本特集の2回目は、中川卓也(スポ3=大阪桐蔭)、原功征(スポ3=滋賀・彦根東)、松木大芽(スポ3=石川・金沢泉丘)の3年生トリオが登場。1年時から東京六大学リーグ戦(リーグ戦)に出場してきた中川卓と、今季ブレイクが期待される原と松木。プレーのことから、3年生に関することまで幅広く話を聞いた。
※この取材は9月4日にオンラインで行われたものです。
「個性的」な3年生
(左から)松木、原、中川卓
――まず、それぞれの他己紹介をお願いします。最初に原選手の紹介を中川卓選手、松木選手からお願いします。
松木 1年生の頃からAチームでも投げていて、この春(春季リーグ戦)初めて東大戦で投げた時は調子が思うようにいかなくて、その次からオフの日でもグラウンドに来て練習している姿を見たので、努力家だなと思いました。
中川卓 こう見えて寮ではいじられていることが多いです。
――どのようなことでいじられたりしているのでしょうか
中川卓 他愛のないことで、いじられたりしますね。
――原選手は3年生の中でいじられたりすることが多いのでしょうか、それともチーム全体としてもいじられキャラなのでしょうか
中川卓、松木 チーム全体からいじられています!
――中川卓選手の他己紹介をお願いします。
松木 卓也はグラウンドでも3年生ですが、一番声を出して、戦術的な部分でもチームを引っ張っている部分があるので、すごい頼りになります。
原 グラウンドで一番存在感がある選手という印象が強くて。寮とかだと後輩をいじったりだとかラフな感じでいろいろな人と接しているんですが、グラウンドだとスイッチを切り替えて、パッと緊張感が張り詰める雰囲気をつくれる選手だなと思っています。
――オンとオフの切り替えがはっきりしているということでしょうか
原 そうですね、チームで一番うまいかなと思います。
――続いて、松木選手の紹介をお願いします。
中川卓 松木とは何かあった時に自主練とかをするのですが、いつでもどこでも練習しているようなイメージなので
原 その印象は強い
中川卓 今はチームの事情とかで自主練習はできていないのですが、以前は昼も一緒に自主練して、夜さらに違う人と自主練していたり、本当に練習の虫だなと思います。
原 自分がオフに練習しに来た時に、ばったり会うことがよくあって、自分もいつでも野球をしているという印象が強いです。夏のオープン戦でスタメンというかたちで出番をもらって、それを結果につなげて、リーグ戦の出番がどんどん出てきている選手なので、練習をしっかり結果につなげているあたりはすごいなと思っています。
――3年生全体のカラーや特徴はどのようなものですか
松木 個性的な人が多いかなという印象はあります。3年生でミーティングする時も、いろいろな意見が出るというか、いろいろなことを考えている人がいて面白いなと思います。
――例えば、誰が個性的だとかいうのはありますか
松木 みんなそうですが、黒川瑠星(スポ3=千葉・志学館)と原ちゃんも個性的ですね。
――原選手と中川卓選手はいかがでしょうか
原 松木と同じように個性的というのは感じていて、上に比べると個の力は強くないという印象はあるのですが、その分一人一人が一生懸命考えたり、行動に移してチームの良い流れに持っていけたりする人が多いかなという印象は思います。
中川卓 個性的ですし、あとは仲が良いかなとは思います。誰が誰がではなく、全員が全員のことを仲間だと思っているなというのは、この学年は特に感じます。
悪い時に立て直せないというチームの課題(中川卓)
昨春の立大2回戦で適時打を放つ中川卓
――続いてチームについて伺いたいと思います。昨秋の優勝から一転、今春は5位に沈みました。3年生として思うところはありましたか
松木 早川さん(隆久前主将、令3スポ卒=現東北楽天ゴールデンイーグルス)という絶対的な投手が抜けて、二枚看板の徳山さん(壮磨、スポ4=大阪桐蔭)、西垣さん(雅矢、スポ4=兵庫・報徳学園)も思うように調子が上がらない中で、チームの雰囲気も4年生に任せきりみたいなところがあって、波に乗っていけなかったなと思います。3年生から元気出してやっていこうというのも、ミーティングで話してこの夏はやってきました。
原 去年の秋からベンチに入れさせてもらったのですが、この春も含めてチームに何も貢献できていないという思いが自分の中にあります。3年生のメンバーもあまり貢献できなかったというのが印象なので、何とかするぞという思いでオープン戦に取り組んできました。松木もそうですし卓也もそうですし、しっかり結果を残して、この秋を迎えられているのかなと思います。
中川卓 春を振り返ると、いい時はいいんですが、悪い時に立て直せないというチームの課題がありました。もう一度足元から見つめ直そうという話が、マルさん(丸山壮史主将、スポ4=広島・広陵)からあって、この夏は土台作りから始まっていきました。今日あった試合(夏季オープン戦対立正大、〇6-4)でも先制して追いつかれましたが、8回裏に勝ち越せて、良くない状況であっても勝ちきれるチームに仕上がってきていると思います。秋はどれだけ劣勢でも、派手さはなくても1点ずつ1点ずつ取っていく負けないチームを目指してやってきたので、秋は優勝だけ目指してやっていきたいなと思います。
