第70回早慶定期戦特集―首脳陣篇―

男子バスケットボール
 (早大)倉石平総監督×(慶大)佐々木三男ヘッドコーチ

 早慶戦で戦うのは選手だけではない。大舞台に向けチームを仕上げ、試合でベンチから采配を振るう指導者の役割も非常に重要となってくる。今回は早大の倉石平総監督(平54教卒=東京・早実)と慶大の佐々木三男ヘッドコーチ(HC)のお二人にお話を伺った。日本バスケットボール界の重鎮が抱く早慶戦への思いとは。日頃から日本のバスケットについて熟考しているお二人だからこそ出てくる独自の意見もあり、とても興味深い内容となっている。是非お楽しみいただきたい。

※この対談は4月28日に行われたものです。
※諸事情により掲載が早慶戦後となりました。

昨年の早慶戦を振り返って

――まずお二人の関係について教えていただけますか
倉石総監督 そう言われるとすごく難しいですね。自分が大学の世界に戻ってきたのが8年前ぐらいなので、それ以来ずっとです。確か佐々木先生はその少し前から慶大で始められていたと思います。僕はJBL(日本バスケットボールリーグ)でおよそ20年弱やっていたのですが、佐々木先生はずっと女子を教えられていましたから、大学に来る前のカテゴリーが違いますね。

――指導者としてのお互いの印象は
倉石総監督 佐々木先生は女子のすごくきめの細かいバスケットをやられていたので、戦術、戦略に関してもすごく細かいところまで指導されているという印象はありますね。現実そういうバスケットを展開されていますし。昔の慶大のバスケットと言うと少し大雑把な印象があったんですけど、今はそんなことはないですよね。すごくこだわりを持ってやられているという印象があります。
佐々木HC 倉石さんはずっとJBLで指導なさっていたので、選手に対して、メンタルにおいてもフィジカルにおいても強さを求められているという印象があります。あとは、選手の操縦術にすごく長けていて、ここのところうちは早大にやられていますけど、その2つでやられていますね。心と身体を強くすること、それから選手の育成において、シューター、インサイドなど、それぞれのポジションで強い選手を育てるのが上手だなという印象です。

――早大にやられている、という意味では昨年の早慶戦は101-74と早大の完勝でした
倉石総監督 きょねんはうち(早大)にとっては何年間か計画していた中の頂点だったわけで、逆に慶大からしたら強い選手が何人も抜けて結構辛かった年だったわけで、それがたまたま合致してしまったのがああいう結果につながったのかなと思います。あそこまでの実力の差はなかったんですけど、びっくりした分の点数の差が出たのかなと思います。

――早大にとって、昨年のチームは理想的なかたちのチームだったのでしょうか
倉石総監督 あれだけ連戦連勝で来ていたので、そこまで大きなポカはしないだろうという感覚はあったのですが、内心は不安を抱いていたというのが現実でした。

――昨年、早大は早慶戦前の関東大学選手権で8位といういまひとつな結果だったのですが、その後の早慶戦では違うチームに仕上げてきたという印象があります
倉石総監督 いやそれは見た目だけですよ。そんなに中身が大きく変われるわけではないですし、どれだけ選手のコンディションやモチベーションをコントロールできるかというだけの話です。そういう意味で言うとトーナメント(関東大学選手権)で最終日まで試合ができて、コンディションが整ったというのは大きかったですね。かたや慶大は途中で負けてしまって、空白の時間が長かったのは苦しかったのかなと思います。たった3日間と言うかもしれないですけど、その3試合ができるかできないかというのはその後の短い調整期間の中ではすごく重要になってきます。しかもその3試合もタイトな戦いになった訳で、その差がすごく大きかったかなと思います。
佐々木HC 昨年は歴史にない程の大敗だったので、私としてはすごく責任を感じています。倉石さんが言われたように、昨年はレギュラーが抜けてしまって苦しいシーズンではあったんですが、それまでのチーム作りというのが上手な子に頼っていたということがあったので、その反動がああいう差になって表れたと思います。今までだと悪い状況になっても、プレーを変えさせたりすると少しはリズムを戻すことができたんですが、きょねんは全くそれができませんでした。私としてはすごく早いタイミングでタイムアウトを取って手当てをしたつもりだったんですけど、それが歯止めにならなかったということで、ある意味完敗だったかなと思います。

