4年生が意地を見せるも早慶戦6年ぶりの勝利ならず

ボクシング

 両校の応援に応えるように選手たちが熱い戦いを繰り広げた第65回早慶定期戦(早慶戦)。6年ぶりの早慶戦勝利を目指した早大であったが2-5で敗れ、慶大に6連覇を許す結果となった。

最後の早慶戦で奮闘する主将の岡村

 早大の先陣を切ったのはフライ級・磯村時将(創理3=東京・攻玉社)。「トップバッターとして、気持ちをみんなに伝えることと絶対勝つことの2つを意識して」との気持ちで臨んだ初戦で、その言葉通り相手のパンチにもひるまない積極的な姿勢を見せた磯村。判定勝ちで初戦を制し、早大に勢いをもたらした。2戦目に臨んだのはバンダム級・岡村泰靖主将(商4=東京・早実)。1Rから一歩も引かずに前に出る岡村。2Rは相手の隙を突いた攻撃でポイントを稼ぐ。前に出る姿勢は3Rになっても変わらず、試合を通して相手の重く、正確なパンチに苦戦するも攻撃する姿勢を崩すことはなかった。一進一退の攻防を繰り広げた試合の行方は判定に。会場の注目がリング中央に集まる中、手が上がったのは青コーナー、慶大の選手だった。惜しくも判定で敗れたものの、「主将として、結果と背中を見せたい」と4年間の全てをぶつけて戦ったその姿はチームに活気を与えるものだった。3番手にはライト級・吉田知暉(政経3=神奈川・浅野)が初の早慶戦のリングに上がる。「絶対勝ってやろうという強い気持ちで挑んだ」吉田だったが序盤から相手にペースを握られると、立て直すことができず1R、RSC負けを喫した。続く4番手は早大エース、ライト級・伊藤礼(スポ2=新潟・南)。序盤は両者譲らない試合展開だったが、徐々に伊藤がペースをつかむと最終的には1R、RSC勝利を収め、勝敗を2-2の五分に戻した。相手を圧倒するボクシングが評価され、試合後伊藤は敢闘賞を受賞した。

RSC勝ちを収め笑顔を見せる伊藤

 5番手として早大からはライトウェルター級・川西響(スポ1=長崎東)が出場した。相手は慶大エース・松村和弥(3年)。初めて出場する早慶戦で相手エースとの対戦となったが、1Rから堂々の戦いぶりを見せつけた。2R中盤には相手のペースに持っていかれそうになるも、決して防戦一方にはならず立て直す。そして迎えた3R。「試合が長い」と大学に入り試合時間が伸びたことも影響したか疲労も伺えたが、最後まで相手に屈することなく真っ向から立ち向かった。結果は判定負けとなり悔しい早慶戦デビューとなったが、来年以降の活躍に期待が持てる試合となった。第6戦にはウェルター級・首藤功大副将(国教4=東京・芝)が出場。相手の独特なファイトスタイルに苦戦し、1Rはなかなかパンチがあたらず、2Rには相手にペースをつかまれてしまう。それでも「絶対に後ろに下がらない、どれだけ殴られても前に出続けるということは意識していた」と最後まで戦う姿勢を貫いた。4年生同士との対戦となり、この日1番の盛り上がりを見せた一戦の結果は判定で慶大・武智(4年)の勝利。対戦成績が2-4となり、この時点で慶大の早慶戦6連覇が決まった。そして迎えた最終第7試合。早大からはミドル級・清山左近(教4=千葉・専修大学松戸)が出場。試合序盤から自分のペースをつかもうとするも、相手の低いパンチに苦戦しペースをつかみ切れない。そんな中でも試合終盤には相手に有効打を打ち込むなど、4年の意地を見せた清山。しかし、「気持ちの勝負になる」と臨んだ一戦は、思い届かず無念の判定負けとなった。

激しい打ち合いを試合で見せる首藤

 「出し切った」(岡村)、「全てを出し切れたので悔いはない」(首藤)とそれぞれの思い全てをぶつけて臨んだ4年生の姿は素晴らしいものだった。しかし、早慶戦で6連敗を喫した事実は変わらない。4年間の全てを懸けてもわずかに届かなかった早慶戦の勝利。「もう『惜しい』はいらない」(岡村)。悔しさを糧に、来年こそは必ず早大が勝利を成し遂げる。

(記事、写真 栗田優大)

