これぞエース!伊藤樹が8回1失点の好投 難敵との天王山をまず1勝/明大1回戦

野球

東京六大学秋季リーグ戦 10月19日 神宮球場

TEAM
明 大
早 大
(早)○伊藤樹、田和-印出
◇(二塁打)前田 (三塁打)なし (本塁打)なし

 第5週を終え、残す対戦は2カードずつとなった東京六大学野球秋季リーグ戦(リーグ戦)。この日の試合前時点で勝ち点3、勝率.857で明大と同率首位に立つ早大は、首位攻防戦に臨んだ。試合は2回に4連打を含む5安打を集中させて一挙に3点を先制すると、先発のエース・伊藤樹(スポ3=宮城・仙台育英)が好投で応える。最終回を任された田和廉(教3=東京・早実)は1点を失うも、山縣秀(商4=東京・早大学院)の好判断により最後のアウトを奪って3-2で勝利。伊藤樹はリーグトップを走る5勝目を手にし、チームは明大戦2季連続の勝ち点獲得に王手をかけた。

 打線は2回に爆発した。先頭の前田健伸(商3=大阪桐蔭)が2球目をはじき返しチーム初安打を放つと、続く小澤周平(スポ3=群馬・健大高崎)はバントの構えを見せる。ランナーを手堅く進めるかと思われたが、初球が投じられると同時にヒッティングに切り替えて中前へ。意表を突くバスターを成功させ、3球で無死一、二塁のチャンスをつくり上げた。ここで打席には梅村大和(教4=東京・早実)。冷静にボールを見極め、フルカウントから振り抜いた打球は二遊間を破って二塁走者の前田が生還し、先制の適時打となった。『紺碧の空』が鳴り響く中、石郷岡大成(社3=東京・早実)も左前適時打で続いて4連打。伊藤樹は併殺打に倒れたものの、2死三塁で1番・尾瀬雄大(スポ3=東京・帝京)がきっちりと走者をかえしてこの回一挙3得点。先発の伊藤樹に大きな援護点をプレゼントした。

2回に適時打を放ち、ほえる尾瀬

 リードを得た伊藤樹は、危なげない投球でスコアボードに0を並べていった。2回には三者連続三振を奪うなどの素晴らしい立ち上がりで、4回まで明大打線に安打を許さなかった。3回には、二塁右への強い当たりを梅村がスライディングキャッチし難なく処理。バックの盛り立てもありながら好投を続けた。しかし5回、先頭の木本圭一(3年)に右翼フェンス直撃の二塁打を許し、無死二塁のピンチを背負う。この日初めての被安打にも動じず2死までこぎつけたが、代打・内海優太(2年)に適時打を許してしまう。早大のリードは2点に縮まったが、その後は立ち直りこれぞエースの投球。本人が「特に走っていた」と語った今季最速147㌔の直球を軸に、8回123球を投げて8奪三振1失点に抑え込んだ。

先発の伊藤樹

 追加点が欲しい打線は、なかなか攻撃がかみ合わない。4回には梅村がセーフティバントで出塁しながらも、石郷岡がバスターを試みて一ゴロ併殺打に倒れ、走者を進められず。4打数4安打と大当たりだった前田を生かせずに、結局3-1のままで最終回に突入した。

 9回のマウンドに上がったのは2番手・田和。勝利まで残すは守護神が締めるのみという展開だったが、明大は簡単には引き下がらなかった。先頭の杉崎成(4年)に二遊間をしぶとく破られると、小島大河(3年)も続いて無死一、三塁と一気に明大の反撃ムードが高まる。冷静に投球したい田和だったが、次に投じた球が大きく逸れて印出太一主将(スポ4=愛知・中京大中京)がキャッチャーミットに収められず、暴投で三塁走者が生還して1点差に迫られた。四球で逆転の走者も許し、なおもピンチは続くところで、山縣が守備で魅せた。1死一、二塁から打ち取った打球を一塁手・前田が山縣に送り一塁走者を二塁で封殺すると、三塁をオーバーランした二塁走者を見逃さず、三塁手・小澤へストライク送球。好判断で走者をタッチアウトにしてピンチを切り抜け、3-2でゲームセット。早大ナインは勢いよくベンチを飛び出し、薄氷の勝利の喜びを分かち合った。

最後のアウトを奪いガッツポーズをする小澤

好守を見せた山縣(写真中央)も笑顔を見せた

 最後までもつれる展開となり、首位攻防戦らしい緊迫したゲームで勝利をつかみ取った早大。相手のわずかな隙も逃さない姿勢が、強敵撃破につながった。このカードで勝ち点を獲得したチームが優勝に大きく近づくこともあり、第2戦でも両校は激しく火花を散らすことになるだろう。明大の天皇杯奪還を阻止し、早大が2季連続で頂点の座に輝けるか。1つのミスさえも許されない、ハイレベルなリーグ戦天王山から目が離せない。

(記事 西村侑也、写真 西本和宏)

◆コメント

伊藤樹(スポ3=宮城・仙台育英)

――本日の試合を振り返って

 勝ててよかったなっていう安心がまず一番です。8回1失点でゲームを作れてたことも良かったと思います。

――8回1失点の好投。本日の投球を振り返って

 ストレートが特に走っていたことが一番良かったと思います。そのストレートがあるからこそ変化球が生きてくるので、バランスがすごく良かったのかなと思います。

――今季最速となる147㌔を計測した。意識的に出力を上げた面はあったか

 神宮のスピードガンでは出ていませんが、トラックマンでは147㌔くらいがずっと出ていたので特に気にしていません。確かにいつもよりは走っていましたけど、出力を意識的に上げていたわけではないです。本当に体がうまく動いて投げれていたのではないかなと思います。

――今季ここまでの戦いを振り返って一言

 明大を相手に2連勝出来れば優勝に近づくと思っています。ここまでもいい試合ができていますし、粘り強く戦えているので、明日も勝って早慶戦に向かえればなと思います。

――最優秀防御率に向けて意気込みを

 春の早慶戦で点を取られてタイトルを逃してはいますが、チームの勝利が最優先だと思っています。しっかりとやるべきことをやって、準備したいと思います。

――明日の試合に向けて、チームとしての意気込みを

 なかなか2連勝で勝ち点が取れてないので、優勝のためにも2連勝して勝ち点を取るところに向いたいと思います。