コロナ禍での早慶戦、伊藤が技能賞

ボクシング

  新型コロナウイルスの影響から例年とは異なる形での開催となった第64回早慶定期戦(早慶戦)。試合は1対6で負けてしまったものの、1年生伊藤の勝利など白熱した戦いが繰り広げられた。

 

第四戦に出場した三輪

 

 初戦、ライトフライ級の岡村泰靖(商2=東京・早実)は序盤から相手の素早い連続攻撃に苦しむ。反撃に出たい岡村であったが、相手の細かい連打にジリジリと体力を奪われ、1R終盤、顔面に力のこもった右ストレートをもらってしまう。第2ラウンドも相手の攻撃に対応し切れず、力負けする形で2R2分21秒、岡村のRSC負けとなった。
 続く第2戦フライ級は磯村時将(創理2=東京・攻玉社)が出場。両者攻めの姿勢を見せる出だしとなった。カウンターから右ストレートを顔にもらうも、すぐさま右ストレートを当て返す。左フックをもらった際にも、直後に一撃を当てていくなど攻める相手に対し磯村も一歩も引かない。しかし、第3ラウンドに入り疲労の色を見せ始めたところを攻め立てられ、判定の結果、慶應に勝利を奪われてしまった。ここで流れを断ち切りたい早大からは伊藤礼(ス1=新潟・南)がバンダム級に出場。試合は開始直後から壮絶な打ち合いになる。序盤は攻め立てられ、多くのパンチをもらってしまっていた伊藤だがその姿に焦りはなかった。右ストレートを顔面に入れるとそこから着実にパンチを当てていき、その後はダメージを負いながらも幾度となく相手を捉え、その体力を奪っていった。続く第2ラウンドでペースを握ったのは伊藤だった。1発、2発、と着実に打ち込んでいき、第2ラウンドで合計10発以上のパンチを相手の顔に叩き込んだ。迎えた第三ラウンドでは反撃に転じたい相手の猛攻撃に遭うも凌ぎ切り、最後も右で相手の顔面を捉え、3R1分40秒RSC勝ち。「大学での初試合だったので緊張や不安もあったが、試合が始まってみたら意外とふつうに動けた」と語る期待の1年生が早稲田に貴重な1勝をもたらした。

 

第三戦勝利を収めた伊藤

 

 第4戦ライト級には昨年、慶大から勝利している三輪裕之主将(文4・神奈川・鎌倉学園)が登場。ここで流れに乗りたい早大であったが試合開始から相手の執拗な攻めに苦しむ。三輪の強力なパンチは相手を捉えるも、ボディや顔に手痛い連撃をもらうなど押され気味で試合が進む。強気に出る相手に対し、三輪も応戦するが、3ラウンド戦った末惜しくも敗戦してしまった。5戦目に登場したのは藁品健介(創理4=神奈川・鎌倉学園)。第1ラウンドから接近戦となりフックを多用し連打を浴びせるも両者決定打に欠ける試合運びとなった。第2ラウンド、第3ラウンドも接近戦で試合は運び、手数こそあるものの思うように相手にダメージを与えられない。ラスト1分は互いに力の限りを尽くして応酬したが、軍配が上がったのは慶應であった。6戦目はこの日1番の白熱した戦いとなった。第1ラウンドから高橋良典(スポ4=茨城・茗渓)は果敢に攻め、序盤に右ストレートを顔面に決めるなど、魂の込もったパンチを相手に浴びせる。しかし、相手も引き下がらず、右に左にと襲いかかってきた。第2ラウンド、強烈な右フックで相手をダウンさせると、猛攻に転じ、左を幾度となく顔面に当てる。しかし、「勝負を決めに行こうとして焦り、大振りになってしまった」と本人も悔やむように、ダウンを奪うような決定打は打つことができずこのラウンドを終了してしまう。第3ラウンドでも両者譲らぬ大接戦を繰り広げた末、判定負けで惜しくも勝利を逃した。しかし「あれで勝てなかったのならしょうがない」と高橋が振り返ったように、どちらが勝ってもおかしくない熱い戦いであった。ミドル級の清山左近(教3=千葉・専修大学松戸)は相手の攻めに苦しみ、なかなか有効な攻撃を仕掛けることができなかった。第1ラウンドで2度カウントを取られるなどしてしまい、続く第2ラウンドで3つ目の有効打を決められ、2R51秒、RSC負けとなった。

