心配なく安全に走行できる見込みだった。実際に路面コンディションは良好。だが、かえってそれが車での観客を招き、応援部を乗せたマイクロバスは渋滞に巻き込まれてしまう。昨年は交通規制にかかる前に目的地に無事到着できたが、ことしは箱根の山中でストップ。応援部一同は箱根の山を徒歩で移動することとなった。晴れていても良いとは限らない。「(昨年は)交通規制にかからなかった」と自動車部の前主将・稲荷経太(人4=岡山白陵)は悔しさをのぞかせた。しかし、それ以降は本来の安定感でトラブルなく運行。2日間、安全に応援部を送り届けた。
渋滞に巻き込まれたマイクロバス
到着した神奈川県立恩賜箱根公園前にはすでに他大学の応援が響いていた。「準備をして臨んでいました」(野澤征嵩副将兼吹奏楽団責任者、商3=千葉・成田)。4年生が抜けた新体制での初めての応援。規模が小さくなった上に慣れない土地での演奏であったが、先輩から引き継がれた寒さの対策で他大に負けない演奏をした。
会場を盛り上げるわーおくん
翌日午前5時30分、「いただきます」が食堂にこだまする。まだ日も昇らないうちからの朝食。朝早くからの応援にスタミナを付けて準備をする。冷える箱根の朝にいま人気沸騰中のわーおくんが登場。早大の応援に詰め掛けた観客と一緒にラジオ体操を踊り、箱根の道中を温めた。さらに大手町に戻ってからもわーおくんの活躍は止まらない。いま話題の『STAR WARS』や、申年(さるどし)にちなんだ企画で会場はヒートアップ。中でもお年玉企画では、クイズ形式で早大選手のサイン入りシャツをプレゼント。観客との交流も欠かさない。その他にもリーダー陣の企画や定番の『コンバットマーチ』、『Viva Waseda』、『紺碧の空』で応援場所は静まることなく、タスキをつないだランナーたちを迎えた。
大手町に戻って来たランナーを迎えた
小さなアクシデントはあったものの、無事箱根での応援を終えた両部。「機会があればまた来たいです」とこれからも箱根に貢献したい気持ちを見せる稲荷。「リーダー、吹奏楽団、チアリーダーズ、3パート一丸となり、皆様と共に戦い、共に喜ぶことのできる応援を作り上げていきます。」と鈴木崇正代表委員主将(教3=静岡・韮山)は意気込む。それぞれの舞台で、それぞれの道はこれからも長く続いていく。
(記事、写真 豊田光司)
コメント
応援部
鈴木崇正代表委員主将(教3=静岡・韮山)
――新体制初の応援でしたが、どのような意気込みや目標で臨まれましたか
長い歴史と伝統の中で引き継がれてきたものを受け継いだ上で、平成28年度としての自分たちの色を出していけるように意識していました。そして、代表委員主将として部の代表としての責任感を強く持つようにして臨みました。
――その意気込みや目標は実際のパフォーマンスでは発揮できましたか
本年度になってからの新たな応援の取り組みをでき、平成28年度としての色を多少は出せていたのではないかと思います。
――新体制での応援を終えていまのお気持ちは
ホッとしているというのが正直な気持ちです。しかし、まだまだであると感じた部分も多々ありましたので、これからもっともっと精進して参りたいです。
――収穫や課題はどこにあると感じますか
各々が自分のことしか見えていなく、全員で1つのものを作り上げているという意識が足りないと感じました。一丸となってやっていくという意識を全員が持てるようにしていきたいです。
――最後の箱根になりましたが、いかがでしたか
あっという間であったという印象です。1年生の頃から応援していた箱根駅伝がもう今回で最後だったのかと思うと寂しいです。当然ですけど、これからは全ての活動が応援部として最後のものになるので、1つ1つの活動を悔いの残らない様に取り組んで参りたいです。
――箱根での思い出などありますか
箱根の朝の応援は毎年とにかく寒いという印象があったのですが、今年は寒さが例年に比べると和らいでいたので、恵まれていたと感じました。特に極寒の中で思い切り拍手をしなければならないリーダー下級生は幸せだったのかなと。
――ことし1年間どのような応援部にしていきますか
本年度は、部員一人ひとりが早稲田大学応援部を担う者として考え、応援で多くの人々を感動させ、勇気付けることを目標としております。長い歴史と伝統の中で引き継がれてきた情熱を心に、誇りを持って活動していきたいです。リーダー、吹奏楽団、チアリーダーズ、3パート一丸となり、皆様と共に戦い、共に喜ぶことのできる応援を作り上げていきます。
