初回に迎えるのはそれぞれ昨年、リーグ戦初先発を果たした清水大成(スポ3=大阪・履正社)、鹿田泰生(商2=東京・早実)。2位で終えた昨秋、春季の5位からの躍進を支えた投手陣は多くの選手が新体制でも残留。2年ぶりの賜杯奪還、そして日本一を期す今年は投手王国の到来が期待される。エース・加藤孝太郎(人3=茨城・下妻一)に次ぐ先発投手の座を争う二人に2023年の抱負、さらにはプロへの意欲を伺った。
※この取材は12月17日に行われたものです。
「強い気持ちを持ってマウンドに上がりたい」(清水大)
昨秋東大2回戦で先発した清水大。最上級生となる今年は満足いく活躍ができるか
――はじめに、お二方の初対面の印象はいかがでしたか
鹿田 まず、顔がかっこいいなあと。あとは一匹狼な感じがして、近づきづらいなあとも(笑)。
清水大 最初ってどんな感じだったっけなあ(笑)。
鹿田 まあ、真面目な感じってことで(笑)。
清水大 大きいなあ、と思ったのは覚えてますね。
――その時と比べての、現在の印象はどうですか
鹿田 実は優しいっていう感じですね。
清水大 実は、って(笑)。
鹿田 成さん(清水大)側から近寄ってくることはないんですけど、自分から近寄っていけば結構優しいって感じですね。
清水大 かわいい後輩って感じですね。
――練習中や練習以外のときに、二人で一緒に行動することはありますか
清水大 練習中はあまり他人と関わらないようにしているので、あまり接点はないんですけど、普段はちょくちょくお部屋に行ったりしています。
鹿田 普段はよく一緒にゲームをしています。
清水大 いや、してないです(笑)。自分があまり夜寝れなくてそれでちょっと悩んでるんですけど、寝るのにいいサプリを(鹿田が)持ってるので、この間もらいました。
――続いて、お二人の投手陣における立ち位置をご自分で分析してください
鹿田 まあ、ムードメーカーですかね(笑)。
清水大 もう最上級生になるので、しっかりプレーで引っ張っていけるように頑張るしかないな、と思っています。
――お二人の仲の良い同期・後輩を教えてください
鹿田 自分は中森(中森光希、文構2=大阪・明星)と結構仲良いですね。誕生日プレゼントを交換したりしています。
清水大 自分は学生コーチの肥田(肥田尚弥、スポ3=大阪・早稲田摂陵)とよく一緒にいますね。
――それでは昨季の振り返りに移りたいと思います。まずはチームとしての振り返りをしていただきたいです。ここ2年ほど、春季リーグ戦で苦戦して秋季リーグ戦で巻き返すというようなシーズンが続いていますが、その理由などは何か思い当たるものはありますか
清水大 新チームになって春季リーグ戦を戦ってみて、ようやく課題が明確に出てくるものだと思います。優勝こそは逃してしまったのですが、それをつぶしていけるように秋季リーグ戦に向けて取り組んだ結果がチームとして出てきたのかなと感じています。
鹿田 一緒です(笑)。
――昨季でいうと、具体的に春と秋で何が変わったと思いますか
清水大 チームとしての課題ももちろんなんですけど、個人としての課題をそれぞれが自分自身と向き合ってつぶしていった結果がチームとしての完成度につながっていったのかなと思います。
鹿田 まあ、一緒ですかね(笑)。
――秋季リーグ戦では惜しくも優勝とはなりませんでしたが、優勝するためにはチームとして何が足りなかったと思われますか
鹿田 秋季リーグ戦では2勝0敗でしか勝ち点を取れていないんですよね。そういう意味では、明大との初戦を落とした後にそこからチームとして踏ん張って2連勝できなかった点が足りなかったのかなとは思います。
清水大 難しい質問ですね。それが分かったら優勝できてると思うんですよね。それをなんとか冬の間に見つけて、なんとか自分たちのチームでその借りを返せるように頑張るしかないなと思います。
――では個人としての振り返りに移ります。まずは清水選手から伺っていきたいと思います。秋季リーグ戦全体を振り返って、清水選手ご自身はいかがお考えですか
清水大 秋季リーグ戦の最初の方はなんとか投げれていたんですけど、後半からけがで離脱してしまいました。3年間通してリーグ戦はほとんどけがに悩まされているので、もう一度体とフォームと向き合って最終学年でしっかり結果を出せるようにしたいと思います。
