【連載】春季リーグ戦開幕前特集『anew』 最終回 丸山壮史主将

野球

 今特集の最終回に登場するのは丸山壮史主将(スポ4=広島・広陵)。東京六大学リーグ戦(リーグ戦)連覇を目指し、新たなスタートを切ったチームをどのように引っ張っていくのか。チームの命運を握るこの男に、その思いを伺った。

※この取材は3月18日に行われたものです。

「4年生全員でチームを引っ張る」

質問に答える丸山

――現在、緊急事態宣言が発出されています(取材当時)が、丸山選手はどのように過ごされていますか

 野球部としては沖縄キャンプがなく、東伏見の安部球場で自分たちのできることをひたむきにやっている状況です。生活面では基本的に寮にいて、自分としては読書の時間が増えたと思います。

――読書はどのような本を読まれているのですか

 早川さん(隆久前主将、令3スポ卒=現東北楽天ゴールデンイーグルス)がずっと読書をしていたと聞いていたので、リーダーシップに関する本を読むことが増えました。特に他のスポーツにおいて、プレーでチームを引っ張る主将がどのようにリーダーシップを取っているのか気になったので、そういった本を読んでいます。

――そこから得られた考え方で実践されていることはありますか

 自分が一番心懸けているのは自分一人で(チームを)引っ張らないということです。やはり4年生の各々に特徴や強みがあると思うので、その部分を信頼することによって4年生全員でチームを引っ張るという意識を常に持っています。

――緊急事態宣言の発令でチームの練習の変化などはありましたか

 練習が限られている中で昨年の先輩方がどのように練習をしてきたかを踏まえて、スタッフの方々と話し合い改良を重ねながら練習をしています。

――昨年と大きく変えた部分はありますか

 冬でいえば基礎体力の面で振る力を鍛える練習や走り込みはこれまでに比べて重点的に取り組んでいます。

――これまでのオープン戦を振り返っていかがですか

 正直まだまだ成長段階だと思っていて、負け方などは良くない部分があります。ただ、その分課題が多く見つかっていて、それを一試合一試合つぶせるように意識してやっているので、意味のあるオープン戦を過ごせているかなと思います。

――具体的に良い部分や反省点はどのようなことが挙げられますか

 反省点でいえばチームが劣勢になった時にそこから盛り上げられる雰囲気がつくれていないので、そこはチームとしてまだまだ足りない部分だと感じています。良い部分では(多くの試合で)先制点を取れているので、試合の入りは良くなっているとは思うのですが、そこもまだまだ伸びるところがあると思います。

――結果を受けて、チームの全体的な雰囲気はどう捉えられていますか

 雰囲気としては、昨年の優勝した時のような勝つ雰囲気はまだ足りていないと感じています。ですが、そこにたどり着くぐらいのチームの雰囲気はあると思うので、それを常に出せるようにと思っています。

――昨年、主将を務めた早川選手から何かアドバイスはありましたか

 「一人で引っ張ろうとし過ぎるな」と言われました。昨年は4年生中心にチームを引っ張っていて、今年もそのスタイルを引き継ぎながら、いい意味で誰がリーダーか分からないくらいのチームにしたいので、頂いたアドバイスを生かしてみんなと一緒にチームを引っ張っていきたいと考えています。

――今年は副将が岩本選手お一人ですが、役職についていない選手では特に誰とコミュニケーションを取っていますか

 岩本とは二人三脚で引っ張ってほしいと監督さん(小宮山悟監督、平2教卒=千葉・芝浦工大柏)にも言われているので、そこは常に練習の時から意識しています。他には鈴木萌斗(スポ4=栃木・作新学院)には走塁、徳山(壮磨、スポ4=大阪桐蔭)と西垣(雅矢、スポ4=兵庫・報徳学園)には投手、橘内(俊治、教4=東京・早実)には内野のチーフを担当してもらうことで役割を分けています。また、野球だけでなく、日常生活もチーフに管理させることで勝てる組織を意識してつくっています。

――生活面のチーフというのは寮生活の管理をする役職なのですか

 寮生活もそうなのですが、通いの選手もいるので、クラブハウスの使い方などを4年の小西(優喜、文構4=東京・早実)をチーフに置いてまとめてもらっています。

――冬のオフシーズンの期間を終えて、オープン戦を行う中で主将としての意識の変化はありますか

 実際(主将に)なってみて、今まで以上にプレッシャーは感じています。昨季優勝して連覇を目指す中で自分も結果を残さないといけないですし、それ以上にチームが勝つためにどう貢献できるかを冬の振りこみの期間から考えながらやっていました。

