【連載】春季リーグ戦開幕前特集『anew』 第4回 原功征

野球

 昨年までの東京六大学リーグ戦(リーグ戦)で登板機会はないが、この春のオープン戦で毎試合のようにマウンドに上っている原功征(スポ3=滋賀・彦根東)。左のサイドスローという変則フォームで、リリーフの座を掴み取ろうとしている。今春、リーグ戦初登板が期待される中、原のここまでの成長曲線、そして意気込みを伺った。

※この取材は3月25日に行われたものです。

「考えながらやってきた1年」

笑顔で質問に答える原

――少し前のお話から伺います。早稲田大学野球部に入って何か感じたことはありましたか

 入学前から東京六大学の中でもレベルの高い野球部ということを知って入部したので、やっぱり練習の雰囲気から一つ一つの動作までレベルの高いところで、とんでもないところに入ってしまったなというのが正直な印象でした。

――1年時を振り返ってください

 周りのレベルの高い環境の中でついていくのに、いっぱいいっぱいになってしまった1年間だったと思います。その中で春からフレッシュリーグ(東京六大学春季フレッシュリーグ)の方に出させてもらって、早くから神宮球場という舞台でプレーできたというのは、1年生の経験の中で大きかったと思います。

――昨年はコロナウイルスの感染拡大もあって、難しいシーズンになったと思います

 4月から2ヶ月ぐらい、自粛期間で自分も帰省していて、思ったように練習ができない中で、グラウンドで練習できる環境が当たり前ではなかったのだなと感じさせられた1年でした。その中でより自分で考えて、限られた中でどうすればいいのかというのを考えながらやってきた1年だったと思います。

――練習に変化はありましたか

 限られている中で一つ一つの練習の質だったりというところをいままでと同じようにやるのではなく、一つの練習でも体のどこを利かせてやるかというふうに意識していました。野球が当たり前にできないという環境の中で、野球ができる喜びだったりを自粛期間が明けてから感じて、そこから自分の中で一つレベルを上げて練習ができたのかなと感じました。

――自粛期間中は何をしていましたか

 外出は出来なかったので、実家の近くの道をランニングしたり、自宅の庭でトレーニングしたりという感じだったので、気持ちの面が難しかったですね。春のリーグ戦が行われるかどうかも分からなかったので、モチベーションの維持とかが一番難しかったのかなと思います。これが自粛期間の印象ですね。

――モチベーションを維持するべく心がけたことはあったのでしょうか

 自宅にいる期間がすごく長かったので、リーグ戦の動画とか、高校時代の動画とか、今までの試合を振り返る機会にもなって、その中でリーグ戦に出たい、もっと野球がうまくなりたいというのを自分のモチベーションに変えていた部分はあったと思います。

――自粛期間を経て、心境の変化というのはあったのでしょうか

 去年漠然とやっていたものを、どう意味があるのか、リーグ戦につなげるためにはどうすればいいのか、どういう部分を自分は磨かなければならないのかというのをすごく強く考えながら、練習はするようになりました。

――野球部全体として重苦しいムードというのはあったのでしょうか

 自粛期間はバラバラだったので個々の意識だけだったと思うのですが、緊急事態宣言が明けて、その時はリーグ戦も行われると決まっていた中で時間がなかったので、そういう部分では一つの目標に向けて練習ができていたのかなと思います。

――そんな中でも野球部は秋季リーグ戦で10季ぶりに優勝を果たしました。その時に何か感じることはありましたか。

 早稲田が長い間優勝できていなかったというのはもちろん自分の中でありました。早稲田は学生野球のトップというところもあるので、なかなか自分としても悔しい思いもありましたし、何としても優勝したいと思って迎えたシーズンだったので、優勝した瞬間に自分はグラウンドにいることができたので嬉しかったですし、優勝はこんなに嬉しいものなのだと実感したシーズンでした。それと同時に、4試合にベンチに入ったのですが、1試合も登板機会がなく、優勝したと同時になかなか戦力として貢献しきれなかったという思いも強かったので、春のリーグでは絶対に投げてやるという思いを持って、冬のシーズンを過ごせたと思います。

――その後のフレッシュトーナメントでは全3試合に登板しました

 フレッシュトーナメントは1年生の頃から出させてもらっていました。自分たちの代はフレッシュを経験している人間は少なかったので、自分が先頭になって引っ張っていかないと、そして自分が投げて抑えて当たり前と言うぐらいの強い気持ちを持って迎えました。法大戦では投打ともに噛み合っていい試合になったのですが、明大戦では結局自分が決勝点を取られてしまって負けてしまって、立大戦も勝ち越し点は自分だったので、僅差の場面で投げる難しさや、正直4位で終わった悔しい思いもありましたが、個人的にはいい場面で投げさせてもらったので、すごいいい経験ができたフレッシュトーナメントだったと思います。