――春のチームを振り返ると、最大の課題は悪い雰囲気を打開できないことにあったのでしょうか
中川卓 先取点を取って逆転された後に、ガツンといけないというか、沈んでしまう部分は多くあったので、課題ではあったと思います。
――春季リーグ戦以降、チームとして変化はありましたか
松木 オープン戦で劣勢になっても後半に巻き返せるチーム力はついてきているのかなと思います。
「今までより楽に投げられている」(原)
昨春の東大1回戦でリーグ戦初登板を果たした原
――ここからは個別の質問に入っていきます。まず、原選手に伺います。個人として春季リーグ戦を振り返ると、いかがでしたか。
原 (リーグ戦の)初登板で思うような結果が残せずに、チームに貢献できない悔しさがずっとありました。その中でも早慶戦で出番をもらって、一つ自分の中で自信になるピッチングができたのは一つの大きな収穫でした。その経験を踏まえて、夏のオープン戦は余裕をもって、経験を糧にできていて、試合の結果につながっているかなと思います。
――春季リーグ戦で得た収穫と課題はどのようなものですか
原 (リーグ戦初登板の)東大戦の時は緊張して周りが見えなくなったピッチングになってしまって、技術的なところよりも、気持ちで負けてしまった部分大きかったです。その経験を踏まえて、気持ちをリセットして早慶戦を迎えられたので、メンタルコントロールは課題と収穫でした。
――今日(9月4日)の試合の投球はいかがでしたか
原 いつもは、球種やコースなどの細かいことをその試合のテーマにするのですが、今日は、「この夏のオープン戦で一番の投球をする」というテーマを立てて、臨みました。準備も含めて今まで一番良い準備と投球ができたかなと思います。
――夏季オープン戦全体を通じても好投している印象ですが、結果についてどのように感じていますか
原 気持ちの余裕という面で、今までよりも楽に投げられているのかなというのが印象です。その中でも、1イニングでフォアボールが出たりとか、3人で終わらせられない部分がありつつも、何とか0でこれたのは良かったかなと思います。
――高校の同級生であり慶大でプレーする増居翔太選手と朝日晴人選手の活躍は、原選手の刺激にはなりましたか
原 二人ともベストナイン(増居が投手、朝日が遊撃手として受賞)を取って、すごいなと。高校の時からチームの先頭に立って練習してきているのを見ているのですごいなという思いと、この春のリーグ戦を通じて負けたくないなと思いました。
――続いて、中川卓選手に伺います。春季リーグ戦の個人の結果を振り返ると、どのように感じていますか
中川卓 春始まる前に最低3割、ベストナインを目標に掲げたのですが、原ちゃんの話にもあったように収穫と課題が出ました。収穫としては、余裕をもって打席に入れるようになったというか、これまでとは違う変化球や真っすぐの見え方がありました。あとは、思ったところに打てるようになったというのは、春のリーグ戦の収穫でした。課題としては、3割を最低目標にしていたのですが、最終的に2割6分、5分くらい(2割5分7厘)でしたし、全部シングルヒットだったので、甘い半速球を長打にできるような捉え方をしないといけないというところが、課題としてありました。
――そのような課題と収穫を踏まえて、秋季リーグ戦に向けて、どのようなところを強化してきましたか
中川卓 6月に1回けがをして、1カ月くらい練習ができない時期があったんですが、その時に体幹やけがをしない体作り、あとはリスト鍛えて、ヘッドスピードを上げてインパクトの時にボールを強く捕まえる準備をしました。けががあったからこそ、そういう準備ができたと思います。けがが明けてからは、急ピッチで準備を進めてきたという感じです。技術的にはもう一工夫必要なのではないかなと思うのですが、それは1週間の間でやって、体の面では準備は整ってきているので、あとは秋のリーグ戦を迎えるだけだなと思います。
――夏季オープン戦の結果や現在の調子について、どのように考えていますか
中川卓 3番を打たせてもらうことが多くて、その中で長打やホームランも出てはいるのですが、紙一重というか、もう少しああしたらこうしたらヒットになった、ホームランになったという打球が多いです。その辺の微調整をこの1週間でして、最高のかたちでピークにもっていって、リーグ戦を迎えたいと思います。
――続いて、松木選手にお聞きします。ご自身の強みや特長はどのようなところだと考えていますか
松木 強みは、守備でもバッティングでも何でもそつなくこなせるところですかね。
――その中で長所を強いてあげるとすると、どこですか
松木 勝負強さということにしておきます(笑)。
――夏季オープン戦の結果については、どのように考えていますか
松木 オープン戦が始まった時は、全然スタメンに入ってなかったんですが、初戦で西田さん(燎太、社4=東京・早実)がけがをして、急きょ出ることになって。そこで結果を出すこと(7月18日の横浜商大戦で満塁本塁打)ができて、そのままの調子で試合を重ねることができて、結果につながったのかなと思います。
――夏季オープン戦の前半が特に好調だったと思うのですが、好調だった要因をどのように考えていますか
松木 前半戦はチームが強化期間ということもあり、スイングの量が増えていました。さっきも言ったのですが、卓也や同期の齋藤竜登(スポ3=埼玉・早大本庄)とかと、自分の練習もちゃんとやれていたことが好調の要因かなと思います。
