早慶戦で屈辱の2連敗を喫した早大は勝ち点、勝率共に並ぶ明大と優勝決定戦に臨む。今年、早大と何度も覇を競ってきた明大。東京六大学野球秋季リーグ戦(リーグ戦)でも、チーム打率1位、チーム防御率2位は早大が占め、チーム打率2位、チーム防御率1位は明大が占めており、この一戦はまさに頂上決戦となる。斎藤佑樹(平23教卒=元日本ハム)を擁した2010年秋以来の優勝決定戦で必勝を誓う。
早大の先発は伊藤樹をおいて他にいない
早大の先発が想定されるのは、エース・伊藤樹(スポ3=宮城・仙台育英)。先日の慶大1回戦でこそ7回5失点被本塁打2の不安定な投球に終始したものの、秋季リーグ戦の防御率1.80はリーグ3位、奪三振はリーグトップと、慶大1回戦を除けば支配的な投球を続けてきた。今秋の明大戦では1、3回戦に登板した伊藤樹。1回戦では8回1失点、3回戦では8回無失点の好投を見せ、チームに勝ち点をもたらしている。また、春季明大3回戦での11回完封劇も記憶に新しい。「ワセダの大エース」へと進化を遂げるべく、今年最後の早明戦に臨む。また、今年のリーグ戦で常に第二先発を担ってきた宮城誇南(スポ2=埼玉・浦和学院)も、この試合ではリリーフ待機が想定される。春季リーグ戦では奪空振りに課題を抱えていた宮城だったが、夏を経てストレートの強度が増し、スプリットをレパートリーに加えたことで、リーグトップクラスの投手へと成長を遂げた。明大2回戦では6回無失点の好投を披露。慶大2回戦でも7回1失点7奪三振の投球も、試合後には「チームにいい流れを持ってくることができなかった」と、敗戦の弁を口にした。総力戦となる優勝決定戦ではチームに流れを呼び込む投球に期待が懸かる。リリーフ陣で期待の投手は、安田虎汰郎(スポ1=東京・日大三)だ。安田は慶大2回戦でリーグ戦初失点。敗戦投手となり、試合後には人目をはばからずに号泣した。しかし、ピンチを拡大させることになった水鳥遥貴(慶大4年)の内野安打はアンラッキーなもの。安田に敗戦の責任をなすり付ける者は誰1人としていないだろう。魔球チェンジアップは、やはり一級品である。早慶戦の雪辱を果たす好投に期待したい。
今年の総決算となる総力戦。宮城のリリーフ待機も想定される
対する明大の先発には、毛利海大(3年)が想定される。毛利は秋季リーグ戦において、リーグ2位となる防御率1.53を記録。早大との2回戦でも5回無失点の好投を披露し、延長12回に及ぶ死闘への流れを作った。ほとんどの登板で80球前後の球数で降板している点はエースとしては物足りないものの、リーグ屈指の先発左腕であることに疑いは無い。キレのある速球と左打者に対して抜群の効果を発揮するカットボールを早大打線がいかに潰せるかが勝敗の鍵を握る。リリーフで注意すべきは浅利太門(4年)だ。最速153㌔の直球は威力抜群で、早明2回戦では3回2/3を投げて無失点、打者16人に対して奪三振6と抜群の支配力を発揮した。この登板では球数は80球を数えており、可能性こそ低いものの先発の可能性もあるかもしれない。昨秋の登板でも早大打線を完璧に抑え込んでいる浅利だが、明確な課題として制球力が挙げられる。四死球による出塁から突破口を見出すことが、浅利攻略へのファーストステップとなるだろう。
吉納副将の復活が勝利に向けて欠かせない
明大投手陣攻略の鍵を握るのは、吉納翼副将(スポ4=愛知・東邦)、印出太一主将(スポ4=愛知・中京大中京)の主将副将コンビ。秋季リーグ戦では開幕2カードで本塁打4、打点16の大爆発を見せた吉納副将だったが、立教戦以降は当たりが完全にストップ。結局本塁打、打点ともにその数字が変わることは無く、打率は.213まで急降下した。早慶戦においても、6打数無安打と期待された打棒を発揮することはできず。私たちは吉納副将こそがリーグ最強打者だと信じている。その打棒復活が勝利への必須事項だ。印出主将は苦しんだ吉納副将とは対照的に、コンスタントな活躍を続けている。今季は打率.360、OPS.927を記録しており、優勝決定戦においてもその打撃力でチームを勝利に導くことが期待される。しかし、秋季リーグ戦における本塁打はゼロ。優勝決定戦でその長打力を発揮することができるか、注目だ。また、彼らの前を打つ尾瀬雄大(スポ3=東京・帝京)の出塁力にも要注目。出塁率.500を誇る尾瀬が第一打席で塁に出れば試合の流れは早大へと傾くだろう。尾瀬の活躍にも期待したい。
尾瀬の出塁力で試合の流れを呼び込め
対する明大打線の中心は、やはり宗山塁(4年)をおいて他にいない。今季の宗山は、リーグ2位の打率.400、本塁打2、OPS1.072を記録している。驚異的なのは三振数の少なさだ。秋季リーグ戦における三振は早明2回戦で宮城が奪った1つのみ。圧倒的なコンタクト力を誇る宗山の打撃を早大投手陣は封じることはできるか、注目だ。宗山の前を打つ1番・直井宏路(4年)も、今季安定した打撃を披露しており、5番を打つ小島大河(3年)の天才的な打撃にも警戒する必要がある。1、3、5番をいかに封じるかが、この試合の鍵を握る。
印出主将体制最後のリーグ戦。有終の美を飾れるか
この試合は印出主将体制で臨む最後のリーグ戦となる。この試合に勝つか、負けるか、その差は、「雲泥の差」という言葉では表せないほどに大きい。神宮へ行こう。我々ができる事は、彼らの戦いぶりを、より近い所で応援することしかできないから。神宮へ行こう。「春の忘れ物」を探す航海に出るために。頂上決戦を制し、その先へと突き進め。
(記事 林田怜空)