【ボクシング】懸命に戦い抜くも、完敗。 慶大に10連覇を許した

ボクシング男子/ボクシング

第69回早慶ボクシング定期戦 12月6日 早稲田アリーナ

 12月6日、第69回早慶ボクシング定期戦(早慶戦)が開催された。10年ぶりの白星で宿敵に一矢報いたい早大だったが、その思いは届かず。気迫のこもった攻防を繰り広げながらも勝利をつかむことが出来ず、0ー7で慶大に完敗し、10連覇を許した。これで通算戦績は38勝27敗4分となった。

現役最後の試合に臨む後藤主将

 まず登場したのは52kg級の後藤誉雄主将(法4=東京・早大学院)。1ラウンド目。距離を詰めてくる相手に対して、リーチ差を活かした右のジャブで上手く距離感をつかむ。狙い澄ました左ストレートも的確に打ち込み、落ち着いた立ち上がりを見せた。打って変わって、2ラウンド目は互いに一歩も引かないインファイトの展開に。主将としての意地を見せる後藤が手数の多さでやや優勢に思われた。勝負は最終ラウンドへ。ここで積極的に前へ出る相手に流れを奪われ、強烈な左フックを浴びてこの試合初のダウンを喫した。すぐさま立て直し、果敢に攻め続けたものの及ばず。結果は1ー2のスプリットデシジョンで惜しくも敗北。ポイントで涙をのんだ。

 次にリングに登場したのは56kg級の井上櫂(社2=東京・芝)。ゴングと同時に前へ出て、果敢に攻め込む井上。しかし相手は落ち着いて対応し、井上の左ジャブにタイミングを合わせた強烈な左フックをカウンターで打ち込む。これが決まり、最初のダウンを奪われた。その後も攻め続けた井上だったが、相手の得意とする接近戦に持ち込まれると、再び強打を浴びて2度目のダウン。ここでレフェリーが試合を止め、1ラウンド1分45秒RSC負けとなった。

果敢に攻め込む雨宮

 3人目の一丸陽将(スポ3=東京・早稲田)が棄権で3敗と後が無い早大は、60kg級の雨宮正(政経3=東京・国際)に命運を託した。両校応援部パフォーマンスで会場の熱気がより高まる中、4人目の雨宮がリングに上がった。1ラウンド目から積極的に前に出て攻め続ける雨宮。相手のボディを受けつつも前進を止めず、要所で左フックを決め、相手の得意なミドルレンジを潰していく。続く2ラウンド目も自ら攻め込むが、相手の強烈な連打に押されてダウンを奪われる。しかし攻勢を止めることなく、右ストレートをヒットさせて応戦。両者に疲れの色が見える中、最終ラウンドへ。3ラウンド目、ボディと顔面へのストレートに対応できず再びダウン。さらに左ボディで崩され、最後は強烈な右ストレートで3度目のダウンを喫し、RSC負けとなった。同時に対戦成績は0ー4となり、慶大の10連覇が確定した。

 しかし会場の熱気は冷めない。なんと言っても第5試合の64kg級は今大会屈指の好カード。慶大は主将の酒井亮太、早大は昨年の早慶戦で勝利を収めた上田敦士(先理3=神奈川・浅野)が登場した。1ラウンド目、上田は縦横無尽にリングを動きながら相手の出方を探る。変則的な右ストレートをヒットさせるも、相手のボディを受ける。2ラウンド目になると、パンチを被弾する回数が徐々に増える。決定打は避けるものの、相手のスピードに対応しきれない場面も。左右に動きつつ相手に攻め込ませないよう試みるが、手数では劣勢となったか。迎えた最終ラウンド。上田は再び自分の距離感を保ちながらパンチを繰り出し、相手を攻め込ませない戦いを展開。最後まで自分のペースでラウンドを終え、粘りの戦いを見せた。しかし判定は0ー3でポイント負け。昨年に続いて早慶戦2連勝とはならなかった。

ジャブを繰り出す鍛冶副将

 なんとしても1勝をもぎ取りたい早大。6人目はチームを支えたもう1人の4年、69kg級の鍛治将大副将(社4=大阪・明星)だ。第1ラウンド。ジャブで主導権を握ろうとする鍛治に対し、相手は高いガードで圧をかけながら距離を詰める。両者が要所でパンチを決める拮抗(きっこう)した展開。続く2ラウンド目は相手の猛攻に足を後退させる場面もあり、堅実に前に出る相手に対処できない場面が目立った。そして迎えた最終ラウンド。自分の距離感を保ちたい鍛治だったが相手の接近戦に引き込まれ、受身の展開となる。結果は0ー3でポイント負けとなった。