早慶戦の思い出と歴史

――それでは今までの早慶戦を振り返っていただきたいのですが、お二人の中で思い出に残っている早慶戦はありますか
倉石総監督 自分はいいことしか覚えていません(笑)。その中ではっきりしたいい思い出といえば、3年前にインカレ(全日本大学選手権)で優勝しているようなチームに勝った試合ですかね。確かあの年は慶大がインカレで準優勝した年で選手もいいメンバーがいたわけで、僕らとしたらすごく厳しい状況だったんだけど、トーナメントで負けたのと相まって選手には徹底してディフェンシブにするように言ったわけで。元々慶大は80点、90点取るようなチームでしたけど、それを相当ゆっくりなペースにして60点台のゲームに下げたら結構リズムを崩してくれたので、自分としてはしてやったりという感じでした。ただ1回しか通用しませんでしたけどね。2回目になったら大敗でしたから。10回やったら1回しか勝てないようなところを早慶戦の時はたまたま勝つことができたという感じです。
佐々木HC 私はキャプテンが加藤(将裕、平20慶大卒)の時です。公輔(竹内、平19慶大卒=現トヨタ自動車アルバルク)と泰滋(酒井、平19慶大卒=日立サンロッカーズ)が抜けた年かな。あの時はあんまりチームがいい感じではなかったんですが、少し練習で徹底をして、色んな作戦をやったのがたまたまキャプテンの調子が良かったこともあって勝つことができたので、そのことは印象に残っています。あともう1つは確か会堂でやった試合で、私にとって初めての早慶戦だった年です。まだ倉石さんはいなかったと思うんですが、それは印象に残っていますね。

――早慶戦は長い歴史を誇る大会ですが、お二人から見て昔の早慶戦と今の早慶戦で、変化したと感じることはありますか
倉石総監督 早慶が互いに一部リーグでトップを争うようなレベルでの早慶戦というのがここ数年ずっと続いていますけど、それ以前のことを考えると早慶共に二部だったりもしたので、全然違う雰囲気なのではないかと思いますね。ここ10年ぐらいは大学バスケット界においてはかなり注目される大会になっていると思いますけど、それ以前は一般の人にとってみればある意味「勝手にやってればいいよ」というぐらいの感じだったと思うんですよ。でも、それに比べると今は相当レベルが高いと思います。それともう1つは日本の中核を成している早慶という大学なので、新しい戦術、戦略だったりとかそういうものが出てくるわけなので、そういう意味でも注目を集める大会なのではないかと思います。
佐々木HC 私も同じ印象です。13年ぐらい女子をやっていたんですが、私がやり始めた頃はある意味女子は男子の前座みたいなかたちでしたし、お客さんもあまり入っていなかったので、その頃から考えると今は会場が満員になるぐらいにお客さんが来て下さるというのは、技術的にもレベルが上がってきたのをファンの方がしっかりと見ていただけている証拠かなというふうには思っています。それとあともう1つは、早大が早慶戦全種目制覇ということを掲げているので、せめてバスケだけはそれを崩したいと思っています。それは選手もそうですし、指導者もそういう意気込みがあるので、そういう意味で言うと観に来て下さる人たちは昔とは違う意味の興味を持って来て下さっているのかなと思っていますけどね。

――選手たちは早慶戦と言うといつも以上に気合いが入っている印象がありますが、指導者であるお二人にとって、早慶戦というのはどのような位置付けなのでしょうか
倉石総監督 春では1番のビッグイベントですね。トーナメントは優勝するに越したことはないですけど、秋に向けた前座のような意味合いもあるのでそこまで重きを置くわけでもないですし、秋に備えるという格好なんですが早慶戦だけはそういうわけにはいきません。どんな手を使っても勝ちたいというのがあるので、春の中では1番大事な試合ですね。早慶戦の後に新人戦(関東大学新人戦)があったりすると、いつも1回戦負けなんですよね(笑)。新人戦を軽視したいわけではないんだけど、軽視せざるを得ないです。それぐらい大事な大会ですね。
佐々木HC 僕がやり始めてからは、春はトーナメントと早慶戦という2つのピークを作ってやっています。トーナメントでうまくいかなくても、早慶戦というどこの大学でもまねができないような大事な試合が残っているということで指導者としてはすごくやりやすいです。学生はすごく意気込んでやっていますよ。私からすると、もう少しリラックスしてほしいぐらいなんだけど、でもそれは誰もが経験出できることではないので、ほとんど放っていますけどね。むしろもっとテンションを上げていけというようなことを言ったりもします。それぐらい大事な大会ですよ。