 チームとして負けてはしまったが、1年伊藤の勝利など得るものもあった。そして何より、コロナ禍という状況で早慶戦を無事に開催し、終えることができたのは選手はじめ関係者各位の努力の結果であろう。また4年生はこれで引退である。試合後に主将の三輪は「親、監督、OBだったり、色々な人に恵まれた4年間だった」と、これまでを感謝の言葉で振り返った。そして3年生以下はまた来年、この早慶戦を戦う。「自分が勝てたことはうれしいが、チーム全体として負けてしまったので悔しい気持ちの方が強い。自分だけが勝つという意識ではダメ、これからみんなで強くなってみんなで勝ちたい」と伊藤が語るように、また来年、観客が入った会場で成長した彼らの勇姿を観れることに期待したい。

(記事 中嶋勇人、写真 中嶋勇人、芦澤りさ)

 

試合後の集合写真

 

結果
早慶定期戦
階 級 早 大 スコア 慶 大
LF 岡村 泰靖 ●RSC(2R2分21秒)○ 成澤 諒
磯村 時将 ●0(26-30 27-30 26-30)3 古山 皓介
伊藤 礼 ○RSC(3R1分40秒)● 上田 龍司
L 三輪 裕之 ●0(27-29 28-29 28-29)3○ 阿部 飛雄馬
LW 藁品 健介 ●0(28−29 28−29 27−30)3○ 池田 穂高
W 高橋 良典 ●1(29-28  28-29  28-29)2○ 松村 和弥
M 清山 左近 ●R S C(2R51秒)○ 武智 琉馬

 

三輪裕之主将(文4=神奈川・鎌倉学園)

――今の率直な気持ちを教えてください

 4年間で最後の試合だったので頑張りました。

――早稲田全体を振り返っていかがでしょうか

 確実にみんな強くなっていて、一昨年より去年の方がよかったですし、去年より今年の方がよかったです。戦績自体は1勝6敗で去年と同じだったのですが、より接戦になっていたのでよかったなと思います。

――今年はコロナの影響でリーグ戦が中止になるなど例年とは違う状況だったと思いますが、どのようなことを考えて試合に臨まれましたか

 今年1年間でこの早慶戦しかなかったですし、早慶戦もあるかどうかわからない状況だったので、この試合に懸けていて、この試合のために頑張ってきました。

――練習はできていたのでしょうか

制限があったときは各自で練習していて、それが終わってからはマスクをして注意しながらやっていました。

――そのような状況の中、どのようにモチベーションを維持して取り組まれていましたか

 早慶戦があると信じて取り組んでいました。リーグ戦がなくなったときはどうしようという感じだったのですが、早慶戦はやる方向でということだったので、「(早慶戦)あってくれ」という気持ちでした。

――リーグ戦が中止になったことで、早慶戦に向けて調整が難しかったのではないでしょうか

試合と試合の間がちょうど1年空いたので、感覚を取り戻すのは大変でした。

――きょうは1年生の伊藤礼選手(ス1=新潟・南)が活躍していました

素晴らしいです。高校の時から強くて、今年1年生でしっかり勝ってくれて本当にかっこいいです。

――この1年間を振り返っていかがですか

 今までの主将の先輩たちを見て、全員のいいところを取り入れて頑張っていたので、自分としてはいい主将だったのかなと思っていたのですが、最後負けてしまったので、そこが情けないなと思っています。勝って終われば「俺は最高の主将だ」と言えたのですが(笑)。

――この試合をもって引退ということですが、振り返ってみてどのような4年間でしたか

親だったり、監督だったり、OBだったり、いろいろな人に恵まれていたなという感謝が大きいです。

――では、最後に後輩に向けて一言お願いします

 ボクシングを楽しんでください。

 

藁品健介(創理4=神奈川・鎌倉学園)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

 自分の中ではリングの上で持っているものを全て出し切れたと思うのですが、結果がついてこなかったので悔しいです。

――ご自身の中で1番辛かった場面はありますか

 やはり3ラウンド目はお互いに疲れてきていて辛かったです。

――今年はコロナの影響で例年とは違う状況だったと思いますが、どのようなことを考えて試合に臨まれましたか

 ボクシングの実際の試合形式の時に、自分はどのような動きをするのかということを意識して、公園だったり人気の少ないところであったり、密にならないところで練習していました。

――練習がなかったり、早慶戦が開催されるかどうかわからなかったりという状況だったと思いますが、どのようにモチベーションを保っていたのでしょうか

 やはり練習を持続することが大事だと思うので、ストレスが溜まらない程度に軽めの練習でいいから毎日やるということを大切にしていました。

――この試合をもって引退となりますが、4年間を振り返っていかがですか

自分は中高通じて部活を最後までやった経験がなかったのですが、大学で初めて最後まで部活を続けたことで、今まで受験勉強などでは学び取れなかったこともボクシングや部活を通じて学べたのでよかったです。

――最後に、後輩に向けて一言お願いします

 僕の悔しさの借りを来年返してください。

 

高橋良典(スポ3=茨城・茗溪学園)

――試合を振り返っていかがでしたか?

