【連載】インカレ直前特集『TRUST』第4回 G井関夏美副将×G伊沢なつみ×F平田彩乃

女子バスケットボール

 「4年生にはそれぞれの役目がある」と後輩に慕われ、ことしの4年生は確固たるチームワークを築いてきた。関東大学女子リーグ戦(リーグ戦)ではコート内を任される場面もあったG井関夏美副将(社4=神奈川・金沢総合)。躍動感溢れるプレーが印象的なG伊沢なつみ(スポ4=東京成徳大)。けがによりリーグ戦は出場ならなかったものの、コートの外から仲間を支えたF平田彩乃(社4=長崎西)。G神﨑由香主将(スポ4=福岡・中村学園女)、C桂葵(社4=愛知・桜花学園)とともにチームを作り上げた3人に、それぞれのラストシーズンの思いを聞いた。

※この取材は11月22日に行われたものです。

「自分たちの出来によってスタートの人たちの戦い方につながってくる」(井関)

レイアップシュートを放つ井関

――最後のリーグ戦に懸ける思いというのはどんなものだったのですか

井関 やっぱり後輩だった頃とは違って、4年生として迎えるリーグ戦というのは、気持ちの面ですごく違うな、というのを感じていて。特に自分は相手役をすることが多かったんですけど、その中でも引っ張っていかなきゃという気持ちはすごく強くて。自分たちの出来によってスタートの人たちの戦い方につながってくると思っていたので、そういう部分ではすごく気合いが入っていたと思います。

伊沢 私もリツコ(井関)と一緒で、4年生になって気持ちの面で違うなという部分がありました。リーグ戦初優勝というのが懸かっていて、やっぱり勝ち進んでいくごとに「やらなきゃ」というのが、初戦からあったんですけど、「やらなきゃいけないんだな」という気持ちがどんどん増えていきました。

平田 振り返ってみてまず思うのは、本当に優勝できて良かったなということで。この結果に対しても、試合に出ている人出ていない人関係なく、スタッフ含め全員がその結果に喜ぶことができるということが、全員で取り組めた証拠なのかなと思いました。個人的には最初の4週間は参加できなくて、私がいないところでみんなが頑張っていて、速報を見て結果だけ知るという感じだったんですけど(笑)。辛い面もあったけど、みんなが頑張ってくれているのを見たり感じたりして、自分もできることをやろうとすごく思いました。あとは、きょねんまではシキさん(藤生喜代美アシスタントコーチ、平25スポ卒)がスカウティングをやってくださって、スタッフがまとめてくれたものを練習前とかにみんなでシェアしていたんですけど、ことしから全員がビデオを観てスカウティングをして、4年生がまとめて、それを練習前にみんなでやって、というのをやっています。このきょねんと違ったところで、そういうところに関しても全員で取り組めたのが良かったかなと思います。

――スターティングメンバーへの試合後のインタビューでは、ベンチメンバーのはたらきに触れられることが多くありましたが

井関・伊沢・平田 それは嬉しいです。(笑)

――そのために工夫していたことはありますか

伊沢 どれだけ再現できるかというのは考えてやってきたんですけど、やっぱり足りないところがすごくあって。すごく競った試合が多かったと思うんですけど、アジャストしているメンバーがもう少し練習で再現できたら、というところが反省点でも挙がっていたので、スタートの人にそういうふうに言われるのは嬉しいんですけど、インカレに向けてもう少しやっていかなきゃいけないなという感じです。

井関 でも何か毎週毎週自分たちアジャストのチームが、火曜と水曜は上手くできなくて、で木曜と金曜はちょっとこっち(アジャストのチーム)の方がいい雰囲気になった、みたいな。それもオーさん(萩原美樹子ヘッドコーチ、平17二文卒=福島・橘)に言われてしまっていて。まあらいねんはもうないから反省のしようがないんですけど、そういう部分ではもっと早くなりきれれば良かったなという反省点があります。

――平田選手はコートの外から仲間を見ていて、ご自身はどんな役目を果たされていたと思いますか

平田 最初は自分でもやってきたつもりになっていて、でもリーグ戦期間中にご指摘を受けて。考えてみても、自分で「ちゃんとできた」って思い切れないと、最後見ていたときに素直に喜べないかなと思って、そこからちょっと意識が変わりました。スカウティングに対しても、人より多くビデオを観たり、スタッフの手伝いで、相手の特徴を分析したり、攻撃の回数を数えたりとか。個人のスカウティングも、いかにコートで表現するプレーヤーの形にするかというところを意識してコートの外から見ていました。でもいかんせんコートまでの距離が遠すぎて声をかけられなかった(笑)。やっぱりコートの外からわーって言っても、聞こえないっていう。みんな一生懸命になっちゃっているんで。そこをもうちょっと、どう伝えれば良かったかな、と工夫するべき点が課題でした。