――そういう意味では選手たちは緊張してなかなかシュートが入らないということも見受けられます。早慶戦にはそれだけ独特の雰囲気がありますね
佐々木HC 僕に言わせれば、インカレの決勝と比べても早慶戦の方がお客さんも多いわけで、ああいう大舞台を経験しているんだから、「インカレで緊張して力を発揮できないなんていうことはあり得ない」ということをたまに言うこともありますよ。それだけ選手たちにとっては大きな経験ができるわけだから、過緊張するぐらいやって、なおかつ早大に勝つことができれば、相当な自信になるのではないかと思ってますけどね。だから、どんどんテンションを上げさせますよ。インカレで優勝しても早慶戦で負けてしまっては、「早慶戦負けた代だよね」とずっと言われ続けるわけなので。

選手の将来を見据えた指導を

――ありがとうございます。それでは少し話は変わりますが、お二人が指導にあたる上で大事だと感じていることはなんですか
倉石総監督 現在自分は日本バスケットボール協会の指導者育成委員長ですし、佐々木先生はエンデバーという選手育成の委員長なので、はっきり言ったら日本の国をどうするのかという話をしているわけで、それとほとんど変わらないと思います。というのは、今は大学の4年間ということしか考えていないけれど、厳密に言えばその前のリクルートもあるし、高校の育成という意味では指導者を育てたりだとか選手を育てたりというのもあるし、もっと掘り下げればミニバスから始まっているわけです。なので、大学はそのうちの4年間というふうにしか考えていません。もっと言えば、日本が早くオリンピックや世界選手権に出られるようにということを考えていますよ。そのためには選手個々の能力を上げなければならない。だから何が大切かと言われれば、世界でも通用する個を育てていくことしかないのかなと思っています。まず世界と比べたらサイズで負けているし、人材発掘という意味では他の競技とも争わなければならないんだけど、今はどちらかと言ったら劣っているよね。我々がJBLでやっていた20年ぐらい前のメンバーを見ると、今より20年前の方が大きいですよ。僕が持っていた熊谷組なんて、3番、4番、5番が全員2mを超えていましたから。それを考えると今は人材不足と言われても仕方ない状況です。それは僕たちが悪いのかもしれないし、他の競技に持っていかれているのかもしれない。日本人全体で見れば平均身長は大きくなっているわけで、必ずどこかにはいるはずですよね。だからそういう選手をバスケットに向けられない、もっと言えばバスケット自体が人気がないのかもしれない。その辺りを掘り下げて多角面から総合して見ていって、いい選手を見つける、育てる、そしてオリンピックに出る、というものすごく長いスパンのことを考えていますけどね。自分が死ぬまでには終わらないと思うけど、次の世代のためにも今頑張っておかないと、というふうに思っていますけどね。
佐々木HC 僕は女子をやっている時からそうなんですが、選手達には泥臭くやってほしいということを言っています。泥臭くやるということは、自分を理解して、さらに相手を理解してやるということなので、まさに知性なんですよ。そこが欠けて、運動能力だけに頼ったバスケットをやるようになると、運動能力が高い人、あるいはバスケットの経験が豊かな人にはなかなか勝てない。だからこそ、背が小さかったら小さいなりの特徴を生かしてチームプレーに結びつける。それが泥臭くやるということなんです。そして、それはさっき倉石さんがおっしゃった通り、日本が目指さなければならない育成のキーワードの1つだと思うんですよね。自分の特徴を生かすという考え方や実践ができる人を育てるということを指導の念頭に置いてやっているつもりです。

