昨年から東京六大学リーグ戦(リーグ戦)で4番を務め、正捕手としてチームを支えてきた岩本久重副将(スポ4=大阪桐蔭)。だが、昨季は打撃不振に陥り、主軸としての役割を十分に果たすことはできなかった。冬には打撃を重点的に鍛え、迎えるラストイヤー。現在のチームの状態を伺うとともに、リーグ戦連覇に懸ける思いに迫った。
※この取材は3月30日に行われたものです。
「自らが主将のつもりで」
取材に答える岩本副将
――緊急事態宣言中はどのように過ごされていましたか
なるべく不要不急の外出を控えて、感染防止に努めながらもさらなる技術の向上を目指して頑張りました。
――緊急事態宣言が解除されましたが、練習の変化などはありますか
あまり大きな変化はないのですが、(緊急事態宣言が)明けたからといって油断はできないと思うので、引き続き体調管理を徹底しています。
――小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)からは丸山壮史主将(スポ4=広島・広陵)と二人三脚でチームを支えてほしいという話があったと思うのですが、ご自身としてはどう振舞うようにしていますか
自分は副将なのですが、グラウンドでは自らが主将のつもりで丸山と2人で先頭に立って、自分たちが一番声を出してチーム全体に浸透させるように、声かけをしています。
――現在のチームの雰囲気はいかがですか
リーグ戦が近づくにつれ徐々に緊張感が出ているのですが、まだまだ隙があると感じているので、それをなくすためにも、より緊張感を持った雰囲気を自分たちで作っていきたいです。
――スポーツ推薦では印出太一選手(スポ1=愛知・中京大中京)、栗田勇雅選手(スポ1=山梨学院)といった捕手の2人が新たにチームの一員となりましたが、印象はいかがですか
バッティングや肩の強さといったポテンシャルは2人ともすごく高いと思っていて、3つ学年は離れているのですが自分から積極的に知識を吸収しようという姿勢が見えるので、考えて行動できているなと感じます。
――2人とは練習の中でどういったやり取りをされていますか
分からないことがあればそのままにするなということは言っているので、ノックやバッティング練習の際も何か気づいたらすぐ自分に聞きにきてくれます。また、自分も(2人を)気にかけながらやっているので、何かあれば自分に聞きにくるよう促しています。
――今一番伸びてきていると感じる選手はいますか
チームも新体制に変わり、みんな伸びているのですが、自分が思うのは中川(卓也、スポ3=大阪桐蔭)が役割を考えてプレーできていると感じます。今はずっと2番打者を打っているのですが、相手の嫌がる打撃をしたり、守備の間でも声が出ているので、伸びているというよりは役割を全うしてくれて、チームの戦力になっていますね。
――この冬の練習で重きを置いてきたことは何ですか
昨季は打率が落ち込んでいたので、もう一度バッティングを見直し、4番としてチームの勝利に近づける一本を打つためにも、打撃に力を入れて頑張っていました。
――打撃面ではどういった練習をされていましたか
とにかく冬の間は数を振りました。その中でいろいろな選手を参考にしながらタイミングの取り方を自分なりに当てはめて、よりシンプルに力が伝わる打ち方を目指して頑張っています。
――先日の丸山選手の対談でチームとして振る量が多くなったという話をお聞きしたのですが、岩本選手としてもそれは感じていますか
全体練習で振れる量は限られているので、どれだけ自主練習で振れるかが大事だと思っています。(全体練習が)終わった後、多くの選手が居残ってバッティング練習をしていて、自分も毎晩1時間半か2時間ほど、学生コーチの冨永(直宏、文3=東京・国学院久我山)に練習につきあってもらっているので、毎日欠かすことなく振れていると感じます。
――この冬で克服できた課題などはありますか
まだ克服できたとは断言できないのですが、打撃面では打球の質や強さが昨年よりも飛距離も含めて出ていて、広角に打つことができています。ただ、その中で好投手からどれだけ打てるかが今後の課題だと思うので、そこは引き続き頑張りたいと思います。
――先日の東北福祉大戦ではバックスクリーンへの本塁打もありましたが、オープン戦の手応えはいかがですか
バックスクリーンに打てたというのは収穫なのですが、ミスショットがまだまだ多いと感じています。やはりリーグ戦になると一球で結果が大きく変わるので、さらに精度を突き詰めて(練習に)取り組んでいきたいと思います。
――捕手の視点から見て、現在の投手陣の状態はいかがですか
まだまだ試合をつくれる日とつくれない日がはっきりしていて、これではリーグ戦では勝てないと思っています。やはり勝つには(投手が)抑えないと勝てないので、バッテリー中心にもう少し失点を減らしていきたいです。また、オープン戦では大量失点が多いので、ここからは自分も含めて、リーグ戦に向けてもう一段階ギアを上げて(練習に)取り組まなければならないと感じます。
――そうした大量失点の原因はどこにあると考えていますか
制球力というのが一番で、無駄な四死球が多いことが大量失点につながっていると感じています。もちろん四球を出すことが悪いという訳ではではないのですが、(四球の)出し方に問題があるので、そこは投手有利のカウントに持っていけるよう自分が精いっぱい手助けしたいです。