「熱いチームになりました」(伊沢)

ジャンプシュートを狙う伊沢

――ワセダのチームを他の人に紹介するなら、どんな魅力を伝えたいですか

井関 私が思うのは、いい意味で、誰が4年生か分からない、ということです。

平田 風通しがいいってことだよね。

井関 そう。自分たちからすれば、うちら5人が4年生なんだってことが分かってもらえないのはちょっと寂しいんですけど…(笑)。

伊沢 それって魅力?(笑)

平田 よくないかもしれないね(笑)。いや、でもいい意味でだからね。

井関 そう、下級生たちもいろいろ主張してくれるし。

平田 フラットな立場で物事を言えるって感じ。先輩だから言いにくいってことはないし。

伊沢 あとは、オンオフがはっきりしてる。

平田 あー、それは間違いないね。

伊沢 バスケのときはバスケ、バスケ以外のときはバスケ以外、という感じで、本当にオンオフがはっきりしています。あとなんかある?いいチームとしか言ってないよ(笑)。

平田 そう、でもすごくいいチームなんだよなー。本当に。

井関 あとはすごく粘れるってところかな。

平田 神﨑主将を筆頭にね。

伊沢 熱いチームになりました。

――神﨑主将の話が出ましたが、伊沢選手、平田選手から見た井関副将はどんな印象ですか

伊沢 かんちゃん(神﨑)とリツコって言ったら、すごく対照的。かんちゃんはすごく熱い人なんですけど、リツコはクールなタイプなので。それでもすごくもがいて、すごくみんなを引っ張ってくれている感じがするので、頼れる存在です。

平田 バランスは取れているよね。

――お2人の言葉を聞いていかがですか

井関 まだまだなので。インカレまであと12日(取材は11月12日)ですけど。

まずチームを第一に考える4年生

――普段の練習の雰囲気はいかがですか

井関 最近はあまりいい練習ができていなくて。選手の中でもちょっと堅くなっちゃっている部分が出てきて。なんか、ポジティブに捉えられない感じ、だよね。

平田 ちょっと自信なくしちゃった、みたいな。すごくいい雰囲気で練習していたんですけど、いざ他の強いチームと練習試合ということになると、あんまり良くない内容になってしまって。それで課題が出てきてから、もがいている、みたいな。

井関 オーさんの気持ちと自分たちの気持ちにギャップがあるというか、そういう部分があったので、自分たちの練習にするという意味で、きのうはオーさんも来ないでシキさんもあんまり喋らないという状態での、自分たちで考える練習をする、ということをやっていました。でもリーグ戦のときはすごくいい練習ができていて、それが土日の試合にもつながっていたと思うので、ここでどう乗り切れるかがインカレの結果につながってくると思います。

――先ほど井関選手のことを伺いましたが、伊沢選手に対してはお2人はどんな印象を持っていますか

平田 伊沢は、プレーは熱いです。顔はクールなんですけどね(笑)。ディフェンスの粘りっこさとか、虎視眈々とセンターへのパスを狙う、というか。

井関 一緒に白チームを引っ張っていく同学年として、自分がいっぱいいっぱいになっちゃっているとき、自分もコートでやらなきゃいけないしみんなのことも見なきゃいけないというときも、さらっと声をかけてくれて。すごくお世話になっています。

――平田選手に関してはいかがですか

伊沢 けがをして(試合に)出られなくなってしまって、やっぱり時期が時期なだけにすごく悔しいと思うんですけど、それでも顔色一つ変えずにチームのためを思ってやってくれるということは、すごく尊敬できるし、勝つことでユズ(平田)のためにもなるというか。ユズもチームが勝つためにやるんですけど、選手が勝つことでユズがやってきたことの結果が出ると思うので、本当に勝たなきゃな、と。

平田 お願いします。

井関 自分も、自分が今の時期にバスケットができない、となったら本当にすごく辛いなと思うんですけど、それでもやっぱり4年生としての仕事をしっかりやっているので、すごいなと思います。あとは、前にユズがやっていたような位置にいま私がなっていて、ちょっとだけ最後に出るとか。そういうときの心構えとか、どういう気持ちでコートに立つんだよとか、そういうところを言ってくれて。ユズは怒られ役のことが多いんですけど、でも…。

平田 恥ずかしいな、なんかこれ(笑)。

井関 まあやれないことも多いんですけど。

一同 (笑)

井関 でも、考えているんだな、というのがすごく伝わってきて。頑張らなきゃなというのを思いました。

平田 常に怒られてしかいなかったもんなー。頭では分かっているんだけど。一番の悩みだな。

――オフの日は何をして過ごされていますか

伊沢 マイブームないんですけど。どうしよう。

平田 オフの日何してるの?

