ついに9週にわたる東京六大学野球秋季リーグ戦(リーグ戦)も残すは早慶戦のみとなった。1勝した時点で春秋連覇が決定する早大だが、宿敵から勝ち点を奪い完全優勝を達成するという目標に変わりはない。悲願の日本一に向け、勢いをつける伝統の一戦とすることができるかに注目だ。
慶大の1回戦における先発は渡辺和大(2年)が予想される。昨年、慶大を日本一に導いたエース・外丸一眞(3年)が本来の投球からほど遠く、苦しいシーズンを迎えている中、第一先発の座をものにした本格派左腕だ。ここまで7試合に投げて防御率はリーグ2位の1.23を記録しており、抜群の安定感を見せている。150㌔に迫る直球と曲がりの鋭い変化球を武器とする左腕が早大打線の前に立ちはだかる。第二先発として予想されるのは広池浩成(2年)だ。体重増加に成功し、覚醒の兆しを見せる広池。渡辺和と広池の2年生コンビがどこまで試合を作ることができるかに期待が懸かる。
チームトップの打率.393をマークしている石郷岡。「恐怖の8番打者」として早慶戦でもその打棒に期待したい
対する早大打線はどこからでも点が取れる切れ目のない打線をこの大一番でも披露したい。1番の尾瀬雄大(スポ3=東京・帝京)から始まる大学野球屈指の上位打線で序盤から優位に試合を進められるか。吉納翼副将(スポ4=愛知・東邦)、印出太一主将(スポ4=愛知・中京大中京)、前田健伸(商3=大阪桐蔭)の爆発力あるクリーンアップは当然相手にとって驚異となり得る。また、下位打線に座る石郷岡大成(社3=東京・早実)の活躍にも注目だ。8番に座る石郷岡は中位でためた走者を返し、さらに上位打線へチャンスメークをする「恐怖の8番打者」の役割を果たしている。リーグ戦の天王山となった明大戦においても2試合で適時打を放ち、勝利に貢献した。伝統の一戦でも試合の流れを動かす存在になり得るだろう。さらに、この大一番で大暴れを見せる「早慶戦男」が打線の中で現れるかにも注目だ。今春には吉納副将が慶大1回戦で1試合2本塁打を記録するなど、大観衆の前で大きなインパクトを与えた。秋のリーグ戦でも、エンジ色に染まった応援席を沸かす打者が現れるか。
今春の慶大1回戦で2本塁打を放った吉納副将は最後の早慶戦でもアーチを描き「早慶戦男」になれるか
春に続き首位を走る早大を語るうえで、投手陣の存在を欠かすことはできない。エースの伊藤樹(スポ3=宮城・仙台育英)はここまで7試合に先発し、6勝0敗とまさに勝利を呼び込む投球を見せ続けている。エースとして試合を託される1回戦はもちろんのこと、勝ち点を得るために絶対に落とすことができない3回戦の登板においても桁違いのスタミナと集中力でこれまで山場を乗り切ってきた。防御率は堂々たるリーグトップの1.19を記録している。今春には目前に迫っていたが獲得することができなかった最優秀防御率のタイトルを大一番の好投で自らのものにしたい。第二先発としての登板が予想されるのは宮城誇南(スポ2=埼玉・浦和学院)だ。この秋は全カードで2回戦に先発をして試合を作ってきた。中でも強力な明大打線を相手に6回無失点の好投を見せたことは記憶に新しい。完全優勝の懸かったこのカードでも安定したピッチングを披露できるか。田和廉(教3=東京・早実)や安田虎汰郎(スポ1=東京・日大三)といった中継ぎ陣は1点も与えることが許されない緊迫した場面でも安定感ある救援を続けている。緊張感ある展開でも変わらず相手打線を制圧できるブルペンだ。
エースの伊藤樹は宿敵を封じ込み、最優秀防御率のタイトルを自らの手でつかみ取りたい
ここまで、東大以外すべてのカードを落としている慶大ナインは宿敵相手に一矢報いるべく奮起を見せてくるはずだ。4番の清原正吾(4年)や水鳥遥貴(4年)をはじめとして、勝負強い打者はそろっている。ここまで22打数1安打にとどまっている主将の本間颯太郎(4年)もこのままでは終わるわけにはいかない。最後の神宮となる4年生のバットに火が付けば、一気に流れを渡しかねないため警戒したいところだ。慶大のフレッシュな野手陣の活躍にも目が離せない。今季すでに3本の本塁打を放っている吉野太陽(2年)や今秋リーグ戦デビューを飾り、並々ならぬ打撃センスを見せつける中塚遥翔(1年)、好守に加え打撃も好調な林純司(1年)といった下級生野手陣がどのような活躍を見せるのかにも注目だ。
今春に続き、完全優勝のかかる大一番となった宿敵との一戦。両校にとって、泣いても笑っても最後のカードとなる。紺碧の空が広がる秋晴れの神宮球場で歓喜の輪を作り、2015年以来、9年ぶりとなる春秋連覇を決めたい。
(記事 橋本聖)