第68回早慶ボクシング定期戦 12月7日 慶應義塾大学日吉記念館
12月7日、第68回早慶ボクシング定期戦(早慶戦)が開催された。昨年までの戦績は早大が38勝25敗4分となっており、現在慶大に8連勝を許している。特に昨年は0-7で完封負け、今年はその雪辱を果たすべく部員全員一丸となって臨んだ。最終結果は3-4と、9年振りの勝利は叶わなかったものの、ここ数年の中では最も良い結果で試合を終え、来年以降に期待が高まる結果となった。
開会式後、円陣を組む選手たち
まず登場したのは、フライ級の後藤誉雄(法3=東京・早大学院)。「昨年からの成長をみせて勝利したい」と挑戦したが、相手の鋭いパンチによりやや劣勢となってしまう。試合は両選手ともに決定的な一打がないまま、第3ラウンドまでもつれ込む。後藤も必死の応戦を見せるが、「相手のリズムに付き合ってしまった」と、0ー3でポイント負け。練習で意識していた「前の手でリズムを作ること」が思うように発揮できず苦しい結果となったが、試合後には「打たれても下がらずに戦えたことは収穫」と振り返った。フェザー級の井上櫂(社1=東京・芝)も果敢に相手に攻め込むが、第2ラウンドで1度目のダウンを奪われる。第3ラウンド序盤で2度目のダウン、そのまま形成を逆転できず3ラウンド2分18秒でRSC負けとなった。
2番手一丸陽将(スポ2=東京・早稲田)のケガによる棄権もあり、既に3敗と後が無くなった早大。応援の勢いが一層増す中、登場したのはライト級の上田敦士(先理2=神奈川・浅野)だ。上田は試合前、「今大会で現役を引退する響さん(川西響主将、スポ4=長崎東)に恩返しをするためにも勝ちたい」と意気込みを語り、それを実現すべく第1ラウンドから積極的に試合を展開する。両者の実力は拮抗(きっこう)し、勝敗は第3ラウンドに託される。体力を激しく消耗している中でも諦めずに身体を動かし続け、結果は2ー1で上田のポイント勝ち。早大に1つ目の勝利をもたらし、2年振りの白星に会場も大きな盛り上がりを見せた。そして川西も「個人的には上田が今回の早慶戦でのMVP」と、その戦いぶりを賞賛した。このまま流れに乗りたい早大の次のカードは、ライトウェルター級鍜治将大(社3=大阪・明星)。相手選手の強い攻撃も影響して試合の主導権を握ることができず、2ラウンド49秒でRSCとなった。
勝利に喜びを爆発させる上田
この時点で対戦成績は1ー4。慶大の勝利が確定したが、会場のボルテージはまだまだ冷めやらない。それもそのはず、次に控えるのはエースとして、主将として、この1年間チームを率いてきた川西だ。ウェルター級への出場だったため、減量もなく万全のコンディションだったという。気合い入れの円陣後、仲間たちに送り出されてリングへ登る。「自分らしさにこだわった」と、持ち味の遠くから打つキレのあるパンチを遺憾無く発揮し、相手に反撃の隙も与えず、1ラウンド2分05秒でRSC勝ち。現役最後となる試合をRSCでまとめ、敢闘賞も受賞した。今大会が試合納めとなった川西は、主将としての1年間を経て「チームでの勝利に対するこだわりと、部員の目標をかなえてあげたいと思う気持ちが強くなった」こと、環境への感謝等を語ってくれた。
現役最後の試合に臨む川西
7番手でライトミドル級に出場した小林響(文構1=東京・東大和南)も、開始早々から重みのあるパンチを連続で繰り出し、1ラウンド1分58秒でRSC勝ちを納めた。
引退を迎えた4年生 前列左から岡田桐子主務(教4=三重・高田)、高橋美波(スポ4=埼玉・花咲徳栄)、川西、森嶋春輝(法4=兵庫・雲雀丘学園)
最終成績は3ー4となり慶大に9連勝を許したが、早大が3点を獲得したのは実に8年ぶり。今大会では下級生の活躍も目立ち、これからの躍進が期待されることとなった。チームにとって「カリスマ的存在」(後藤)の川西ら4人の4年生は引退を迎えるが、来年こそ早慶戦での勝利をつかみ取れるよう、新体制での鍛錬の日々が始まる。
(記事 髙杉菜々子、写真 石澤直幸、西塚奏琉、加藤志保)
結果
▽フライ級
●後藤誉雄 0-3
▽バンタム級
●一丸陽将 ケガのため棄権
▽フェザー級
●井上櫂 RSC(3R、2分18秒)
▽ライト級
〇上田敦士 2-1
▽ライトウェルター級
●鍜治将大 RSC(2R、49秒)
