ついに始まる春季リーグ戦! 昨秋完投勝利の伊藤樹を軸に勝ち点獲得へ/立大戦展望

野球

 『華の六大学』が、ついに開幕。昨秋、優勝決定戦となった早慶3回戦に敗れ、宿敵・慶大に目の前で胴上げを許す結果に終わった早大は、開幕カードで昨秋5位の立大を迎え撃つ。今季巻き返しを図る大学同士の一戦で、早大は勝ち点を持ち帰れるか。

 先発の柱としてチームを支え続けた池田陽佑(令6卒)が卒業した立大は、小畠一心(3年)が第一先発を担い、沖政宗(4年)と塩野目慎士(4年)が第二先発を争うものと想定される。高校時代、夏の甲子園で智弁学園の準優勝に貢献した小畠は、昨春、東京六大学リーグ戦(リーグ戦)初登板を果たすと、とんとん拍子に立場を確立。昨秋は2度の先発登板を果たすまでに成長した。春季オープン戦でも、3月23日の筑波大学戦で6回2/3を投じるなど、長いイニングに対する適正も証明済み。荘司康誠(令5卒)、池田らが付けた「18」を今季から背負う3年生が、立大のエースとして早大の前に立ちふさがる。第二先発争いに挑む沖は、通算防御率2.73、通算与四球割合7.6%を記録する、安定した投球が持ち味の4年生右腕。昨秋の先発機会は1度にとどまったが、通算82回1/3を投げ抜いてきた経験値を武器に、第二先発の座を狙う。かたや、塩野目の通算登板数はわずか8。経験豊富な沖とは対照的に、経験不足の感は否めないものの、ブレークを果たした昨季、7登板で奪三振割合26.9%を記録し、六大学ファンに急成長を印象付けた。春季オープン戦では、両投手ともに先発登板を続けており、2人のどちらが第二先発を担うかは最後まで分からない。ブルペンは、昨秋のフレッシュトーナメントで明大打線を相手に7回1失点と圧巻の投球を見せた佐山未來(2年)、昨季二刀流として注目を集めた吉野蓮(3年)を軸に、下級生中心の陣容。全容がうかがい知れない分、早大にとって厄介な相手になることは間違いないだろう。

春季オープン戦から絶好調な中村敢晴(スポ4=福岡・筑陽学園)。リーグ戦でも勝負所での一打に期待したい

 対する早大打線のキーマンは、3番、4番の副将主将コンビ。3番に座る吉納翼副将(スポ4=愛知・東邦)は、昨秋も好成績をマーク。打率3割2分4厘、3本塁打、OPSにして1.127を記録する、圧巻のシーズンを過ごした。高い長打率と低い三振割合を両立させる六大学最強スラッガーは、ドラフトイヤーを迎える今年、どれほどの飛躍を見せるのか。好調を維持した吉納副将の影で、4番を担う印出太一主将(スポ4=愛知・中京大中京)は、昨秋やや精彩を欠いた。しかし、ラストイヤーを迎えた今季は、春季オープン戦で本塁打を放つなど、完全復活を印象付ける大活躍。かねてから課題とされてきた守備面についても、盗塁阻止を何度も披露するなど、確かな成長を見せる。同じくラストイヤーを迎え、春季オープン戦で目を見張る結果を残しているのが中村敢。帰京以降のオープン戦で、当たりに当たっている4年生に、打線の掃除役としての期待がかかる。

打撃に関して「沖縄でいい感覚をつかめた」と印出主将。まずは初戦の立大戦で一本打ちたいところだ

 4年生の活躍が光る野手陣と対照的に、投手陣は伊藤樹(スポ3=宮城・仙台育英)を中心とした若い陣容で春季リーグ戦に臨む。今季から早大のエースナンバー「11」を背負う伊藤樹は、昨季初の規定投球回到達を果たすと、ケガの影響で状態が上がらない中、防御率1.99を記録。球速が出ない状況でも、カットボールとスプリットが効果的な球種として機能したことは、投球の幅を広げる事にもつながっただろう。昨季平均130キロ中盤から後半にとどまった直球も、社会人対抗戦では平均140キロ前半にまで復調。早川隆久(令3スポ卒=現楽天)以来の大エース誕生が、現実味を帯びてきた。第二先発としての登板が見込まれるのは、宮城誇南(スポ2=埼玉・浦和学院)。2年生、かつリーグ戦未登板ながら左のエースナンバー「18」を託された大器は、春季オープン戦で長いイニングを任され、安定した投球を披露。「リーグ戦初登板・初先発・初勝利」の初物尽くしを狙い、神宮のマウンドに登る。また、昨年の早大はブルペンに課題を抱えていたものの、今季新戦力が台頭。春季オープン戦で勝ちパターンを担った安田虎汰郎(スポ1=東京・日大三)、高橋煌稀(スポ1=宮城・仙台育英)の1年生コンビは、合流後わずか2か月で欠かせない戦力に。春季オープン戦を通して、復調を完璧に印象付けた中森光希(文構4=大阪・明星)も、「1イニング3人で斬る」と気合十分だ。接戦を勝ち切るために、投手陣の活躍は欠かせない。近年まれにみる強力投手陣が春季リーグ戦でも機能すれば、7季ぶりの優勝は大きく近づいてくるだろう。

昨秋、立大に対して完投勝利を収めた伊藤樹は今季もその投球を「再現したい」と気合は十分だ

 対する立大打線は、昨年に発生した部内での不祥事件に伴う4年生の出場停止によって経験を積んだ下級生が打線に残り、重厚な打線を形成。キーマンは、1番、もしくは3番に座るとみられる菅谷真之介副将(4年)だ。昨年2季連続でOPS.800以上を記録し、昨秋の大学日本代表候補合宿にも選出された主軸打者は、今季から副将に就任。この菅谷副将と、昨季OPS.864を記録した桑垣秀野(3年=愛知・中京大中京)をどれだけ抑えられるかが、このカードの命運を握る。

 7季ぶりに賜杯を目指す早大。春季オープン戦を経て、戦力の見極めも十分になされ、個々人の状態も上向いてきた。印出主将や中森が「僕たちは優勝できていない世代」と語るように、4年生の優勝に対する執念は、これまで以上に強い。優勝争いに向けて、まずは1つ。勝ち点を奪い切りたい。

(記事 林田怜空)