今回かなり相手を研究していて、ミドル級の子か今日対戦した子が来るって分かっていたのでYouTubeにある動画を本当にたくさん、100回ぐらい見ました。右フックのときに腕を下げるのをわかっていたので、一ラウンドから狙ってて、当たったんですけど、そこから焦って勝負を急いでしまって、結局見栄えが悪かった一ラウンド三ラウンドでポイントがあっちに流れちゃった感じですね。

――今おっしゃられたように、第二ラウンドでかなり相手にダメージを与えたように見受けられたんですけど、ご自身としてはどのように感じていましたか?

ここで勝負を決める、決めに行かないとって思ってたので、逆にそれが大振りになっちゃいました。コツコツ合わせられてしまったところもありましたし。ダウンとったし勝ったかなと思ってたんですけどね。

――今年はコロナ禍ということで例年とは異なる状況下での早慶戦だったと思いますが、どのようなことを考えて臨まれましたか?

やっぱり、時間があったし、家にいる時間が長かったので、いろんな選手の動画とかを見たりして、自分はどういうボクシングが合ってるのかとか、海外の選手の動画も見たりして勉強はしてました。現状を嘆いてもしょうがないじゃないですか。慶應の会長(定かではない)も言ってたんですけど、積極的な意味で捉えようと思っていました。怪我も多かったんで、体を休められるし、ボクシングを客観的に見る時間を作れました。

――其のような期間を経て、練習再会後に意識していたことはありますか?

 右のカウンターですね。この試合でも、距離が合わなくて当たらなかったこともありましたが、何発か当たりましたね。これで負けちゃったんで、結果は結果なんで、僕としては、負けて悔いは残るんですけど、試合内容としては悔いはないですかね。これで勝てなかったらしゃあないかなと。

――副将として、選手として、この一年を振り返ってどうでしたか。

 自分は二年生の途中から入ったんですけど、ボクシングはやっていなかったので、自分が強くなくてどうやってチームを引っ張るかと言えば、練習の姿勢でであったりとか、常に考えてやるってことを意識して、チームを背中で引っ張る。口出すとかじゃなくて率先してそういうことをやるというのを意識していました。

――この試合で引退ということですが、後輩に何か、残す言葉があればお願いします。

 やっぱり、あえて、僕らのボクシング部ってスポーツ推薦を取っていない状況の中で、あえて厳しい道に立ってるってことを胸を張って欲しいというのが一つと、もう一つは、悔いが残らないようにというのを伝えたいです。

 

伊藤礼(スポ1=新潟・南)

――試合を振り返っていかがでしたか?

大学で初めての試合で緊張とか不安もあったんですけど、試合が始まってみたら意外と、いつも通り動けて、練習でやってきたことが出せたので勝てたのかなと思います。

――どのような練習をしてこの試合に臨まれましたか?

 全体の練習はマスボクシング、次に体力、次にミットをと。毎日続けて疲れた時にでもパンチが出せる練習をしていました。

――特に今日の試合で生きたであったり意識していたことはありますか?

うち終わり、自分が打った後さらに追撃を加えるっていうのを練習でも言われていたので、それを今日実践できて、結果として勝てたことはよかったと思います。

――初めての早慶戦でしたが特別感であったり何か感じるものはありましたか?

今まで早稲田はあまり勝っていない状況で、今現在厳しい状況にあるっていうのはわかっていたので、自分もみんなも頑張って臨んで、結果として(チームは)負けてしまったんですけど、いい経験になったと思います。

――其の中でご自身は勝利を挙げられていますが、どのように感じていますか?

 自分が勝てたことはもちろん嬉しいんですけど、結果としてチーム全体では負けてしまったので、それもやっぱり悔しくて、自分だけが勝っても、自分だけが勝つっていう意識じゃダメなんで、これからみんなで強くなってみんなで勝ちたいなって思いました。

――現在コロナ禍にあり、いつもとは違う状況でしたがどのように感じましたか?

 声を出せないっていう状況が一番嫌で、この状態嫌だなあと思って試合に出ていました。

――伊藤さんは初めての早慶戦でしたが、四年生はこれで引退となります。伊藤選手にとってどのような存在でしたか?

すごく短い間、例年夜短い間だったんですが、一緒に練習してきて、見てきたので、こういう結果ですごく悔しいですし、いい先輩であったと思います。

――その先輩方に一言いただいても良いですか?

これまで部活を続けてこれたことはすごいことだと思うので、これからの人生につなげて欲しいと思います。

――伊藤さん自身、例年、再来年と続いて行きますが、来年への早慶戦への意気込みを最後に伺っても良いですか?

来年は自分が勝つことはもちろんですが、チーム全体で勝つことを目標にして切磋琢磨して行きたいと思います。