【連載】秋季リーグ戦開幕前特集『復権』【第5回】加藤孝太郎

野球

 東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)で頭角を現し、第一先発の座を不動のものとした加藤孝太郎(人3=茨城・下妻一)。8月下旬に行われた東京六大学オールスターゲームにも選出され、その評価はチーム外からも高まっている。今夏の取り組みから、秋季リーグ戦への展望を伺った。
※この取材は8月31日にオンラインで行われたものです。

すごくチームの雰囲気はいいのではないかなと思います

エースとしての役割が求められる加藤

――夏季オープン戦を振り返っていかがですか

 このオープン戦は立ち上がりが良くないという感じがすごくあって。どうしても序盤で球が上ずってしまうという場面が多かったのかなと思います。

――一番印象に残っている試合はありますか

 特にこの試合というのはないのですが、どの試合でも、先発であっても中継ぎであっても、点を取られたのがほとんど立ち上がりだったので、現時点ではそこが課題です。

――基本は先発だったのでしょうか

 基本は先発ですね。一応リーグ戦で、中継ぎで登板することもなくはないと思うので、そういうことも踏まえての中継ぎがありました。

――オープン戦のインタビューでは「とにかく体力の強化と投げ込みを中心に行ってきた」というお話をされていましたが、今もそれをメインにした練習を行っているのでしょうか

 南魚沼のキャンプ(※)までは投げ込み、走り込みを中心にやってきて、キャンプ終わりからは少しずつ量を減らして、どちらかといえばキレを出すトレーニングに変えています。
※新潟県南魚沼市で8月8日から19日にかけて行われた野球部のキャンプ。

――キャンプで練習を切り替えるきっかけがあったということでしょうか

 「キャンプまでは追い込もう」と、(キャンプまでを)強化期間として自分の中で位置づけていたので、そこまではしっかりやろうと練習していました。

――手応えはいかがですか

 なくはないのですが、やはりまだ自分の思うような投球ができていないというのが正直な感想です。

――「思うような投球」というのは

 具体的には、自分の場合はコントロールが生命線で、真っ直ぐと変化球の投げ分けをしっかりできることが強みだと思うので、そのあたりがまだできていないのかなと感じています。

――チームとしては夏季オープン戦で勝ち越していますが、現在のチームの雰囲気は

 春季リーグ戦が終わってから投手も野手も課題が明確になっていたので、それに対して取り組んだ結果が表れていて、すごくチームの雰囲気はいいのではないかなと思います。

――加藤選手から見て状態の良い選手は

 印出(太一、スポ2=愛知・中京大中京)あたりはすごく打っているようなイメージがあります。打っている打順は下位打線なのですが、チャンスで回ってきた時に、しっかり(ヒットを)出せているのかなと思います。

――新潟県で行われた次世代育成大学野球サマーリーグでは下級生が勝ち越していましたが、下級生の勢いというものも感じますか

 今ベンチメンバーに入れていない下級生たちも、ベンチ入りしてやろうという気持ちで練習に取り組んでいるのではないかなと思います。

他大の仕上がりを見る良い機会になった

加藤にかかる期待は大きい

――続いて愛媛県で行われた六大学オールスターについてお伺いします。先発として2回無失点、被安打0というご自身の投球を振り返っていかがですか

 正直最初先発するとは思っていなかったので、先発って聞いた時はすごくびっくりしました。ただ2イニングと短いイニングでの出し切りで、ストレートで押していけて、しっかり先発としての役割を果たせたので良かったかなと思います。

――初めから2回までというのは決まっていたのでしょうか

 そうですね。

――法大の村上喬一朗選手とは初めてのバッテリーだったと思いますが、いかがでしたか

 初めて組むということで新鮮だったというのと、登板前から声をかけてくださったので、すごく投げやすかったです。

――打者6人との対戦でしたが、特に印象深い打席はありますか

 個人的に意識したのはやはり萩尾選手(匡也、慶大)です。春季リーグ戦で早慶戦の初回にホームランを打たれていたので、そういった点では少し他の打者よりも意識する部分はありました。

――抑えられた瞬間の気持ちは

 とりあえずホッとしましたね(笑)。

――六大学の主力選手が集まる場ということで、他大の仕上がりを見る良い機会になったと思いますがいかがですか

 どの大学も投打共に仕上がっている印象を受けました。

――会場となった坊っちゃんスタジアムでの投球は初めてでしたか

 はい。マウンドからの景色がいつもと違ったので、そんなに投げづらさはなかったのですが、ただいつもとちょっと違うなというふうには思いました。

――春季リーグ戦では2勝2敗、防御率1.67という成績でしたが、春季リーグ戦を改めて振り返っていかがですか

 正直、自分が開幕する前に想像していたよりもまとまった投球ができたかなと思っています。ただどの試合も7回以降、体力不足ということで捕まる場面だとか、7回まで行かずに降板することがあったので、そこは課題として明確になったかなと思います。