――育成というのはミニバスから始まり、大学、プロにまで及ぶわけですが、その中で大学での4年間というのはどのようなものであるべきというふうに考えていますか
倉石総監督 やっぱりアマチュアという面が大きく出てくるんですが、ただその中でも何人かはJBLであったり、日の丸をつけて試合に出る選手もいるわけです。でもそれ以外は大学4年間で終わっちゃう、バスケットは大学で引退という人がほとんどです。もっと言うと他の大学だと部員になれないような選手もいるというのが早慶というチームだと思うんです。つまり、選手の実力に幅がある中で1つのものを追うという独特の雰囲気を持っているのが早慶だと思うんです。だからそれをまとめるということの難しさはありますね。限界を超えてまでやっている選手もいれば、一方ではあぐらをかいてしまう人もいる。それをうまくコントロールしながら、選手の力を最大限に発揮させるようにしないといけないというのは難しいですね。
佐々木HC 大学スポーツをリードするということを学生たちにも求めるし、私自身もそういう意識でいます。倉石さんもおっしゃったように、選手の実力の幅がものすごくありますよ。でもその中でも何か役に立てることはあるはずです。他のチームではコートに立てないような実力の選手もいるんだけど、そういう選手たちとも一緒にやっていくというあり方を世の中に示していく。そうではない大学に、本当に教育の一環を担った課外活動になっているのかという疑問を常に投げかけたいと思っています。でもそれはいい成績を残さないといくら「頑張ります」と言っても意味がないので、そういう意味で言うと、学生には大きな負荷をかけていると思いますよ。日本の部活のあり方まで問うこともあるので。そういう意味で言うと、大学バスケの課外活動の中では少し特殊な部分があると思います。ここでの4年間を経て、ひいては社会人として通用する人材になってほしいということを考えながら、大学スポーツというのはあるべきだと思っています。

――倉石総監督からは選手個々の能力を上げるというお話がありましたが、そういった選手の育成もあり、一方ではチームも作らなければならないということで難しさがあると思うのですが
倉石総監督 試合をやる以上は勝つことを優先させなければいけないけれど、それで選手が犠牲になってダメになるということは避けたいと思っています。チームにとって仕方ない負けがあったとしても、その選手が将来「ありがとうございました」と言えるぐらい、もしくは日本の中で強いリーダーシップを発揮できるような選手になってくれればいいかなと思っていますけどね。それを選手に言ったら「ふざけるな」と怒られちゃうかもしれないですけど、逆に言うとそういうふうにしていかないといけない4年間なのかなと思います。
佐々木HC ことし卒業していった選手たちには言ったんですが、場面が変われば人の評価も変わる。だからこの4年間で、何で俺を使ってくれないんだと思っている学生はたくさんいると思いますよ。でも卒業して社会に出たりすると、それが違った意味で評価されて、この4年間が良かったと思える日がきっと来るだろうと思っているんです。「お前なんか使えない」と言うことはありますよ。だってそこまで背が大きくない、身体能力が高いわけでもない、そういう選手はいくらでもいますから。だったら違うことを磨かないとダメでしょう。ことしの卒業生で、一回も試合では使わなかった子から「この4月に新しい会社に入る時に、新入社員代表でスピーチをすることになりました」というメールが来たんです。バスケットでは使えないと言っていた子が違うかたちできちんと評価されているということで、それは大変良かったねと言ったんです。ある意味、ここでの4年間が無駄ではなかったということだと思うので、そういう子がたくさん出てきてほしいと思ってますよ。

いよいよ迎える決戦の時

――それでは話を早慶戦に戻します。今の両校のチーム状況を教えていただけますか
倉石総監督 ことしはトーナメントが早いんですよね。だからさっき佐々木先生がおっしゃったピークのことで言えば、限界があって2月からしか練習をできていないので、そう考えると今は手探り状況なんです。3月に六大学(東京六大学リーグ戦)があって、いま電鉄杯(京王電鉄杯)をやっているので、ある程度の戦力的な問題は解決できるとは思うけど、じゃあそれを1週間後のトーナメントにすぐ反映できるかと言うとすごく難しいですよ。それから3週間が空いて早慶戦なので、その間をうまくコントロールするというのも難しいですね。そういう意味では今までの早慶戦で1番難しいかもしれないです。トーナメントがたった2週間ずれているというだけで、大きな違いがありますよ。この試合自体があと3週間ずれていたら、もう少し真剣にやれることがありますよ。でも今はあまり手の内を出したくないというのもあるので、そう考えるとこの電鉄杯自体がほとんど無意味に近いものになっている感じはありますね。早慶戦に向けての戦術なんて想像もついていないですよ。
佐々木HC 今までの早慶戦を見ても、弱い方が頑張るということがあったように僕は思っているんです。ところがきょねんあれだけの大敗をしてしまったので、ことしはそれこそ是が非でも勝ちたいと思っているんです。ただ、きょねんからの悪い流れを断ち切れていないということの中に、ケガ人が出てしまうということがあります。それも試合に出なければいけない人からケガをしている。ことしはさっきも言ったように1点でも多く点を取って勝ちたいということでスタートしたのですが、今のところは大ピンチですよね。状況は非常に苦しいです。