――先発登板をされた2試合ではいずれも無失点で抑えられたと思うのですが、その点についてはご自身でどうお考えですか
清水大 その点については自信にしていい部分もあるとは思います。それでもまだまだ投球内容に課題が残る場面も多くあるので、その課題をつぶして上のステージでも野球ができるように頑張りたいと思います。
――ご自身では、具体的に課題とはどのような点だとお考えですか
清水大 カウント作りや、ここ一番の場面で絶対に空振りが取れる変化球がないことが課題だと思います。あとは、真っ直ぐでも空振りを取りたいと思っているんですけど、まだまだそのために必要な球速や質が足りないと思うので、もう全体的に鍛えるしかないです。
――清水選手は、春季リーグ戦では少し悔しい部分があったとは思うのですが、秋季リーグ戦は結果だけを見ると無失点で終えることができました。ご自身で、春と秋で変わった部分はどこだとお考えですか
清水大 もちろん技術的な部分も大事なんですけど、精神的な面で大きく変わったと感じています。強気で向かっていく姿勢が結果に表れてくれたかなと思うので、そういったところは継続して、強い気持ちを持ってマウンドに上がりたいなと思います。
――精神的な面が変わったきっかけなどはございますか
清水大 色々な方に言葉をかけて頂いたことで、自分自身でいい意味で吹っ切れることができたかなと思います。
――これまではリリーフとしての登板が多かったのに比べ、昨季から先発もされるようになりましたが、ご自身で先発するにあたって精神面や投球面で変えた部分はありますか
清水大 やはり先発としてマウンドに上がらせていただく以上は、試合をつくっていかないといけないと思うので、チームに勝ちを持ってきてなんとか4年生を勝たせてあげたい、という気持ちで臨みました。結果としては、けがで途中離脱してしまったので、その点は反省です。
――いろいろなメディアで小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)が早大の先発に求めるものとして完投を挙げられていますが、清水選手ご自身はこれについてどうお考えですか
清水大 はい。もちろんそうだと思います。
――昨季は計四つの大学相手に投げられたと思いますが、その中ですごいと思われた打者はございますか
清水大 やはり慶大の萩尾選手(萩尾匡也、4年)は雰囲気がありましたね。
――昨季に点数を付けるとしたら、何点になりますか
清水大 40点ですね。もう至らない部分しかなかったので。40点でも高いぐらいだと思うので、やっぱり30点にしといてください。
2022年度の活躍は「予想できなかった」(鹿田)
秋季立大1回戦で勝利投手となった鹿田。来季は先発として勝利を挙げることができるか
――次は、鹿田選手に伺っていきたいと思います。まず、昨季は飛躍のシーズンになったと思いますが、この活躍はシーズンに入る前に予想されていましたか
鹿田 いや、予想できてなかったですね。こんなに先発の機会をもらえるとは思ってなかったです。
――リーグ戦デビューとなった春季リーグ戦を振り返って、鹿田選手自身はいかがお考えですか
鹿田 最初のほうはずっと登板することができなかったのですが、最後のほうで2試合登板することができて、やっぱり抑えられるなということを実感することができました。それが一つ秋季リーグ戦に向けての自信につながる部分ではありました。あと、春季リーグ戦でいい感じだったので、次は先発を目指そうという気持ちが芽生えました。
――春先のオープン戦はあまり出来が良くなかったと思いますが、春季リーグ戦までどのように修正しましたか
鹿田 伊藤樹(スポ1=宮城・仙台育英)と一緒に練習して、フォームを改善したのがリーグ戦ではまったのだと思います。彼が練習法などの知識を結構持っているので、彼に教わったメニューなどをやったことによって、自分の投球が良くなったと感じています。
――ご自身では本番に強い性格だと思いますか
鹿田 そうですね。マウンドに立ってしまえば緊張せずに試合に入り込めるので。
清水大 ほんと(笑)?