野澤征嵩副将兼吹奏楽団責任者(商3=千葉・成田)
――新体制で初の応援でしたが、どういう意気込みで箱根に臨みましたか
ついこの前まで一緒に活動していた上の代の方々が抜けて、規模としても小さくなってしまった中で、吹奏楽団として音量を意識しました。他の大学の応援団もいる中で、音で選手に応援している気持ちを伝えられるかということを目標にしながら、総合練習を12月の23日に行って、現体制でできることは何か。規模の大きさなどを再確認しながらきのうきょうでやってきました。
――実際に応援してみていかがでしたか
代が替わってすぐということもあって、慌しくなってしまった部分もあるのですが、自分たちのできる最低限のことは必ずできるように、音楽のほうでタイミングがずれて応援に影響が出るということはなかったので、そういう部分はしっかりできたのかなと思います。
――箱根に着いてから何度も導入の練習をしていましたが
例年、とても寒いと聞いていて楽器もうまく動かないということが想定されていたの、きちんと準備をして臨んでいました。地理的な問題でのやり直しはあったのですが、楽器のコンディションに関しては例年のことを踏まえて、うまくできたのかなと思います。
――先輩から受け継がれたものが上手く生かせた
はい。特に2日の応援よりも3日の方が音としてもまとまっていたので、1回1回クオリティーを上げることはできたと思います。
――朝早くからの応援はあまりないことかと思いますが
他にも朝早くや少人数のものがあるので今回の経験を他の応援にも生かしていけたらと思います。
――ことしどのような演奏をしていきたいですか
まずは新入生が入ってくるまでの3か月間で自分たちの個人技やまとまりを強くできるか。そのまとまりや個人技の高さに新入生がどれだけ魅力を感じて入ってくるかで団体の規模も変わってくるので、いま自分たちでできることを最大限磨いて新入生を迎えて新しい色を出していけたらと思います。
木元美咲副将兼チアリーダーズ責任者(政経3=埼玉・早大本庄)
――チアリーダー陣は今回どういう意気込みで臨みましたか
今回は新体制になってから初めての応援だったので、この代でいいスタートが切れるように意識して演技しました。
――新体制での応援までにどのような準備をしてきましたか
技術的な面もそうですが、新体制になってからどのようなチアリーダーを目指すのか、どういったものをつくるのかということを3学年で話し合って、みんなの心を一つにすることから臨みました。
――そういった部分は応援で生かせましたか
はい、アイコンタクトなどができました。選手を応援するためには、中でのチーム力も必要だと思うので、アイコンタクトができたことに意味はあったと思います。
――心配していた部分はありましたか
一番上の学年が抜けたことで全体的に技術力が落ちるので、そこを技術で見せるよりも選手やお客さんにきれいなものを見せられるように、止めや見せ方、伝え方を意識しました。
――初めての箱根だったと思いますがいかがでしたか
すごく早稲田大学の応援全てをほぼ一学年で背負っていくので、高揚感もありましたが、すごく責任感を感じました。
――ことし一年間どのようなチアをつくっていきますか
ことし私たちの目標が「ALL FOR ALL」という目標を掲げていて、選手を応援するためにはチーム力が必要なので、中でいろいろな活動があるのですが、いつも一つや全員という意識を持ってやっていきたいと思います。
自動車部
稲荷経太前主将(人4=岡山白陵)
――二日間の運行はいかがでしたか
普段の鈴鹿とか広島とか新潟より近いので体力的には大丈夫でした。ただ、バスの中で応援部の皆さんが静かにしていたり、箱根駅伝の実況が流れていたりで普段の運転状況じゃなかったので少し窮屈でした(笑)。
――往路では渋滞に巻き込まれましたが要因は
ことしは暖冬で観客の方々が多かったことが要因だと思います。きょねんは雪が降っていたので観客が少なくて交通規制にかからなかったんですけどね。
――最後の箱根ですが、思い出はありますか
最後なの(笑)?あと2年学生やってられるから機会があればまた行きたいです。思い出は2年生のころ2日目の朝に寝坊しましたね(笑)。その反省を生かして次からはしっかりできたので良かったです。
――後輩に伝えたいことは
練習して、整備もしっかりして、是非全国制覇を達成してください。悔いのないように全てを部に捧げて欲しいです。
――自身のことしの抱負は
そろそろ真面目になります。