昨秋、東京六大学リーグ戦(リーグ戦)優勝まで後一歩届かない2位に終わった。チームを支えた4年生が引退し、多くのポジションで世代交代が起こり、下級生がチームの中心に。若いチームなだけに昨年以上にベンチワークが重要になる。そんなベンチの中心となる小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)に春の展望を伺った。
※この取材は4月5日にオンラインで行われたものです。
「最後の早慶戦までには整備したい」
優勝に向けての課題は投手陣だと語る小宮山監督
――リーグ戦開幕まで残り数日となりましたが、現在の心境をおしえてください
野球をする環境がなかなか思うように整わなかったので。まあコロナの原因なんだけど、そのコロナがクラスターということで年明け早々から活動できない時期があったりして、ちょっと振り回された感じがあるので。そんな中オープン戦もこなしながら、いい状態に持っていこうということで四苦八苦しているというのが現状ですかね
―― それで今ちょうどコロナの影響で冬の期間に練習が積めなかったという話がありましたけれども、その中でどういった意識を持ってチーム作りをされてきたのでしょうか
もう過去はどうしようもないので、今以降をしっかり考えてやりなさいということで、学生たちには当たり前のことを当たり前にということで言ってますけど。ただ活動ができなかった期間にそれぞれが色々と思う所はあっただろうから、それをそれぞれが良い形でリーグ戦に進む準備期間にしていてくれたらなあという感じですかね。
―― リーグ戦ですが勝ち点制が戻ってきました。そのあたりについてはどのように感じていますか
これはそれが通常の形なので。当たり前の形にようやく戻りつつあるということで。ただまだ予断を許さない。状況がどういう風になるのかわかりませんので、急遽2試合制に戻すみたいなことも。木曜日に理事会があるのでそこで正式に決定します。一応勝ち点制に戻すというところで今動いております
――中川主将(卓也、スポ4=大阪桐蔭)、蛭間副将(拓哉、スポ4=埼玉・浦和学院)の二人が中心となってチームをまとめていく形になっていると思いますが、二人は小宮山監督から見てどのように映っていますか
可もなく不可もなくかな。
――それはなぜでしょう
一生懸命立派に努めてくれていると思いますよ。でもこちらの求めるものはやっぱり相当レベルの高い要求をしていますので、そのレベルの高い要求に応えているかというとそうではないので、その辺のところで物足りなさというのがありますから。
――まず現状オープン戦の出来についてはどのように見られていますか
当初予定していた試合数こなせないというのが一つあるんですけど。ピッチャーの経験不足の部分を補うためにも、いろんな状況でいろいろな経験を積んでということでこのオープン戦使ってみて、リーグ戦にある程度のめどは経ちましたけど、過去、去年のプロに行った二人や、その前の年の早川(隆久、令3スポ卒=現・東北楽天ゴールデンイーグルス)のような柱になり得るピッチャーがまだ現状出てきてないので。リーグ戦中になんとかある程度の形にして、最後の早慶戦までには整備したいなと思っています。
――直近のオープン戦だと先発陣、加藤孝太郎選手(人3=茨城・下妻一)、齋藤正貴選手(商3=千葉・佐倉)、伊藤樹選手(スポ1=宮城・仙台育英)が好投したと思いますが、そこも含めて昨年と違って先発陣っていうのが課題になってくるという感じでしょうか
先発陣というよりも投手陣全体ね。1試合9イニング27個のアウトをいかにチームにとってよりよい形でイニングを3つアウトとって攻撃に移れるかって考えると頼りない。結果3つアウトとれましたということでイニング終了ということが結構あるので。基本的にはやっぱりピッチャーがしっかりと抑えて、アウト3つとってその勢いで攻撃にというのが本来の野球という競技の攻守のあるはっきりと同じ条件で同じだけ攻撃をできるというフェアなルールの中での試合なので。その攻撃に移る際のアウトの取り方って物凄い重要なので、そこの部分で言うとちょっと投手陣弱いかなという気がしますけどね。
―― 投手陣が弱いという話でしたけれども、小宮山監督から見てキーマンとなる投手は誰だと考えていますか
伊藤樹かな。
―― 原功征副将(スポ4=滋賀・彦根東)などさまざまな投手がいる中でなぜ、一年生の伊藤樹投手をキーマンとして挙げられたのでしょうか
使わずに過ごしたいからです。 1年生の春に無理をさせて夏場に疲労がきて秋多分くしゃくしゃになるという予想しているので。できれば春は波風立てずに終えて、秋に向けて徹底的に鍛えて、秋にある程度の形でという腹積もりで入るんですけど。ただあまりにも貧弱な投手陣なので使わざるを得ないだろうなというふうに思っています。
―― そういった投手順に課題がある中で起用法の部分で何か昨年と違う部分などは考えていますか
柱がいないからもう入れ替わり立ち替わりですよ。とにかく現状の戦力で27個のアウト1試合にいかにとるかということです。
―― 先発の柱を掲げるというよりかは、ショートスターターなどさまざまな形でアウトと積み重ねていく感じですかね
基本的には先発するピッチャーは最低でも15個アウトとってほしいなあと思っていますけどね。
「早慶戦で優勝がかかるように」
課題は多いがチームの調子は上がってきている
――キャッチャーに関してですが、印出太一選手(スポ2=愛知・中京大中京)を固定して使うという形で考えているのでしょうか