――プレッシャーの話もありましたが、チームと自分の管理を両立する難しさは感じましたか

 難しさというより、昨年の早川さんの偉大さを感じました。昨年は(先輩方に)付いていくかたちが多かったのですが、4年生で主将になって、これまではこんなに勝ちに対して考えていなかったなと実感しています。今は勝ちに対してどうチームをつくればいいかを自分のこと以上に考えるようになりました。

――チームを中心に考えているということですか

 オープン戦の中で、今までは自分が結果を残していなければ悔しいという思いが強かったのですが、今は自分が打っていたとしてもオープン戦で負けると本当に悔しいので、勝ちの捉え方から変わりました。

――昨年は打撃面で対応力や勝負強さを課題として挙げられていたと思うのですが、意識が変わったことで課題の変化はありましたか

 今までも勝つためにやってきたので打席の中での課題は変わらないのですが、やはりキャプテンが打てばチームが乗りますし、苦しい時に打てば勢いもつくと思うので、そこの一打席一打席の集中力が増すようになったと思います。

――現在の状況としてはいい方に捉えられていますか

 オープン戦の初めの頃は冬にやってきたことが間違っていたのかなと悩みましたが、今は以前のノートを見返したりしていい方向に向かっていると思いますし、感覚としても良くなっています。

――感覚が良くなった要因はありますか

 1週間前に監督さんに打撃投手をしてもらって、かなり打ち込みをさせていただいた中でいい感覚が分かったので、それからは打撃の調子としては良くなっています。

――小宮山監督が打撃投手をされることはよくあることなのですか

 いえ、とても珍しいことだと思います。

――そういった出来事が9得点を奪った横浜商大戦(◯9-8)につながったのですか

 その(横浜商大戦の)前日ですね。自分が結果を残していないのを監督さんも分かっていて、お前が打たなければいけないんだぞという思いが投げてもらったボールから感じましたし、そこで一球一球に集中して打った結果、いい感覚をつかめたと思っています。

――そこまでの結果の中で、ご自身としてもでも打たなければという意識が強くあったのですか

 それまでは自分が自分がという感覚だったのですが、それからは「打席は打席」とシンプルに捉えることができて、キャプテンだからどうこうではなく、打席に立って投手と戦うだけと考えるようになりました。

――オープン戦に入って、昨年と打順の巡りがかなり変わったと思うのですが、心境の変化はありましたか

 打順は変わりましたが、自分のやることは変わらないと思っています。状況の中で最低限しなければいけないことと最高の結果を考えながら打席に立っているので、そこはあまり変わらずにやっています。

――昨年、勝負したいポジションとして二塁手を挙げられていたと思うのですが、オープン戦で守ってみていかがですか

 この冬は守備にも重きを置いていて、エラーがなく来ているのはいいと思うのですが、もっと守備範囲を広げて自分のところに打たせていれば安心だとバッテリーに思われるようにオープン戦を過ごしています。

――二塁手への転向というのは、オフシーズンに入ってからですか

 昨年は主にファーストを守っていたのですが、チーム状況によっては金子さん(銀佑、令3教卒=現明治安田生命)の後ろを守っていて、新チームになる際に監督に「どこがしたいんだ」という話を頂いてセカンドで勝負したいということを伝えました。

――ご自身としての意思だったのですね

 1年生の春に初めてリーグ戦に出たのがセカンドで、その時の4年生には迷惑をかけたので、自分がセカンドで活躍することで少しでも恩返しになればいいという思いはあります。

――実際のオープン戦での手応えはいかがですか

 エラーというエラーはしていないのですが、周りの声掛けや事前の準備の中でミスをしたと感じる部分はあったので、プレーに隙をつくらないように集中して取り組んでいます。

――守備に重きを置いているという話でしたが、オフシーズンはどのような練習に力を入れていましたか

 これまでの野球人生で教わってきた基本的なことをもう一度見つめ直し、特にスローイングの面で課題が少しあったので、捕ってからの速さや正確性、強さを意識して取り組みました。