伊沢 うーん、遊んでる。

平田 私引きこもってるな。いや最初は、歩けなかったから(笑)、松葉杖と装具とかで私服ガンダムみたいになっちゃうのが嫌で。でも最近は勉強してます。就職先の資格試験があるので。追われています。

井関 近くに温泉があるので、土日とかで試合が終わった後とか、結構4年生になって疲れが取れなくて。

伊沢 めっちゃわかるそれ。

平田 年だねー本当に。

井関 で、私その温泉についている「あんま王」っていうマッサージチェアに本当にはまっていて。それ欲しいなって思うくらいはまっています。温泉にも行きたいけど、マッサージチェアもやりたいみたいな。近くに岩盤浴とかもあって、それで行っています。

平田 何かアクティブじゃなくなってきたよね。

伊沢 遊んでるとか言ったけど、そうだね。でも飲み会行ったりとかしてる。次の日考えて遊びます(笑)。

――バスケ部同士で遊ぶことはないのですか

伊沢 あんまり。私後輩と遊んだことないわ。

井関 チイ(SG酒井愛、社3=神奈川・金沢総合)とか。

平田 この間ハロウィンのコズプレしてたね。

井関 はい、ティンカーベルの。同じ高校の友だちと後輩で、一緒に仮装しました(笑)、下北沢のところで。練習終わりだったので結構もう終わっていたんですけど。

平田 やっぱリツコはガチだね。あとはあれかな、4年生の、桂誕生日会。

伊沢 4年生が5人しかいないので、毎回誕生日会をやっているんですけど、毎回サプライズを考えて。今月は試合が終わった後に、目隠しして音楽を爆音で聴かせてそのまま電車に乗せて、私の家まで連れて行きました。

井関 あとはみんなで北海道フェアに行く計画とかしています。

「自分にしか出来ない役割を果たす」(平田)

ベンチで声をあげる平田

――最後のインカレに向けて、個人的に目標にしていることはなんですか

井関 私は、13年間続けてきたバスケの集大成ともなるので、高校のときの最後の試合は、すごく後悔の残る戦い方になってしまったので、インカレの5日間もそうですし、それまでの練習でも後悔が残らないように日々やっていきたいと思います。

伊沢 私もこの大学でバスケ生活が終わるので、ずっとやってきたバスケの最後として、リツコが言っていたように、悔いが残らないように、最後は優勝して終わりたいなと思っています。なので、練習からしっかり4年生としてやるべきことを果たすことと、あとはやっている姿をしっかり後輩たちに見せて、何かしら(印象に)残ってもらえるような選手になれたらな、というふうに思っています。

平田 バスケ人生としてはまだ辞めるわけではないんですけど、大学バスケの4年間の集大成として、コートで表現できない分、外から見ていて気づいたこと、それぞれの表情とかを察知して声かけをするとか。人としての成長を目標に頑張るというか。コートで表現できない分、どこで表現するか、というか。コートで表現している選手に、どこでアプローチするかです。スタッフ目線でもプレーヤー目線でもどっちも、分かるというか。自分にしかできない役割を果たすことが目標です。

――最後に、チームでの目標を教えてください

井関 せーの、

平田 え、どの言い方にするの?

一同 (笑)

井関 せーの、

井関・伊沢・平田 日本一です!

――ありがとうございました!

(取材・編集 宮西祐香子)

『NO.1』をつくってくれました

◆伊沢なつみ(いざわ・なつみ)#29(※写真左)

1992年(平4)8月2日生まれ。161センチ。東京成徳大高出身・スポーツ科学部4年。ガード。コートネーム『シー』。コートでは先陣を切ってボールを追いかける姿が印象的な伊沢選手、実は試合前やタイムアウト時のかけ声を担当。彼女の一声でチームが引き締まります

◆井関夏美(いせき・なつみ)#28(※写真中央)

1992年(平4)6月2日生まれ。161センチ。神奈川・金沢総合大高出身。社会科学部4年。ガード。コートネーム『リツ』。きょねんに引き続きKis−My−Ft2の話題で盛り上げてくれた井関選手。平田選手に突っ込まれながらも副将としての責任感を真剣に語ってくださいました

◆平田彩乃(ひらた・あやの)#17(※写真右)

1992年(平4)7月5日生まれ。175センチ。長崎西高出身。社会科学部4年。フォワード。コートネーム『ユズ』。秋季はけがにより戦線離脱したものの、チームに貢献し続ける平田選手。その語り口からはチームへの熱い思いが伝わってきました