【男子バスケ】1年越しに挑む最高峰の舞台 「観客を魅了するバスケット」で4年間の集大成を/関東大学リーグ戦展望

男子バスケットボール

 8月27日に開幕を迎える関東大学リーグ戦(リーグ戦)。今年から1部に復帰した早大は、下級生の頃からチームを引っ張ってきた選手たちが最高学年を迎える勝負の年となる。有力選手のプロ転向が相次ぎ、混戦模様が予想される今年のリーグ戦。唯一無二のバスケットで頂点を目指す早大を中心に今大会を分析する。

超攻撃的なバスケットが武器

 今年の早大の特徴はペースの速い高速バスケットだ。今年から再度倉石平ヘッドコーチ(昭54教卒=東京・早実)体制になると、掲げた目標は「観客を魅了し、応援されるチームになる」。素早いボールプッシュや長いパスから速攻を仕掛け、オープンがあれば臆せず3Pシュートを打つ攻撃的なスタイルにたどり着いた。留学生を持たず、ウイングのF堀陽稀副将(スポ4=京都・東山)やF松本秦(スポ1=京都・洛南)が5番を務める時間も多い早大。インサイドの不安こそあれど、スモールラインナップ最大の武器である機動力で関東1部に旋風を巻き起こす構えだ。

 昇格組として1部に挑む早大だが、タレント力では他の大学にも引けをとらない。中でも今期もっとも輝きを放っているのはF三浦健一(スポ3=京都・洛南)だ。東京六大学リーグ戦で得点王を獲得しシーズンを開幕すると、スプリングトーナメントでは3P王を獲得。得点ランキングは5位の4戦72得点、eFG%は64%と圧倒的な数字を残した。今季からさらに迫力を増した早稲田のフィジカルモンスターには大きな期待がかかる。

スプリングトーナメントでは驚異的な爆発力を見せた三浦

 ガードではG岩屋頼主将(スポ4=京都・洛南)とG下山瑛司(スポ3=愛知・中部第一)に注目だ。リーグ屈指のスコアリングガードである岩屋主将は、昨季のリーグ戦で3P王を獲得するなどチームトップの平均15.9得点を記録。シュート力が最大の持ち味だが、今年は3x3の経験により積極性と打開力にも磨きがかかっている。強敵ひしめく関東1部の舞台でどこまで存在感を見せられるだろうか。下山は大学バスケ界随一のスピードを誇り、昨季は岩屋主将に次ぐチーム2番目の出場時間で平均3.8本のアシストをマーク。シックスマンとしての起用が増えている今季は得点力の向上を目標に掲げており、アシストと得点の両面でのステップアップに期待が高まる。

岩屋の存在なくして早大は語れない

 ウイングでは三浦の他に堀副将と松本が柱となるだろう。堀副将の持ち味は唯一無二のリムアタック。ファウルドローに秀で、昨季はリーグトップとなる1試合平均4.9本のフリースローを放った。スモールラインナップで挑む早大ではリバウンダーとしての役割も大きく、スプリングトーナメントでは平均9本で全体4位のリバウンド本数を記録。速攻のフィニッシャーとしても優秀な堀副将は早大のバスケットに必要不可欠な存在だ。松本は1年生ながら早くもチームの中心人物として活躍。高精度な3Pや191センチの身長を生かしたリバウンドでチームに貢献している。6月の代表活動中に右肘を負傷したものの、現在は復調傾向。新人戦では1試合平均40得点を記録したスーパールーキーがチームの起爆剤となれるだろうか。

フォワード陣によるインサイドでの奮闘が必要不可欠だ

 3Pを主体にする早大にとってシューター陣の活躍は欠かせない。中でもG堀田尚秀副将(スポ4=京都・東山)とG高田和幸(商4=京都・洛南)の調子は勝敗を左右するだろう。堀田副将はプレーのほとんどを3Pシュートが占める生粋のシューター。スプリングトーナメントでは出場機会に恵まれなかったが、早関定期戦では抜群のシュートタッチを見せた。高田はシュートだけでなくディフェンスにも優れ、昨季は多くの出場機会を獲得。1年生の頃からしのぎを削ってきた4年生シューターのプレータイム争いにも注目だ。

堀田の3Pシュートは当たりだしたら止まらない

 他大学にも目を向けると、優勝候補筆頭は昨年準優勝の白鴎大だろう。エースの佐藤涼成(4年)はBリーグドラフトの全体1位指名候補であり、先日のアジア大学バスケットボールリーグではアジアの強豪大を前に堂々たる活躍を見せた。留学生のモンガ・バンザ・ジョエル(4年)の他にも小川瑛次郎(2年)やロイ優太郎(2年)ら下級生の突き上げも大きく、今年はシルバーコレクター脱却へ最大のチャンスとなる。早大は初戦から白鴎大との対戦となるが、強敵相手にどこまで食い下がれるだろうか。

 昨年の覇者・日体大とスター軍団・東海大はそれぞれ小澤飛悠(現・名古屋D)、渡邉伶音(現・A千葉)といった大学日本代表の選手がプロ転向により退部。戦力ダウンとはなるが、それでも両チームともに留学生を含めた豊富なタレントを揃えている。各大学によるに最後まで行方が分からない優勝争いとなりそうだ。

し烈な残留あらそい

 1部残留に目を向けると、神奈川大、中大、筑波大、青学大あたりがライバルになるだろう。神奈川大はスーパールーキーだった長谷川比源(現・滋賀)がプロ転向により退部。大エースである身長163センチの山本愛哉(4年)がチームを上位へ導けるだろうか。

  中大は身長200センチの大学日本代表ビッグマン・深澤桜太(2年)の負傷が大きな痛手。それでもエースの高山鈴琉(3年)や坂口大和(3年)を筆頭にシュート力に優れた選手が揃っている。早大は今季スプリングトーナメント、新人戦で中大に2連敗中であり、その雪辱を果たしたいところだ。

 今年から新体制となった筑波大は岩下准平(4年)や福田健人(4年)、ルーキーの高田将吾(1年)などタレントが揃う。それでも今年のスプリングトーナメントでは早大が93ー77で勝利。リーグ戦でも返り討ちといきたい。

 青学大は昨年から横浜BCのGMである竹田謙氏が監督兼ヘッドコーチに就任。かつて黄金期を築き上げた「強豪青学」の復活を目指している。注目選手は中学時代からその名を馳せた新井翔太(4年)だ。昨年は計4試合を戦った同じく昇格組の宿敵。残留に向けて負けられない相手だ。

最後のシーズンを迎える4年生たち

 2年前に味わった屈辱の2部降格。あの日悔しさを味わった下級生たちは学年を重ね、今やチームを引っ張る存在となった。再び1部の舞台へ舞い戻り、集大成の1年として迎える101回目のリーグ戦。約2カ月間に及ぶ22試合の長い旅路が今始まる。

(記事 石澤直幸)