――試合を重ねるにつれてご自身として成長を感じた点は、ありますか
松木 打席の中での余裕が、(試合に)出始めた頃よりも出てきていると思います。ピッチャーが投げるボールの見え方も良くなったかなと思います。
「4年生が花道を飾れるようにやっていきたい」(松木)
夏季オープン戦・横浜商大戦で満塁弾を放つ松木
――秋季リーグ戦について伺います。開幕に向けて調子はいかがでしょうか
松木 最近はあまり結果が出ていないのですが、打席の中の感じやスイング自体は悪くないと思うので、しっかり結果出せるように頑張りたいなと思います。
原 調子自体は可もなく不可もなくという感じなのですが、任されたところを0で抑えることはずっと達成できていたので、残りの1週間で調整したいです。オープン戦以上の結果は出ないと思うので、オープン戦でやってきたことをリーグ戦で出すことを意識してやっていきたいと思います。
中川卓 技術面に関して言うとあともう少しというところなのですが、ここから劇的な変化はないと思うので、自分のスイングに自信を持ちたいです。初戦の法政にはいいピッチャーが二人(三浦銀二主将、山下輝)いますが、(二人を)イメージしながらスイングすることでスイングも固まってきますし、実際打席に立った時にスイングを思い出して、思い切りバットを振れると思うので、この1週間で仕上げていきたいと思っています。
――チームの雰囲気も良くなっていますか
中川卓 そうですね、上がってきていますね。
――3年生全体としても、4年生のためにという思いはあるのでしょうか
松木 そうですね、1年の頃からお世話になってきた先輩なので、4年生が花道飾れるようにやっていきたいと思います。
――来年は最上級生となりますが、このようなチームにしたいということを学年として話し合っているのでしょうか
一同 はい。
――具体的にこのようにしていきたいというのは、ありますか
中川卓 自分が前に立って話すことがあるのですが、自分は常々勝つチームよりも負けないチームということを言っています。(試合に)勝つことができなくても(試合に)負けなければ、(リーグ戦でも)負けないので、それをどういう風に実現するかはここから話していこうと思うのですが、とりあえず勝つチームよりも負けないチームを目指そうとは言っています。
――秋季リーグ戦の個人目標はありますか
松木 自分は神宮で打席をもらったことがないので、ヒットを出せるように頑張りたいです。
原 リリーフ待機というかたちになるので、どれだけの出番がもらえるかわからないのですが、任されたところを0で抑えるというオープン戦でやってきたことを出すことが目標になります。
中川卓 1年の春から試合に出させてもらって、ずっと口に出していることにベストナインというものがあります。早稲田の3番打者としてふさわしい結果を出していくことがベストナインに近づいていくと思うので、そこを目指してやっていきたいと思います。
――最後に秋季リーグ戦への意気込みをお願いします
松木 このリーグ戦で活躍することを目標に1年生の頃から努力してきたので、努力を無駄にしないように、自信持ってプレーしたいと思います。
原 さっき「4年生の花道を飾りたい」という松木の言葉があったのですが、本当に3年間一緒に野球をやってきて、この秋のリーグ戦は4年生のためにあるものだと思います。4年生の優勝のために少しでも力になれたらと思っているので、自分が任されたところで役割を果たして、笑って終われるようにするのが目標です。
中川卓 さっきはベストナインとか個人的なことを口にしたのですが、あくまで個人の目標なので、個人の目標を達成できなくても、チームが勝てばそれでいいです。チームが勝てるような選手を目指してやっているので、最後4年生にいい思いをして引退してもらえるように、自分の結果よりもチームの勝利だけを見て頑張りたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 杉﨑智哉、芦沢拓海)
◆中川卓也(なかがわ・たくや)
2000(平12)年7月28日生まれ。175センチ。75キロ。大阪桐蔭高出身。スポーツ科学部3年。内野手。右投左打。原選手が「グラウンドで存在感がある選手」というように、守備の際の声かけなどでの貢献も光る中川卓選手。「チームが勝てるような選手」になった先には、個人とチームの目標が達成されていることでしょう!
◆原功征(はら・こうせい)
2000(平12)年12月28日生まれ。169センチ。71キロ。滋賀・彦根東高出身。スポーツ科学部3年。投手。左投左打。特に個性的な選手として名前が上がった原選手。夏季オープン戦では全試合無失点に抑え、成長した姿を見せています。高校の同級生である増居翔太選手、朝日晴人選手(共に慶大)に負けない活躍に期待です!
◆松木大芽(まつき・たいが)
2000(平12)年10月14日生まれ。171センチ。70キロ。石川・金沢泉丘高出身。スポーツ科学部3年。外野手。右投左打。夏季オープン戦から台頭を見せ、売り出し中の松木選手。秋季リーグ戦では、神宮初安打が期待されます。日々の努力の成果を発揮し、4年生を優勝というかたちで送り出します!