結果

▽フライ級
◯磯村時将 3-0(29-28、29-28、30-27)
▽バンダム級
●岡村泰靖 1-2(28-29、29-28、28-29)
▽ライト級
●吉田知暉 RSC(1R、2分36秒)
▽ライト級
◯伊藤礼  RSC(1R、2分12秒)
▽ライトウェルター級
●川西響  0-3(28-29、27-30、28-29)
▽ウェルター級
●首藤巧大 0-3(25-30、25-30、27-30)
▽ミドル級
●清山左近 0-3(27-30、27-30、27-30)

コメント

岡村泰靖(商4=東京・早実)

――本日の試合を振り返っていかがでしたか

出し切りましたね。やっぱり勝たなきゃいけなかったなというのが今一番心にあることですが、早慶戦の前に対談で話した「燃え切ってくる」という点に関してはやりました。ただ悔しいですね。

――主将としてどのような気持ちで試合に臨みましたか

主将であることに加えて出番が早かったので、勝った時のチームの勢いのつき方はすごいものがあるということを自分に言い聞かせ、主将として結果と背中を見せようという気持ちで臨みました。

――本日は普段と異なる歓声がある中での試合でしたが、やはり歓声の力は大きいですか

そうですね、大きかったです。自分の試合の前から前哨戦含め、この中でやったら気持ちいいだろうなと思っていて、実際にはそれ以上でしたね。

――ボクシング部での4年間を振り返っていかがですか。

楽しかったです。今日も含めて悔しいこととか、つらいこととかあったのですが、本当にいろいろな人に出会えて、こうやって部以外でも応援部の方や早スポの方など、いろいろなつながりができて。本当にしんどかったですけど4年間続けてよかったです。

――最後に後輩に向けてメッセージをお願いします。

結果にこだわってほしいです。もう「惜しい」はいらないです。

首藤功大(国教4=東京・芝)

――本日の試合を振り返っていかがでしたか

最後の試合ということで楽しむことはできたと思います。あのパンチを出せればよかったとか思ったらキリがないですけど、今の自分の全てを出し切れたので悔いはないです。

――早慶戦前の対談では武智選手(慶大・4年)との対戦を楽しみにしていると仰っていました

楽しかったですね。めちゃくちゃ強い選手なので自分どこまでやれるかっていうのが課題だったのですが、そことしっかり3R殴り合えたのはよかったかなと思います。

――武智選手のプレースタイルが独特とも仰っていました。やはり他の選手と違いましたか

違いますね。やりづらいです。距離感も全然つかめないですし、変なところからパンチがくるのでかなりやりづらかったですけど、楽しかったです。

――これで引退になりますが、ボクシング部での4年間を振り返っていかがでしたか

もうこんな自分が熱中できることはないんじゃないかというくらいのめり込んで、きついこともありましたし、きついことがほとんどでしたけど、それでも4年間やり続けてこれたっていうのが自分にとっても自信になりました。後輩たちにも自分たちがどれだけきついことをやって、そこから得られた達成感がどれだけすごいものなのかを実感して、それを誇り思ってもらえたらなと思います。

――試合中は前に出る姿勢が目立ちました。どのようなことを意識していましたか

絶対に後ろに下がらない、自分の距離でプレッシャーをかけ続けて、どれだけ殴られても前に出続けるっていうのは意識していました。この4年間ずっとこの試合に懸けてるところもあったのでそれも出たのかなと思います。

――リング外での人柄の良さも印象的でした。ボクサーとして、リングの外で気をつけていることは

人への感謝っていうのは日々気をつけていて、早慶戦もそうですけど、周りの人がいないと開催されないですし、今の自分もいないので。人への感謝ってっていうのはしっかりしないと、普段殴り合ってるんだからそこもオラオラしてたらしょうがないと思うので、そこは心がけてますね。

――最後に、後輩に向けてメッセージをお願いします

自分のやってることに誇りを持って、そこから得られる達成感を味わい尽くしてほしいと思います。

清山左近(教4=千葉・専修大学松戸)

――本日の試合を振り返っていかがでしたか

思うように動かなかったですね。これはもう単純に練習不足かなと思います。想定していた動きとかもあったのですが、それを試合で出せるまでの練習量に足りてなかったかなって感じました。