総合力で判断してベンチに入れている篠原(優、社3=東京・早大学院)、栗田(勇雅、スポ2=山梨学院)、1年生の吉田(瑞樹、スポ1=埼玉・浦和学院)。このあたりで一番攻守ということでバランスが取れているのは印出なので。印出をレギュラーとして使う、育てるというつもりでいますけど。ただ思うようにならないような状況であれば、ほかの3名が取って変わるということも充分可能性としてはあるので。ただオープン戦を見る限りこちらが思い描いているぐらいの感じではやってくれているので。去年の岩本(久重、令4スポ卒=現Honda)みたいにドシッという事になかなかならないので、あのレベルに最上級生になる前にしたいなと思います。
――印出選手ですが、ピッチャーを8番において打順では9番を打たせるといことがオープン戦では見られました。そこにはどういった狙いがあるのでしょうか
あいつのところで攻撃が始まることが多くなると想定してということですね。8番に印出、9番にピッチャーだと勝負を避けられるということがあるので、できれば打つということをたくさんこなすということで、ピッチャーの後ろでうたせるということですね。
――中川主将が今季から二塁手に転向しました。そこについて何か不安などはありますか
いえ、特にないです。
――中村将希選手(教3=佐賀・鳥栖)はレギュラーとしてリーグ戦に出ることは初めてになりますが、どういった活躍を期待されますか
3番でずーと使い続けていますので、そういう期待をしているということです。本当にバッティングが非常に良い選手ですから、バットでチームにプラスになる働きをしてほしいということです。
――外野では野村健太選手(スポ3=山梨学院)、吉納翼選手(スポ2=愛知・東邦)が攻守ともに調子がいいように見えますが
いうほど打っていないので。でも、吉納に関してはレギュラーで試合に使うということで、去年までの代打で1打席という様な使い方ではないので、打席の中での落ち着きというのかな、それが非常に良い方向に働いているのかなという気がしますけどね。元々、入学した時のあの感じの雰囲気でいうと、相当なレベルの選手になると期待をしていますので、この春からレギュラーとして試合に出続けて、経験を積んで、1年後2年後にとんでもない選手になるそういう最初のシーズンにしてほしいと思いますけどね。
――一方蛭間選手は相手の厳しい配球に苦しんでいる様にも見えますが
自分で苦しんでいるだけなので、なんら心配はしていないですよ。
――スタメン以外では松木大芽選手(スポ4=石川・金沢泉丘)、森田朝陽選手(社3=富山・高岡商)などが活発に活躍しています
右投手が来た時に野村をはずして、そのどちらか2人をスタートにということも含めてね、いろいろとオプションとしては考えてはいるんですけど。野村がある程度左右どちらも大丈夫という感じになったので、バックアップメンバーにはなったんですけど。十分レギュラーとしてやっていける能力はあると思うので、そういうことでいうと多少層が厚くなったそういう風には思っていますけどね。
――層が厚くなった部分では1年生の前田健伸選手(商1=大阪桐蔭)についてはどうでしょうか
他にも良い選手がいて、ファーストというポジションも含めて、ベンチに入れるどうかというところで悩んでいるところではありますけど、ただ社会人対抗戦のあの1打席。早稲田にきて最初の打席だったので、その打席でファーストストライクから積極的に振れているところは魅力は魅力ですし、ライト前に綺麗なヒットを打っていますので、大阪桐蔭だなという感じはしましたね。
――初戦の法大戦のカギとなるのはどういったところになるでしょうか
やっぱりタレントが揃っているチームなのでその連中が気持ちよくやったらかなりいい野球になると思っているので、なのでそうさせない様に、我々としてもとにかく細心の注意を払って隙を見せずに相手の隙をつくという野球をしたいなと思っています。
――優勝に向けてのキーポイントは
1週目の法政戦から始まって、明治、東大、立教と相当タフな試合にはなると思うんですけど、そういう中で経験を積んで、最終週に本当に集大成という試合を見せられる様にチーム力を上げていきたいなと思っています。その間、勝ち星を拾って勝ち点を奪って早慶戦での優勝がかかるという様な展開にもっていきたいというふうに思っていますので、そうできるようにしっかりと戦いたいなと思っています。おそらく、慶應が中心にリーグ戦は動きますから、慶應は早慶戦で優勝をというところで戦うことになると思います。我々はとにかく早慶戦が優勝がかかる様になんとか食らいついてというそういう思いでいますので、とにかく一つ一つ大事に戦いたいと思います。
――リーグ戦への意気込みをお願いします
勝ち点制に戻ったということで非常に喜ばしいことではありますが、まだ今まで経験してきた六大学野球のリーグ戦とはちょっと違うので、応援団のこともそうですが、どういう形で応援団を神宮球場にいれてとうことも含めて、本来の六大学野球のリーグ戦に1日も早く戻る様に願ってはいますけれども。なかなかそうは行かない状況なので、そんな中でもとりあえず開催にこぎつけていますので、天皇杯を下賜されている野球という競技の中で我々がとにかく全国の大学のリーグ戦の模範になるようなリーグ戦にしたいなと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 山本泰新)
◆小宮山悟(こみやま・さとる)
1965(昭40)年9月15日生まれ。千葉・芝浦工大柏高出身。1990(平2)年学教育学部卒業。早大野球部第20代監督。