 早大の最後を飾るのは75kg級の小林響(文構2=東京・東大和南)。1ラウンド目からスピード感溢れる激しいパンチの応酬となり、会場を沸かせる迫力ある試合を見せた。しかし1ラウンド35秒、小林の右肩にアクシデントが発生。RSCーIでの悔しい敗戦となった。

 

引退を迎えた4年生 左から3人目に鍛冶副将、その右に石川斉佳(スポ4=東京・共立女子)、さらにその右に後藤主将が並ぶ

 勝利こそつかめなかったが、リングに立った全員が見せた執念と覚悟は、確かに次の世代へと受け継がれていく。4年生の後藤主将、鍛治副将、石川斉佳を中心につくり上げてきたチームの土台を受け継ぐ下級生たちが、来季どんな成長を示してくれるのか。悔しさを力に変え、早大が再び宿敵へ挑む舞台はすでに始まっている。

(記事 西塚奏琉、写真 石澤直幸、山口愛結、吉岡歩睦)

結果

52kg級

 ●後藤誉雄 1-2

56kg級

 ●井上櫂 RSC(1R、1分45秒)

57kg級

 ●一丸陽将 棄権

▽60kg級

 ●雨宮正 RSC(3R、1分12秒)

64kg級

 ●上田敦士 0-3

69kg級

 ●鍜治将大 0-3

75kg級

 ●小林響 RSCーI(1R、35秒)

▽敢闘賞

 後藤誉雄

コメント

後藤誉雄主将(法4=東京・早大学院)

ーー 早慶戦には、どのような意気込みで臨まれましたか。

早慶戦は演出が豪華ですし、また今回は引退試合で吹っ切れていたのか、楽しみという気持ちが1番大きかったです。

ーー 早慶戦で早大のトップバッターを務めるにあたって、特別な思いはありましたか。

団体戦の第1試合はその後の流れを決めるので、自分が勝つことで勢いづけたいと思っていました。

ーー 本日のコンディションはいかがでしたか。

いつも通りだったと思います。ただ、いつも試合当日は体が軽いかだったり、足が動くかだったりを気にするのですが、今日の引退試合は楽しむだけだと思っていたので、そういう細かいことは気になりませんでした。

ーー 今日の試合を振り返って、率直な感想をお聞かせください。

自分の実力を痛感する試合になりました。直近の数試合は倒して勝っていたので、自分自身勢いづいていましたが、今日の試合を通して、これが自分の実力なんだと良くも悪くも実感しました。

ーー 今回の試合はこれまでよりインファイトが多かったように見えましたが、意図や作戦があったのでしょうか。

相手がやりたい距離感だったと思います。リーチを活かすのが自分のスタイルですが、なかなかそうさせてもらえませんでした。途中からは、それが正しかったかは分かりませんが、真っ直ぐ下がっても印象が悪いので打ち合おうと思ってました。

ーー 本日の後輩の皆さんの試合ぶりを見て、どのように感じましたか。

結果的には負けてしまいましたが、各々の信条や戦略をもとに勝ちにいく姿勢が見てとれて心打たれました。後輩たちは僕よりもずっと負けん気が強いので、これから強くなると思います。

ーー 主将として過ごしたこの1年間を振り返って、どんな思いがありますか。

主将を任された当初こそプレッシャーがありましたが、振り返ると気楽に務めさせていただけたと感じています。それは、同期や後輩たちが部活動に真摯に取り組んでくれたおかげだと思っています。

ーー この試合をもって引退されますが、4年間を振り返っての感想や成長出来た点などを教えてください。

振り返るとあっという間でした。はじめは4年間続けられるか不安でしたが、やり抜けたことは大学生活で唯一誇れることです。早稲田大学ボクシング部で過ごした4年間を今後の人生の糧にして、精進します。

ーー 4年間で特に印象に残っている試合や場面はありますか。またその理由を教えてください。

5回経験した甘泉寮合宿です。学年が進んでも、そのきつさに慣れることはありませんでした。合宿所や朝のランニングは一生忘れないと思います。

ーー 最後に後輩の皆さんにメッセージをお願いします。

負ける勇気を持って勝ちに行け!