【連載】全日本大学選手権直前特集『BEYOND THE LIMIT』 第5回 星川堅信×細溪宙大×兪龍海

男子バスケットボール

 第5回に登場するのは、個性派ぞろいの3年生、星川堅信(スポ3=京都・洛南)、細溪宙大(教3=東京・早実)、兪龍海(スポ3=神奈川・桐光学園)。今年から上級生となった彼らに、2022シーズンと全日本大学選手権(インカレ)、そして4年生への思いを聞いた。

※この取材は11月18日に行われたものです。

お互いの紹介

星川

ーー他己紹介をお願いします

星川は最近、ヘアスタイルのバリエーションが増えました。あくまで僕の意見なのですが、(星川は)髪型を変えてからあまり調子が上がっていません。

一同 (笑)

あと、大学生は飲み会をすると思いますが、星川は読書という予定をぶち立てて、毎回断ってきます。変人です。

星川 まあいいけどな。

ーー髪型はどうやって決めているのですか

星川 血迷ってるだけ。

細溪 血迷ってる自覚あるんだ。

星川 あるある。ゴール見えてないもん(笑)

ーーでは星川選手から、細溪選手を紹介していただけますか

星川 膝だね。膝が曲がらない。膝にネズミがいるんよ。

細溪 『関節ねずみ』という病気で。

星川 あとは… バスケの授業のTA(ティーチング・アシスタント、学生が授業担当教員の補助を行う制度)を一緒にやっています。今日もやりました。あとは、良いやつです。これは褒めてるよな。

細溪 うん。褒めてる。

ーー最後に細溪選手から、兪選手の紹介をお願いします

細溪 龍海は、やることはやる。試合を観ていても分かる通り、(コートに)出たら結果を残して帰ってくるんだけど、口と態度が悪い。

星川 褒めてるな、それは。

細溪 褒めてる褒めてる。最近はプライベートで後輩を連れて飲みに行ったり、龍海の家に泊まったりと、部員との距離感が近くなってきている気がします。

ーー何かきっかけがあったのですか

 暇だったから(笑)

一同 (笑)

細溪 やることはやるし、口が悪いだけで態度はだんだん丸くなっているので、この調子で行ってほしいと思っています。

星川 親か。父親やん。

細溪 このまま真っ直ぐ育ってほしいです。

関東大学リーグ戦(リーグ戦)を振り返って

細溪

ーー昨年までとは異なり、上級生となりました。何か変化はありましたか

細溪 4年生がいない練習が一度あったのですが、そういう時にしっかり声を出して引っ張らなければいけないという自覚が生まれました。

星川 3年生か。早いな。あと1年、あっという間だな。今年のリーグ戦はしんどかったね。耐えたな、最後。

細溪 よく頑張ったと思うよ。

ーー下級生の活躍ぶりはいかがですか

細溪 1年生すごいよね。

星川 あいつらすごい。うまい。

細溪 倉石さん(倉石平ヘッドコーチ、昭54教卒)が期待していることを1年生自身も分かっているだろうし、実際にリーグ戦でしんどい状況になっても(試合に)出し続けられる1年生でした。やっぱり能力があるし、センスもあるし、頼れる後輩です。あと、良いやつらだよね。おもろいし。ふざけ合うことができる、かわいい後輩です。

星川 友達みたいな感じやな。

ーー兪選手は春日裕樹学生コーチ(文構3=東京・国学院久我山)と仲が良いと聞きました

 こいつら(星川と細溪)には誕生日にプレゼントを買わないんだけど、春日には靴を買ってあげた。

細溪 ちゃんと良いやつをあげてたよね。

 俺にちゃんと指摘もアドバイスもくれるのはあいつくらいかな。みんなが俺に対して言いづらい部分も、あいつはストレートに言ってくれるからありがたいと思っています。親友です。

ーーリーグ戦の中で、どの試合が印象に残っていますか

細溪 チームとしては、2巡目の国士舘大戦ですね。あの試合が自動降格かどうかの瀬戸際で、リーグ戦のターニングポイントでした。個人としては、1巡目の拓大戦です。プレータイム中に点数も取れて、自分の中で一番良い出来の試合でした。あのような試合を増やせたらいいなと思います。

ーー兪選手は、2巡目の拓大戦から出場機会が増えていました。その試合を振り返っていかがですか

 まさか出だしであんなに緊張するとは思っていませんでした(笑)

ーー星川選手は、印象に残っている試合はありますか

星川 2巡目の青学大戦はあまりやりたくなかったかも。俺らは「チームのことをやって勝とう」という雰囲気だったけど、相手は自動降格が確定した次の日でしんどそうだったので。