――目指すスタイルは見えてきていますか
倉石総監督 うちはサイズがないので、やれることは1つしかないですよ。平面で勝負するしかない。おそらく1部、2部でも1番小さいので、立体で勝負されたら圧倒的に負けてしまいます。なので、高さを使われないようにということでやっています。
佐々木HC 慶大としては今190cm以上の選手が5人いるのですが、それは私の知っている中ではなかなかないことです。2mはいたけれど190cm台はいなかったりしたので。でもそのうち今元気なのは2人しかいなくて、しかも他のポジションを見ても試合に出ないといけない人が4人ケガしています。それが早慶戦までに間に合うかというと、あまり期待できない状況です。もしその子たちがいたらという戦術は2月から青写真は作っていたのですが、それが壊れてしまいました。

――ことしの早慶戦でキーマンとなる選手を教えて下さい
倉石総監督 うちは看板が河上(宗平、人3=京都・洛南)なので河上の得点力と、あとは大塚(勇人主将、スポ4=福岡大大濠)がどれくらいゲームをコントロールできるかということですよね。それはどのチームも知っていることだけど、それ以外にないので確実にキーマンですよ。
佐々木HC うちはガードの伊藤(良太)がだいぶ落ち着いてきたので、それはあまり狂わないだろうと思っています。それとあともう1つは矢嶋(瞭)の得点力に春からずっと期待をしていてそういうチーム作りをしてきたんですが、ああいうケガになってしまったので、ある意味ご破算になってしまいました。だからキーマンというか、これから矢嶋の穴を埋めてほしいと思うのは1年生ですかね。大元(孝文)やまだそんなに使っていない福元(直人)に期待するしかないですね。

――お互いのチームについての印象は
倉石総監督 さっき佐々木先生がおっしゃったように、慶大は全員がレディの状況ではないわけで、1回六大学の時に試合をやったけど、その時は慶大さんが何人かいなくて、うちは全員いた。それでは試合にならないんですよね。だから1人1人の個々についてはわかっているけど、全員がそろった時にどういう雰囲気になるのかというのは、やってみないとわからないです。
佐々木HC ここのところ、倉石さんがやり始めてからはディフェンスが強くなってきているので、そこは我々にとっては打ち破らないといけない部分なので、これからの練習で早大のディフェンスをいかにかいくぐるかということをやらないといけないかなと思っています。

――1年生はスタメンで起用する可能性もありますか
佐々木HC 矢嶋がいなくなってしまったので、使わざるを得ないと思います。ただ、今ケガしているキャプテンの桂(竜馬)が早慶戦までに戻ってくれば、少しは穴を埋めてもらえるのではないかと思っています。

――早大にも1年生が入ってきて、何人かは試合にも絡んできていますが
倉石総監督 今まで新人が即戦力に加わってきたことってそんなにないので、それを考えたらことしの2人は計算できる2人ですね。その辺はうちにとってはすごくプラスかなと思っています。

――ありがとうございます。それでは最後に、早慶戦を楽しみにしているファンの方々にメッセージをお願いします
倉石総監督 必ずや観ている人に感動を与えられるはずなので、お見逃しなく。
佐々木HC きょねんみたいな大敗はごめんなので、熱烈な応援をしていただけたらと思っています。選手がいなくなってしまっているので、もう応援していただくしかないですね(笑)。

(取材・編集 冨丘太朗・濱雄介、取材協力 慶應スポーツ新聞会)

◆倉石平(くらいし・おさむ)
1956年(昭31)4月20日生まれ。東京・早実高出身。1979年(昭54)教育学部卒業。大学卒業後は熊谷組で選手として活躍し、日本代表にも選出された。その後は同チームや大和証券、日立でヘッドコーチを務める。2004年からは、早稲田大学スポーツ科学部准教授として同大学バスケットボール部の総監督に就任。NBA解説者として活躍する傍ら、チームの指導に当たっている。

◆佐々木三男(ささき・みつお)
1948年(昭23)生まれ。日本体育大学卒業。同大学女子バスケットボール部のヘッドコーチを務めていた頃は、全日本女子大学選手権(インカレ)優勝1回、関東女子大学リーグ戦優勝8回と、輝かしい実績を残す。現在務めている慶應義塾大学バスケットボール部のヘッドコーチに就任してからも2回のインカレ優勝を達成するなど、独自の理論からなるバスケット戦術は奥が深い。