――初めにこの夏は投げ込んでいるとのお話がありましたが、それも体力をつけるためでしょうか

 そうですね、リーグ戦で完投できる体力をつけるという意味で、投げ込みというふうに捉えて練習しています。

――春の早慶戦直前対談では、最も反省の残る試合に立大戦を拳げていらっしゃいました。春の立大戦を振り返っていかがでしょうか

 あの試合は6回まで0-0で、投手戦というかたちでいった中で、7回に自分のバント処理も絡んでそこから大量失点してしまいました。正直あそこで試合が全て決まってしまったので、そういった細かい点もすごく大事というか、(春の)リーグ戦が終わってから見直そうと思ったきっかけにもなりました。

――早慶戦では萩尾選手、下山悠介選手に本塁打を許す場面も見られましたが、今振り返ってみていかがですか

 早慶戦前から慶大の打線は他大よりも強いというふうに分かっていたので、それもあって守りにいってしまった部分もあるのかなと思います。早慶戦は明らかに平均球速ではないですが、ボールの強さが他の試合よりも弱くなってしまっていたので、そういった点でも、コースを突いてもボールに強さがない分、本塁打になってしまったのかなと思います。

気合を入れて、気持ちで抑えたい

最多勝争いに割って入ることができるか

――秋季リーグ戦の開幕も間近になってきました。現在の心境はいかがですか

 春季リーグ戦が終わってからここまで、すごくあっという間だったなというふうに感じています。

――春季リーグ戦からこの夏を通して、何か変化したところはありますか

 メンタル面で変わったことはないのですが、投球面で言えば、新たな球種を試してみるとかはありますね。

――新たな球種に取り組んでいる理由は

 春季リーグ戦はストレート主体で、ファウルで粘られて苦しい展開があったので、投球を楽にするという面でも新たな球種の取得に取り組みました。

――今季のご自身のアピールポイントを教えてください

 自分のアピールポイントはやはり丁寧に投球してゲームをつくることだと思うので、そのゲームメーク能力を見ていただけたらなと思います。

――今季は春に引き続きチームの主力として周囲から期待があるかと思います。そのことについては

 周りの目も多少は気になるのですが、ただ自分のやるべきことをやるだけだと思っているので、そこはあまり意識していないです。

――意識しているチームや、対戦が楽しみな打者は

 意識しているチームは慶大です。楽しみな打者はやはり春の早慶戦で打たれているので、特に誰かというよりは慶大打線がすごく楽しみです。

――反対に他のチームで注目している投手はいらっしゃいますか

 やはり秋のリーグの初戦が法大なので、篠木投手(健太郎、法大)。大学日本代表にも選ばれているすごい投手なので、対戦が楽しみです。

――開幕のカードは法大戦ですが、どのように捉えられていますか

 昨年の秋の開幕カードの立大戦は2連敗するかたちで始まってしまったので、今年は何としても法大で出鼻をくじかれないように、抑えたいなというふうに思っています。

――初めにチームの雰囲気が良くなっているとおっしゃっていましたが、その要因は

 4年生主体にチーム全体を盛り立てるような雰囲気の中で、それに下級生がついていっているので、そういったところがチームの雰囲気の良さにつながっているのではないかなと思います。

――4年生の中で特に主体になっている選手はいらっしゃいますか

 野手だとやはり中川さん(卓也主将、スポ4=大阪桐蔭)、蛭間さん(拓哉副将、スポ4=埼玉・浦和学院)、折内さん(健太郎副将、文構4=福島・磐城)といった主将副将が中心となって、投手であればやはり副将でもある原さん(功征副将、スポ4=滋賀・彦根東)が中心となって、それに下級生がついていっているというかたちです。

――投手陣の中で、原選手がどのように統率しているかについて教えてください

 試合だけでなく練習中から、メニューをやるにしても全部先頭に立って、声出しからプレーまでを引っ張ってくれている感じですね。

――秋季リーグ戦のチームとしての目標を教えてください

 優勝一択です。

――では、加藤選手個人の目標を教えてください

 目標は5勝です。

――最後に、普段対面の場合は色紙を書いていただいています。もし色紙を書かれるとしたら何と書きますか

 「気」ですかね。4年生にとっては最後のシーズンなので、足を引っ張らないように気合を入れて、気持ちで抑えたいと思います。

――ありがとうございました! 

(取材、編集 荒井結月)

◆加藤孝太郎(かとう・こうたろう)

2001(平13)年11月20日生まれ。178センチ、74キロ。茨城・下妻一高出身。人間科学部3年。投手。右投右打。愛媛県で行われた六大学オールスターゲームの際には、チームメートと鯛めしを食べたり、下灘駅の観光をしたりと楽しんだそうです!