――金子選手からのアドバイスは受けましたか

 金子さんもそうですし吉澤さん(一翔、令3スポ卒=現大阪ガス)もセカンドを守っていたので、その2人からは「信頼される野手にならないといけない」と教わりました。また、そのためには日頃のノックでノーエラーを目指すことが信頼につながるんだぞということも言われました。

――先程の質問で監督さんの話が出てきましたが、他にも具体的なアドバイスをされたエピソードはありますか

 バッティングの時には、打席の中での考え方や投手はこう抑えたいんだぞといった話もされましたし、その中でどう準備しなければいけないという話はされました。また、守備に関しては捕ってからの速さやスローイングの正確性は自分だけでなく、内野手全体に言われています。

「みんなから信頼される選手になるように」

今季から二塁手に再転向する丸山

――チームとして、切磋琢磨できるような仲間になっていく必要があると以前の対談で話されていましたが、現在のチームはそれに近づけていますか

 みんな冬の練習の成果が出ていますし、振れるようになってきたので、そういった面では切磋琢磨できるようになっていると思います。ですが、もっとできると思う部分がたくさんあると思っています。チームの底上げもそうなのですが、まずはメンバーやスタメンが上で飛びぬけて、こいつしかいないと思わせるように(なろう)という話をしています。

――チームづくりの中ではどのようなアプローチを意識されていますか

 自分の中では高校時代の『一人一役、全員主役』というスローガンがあって、脇役ではなく、一人一人が主役として自分の役割が全うできれば勝てるチームになると思うので、そこはチームづくりにおいて大切にしています。

――現在は1年生も練習に合流していると思いますが、印象はいかがですか

 高校からスポーツ推薦というかたちで入ってきているのでポテンシャルも高いですし、頑張ろうという姿勢がとても見えるので、いい後輩たちだなと思っています。

――全体を見て、ご自身の中でライバルはいますか

 自分としてはチームの中では一番打ちたいと思っていて、打率も打点も一番になりたいと思っているので、誰がライバルというよりも早川さんのように結果でチームを引っ張ることを第一に考えています。

――理想の選手像は結果でチームを引っ張る選手ということでしょうか

 自分に回せば点が入る、自分のところにボールが飛べば大丈夫とチームのみんなから信頼される選手になれるよう頑張っています。

――昨季は特に打点が多かったと思いますが、チャンスに強いという面では自分の理想に近づいていると感じていますか

 昨年の打点は、前を打っていた金子さん、吉澤さん、瀧澤さん(虎太朗、令3スポ卒=現ENEOS)が出塁してくれたおかげだとは思っているのですが、チャンスで打てたというのは自分の自信となりましたし、理想に近づいていると感じています。

――注目してほしいところはありますか

 チャンスでの一本や堅実な守備などはありますが、昨年の吉澤さんがやっていたように合間での全力疾走は徹底してやりたいなと思っています。

――そこはプレー以外でも主将として、最上級生としての姿勢を見せていきたいということですか

 結果が出なくて落ち込んでいる時もあると思うのですが、主将のことは後輩たちや同級生、スタンドのOBの方や応援部の方も見ていますし、はつらつとプレーすることで劣勢の場面でも勢いがつけられると思うので、あいつが頑張っているから俺らも頑張ろうと思ってくれればうれしいです。

――不調の時はどういった意識を持って練習に取り組んでいますか

 自分自身でオープン戦や冬の練習で取り組んだことや意識したことをノートに書いているので、不調になった時はよかった時の感覚を振り返るようにはしています。

――野球ノートというのはずっと付けられているのですか

 野球を始めた時に指導者の方から野球ノートは付けた方がいいよと教わって、その時は正直嫌々書いていた自分もいたのですが、今になってその言葉のありがたさに気付きましたし、レベルの高い六大学でやっていく中で自分の感覚を振り返ることは教わる以上に大切だなと思いました。

――春季リーグ戦まで残り3週間となりましたが、チームや個人として詰めていきたい部分はありますか

 (自分たちの)隙を見せず、(相手の)隙をつくチームになれと監督さんからは常に言われていて、まだ完成度が低いというか一人一人が気付きのレベルが低いと思っているので、自らが常にアンテナを張ってやっていくことかなと思います。

――他の大学には負けないような強みはありますか

 試合の中ではないのですが、この冬や自主練習を見ていても、一人一人が考えて努力できる集団かなと思っています。自主的に練習している4年生も多いですし、努力できることや考えて練習している選手が多いので、そこはチームカラーとしてとてもいいことだと思いますし、後は結果を残すだけだと思っています。