▽ウェルター級
〇川西響 RSC(1R、2分05秒)
▽ライトミドル級
〇小林響 RSC(1R、1分58秒)
▽敢闘賞
川西響
コメント
川西響主将(スポ4=長崎東)
ーー早慶戦には、どのような意気込みを持って臨まれましたか。やはり特別感がありますか
意気込みは早稲田の勝利で、僕自身勝つことは当たり前と思って臨みました。早慶戦は演出も凝っていて特別な試合です。
ーー本日のコンディションはいかがでしたか
特に減量もなくバッチリでした。
ーー1ラウンド約2分でのRSC勝ちでしたが、予想通りの展開でしたか。どのような試合展開を想定していましたか
実力差は分かっていたのであえて作戦を立てずに、自分らしさにこだわって試合をしました。
ーー実際の試合を振り返って、いかがですか
完勝できたので良しとしたいと思います。
ーー「響さんに恩返しするためにも勝ちたい」と仰っていた上田選手の試合をどのようにご覧になりましたか
個人的には上田が今回の早慶戦でのMVPだと思っています。強敵相手に奮闘したと思います。正直僕が勝ったことよりも何倍も嬉しかったです。一段とたくましくなったなという印象です。
ーー本日の後輩の方々の戦いぶりをみて、いかがでしたか
みんな敵地でよく頑張ったと思います。きっと試合前は緊張したことと思います。逃げずによく立ち向かいました。
ーー主将としての1年間を振り返っていかがですか
主将を任されたばかりの当初は、自分のせいで皆んなに迷惑をかけてしまったことが多々ありましたが、試行錯誤を繰り返してなんとか主将としての振る舞いができるようになった気がしています。以前は自分の夢や目標ばかりを追い求めていましたが、主将になってから、チームでの勝利に対するこだわりと部員の目標をかなえてあげたいと思う気持ちの方が強くなりました。これが大きな変化だったと感じております。
ーー今日が引退試合ということですが、4年間を振り返っての感想や成長した部分を教えていただきたいです
4年間で得た学びは非常に大きく、言葉では表しきれないほどです。最後には主将という貴重な役割を任され、その中でさらに成長する機会を得ることができました。特に成長を実感したのは人格面です。高校時代は個人競技として部活動に取り組んでいたため、人との関わりが限られていました。しかし、早稲田大学ボクシング部では、先輩後輩の関係性の大切さを学びました。また、伝統ある部活動が多くのOBの方々の支援によって成り立っていることを実感し、組織全体を俯瞰(ふかん)して物事を考える力が養われました。
ーー後輩の方々に一言お願いします
今年は何としても勝ちたかったので正直心残りはあります。それを是非来年晴らして欲しいです。期待してます。
後藤誉雄(法3=東京・早大学院)
ーー本日のコンディションを教えてください
よく眠れたので、コンディションはバッチリでした。
ーーどのような意気込みを持って早慶戦に臨まれましたか
昨年からの成長をみせて、勝利したいと意気込んでいました。
ーー最近の練習ではどのようなことを意識していましたか
前の手でリズムをつくることを意識していました。
ーー3ラウンドまでもつれ込む展開でしたが、試合前にはどのような展開を予想していましたか
接戦になることは想定通りでした。その中でも自分優位で進める想定でしたが、相手のリズムに付き合ってしまいました。
ーー実際の試合を振り返っていかがですか。収穫や課題などはありましたか
打たれても下がらずに戦えたことは収穫でした。しかし、前の手でスペースを作れなかったことや突っ込み過ぎたこと等、課題は山積みです。
ーー第2ラウンドがスタートした際、第1ラウンドの時と比べて更に積極的な様子をお見受けしました。何かきっかけとなるものがあったのですか。第1ラウンドの後のインターバルでは監督からどのような言葉をかけられましたか
1ラウンド目が相手優勢であったことと、減点を取られてしまったことから、勝利のためには2ラウンド目は必ずポイントを取らなければいけないということでした。
ーー川西選手はどのような主将でしたか
チームの中でも圧倒的な実力で、カリスマ的な存在です。たくさん指導していただき、感謝しかありません。
ーー最後に、来年への意気込みをお願いします
来年は最後の1年となるので、悔いが残らないよう頑張ります。