――課題を克服するためにやっていることはありますか

 真っ直ぐが弱くてなかなか空振りが取れなかったので、少しでも球速を伸ばしたいと思って質にもこだわってやってきました。年明けは投げ込みも増やして、数をこなす中で精度を高めつつという点に重きを置きました。さらに早稲田のピッチャー陣は他のチームよりも走り込みのメニューが多いので、走り込みをしつつ、体の線が細いのでウェイトにも重きを置くという感じで、全体的に足りないところだらけなので、全体的な特にこだわったのは真っ直ぐの質かなとは思うのですが、変化球の精度だったりキレだったりといったところにもこだわってやっていきました。

――冬のシーズンには、上級生や監督から何かアドバイスをいただいているのでしょうか

 監督さん(小宮山悟監督、平2教卒=千葉・芝浦工大柏)からは時々ですが、体が三塁方向に流れてしまう癖があるので、真っ直ぐ力を伝えて投げろということを言われ続けています。自分に染み付いていた癖なので、なかなか難しい部分はあるのですが、少しずつ克服できているのかなと思います。後は、自主練の中で徳山さん(壮磨、スポ4=大阪桐蔭)や西垣さん(雅矢、スポ4=兵庫・報徳学園)に話を聞いたりして、「コントロールはどういう意識で投げ込めばいいですか」など、この冬は先輩に自分から質問できたシーズンだったかなと思います。

――上級生や同期の印象はいかがでしょうか

 4年生の人たちは最後のシーズンということもあって、このシーズンにかける思いはすごく練習の中から伝わってきていて、何度も優勝したいとおっしゃっています。去年の秋のリーグは早川さん(隆久、令3スポ卒=現東北楽天ゴールデンイーグルス)の影響が大きかったと思うので、早川さんが抜けて弱くなったと思われないように、そういう中でまた違った強い早稲田をつくろうとしている思いは伝わってくるので、自分も1つのピースになれればと思って練習はしています。同期もなかなかレギュラーメンバーの練習に入ってくるのが少ないのが現状なのですが、入れ替わりが激しい中で野手は色々な人がレギュラーメンバーの練習に混ざってより高いレベルの練習をしていると思います。学生コーチの須永さん(賢也、スポ4=群馬・前橋)が常々言っている通りに、今のうちから4年生が抜けた後、自分たちの代になった時にどういうチームにしたいのかをここから考えて、その中でどういう選手になりたいのかを意識して練習だったり自主練だったりを取り組む人が増えてきているのかなというのが同期の印象です。

――プライベートで仲がいい選手はいますか

 同期のピッチャーですかね。基本的に仲がいいというか、ご飯食べに行ったりもします。また自分は寮に入れてもらっているので、マネージャーの岩井(寛汰、スポ3=大阪・早稲田摂陵)と仲がいいので、ご飯に行くことは多いですかね。

――同期や後輩で意識する選手はいますか

 後輩ですが、自分と同じ時期に入寮した加藤(孝太郎、人2=茨城・下妻一)が、この春のオープン戦でもすごくいいピッチングしていて力がある選手というのは自分の中でも感じています。そこに負けないように成績を残すことももちろん、加藤も自分の中で考えながら練習しているので、意識の面でも負けないようにしたいです。自分も練習でも一緒になることが多いので、日々意識させられているなというのは感じますね。

――慶大には、同じ左腕の増居翔太選手(3年)、野手では朝日晴人選手(3年)と高校の同級生がいらっしゃると思います。やはり意識してしまうところはあるのでしょうか

 早稲田と慶應というライバル関係もあるので、どうしているのかとは聞きづらいですが、すごい気にしている部分ではあります。高校の初練習の時に顔を出して、朝日と増居とも話をする機会があったのですけど、やっぱり二人とも考え方だったり、一緒にキャッチボールしたり練習したりする姿を見ても、さすが慶應で試合に出ているだけの選手だなというところは感じましたし、負けてられないなと思いました。去年の早慶戦で、チームとしては勝ちましたが、二人は出て、自分は出られなかったので、悔しいという感情が人一倍ありました。次は自分が投げて、増居に投げ勝ったり、朝日を抑えたりという部分でも慶應に勝ちたいなと思います。

リーグ戦初登板へ

2日のJFE東日本戦で登板した原

――オープン戦の手応えはいかがでしょうか

 なかなか思うようにならないこともたくさんあるのですが、結構な試合数投げさせてもらっています。1試合ごとに自分で目標を立ててノートに書いてというのを繰り返してやっているのですが、変化球の精度も上がり、真っ直ぐで三振を撮れることも増えてきたので、少しずつ手応えを感じているかな、という状況です。その中でまだまだ課題はあるので、より良い状態でリーグ戦を迎えられたらなと思います。

――投球について意識している点はありますか

 リリーフなので、須永さんから言われているのは、リリーフに上がった初球を大事にしろとは言われて、やっぱりピッチャー変わって初球というのは、いいボールがいけばチームとして流れが乗れる部分があって、逆に抜けたり引っ掛いたりというボールになってしまうと、チームとしてもピッチャー大丈夫かとなってしまうので、変わった後の初球は意識しています。