――徐々に春季リーグ戦の開幕が近づいている中でご自身の心境はいかがですか

 正直、楽しみよりは心配のほうが大きいです。最近のオープン戦では完成度の高い東都(大学連盟)のチームとの試合で勝ちきれず、大差で負けた試合もあったので、そこは同じ大学生として負けて悔しいですし、まだ日本一を取れる集団のレベルには達していないと感じました。なので、必ず日本一になるためにもそこを修正できるよう意識してやっています。

――そこは残り3週間で詰めていくという意識を持っているのですか

 オープン戦で自チームの反省もそうなのですが、他チームの良いところも自分たちも取り入れていきたいと思っています。

――他チームの良さというところで気付いた部分はありましたか

 負けた試合でいえば、相手が自分たちの隙をついてきたりベンチを含め一球に対して声を掛けていたりしたので、一球に対してかかる力の圧を感じましたし、そこが自分たちには足りない部分だと思いました。なので、その後のミーティングで伝え、次の試合からできるように意識付けすることを話しました。

――主将としてというのもあると思いますが、ご自身としても大学野球のラストイヤーに特別な思いはありますか

 かなり特別な思いがありますし、主将になったのは野球人生の中で初めてのことなので、今まで主将を見てきた中でいいところをどんどん思い出しながら、昨年の覇者として連覇できるように頑張りたいです。また、リーグ戦に勝った後はもちろん日本一を目指して自分たちの代で優勝を経験したいなと思います。

――そういった意識は同級生の中でも一致していますか

 チームのスローガンが『一球入魂』で、一球入魂ノートというものを毎日、学年の中で回しているのですが、それをみんな1ページぎっしり書いてきます。その中でベンチから外れたメンバーや就職活動中のメンバーが書いた自分たちの代で優勝したい、日本一を取りたいという文字を見ると主将としてだけでなく、本気でこの学年で勝ちたいという思いが強くなりました。

――そのノートは今年導入されたものなのですか

 そういうノートを作りたいというのを新チームになる前から話し合っていて、新チームが始まってからみんなで回し始めました。

――野球への思いや今後の目標を1ページ書くものなのですか

 一人一人が手書きで書いていて、それぞれの思いを感じますし、メンバー、メンバー外関係なくみんなが勝ちたいと思ってくれているので、この学年の全員で勝ちたいという気持ちは強くなっていると感じます。

――個人としての春季リーグ戦の目標はありますか

 正直、チームが勝てば何でもいいと思っていて、その中でヒットを一本でも多く打ちたいですし、リーグ戦の中でも最多安打や出塁率、打点というところにはこだわってやっていきたいです。

――チームの目標はリーグ戦連覇ということでしょうか

 連覇ですね。後は全日本がどうなるかは分かりませんが、日本一を目指して頑張っています。

――もし今色紙を書くなら何という字を書きますか

 『為』ですかね。以前、応援部の練習の見学に行った際や練習にOBの方がいらした際に一言声をかけてくださるのですが、あの時の優勝は感動したなどの一言を頂くと、その人たちの『為』に(野球を)やりたいですし、自分のヒットがチームの勝つ『為』になってほしいので、早稲田を応援してくれるみんなの『為』にという意味でこの字を書きたいと思いました。

――最後にリーグ戦への意気込みを教えてください

 昨年優勝することができて、その時の嬉しさというのは今までの苦しい練習を忘れるぐらい嬉しかったです。それを今の4年生で経験したいですし、今の野球部全員で経験したいと思っています。また、昨年早川さんから言われた「強い早稲田を取り戻す」という意味でも連覇というのを目指してチーム全員で頑張っているので、それを成し遂げられるようにこの春のシーズンをまずは一試合一試合戦っていきたいと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 小山亜美)

◆丸山壮史(まるやま・まさし)

1999(平11)年6月8日生まれ。179センチ、84キロ。広島・広陵高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右投左打。外出ができない現在、鈴木萌斗選手や岩本久重副将と一緒に寮でゲーム『桃太郎電鉄』をプレーしていると話していた丸山選手。小学生から野球ノートを書き続ける、早川選手に勧められた本でスポーツ選手としてのリーダーシップを学ぶなど、練習以外での努力も怠りません。今年もあの素晴らしい景色をもう一度。強敵を打ち破り、早稲田を日本一のチームに導きます!