【連載】『令和4年度卒業記念特集』第10回 桂蘭/女子バスケットボール

女子バスケットボール

どんなときも前向きに

 今年度、女子バスケットボール部の主将を務める桂蘭(スポ=愛知・桜花学園)。4年間で見えたもの、主将ながらプレーでチームを引っ張ることができなかった時期の支え、この1年心がけていたこととはーー。

 兄、姉の影響で小1から競技を始めた。単純に楽しく、他の習い事に影響が出るくらいのめり込んでいった。小6にして身長が168センチあった桂は、ボール運びからポストアップ、ゴール下のプレイまで全般的にこなした。それは今のオールラウンドなプレースタイルにも繋がっているという。

 

4年時のインカレでドライブする桂

 愛知・桜花学園高を経て、早大へ進学。入学前に感じていた自由で楽しそうなイメージはそのままだった。姉も早大出身。優勝した2014年のインカレでMVPを獲得したプレーヤーだ。どこに行っても「桂葵(平27社卒=現ZOOS)の妹」と言われていた中高生の時は、プレッシャー、劣等感があった。しかし指導者に、「蘭は蘭だよ、姉と比べなくていい」と言われ、私は私でいいと気づかされた。姉は比較より、憧れ、尊敬の的。追いかけ続けてはいるけれど、自分にしかできないことを表現していこう。大学では前向きに捉えることができるようになった。

 ラストシーズンの桂は、前年に負ったケガの影響でベンチからのスタート。思うことがあっても、試合に出ていない自分が「直接的にみんなに伝えることはできない、したくない、みんなも嫌かな」と思っていた。プレーのことは下級生が自分たちで話し合えるからと、あまり口を出さなかったが、ケガ人が多く下級生主体となったチームの雰囲気はよい状態とは言えなかった。「勝ちたい」という思いから、言葉遣いと伝え方を考えながらアプローチ。プレーできないもどかしさもありながら、何か自分にできることを、と模索していた。

 その中で常に心がけていたことは、チームの雰囲気作りだ。自分が出ていない分、みんなが安心してコートに出ていけて戻って来れるベンチワークをやっていこうと心がけた。自分は試合に出れない悔しさ、辛さなど、いろんな思いはあるけれどみんなの前では絶対笑顔で前向きな姿を見せ続ける。すると、みんなも「ひまさんが頑張っているから」で頑張ってくれるのではないか。その一心だった。

 もちろん、秋シーズン前の復帰に向けたリハビリも怠らなかった。しかし、復帰戦となるはずだった7月の早慶戦を目前に再受傷。最後のインカレに間に合わないことがよぎった。そんな時、チームメイトの「まだ間に合う、大丈夫」という言葉が支えとなり、インカレでの復帰を目指しリハビリを頑張ることができた。

 「頑張ることと無理することは違う」 日本代表の渡嘉敷来夢選手(ENEOS)にかけてもらった言葉だ。姉繋がりで気にかけてくれていた渡嘉敷選手。2回目の怪我をしたあと、SNSを通じて相談。すると、「自分を褒めてあげていい」「無理しないのが1番」「慌てちゃダメ」。いつも丁寧に、心強い温まる言葉を返してくれたという。渡嘉敷選手も、膝のケガの経験者。トップで戦っている人だからこそ、ケガの辛さを人一倍知り、親身に相談に乗ってくれた。実際に、1回目のケガの時に焦ってしまい再受傷した桂。そんな時に言われたのが「頑張ることと無理することは違う」。自分も、身をもって実感した。

インカレで約1年半ぶりにコートに立った桂(左)

 そして、インカレで復帰。「お互いを認め合って進んでこれた」という同期の境美潮(スポ4=神奈川・座間)と同じタイミングだった。実は、後輩のヤヤと江頭璃梨(スポ2=宮崎・小林)の粋な計らいによるもの。試合終盤、監督のもとへ言いに行ってくれたという。久しぶりの公式戦に立ってみて、声援の力を体感した。有観客のインカレは、1年生のとき以来。自分が出ていた時間ずっと、ベンチや観客席の声が聞こえ、リバウンドをとった時も盛り上がってくれたのがうれしかった。練習のコートの時とはまた違った、プラスアルファの力が出てくる感覚に、バスケそしてスポーツの素晴らしさを感じることができた。結果は、ベスト8。目標に届かなかった悔しさはあるものの、周囲の支えもあり最後にプレーすることができた。

 バスケットボールは大学で引退する。1回目に膝をケガをした時、このまま大学では終わりたくない、続けたいという気持ちが大きかった。しかし、この先はさらに厳しい世界であることは念頭にあったため、大学で引退することを2回目のケガのとき清々しく前向きに決断した。しかし、引退して2ヶ月。競技を再び始める可能性はあるか問うと、「膝をちゃんと治療したら、またやりたくなるかな。簡単な世界ではないので、その時の自分の体や環境と相談しながら」。

 桂が、激動の4年間を振り返って出てきた言葉は「感謝」。ケガに泣いた期間が長かった中で、チームメイトがいつも支えてくれた。入学前のイメージ通りの楽しいバスケができる環境や、支えてくれた人たちに感謝の気持ちでいっぱいと語る桂の顔は充実感に満ちていた。

(記事 戸祭華子)