鹿田 基本的にはそうですね(笑)。
――他のメディアにて、夏合宿のMVPに小宮山監督から選ばれていましたが、その理由は何か思い当たりますか
鹿田 いつも通りのことをしていただけだと思うんですけど、先発に向けて投げ込みなどをしていた点を評価してくださったのだと思います。
――夏のオープン戦にて、ご自身のひいきである福岡ソフトバンクホークス相手に投げられたと思いますが、そのときはどのような気持ちでしたか
鹿田 まあ、抑えたら自分の名前がスカウトの方の耳に届くかなと少しは思いましたけど、マウンドではいつも通り集中して投げました。
――秋季リーグ戦を迎えるにあたっては、春季リーグ戦での経験を踏まえて心境の変化はありましたか
鹿田 一度リーグ戦の舞台を経験してしまえばどういう舞台なのかというのは大体つかめるので、緊張しすぎずバッターに向かうことができました。
――秋季リーグ戦を振り返ると、いかがですか
鹿田 中継ぎで1イニングだけの登板なら抑えられるのは分かっていたんですけど、先発して長いイニングを投げるとなると、スタミナ不足や球種が少ないせいで抑えられないことが分かりました。なので、そこを修正して先発として試合をつくれるように来季はやっていきたいと思っています。
――先発の際には、中継ぎの際と比較して球速が落ちてしまうと思うのですが、その理由は何だとお考えですか
鹿田 どっちも同じぐらいのつもりで投げているのにそうなってしまうので、どうしてかはあまり分かってないですね。やっぱりスタミナなんですかね。
――昨季を通して印象に残る対戦や登板はありますか
鹿田 立大との2回戦で、山田選手(山田健太、4年)からカーブで空振り三振を取った対戦ですね。高校のときからずっとカーブを練習していてもなかなか自分のものにならなかったのですが、それでも自分に必要だと思って練習してきたのがようやく実を結んだので、印象深い対戦になりました。
――それではお二人の将来について少し伺いたいと思います。まず、プロになることについては、お二人はいかがお考えですか
清水大 もちろん上のレベルで野球を継続したいと思って小さい頃からやってきているので、そこは変わってないです。
鹿田 自分も、まずはプロに行って、それからメジャーに行きます!
――その前段階としての大学日本代表についてはいかがお考えですか
清水大 もちろん行きたいです。
鹿田 自分も行きたいです。
――上のレベルに行くにあたって、ご自身が身に付けていかないといけないと感じている点は、どのような点がありますか
清水大 まずは、効率よくボールに力を伝えられるようなフォームに改善していくことです。あと、最近はピッチャーの球速が全体的に速くなってきているので、球速を上げていきたいと思います。いくら球速が全てではないといっても、球速はある程度は求められるので、そう思います。
――具体的な数値などはありますか
清水大 そこは控えておきます(笑)。
――鹿田選手はいかがでしょうか
鹿田 自分もまだまだ球速が遅いので、そこを最大限上げつつ、スタミナを付けて長いイニングを投げられるようにしていきたいです。具体的には155キロを目指してます。
――鹿田選手は、秋から寮に入られたと思うのですが、それによって何か変化はありますか
鹿田 やっぱり自分の時間が増えて、野球により集中できるようになったと感じます。
――昨季のように活躍することによって、これまでには経験したことのないこのようなインタビューが増えたと思うのですが、それによって何か変化はありますか
鹿田 こういったインタビューで大きいことを言うことによって、自分にプレッシャーをかけることができてると思います。
賜杯奪還に向けて
昨年秋季東大2回戦で相手打線を抑え、ベンチに戻る清水大。この2人をはじめ経験を積んだ投手陣に来季も大きな期待がかかる
――ここからは、新チームのことについてお伺いしていきます。お二人から見て、チーム全体の雰囲気はいかがでしょうか
清水大 春季リーグ戦で勝つためにはこのオフシーズンでの取り組みがかなり大事になってくると思うんですけど、その中で全員が春季リーグ戦をしっかり見据えていて、かなりいい雰囲気で練習に取り組めていると感じています。
鹿田 いつも春季リーグ戦で勝てていないので、春季リーグ戦で絶対勝つことを目標に、個人のレベルアップを中心に取り組んでいます。