――自分の投球術にこだわりはあるのですか

 球は速くないので、緩いボールを用いて真っ直ぐを速く見せるということにこだわっていて、いかにバッターに的を絞らせないかだったりとか、意識的にテンポを早くして、相手に考える隙を与えなかったりとか、そういう部分は常々こだわっている部分かなと思います。

――オープン戦で監督に言われたことがありますか

 試合に関して監督さんから個別に言われることはないのですが、監督さんが自分に一番期待している役割というのは、左のサイドスローなので、対左打者をしっかりと抑えるというところかなと思っています。オープン戦は1イニングで使われるというのが基本なのですが、リーグ戦では六大学には左の強打者がいっぱいいるので、そこでワンポイントでポンと出されるということも間違いなくあると思いますし、監督さんが一番そういう部分も求めていると思うので、オープン戦の中でも対左打者というのは絶対に抑えなければいけないと思います。また、ちらほらフォアボールがあって、無駄なランナーなので、残りの3試合でなるべく出さないようにしたいです。いつでもストライクが取れる、元々ぽんぽんストライクを取れるピッチャーになって欲しいというところがあると思うので、そういうところも修正しつつリーグ戦を迎えればなと思います。

――監督からの期待は大きいと思います

 あまり監督と試合の中での話はしないのですが、ブルペンの時にフォームの中で気になったことを指摘してくださったり、自身の中で配球だったりする面では話をしないので、一番重要なのは本当に左を抑えて欲しいということを一番に思っていると感じるので、ブルペンの中でもバッターを立たせるときも左を多めにして、左の時の配球のパターンも増やせるようにというのが意識をしてやっているので、監督が期待をしてくれているのもそこなのかなと思います。まずは左を抑えて、それができてくれば、1イニングを任せてもらえるピッチャーにもなれるので、まずはそこからと思っています。

――春季リーグ戦について伺おうと思います。このままいけば、リーグ戦初登板が見えてくると思いますが

 入部した時からリーグ戦で投げるというのが一つの目標なので、この春でしっかり投げるというのが、大学入ってからの目標なのでまずはそれを達成したいと思います。その中でただ投げるだけじゃなくて、しっかり抑えて、優勝に向けての戦力になるのが求められる役割だと思うので、どんな試合でも、任せてもらえる、困った時にいってくれる、原なら抑えてくれるという選手になるのが目標なので、なかなかそこのレベルにいくのは難しいかもしれないですけど、そのレベルを目指して、このリーグ戦を投げられればいいなと思います。

――リリーフとして大事な終盤や重要な場面の左打者での登板が見込まれます

 須永さんからも、やっぱりお前が投げるのは終盤の緊迫した展開での対左打者を迎えた時で、そこを一番に考えて練習しようとはおっしゃってくださっているので、自分の持ち味が生きるのもそういう場面かなと思います。対左打者を期待して使ってくれると思うので、そういうところに応えられたらなと思っています。

――警戒しているチームや選手はいますか

 まだ他のチームのオープン戦などの動画を見てないので、また何とも言えないですけど、やっぱり同期がいる慶應というのは意識する存在になりますし、ニュースも見ていると、法政のピッチャーも出来がいいというのも見るので、やはりどのチームも警戒しなければいけないと思います。やっぱり油断していると足元をすくわれるというのを、今までリーグ戦をスタンドやベンチから見ていても、すごく感じる部分なので、監督さんも常々言っておられているように、当たり前のことを当たり前にやるというのが、相手がどうこうというよりも大事なのかなと思います。

――開幕は東大戦となりますが、どのような印象を抱いていますか

 東大は打力があるイメージで、去年の秋のリーグもバッティングはすごいものがあると感じています。一発のあるバッターもいますし、東大だからと油断していると一番危ないと思っているので、自分も登板機会があるかわからないですが、しっかり低めを意識して自分のピッチングができればいいと思っています。

――個人的な目標はありますか

 全試合でベンチに入るというのが一番の目標で、その中で初登板を果たしたいです。そこでしっかり結果を残して、早慶戦の舞台でも投げられたらなと思っています。やっぱり早慶戦で投げるというのが自分の憧れでもあるので、その舞台に立ってみたく、もちろん抑えたいです。それでも、まずベンチ入りしてしっかり投げて少しでもチームの力になるというのがこのリーグの目標かなと思っています。

――最後にリーグ戦の意気込みについてお願いします

 秋のリーグ戦で優勝して、秋春連覇できるのは早稲田しかないと思っているので、しっかり優勝して、その先に全日本の大会があると思います。学生コーチの占部さん(晃太朗新人監督、教4=早稲田佐賀)も日本一になるといっておられるので、まずはリーグ優勝して、その先の日本一というのも見据えて、しっかりこれからのオープン戦や練習で細かいところを詰めていきます。できるところは限られていると思うので、その中で自分が任された役割を全うできるように、最善の準備をしていきたいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 芦沢拓海)

◆原功征(はら・こうせい)

2000(平12)年12月28日生まれ。169センチ。71キロ。彦根東高出身。スポーツ科学部3年。投手。左投左打。初めてのインタビューでしたが、はきはき答えていただき人柄の良さが伝わってきました!原選手のリーグ戦初登板が今から楽しみです!