――中継ぎでは、リーグ戦登板経験のない原功征選手(スポ3=滋賀・彦根東)、加藤孝太郎選手(人2=茨城・下妻一)の台頭があると思いますが、岩本選手から見て2人はいかがですか
まだリーグ戦では投げていないのですが、オープン戦では毎試合のように投げていて、日々手応えを感じています。練習でも熱心に取り組んでいるのは見ているので、リーグ戦に登板する際は先輩の自分が不安要素を取り除いて、思い切って腕を振らすことができるよう引っ張っていきたいです。
――飯塚脩人選手(スポ2=千葉・習志野)、清水大成選手(スポ2=大阪・履正社)の去年のスポーツ推薦組も実戦デビューを果たしました。2人への印象はいかがですか
元々持っているポテンシャルは高いと感じています。けがもあり準備の面では難しいとは思うのですが、焦らずに段階を踏んで調整をしてほしいと考えているので、自分が引っ張って彼らの良さを出していきたいです。
――昨年1年間正捕手を務めて、配球面で考え方が変わった点はありますか
小宮山監督からカウントの作り方について勉強させていただいて、どんな打者でも追い込んでしまえば打率は下がるので、いかにして(打者を)追い込むかを重点的に考えていました。追い込み方はいろいろとあると思うのですが、状況に応じて正しい選択をして投手有利のカウントで試合を進めていくことの重要性を昨年は強く感じたので、次の春もそこを意識して配球を考えたいと思います。
――打撃では4番としてどういった仕事が求められると考えていますか
やはり打点をたたくというのが一番の役割だと思っているので、好機で確実に(走者を)返したいです。そのためには長打も必要だと思っていて、自分が打つ、打たないで試合の流れが変わると考えているので、チームが落ち込んでいる時に雰囲気を変える一打というものを狙っていきたいです。
――春季オープン戦を経て感じたチームの課題、個人の課題を教えてください
チームの課題としては投手がリズムを作って自分たちのペースに持っていけるかで、駄目な時にどれだけ相手に流れを渡し切らずに粘れるかが課題だと思っています。加えて、経験の浅い投手が投げやすいように引っ張ることが自分の役割だと思っていて、制球のミスも投手だけでなく自分にも少なからず責任があると思うので、まずはゲーム運びをしっかりと行っていきたいです。打撃ではまだまだ簡単にアウトになる打席もあるので、しぶとさを出しながらも長打にこだわりたいです。
――昨年のチームと比べて守備の面ではどう感じていますか
それほど遜色はないと思うのですが、ここで守るという場面で平常心を保ってプレーできるかが重要だと思っているので、技術というよりはプレーまでの準備や心のバランスが大事になってくると感じています。
「最善を尽くすことで結果はついてくる」
春季オープン戦・東北福祉大戦で本塁打を放つ岩本副将
――春季リーグ戦まで2週間を切りましたが、今の心境はいかがですか
いよいよ始まるなという感覚を持っていて、1日の緊張感というのも日を追うごとに増し不安もあるのですが、いかにベストな状態で入れるかが大事なので、リーグ戦にプラスとなる過ごし方をしていきたいと思います。
――今季はどの大学も打倒早稲田で挑んでくると思われますが、どういった戦い方をしていきたいですか
優勝したのは昨年のチームなので、どのチームよりも低い姿勢で立ち向かい、泥臭く勝ちにこだわってやっていきたいと思います。
――低い姿勢というのは挑戦者のように戦うということですか
決して受け身になるのではなく、攻める気持ちで戦うことが大事だと考えています。
――先日の対談で連覇の鍵を握るのは徳山壮磨選手(スポ4=大阪桐蔭)だと話されていましたが、この考えは今も変わっていませんか
やはりエースが勝てばリーグ優勝にぐっと近づくと思うので、徳山は変わらずキーマンであり、一番頑張らなければいけない選手だと思っています。
――ついに大学ラストイヤーとなりますが、何か特別な思いはありますか
進路にも関わる大きなシーズンなので、最高のかたちで終わりたいと感じています。なので、特別な思いもありますし、昨年の4年生に負けないようにチームを引っ張りながら優勝を目指したいです。
――個人としての今季の目標はありますか
勝てる捕手というのが一番評価されると思うので、優勝することが何よりも大事だと考えています。というのも、結果にこだわりすぎるのも良くないと監督さんから去年の秋にお話をいただいて、その一瞬、そのプレーにどれだけいい準備をして最善を尽くすことで結果はついてくると思うので、今年は個人的な数字(の目標)はあえて立てずにチームのために取り組む姿勢を見せていきたいです。
――もし色紙を書くなら何という文字を書きたいですか
捕手というチームを支えるポジションであり、主軸である4番を任されているので、『要』という文字でお願いします。
――最後に今季の意気込みをお願いします
一戦必勝で勝つことが大事だと考えていて、特に入り、開幕戦というのは重要視しています。なので、残り2週間という短い期間ですがそこに標準を合わしてチームをいい状態に持っていきたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 足立優大)
◆岩本久重(いわもと・ひさしげ)
1999(平11)年4月21日生まれ。181センチ、92キロ。大阪桐蔭高出身。スポーツ科学部4年。捕手。右投右打。冬の間の振り込みで逆方向にも強い打球が放てるようになったと語ってくれた岩本選手。春季リーグ戦ではチームに流れを呼び込む豪快な一発に期待しましょう!