――新チームになって変わった点はありますか
清水大 そこまで大きく変わったという実感はないです。でも、やっぱり自分たちの代になったということで自分たちで引っ張っていこうという気持ちもありつつ、チームとして戦う上で必要な下級生の力を生かすためにチーム一体となってやっていこうという気持ちもあります。
鹿田 そうですね、雰囲気自体はあまり変わってないですかね。ですけど、個人的にはこれから後輩が増えてくるので、後輩が自分の姿をみてこんなものかと思わないように練習からやるようにしています。
――お二人から見て、森田朝陽主将(社3=富山・高岡商)と熊田任洋副将(スポ3=愛知・東邦)を始めとする幹部陣の印象はいかがでしょうか
清水大 言うことなしです。素晴らしいと思います。しっかりチームのことを考えて毎日やってくれているなと感じます。
鹿田 言うことなしです。
――投手陣全体としてはどのようなことに取り組まれていますか
清水大 自分はまだけが人の立場なので、今は自分のことに集中してやらしてもらってます。しっかり復帰したら、チームとしてまとまっていけるようにやっていきたいと考えています。
鹿田 この時期すべきである投げ込みと走り込みに精一杯取り組んでいます。
――先ほどの話とかぶる部分もあるかと思いますが、清水選手は最上級生となって意識が変わった部分などはありますか
清水大 最上級生であることに加えて、スポーツの推薦として入学させてもらった立場としては、けがに悩まされた3年間で思うように結果が出ていないので、しっかりチームのために結果を出せるように頑張りたいと思います。
――身体のコンディションが万全になって復帰されてから、どのようなことに取り組みたいですか
清水大 やはりけがをしているときはできるトレーニングが限られてくるので、復帰したときはそのけがによって制限されていたトレーニングを段階踏んでやっていきたいなと思います。
――鹿田選手は、先ほどご自身の課題についての話もありましたが、その中でもこの冬で取り組みたい課題はありますか
鹿田 変化球を1個増やしたいです。具体的なものは内緒で(笑)。
――先ほどお話されていたスタミナや球速などの課題については、ご自身でどのように克服していきたいですか
鹿田 スタミナに関しては、やっぱり投げ込みですかね。球速に関しては、最近ウエートトレーニングとかをやっていなかったので、そういったのをやって確実に球速を上げていけるようにしたいです。
――では最後に、来季についてお伺いしたいと思います。チーム内外を問わず、来季に向けて意識をしている選手はいらっしゃいますか
鹿田 まずは、自分に勝つことですね。成さんもけがが治って一緒に先発争いをすることになると思うので、そういった方々に負けないように、先発として最初から最後まで投げられるように頑張っていきたいと思います。
清水大 自分は自分のことで精いっぱいなので、あまり他人のことは意識してないですね。自分のレベルを上げることしか現時点では考えてないです。
――個人としての来季の目標がいかがでしょうか
清水大 個人としては、やはりスピードを上げてフォームを見直した先で、しっかりチームを勝たせることができるようなピッチングをしたいです。
鹿田 昨季はラッキーな2勝をしたので、3勝します。
――最後に、来季に向けての意気込みをお願いします
清水大 天皇杯を取れるように頑張ります!
鹿田 一緒です。自分のこと以上にチームのことを考えて頑張ります!
――ありがとうございました!
(取材・編集 スタンリー翔唯、星野有哉、写真 田中駿祐、山本泰新、藤田珠江)
第二先発の座を争う二人の「タイセイ」に注目です!
◆清水大成(しみず・たいせい)(※写真左)
2001(平13)年6月5日生まれ。176センチ、80キロ。大阪・履正社高出身。 スポーツ科学部3年。投手。鹿田選手の発言に思わぬ笑みを隠せず、度々関西人らしいツッコミを炸裂させていた清水大選手。普段はツッコミキャラではないそうですが、鹿田選手にはつっこまずにはいられないそうです!
◆鹿田泰生(しかだ・たいせい)
2002(平14)年12月31日生まれ。187センチ、85キロ。東京・早実高出身。 商学部2年。投手。取材では終始、多彩なボケを繰り出すなど、鹿田選手のユーモアのある一面が垣間見えました。部屋が汚いということで、自戒のためにこの色紙を自室に飾っておくそうです!