ーー早大も苦しい時期が続いたと思いますが、どのような心境だったのでしょうか

 「俺を出さないのかな」と思ってた。出ている人たちに頑張ってもらおうとも思っていました。

星川 毎週試合があるんだったら、どれかに絞ろうとも思ってたな。でも、そんなことも言っていられないので。しんどかったね。長かったよね。

細溪 長い。本当にしんどかったよな。

星川 勝てそうにない、というのがしんどかった。負けが続いていたから、そのイメージが残り過ぎていたかもしれない。

細溪 『2部降格』が目前に見えてきて、雰囲気を良くしようと思ってもみんなそれが頭にあって。そして堅信が言ったように、勝つ姿をイメージできない時間が続いて、きつかったですね。

ーーそのような苦しい時期を乗り越えて、成長した点はありますか

細溪 心はタフになったかもしれない。インカレもう怖くないもん(笑)

 インカレはストレスフリーで戦えるよね。

細溪 チームとして、1巡目と2巡目の違いで言えば、2巡目は勝つべき相手に勝てるようになったというか。1巡目は青学大や国士舘大に追い越されて負けていましたが、2巡目はそういった要所をとれるようになりました。要因はたくさんあると思いますが、個人的には、気持ちの面よりも選手の出し方などが大きいかなと思うので、成長と言えるかは分かりませんが、一つの変化でしたね。

ーー細溪選手は、ベンチで積極的に声を出している印象があります。試合中に限らず、チームに対してどのように働きかけようと意識しているのでしょうか

細溪 試合中は正直、ベンチで声を出すことしかできないから声を出しているという面があるのですが、「一緒に戦う」という意識を持ってベンチで騒ぐようにしています。練習中は、見て分かる通り左右がこれ(星川と兪)なので(笑)。声を出したり、積極的に引っ張ったりすることが俺の仕事だろうと昨年から思っています。

 頑張ってくれ。

一同 (笑)

ーー星川選手は、チームの核となる選手だと思います。ご自身では、自分の役割をどのように認識していますか

星川 期待はされていると感じます。でも、何だろう…

 何も考えてないじゃん。

細溪 何も考えてないね(笑)

星川 選手としては、特段考えていないです。人として「こうなりたい」というものはあるのですが。

ーー3年生の学生コーチ3人との関係性は

 (学生コーチが)いなかったら降格していたと思う。スカウティングとか、サイドライン際どい球についてプレーがコールされたときに「次はこうだよ」とコーナーから教えてくれるとか、助かっている部分がある。それに、大事な試合でも、応援したい気持ちはあるんだろうけど「相手のプレーコールを優先してほしい」って言ってくる。おかげで何度か相手のコールを止められて、相手が攻撃のオプションとして使えなくなるから、本当にありがとうという感じ。

星川 熱いなぁ。これに続けるか、俺。

細溪 存在としてありがたいという観点で言えば龍海が言った通りです。後輩から見ると、サークルでもあいつら(学生コーチ)がローテーションで「これを意識しよう」とか「今日はこれが良かった」と話しているから上にいるように感じてしまうかもしれません。でも個人的には、同期だから接し方や関係性は1年生の頃と何も変わらないかなと思います。

星川 俺はそんなにコーチだと思って接していないかな。

ーー東洋大との入れ替え戦の2戦目が終わった後に、学生コーチが3年生を集めて話し合いをしたと耳にしました。どのようなことを話していたのですか

細溪 井ノ山(琉人、スポ3=東京・豊多摩)に「結果勝ったけれど、4年生や下級生に勝たせてもらった試合だよね。3年生の力が発揮できた試合かと言えば、そうではないよね」と指摘されました。

ーー星川選手は最終3戦目で、ゴール下で体を当ててシュートを打つなど2戦目までとは変わったと感じたのですが、ご自身ではいかがですか

星川 あれは、倉石さんが「自分のプレーを最大限発揮しようとするのも良いけれど、相手に合わせてプレーするのも良いよね」と話していて。僕は自分の持てる力をいっぱい表現できれば良いと思っていたけれど、そのような「相手にアジャストする」という話を聞いて、変えました。

ーー入れ替え戦について、もう少しお話を聞かせてください。各試合、どのような気持ちで臨んでいたのですか

星川 緊張はしましたね。緊張して、本を読もうと思っても読めませんでした。状態はあまり良くなかったです。でも、勝てたので良かったです。

細溪 一番きつかったし、本当に目の前に『2部』があって。負けて当たり前というか、負けても仕方がないと思ってしまう試合が多かったのですが、入れ替え戦1戦目で負けた次の日の朝は「ああ、負けたのか」と思い出すくらいにはきつかったです。2戦目は、本当にギリギリだったけど安心しました。

