『週末』の原点、ここにあり

応援

 週末にワセダの春季リーグ戦開幕を控えたこの日、競技スポーツセンターで球場想定練習が行われた。どのようにしたら観客にも声を出してもらえるか――試行錯誤を繰り返す部員たち。大勢の観客を神宮で引っ張るリーダーたちの裏側に迫った。

 この日は主に下級生中心の練習。通路に並び拍手の練習に励んだり前に立って指示をする2年生、そして動作の指導を行う3年生。そんな下級生を背後から仁王立ちで見守るのが幹部の4年生である。非日常的な空気が立ち込める中、8時20分に練習は幕を開けた。リーダーの練習は、まず声出しから始まる。手のひらを全力で叩きながら全員で何かを叫んだのち、ひとりがまた叫ぶ。この練習を10分ほど繰り返すと、次は1から10までを一人一人全力で叫ぶ練習、そして2拍で手のひらを叩く練習に移る。練習の区切りごとに幹部が汗だくの下級生へ水分補給をする。その際、下級生部員は 「失礼します!ありがとうございます!」と背筋をピンと伸ばし、全身で感謝の気持ちを伝えようとしていた。どのような状況下においても全身全霊で取り組む姿が印象的であった。

顔を赤くして練習に励むリーダー部員

 テクの練習や声出しが終わり、ここから球場を想定した練習が始まる。まずは応援歌の練習である。『紺碧の空』を始めとした応援歌を全力で歌いながら、手のひらを叩き続ける。そこには観客の声も吹奏楽団の伴奏もない。音楽や歓声に頼るのではなく、全てを自分たちで作り上げていくのだ。最後にチャンスパターンメドレーの練習へと移る。練習開始から既に1時間以上経過しており、部員たちのえんじ色のトレーナーは、汗で濃いえんじ色に染まっていた。それでも全員顔を真っ赤にして必死で食らいついていく。5名の下級生は『大進撃』から『コンバットマーチ』まで、応援曲の動作を何度も通しで繰り返した。同じ動作を繰り返すことで精度を高めていく。時計の短針が10時を指し、練習は終わりを告げる。そして再び幹部3名が壇上に立ち、関口晃由(教4=東京・東洋)は静かにこう言い放った――「中途半端な気持ちの拍手はいらない」。選手を応援する立場である以上、応援部はそれ以上に全力を出さなければならない。中途半端な気持ちで応援しても、思いは伝わらないのである。関口のその一言に、応援部の神髄を見た気がした。

幹部の発言に全力で返事をする下級生

 特別な『週末』がもうすぐやって来る。応援席の熱い声援は、選手を後押しするだろう。その先頭にいるのは常にリーダーである。前日のデモンストレーション後、「死ぬ気で応援する」と関口が誓った言葉に偽りはない。4月20日という『第二のお正月』。その日、神宮球場の応援席ではいつも以上に輝く応援部の姿があるだろう。

(記事、写真 川口真由)