――最後の早慶戦でしたが、どのような気持ちで試合に臨みましたか

キャリアとしては同じくらいの相手で、気持ちの勝負になるかなと思っていたので、気持ちだけは負けないという思いでした。

――出し切ることはできましたか

そうですね。もうボクシングは二度とやりたくないです(笑)。

――

正直、興味本位で大学の部活に入ったのですが、普通の大学生活では経験できないことを経験できたのでよかったです。

――4年間続けられた理由は

部員の存在かなと思います。特に僕たちの代はメンバーが多かったので、心の支えになってました。

――最後に、後輩に向けてメッセージをお願いします

今年は後輩たちばかりに勝たせる結果になってしまって4年生として申し訳ない気持ちと不甲斐ない気持ちで一杯なんですけど、年々差は縮まってきてると思うので、来年こそは勝ってほしいと思ってます。応援しています。

磯村時将(創理3=東京・攻玉社)

――本日の試合を振り返っていかがでしたか

自分が早稲田のトップバッターだったので、絶対に勝つという強い気持ちで1Rからいきました。

――トップバッターとして具体的にどのようなプレーをチームに見せようとしましたか

自分の試合の姿がこれからの試合に影響すると分かっていたので、気持ちをみんなに伝えることと絶対勝つことの2つを意識してプレーをしました。

――昨年の早慶戦では試合に敗れていましたが、今年は見事に勝利しました。昨年と比べて一番ご自身の成長を感じる部分は

昨年の早慶戦ではパンチをもらってはいけないという、どこかビビってしまっていた部分があったのですが、今年はパンチをもらっても自分が一発でも多く当て返せば勝てるという、メンタル面で成長した部分を見せることができたと思います。

――最後に、来年度に向けた意気込みをお願いします

今年も2-5で敗れてしまったのですが、来年はこちらもいいメンバーもそろっているので、来年は勝ちます。

吉田知暉(政経3=神奈川・浅野)

――本日の試合を振り返っていかがでしたか

相手が予想以上に動画で見ていたよりも強くてプレッシャーをかけられ、自分が最初からやると決めていたことができず、1Rで効かされてそのまま負けてしまいました。悔いが残ります。

――やはり、試合中の修正は難しかったですか

そうですね。1ヵ月くらい想定していた練習をしていたのですが、相手がそれを超えてきて、修正が追いつけなかったという感じです。

――今回が初めての早慶戦出場でしたが、心境はいかがでしたか

絶対勝ってやろうという強い気持ちで挑んだのですが、後ろにつなげられなかったというのが悔しいですね。チーム戦は勝ってつなげるということも大事だと思うので。

――リーグ戦の雰囲気と比べて何か違いはありましたか

全然違いますね。早慶戦では応援があってテンションも上がるし、やる気もすごいです。

――最後に、来年に向けた意気込みをお願いします

来年は絶対に勝って引退します。

伊藤礼(スポ2=新潟・南)

――本日の試合を振り返っていかがでしたか

出だしが悪かったなという印象はあったのですが、カウンターを狙って流れを変えることができたので良かったと思います。

――どのような気持ちで試合に臨みましたか

自分は高校からやっていて、早稲田にはそういう人が少ないので、その分自分に期待してくれていて。昨年も早慶戦に勝っていますし、今年も負けられないという思いはありました。

――昨年は技能賞を受賞し、今年は敢闘賞でした。受賞した時の気持ちは

昨年が技能賞で今年は敢闘賞だったので、来年は最優秀賞を取りたいなという気持ちになりました。

――最後に、来年に向けた意気込みをお願いします

チーム全体のレベルは上がってきていると思うので、その勢いをこのままに来年は早慶戦もそうですけど、リーグ戦もしっかり勝っていきたいと思います。

川西響(スポ1=長崎東)

――本日の試合を振り返っていかがでしたか

反省するところしかないですね。良かったところはあんまりなかったかなと思います。

――具体的にはどのようなところが反省点ですか

いろいろ試せなかったっていうのが反省ですね。試合前に映像を見て自分でやろうとしていたプレーができませんでした。

――試合中に修正していくのは難しかったですか

落ち着いて考えればできたと思うのですが、それができなかったので。それを練習したいと思います。

――対戦相手は慶大主将の松村選手でしたが、対戦が決まった時の気持ちは

正直勝てると思ってました。

――初めての早慶戦でした

活気があって、頑張ろうという気持ちになれたのですごくよかったです。またやりたいと思いました。

――高校と大学でのボクシングの違いは

試合が長いですね。高校は1R2分で、大学は3分なので。プレーに関しては、ヘッドギアがない分、パンチが重く感じますけど、そのくらいですかね。

――最後に、来年に向けた意気込みをお願いします

来年は絶対に判定に持ち越さないくらい完膚なきまでに圧倒して勝ちたいと思います。