 俺はいつも通り生活していました。

ーーインカレ出場と1部残留が決まった瞬間の心境は

星川 俺はうれしかったよ。

細溪 僕はベンチで泣いていました。勝って嬉しいし、安心したし、何より4年生がインカレに出られることが大きくて。井ノ山の話があってこいつら(星川と兪)も良いプレーをしてくれて、4年生をインカレまで残すことができたので、嬉しかったです。

――兪選手は、宮川丈クレイトン選手(商4=愛知・千種)や神田誠仁主将(社4=静岡・浜松開誠館)がコートに出るときにうれしそうな表情を見せていました

 あまり試合に出られていない選手が出てきたら、嬉しい気持ちはあります。

インカレに向けて

細溪(左)と兪

ーー他大で意識している選手はいますか

細溪 いません。

星川 いないですね。来年は弟になるかもしれない。

ーー皆さんは今の4年生との付き合いが一番長いと思います。4年生に対して思うことはありますか

星川 最後、コートに立ってほしいかな。4年生が立てればそれで良い。

細溪 堅信が言うように、4年生が試合に出て、満足して終わってくれたら良いかなと思います。

 今の4年生については、入学当初から「こいつらとは絶対に仲良くなれないな」と思っていました。昨年なんかは本当にどうしようか迷っていて。でも今年に入ってから、あの人たちがチームを考えていることは1年生の時から分かっていたけれど、具体的に何を考えているのか自分から聞きに行こうと思って。4年生だけが使っている部室へ行って話を聞いてみたり、4年生が荷物を置く場所に入って普段どんな話をしているのか聞いてみたりしました。そしたら、自分たちを犠牲にしてでもチームのことを考えてくれていて。頑張れる理由が一つ増えた感じがして、リーグ戦1巡目の途中から「この人たちの話をちゃんと聞こうかな」と思いました。どれだけ勝てなくても、(4年生は)いつもと同じ強度で真面目に練習していたし。神田さんに関しては、自分の心が病むくらいに倉石さんと話をしてくれて、「そこまでするんだ」と。昨年は、うまくやっているように見えていたけれど、実際チームが一つになれたかと言われたら謎だった。でも今年は、勝てたときはみんなで喜んだり泣いたりしていて。やっとの思いでつかんだインカレで、日本一を狙えるチャンスがあるブロックにも入れたから4年生が試合に出られるかどうかは確かじゃないけれど、俺らが勝っている試合のガベージタイムで(4年生を)出してあげたいと思う。世間は「ガベージ(=ごみ、不要なもの)」と言うかもしれないけれど、絶対にベンチは盛り上がるし、4年生全員をちゃんとコートに立たせてあげたいという思いがあります。

星川 熱いなぁ。締め?

細溪 良いね。締めだね(笑)

ーー星川選手と細溪選手も、最後にインカレへの意気込みだけ教えていただけますか

星川 ここから喋るのはやばいよ(笑)

細溪 コートに立っても、コート外でも、それまでの練習でも、「どれだけ価値を発揮できるか」を意識して頑張りたいと思います。

星川 俺は… 難しいなぁ。

細溪 俺が話している間、何を考えていたの(笑)

星川 みんな期待してくれていると思うので、それに沿った準備をして頑張ります。

ーーありがとうございました!

(取材・編集 落合俊 大滝佐和 荒井理沙)

◆星川堅信(ほしかわ・けんしん)(※写真手前左)

2001(平13)年11月1日生まれ。190センチ、93キロ。京都・洛南高出身。 スポーツ科学部3年。色紙『魂』「普段言葉にしない分、自分の魂をコートで表現したい」

◆細溪宙大(ほそたに・みちひろ)(※写真手前右)

2001(平13)年4月30日生まれ。186センチ、86キロ。東京・早実高出身。 教育学部3年。色紙『Prove My Value』「まささん(神田誠仁主将、社4=静岡・浜松開誠館)のどんなとこにいてもチームのためのvalueを発揮しろって言葉が印象に残ったから!」

◆兪龍海(ゆ・たつみ)(※写真奥)

2001(平13)年7月9日生まれ。197センチ、90キロ。神奈川・桐光学園高出身。スポーツ科学部3年。色紙『BE GREAT #TATSUMI』「我慢するべきことが多いから」