【連載】新体制始動特集『継承』 第1回 中川卓也×熊田任洋

野球

 今回登場するのは、中川卓也(スポ2=大阪桐蔭)と熊田任洋(スポ1=愛知・東邦)の内野手コンビ。共に高校時代から大舞台で実績を残し、早大に入学した。東京六大学野球リーグ戦(リーグ戦)連覇への鍵となる2人は、1年時から出場機会を得て、経験を重ねてきた。コロナ禍という異例のシーズンを振り返り、来季への思いを伺った。
※この取材は12月18日に行われたものです。

「全員で共有できる環境」(熊田)

 取材に答える中川卓(左)と熊田

――新チームが始動して3週間ほど経ちましたが、新チームの雰囲気はいかがですか

熊田  秋がいいかたちで終わって、また春優勝するという強い気持ちでみんなが練習して、いい雰囲気でやっていると思います。

中川卓  新チームになって、全員が気持ち変わらずに春優勝という目標に向かって今、同じ方向を見て全員で、4年生中心に同じ方向を見られています。目標をはっきりと明確にして、この冬をやれているかなという実感はあります。

――新体制に移行してから変わった部分はありますか

中川卓 自分の場合は、キャプテンの丸山さん(壮史主将、スポ3=広島・広陵)や学生コーチの占部さん(晃太朗、教3=早稲田佐賀)からどんどん発言をしてほしいというふうに言われています。気付いたことがあれば細かいことでも言って、チームをよくするという方向でやっているので、学年問わず言うべきことを言えるやりやすい環境だと思います。

熊田 自分も似ていて、今基礎練習が多くなっていますが、全員で共有しやすい環境なのが変わったところなのかなと思います。

――今基礎練習とありましたが、どのような練習をしていますか

熊田 守備であれば下半身を中心に強化したメニューで、ボールを手で転がしてしっかりとバウンドを合わせて取ること、バッティングは数を振るということを重点においてやっています。

――ここからはプライベートの話についても質問させていただきます。お互いの他己紹介、意外な一面があれば教えてください。

中川卓 クマ(熊田)は、一応自分が先輩なんですけど、先輩って思っているのかなって。常にため口で、ちょっとなめてますね(笑)。

熊田 そうですね、(読者の)皆さんは高校の時とかキャプテンで優勝されているという印象が強いですけど、普段の生活から見ると子供っぽいところはたくさんあります。

――具体的に子供っぽいと感じた点はありますか

熊田 ちょっかいとか子供っぽいですね(笑)。

――お2人は2018年のセンバツに出場されましたが、お互いを意識するようになったのはいつからでしょうか

熊田 そんなに(意識はして)なかったです。名前は知っていたのですが、自分が意識できるようなレベルじゃなかったので

中川卓 熊田と初めて会ったのは、その年の6月くらいに愛知に遠征に行った時に東邦と試合をして、その時が初めてでした。センバツの時に気になったとかはあまりなかったです。

――部活以外で親交はありますか

中川卓 コロナの前、自粛期間の前は銀佑さん(金子銀佑、教4=東京・早実)とクマと自分の3人で守備の練習、自主練習をやったり、そこから一緒にご飯いったりしていました。

――ほかに部内で仲のいい選手はいますか

中川卓 みんな仲いいです

熊田 自分も先輩方に優しくしてもらっていますし、特に丸山さんにはとてもよくしてもらっています。

――丸山主将と岩本久重副将(スポ3=大阪桐蔭)はどのような人物ですか

中川卓 口に出したことを行動にするのって難しいと思うのですが、あの2人は人に厳しく、自分にもっと厳しくといった感じで、言ったことは絶対徹底してやるし、それを継続してできる2人ですね。あの2人がキャプテン、副キャプテンでいてくれるおかげで、自分たちがのびのびやらせてもらっているので、尊敬できる2人です。

熊田 自分もだいたい同じですが、自分に厳しく弱みとかも見せることなく練習に打ち込んでいて、頼もしいです。何かわからないことがあれば、丁寧に教えて下さるいい先輩です。

「『あの場所に立ちたい』という思いが強くなった」(中川卓)

昨春の立大戦で安打を放つ中川卓

――続いて個別に伺っていきます。2020年全体を振り返ると野球についてどのような年になりましたか

中川卓 2019年は1年を通じて悔しいシーズンだったと(昨年の新体制始動対談において)言ったと思うのですが、去年(2020年)は情けないというかふがいないシーズンになりました。

――どのような点からふがいなさを感じましたか

中川卓 おととし1年間経験しましたが全然だめで、2年目は(結果を残したい)というところだったのですが、コロナとかもあったりして、試合数が少なく難しい部分もありました。その中でなかなか結果を残せず、秋はスタンドで優勝を見届けるというかたちになったので、優勝はもちろんうれしかったのですが、自分個人としては悔しいというか、「あの場所に立ちたい」という思いが強くなりました。

――それでは春季リーグ戦について伺います。打率が.222と低迷してしまいましたが、その要因をどのように考えていますか

中川卓 (対戦相手の)投手が良いので、4割5割打てるというような世界ではないと思っていますが、投手が良いということで自分の中で焦ってしまって、ボールを呼び込むのではなくて、ボールを迎えにいってしまいました。(ボールを迎えにいってしまうと)その分早くバットを振らないといけないので、変化球にタイミングが合わなかったり、ストレートに差し込まれてしまうことが多かったので、ミスショットが多かったです。それが打率が低い原因だったかなと思っています。

――3月の対談の際には、冬の練習で「振り抜く力」を鍛えてきたとおっしゃっていましたが、「振り抜く力」について手応えを感じた場面はありましたか

中川卓 去年の冬は「振り抜く力」と体の力をテーマにやっていました。年明けのオープン戦でホームランを2本打てましたし、ヒットも長打が多く出ていたので、芯に当てて振り切ることができれば、いい角度で(打球が)上がって、打率もそこそこ残せるのではないかと思ったので、感覚的には悪くはなかったです。

――3月のオープン戦ではできていたことが、春季リーグ戦においてはなかなかできなかったということですか

中川卓 オープン戦ももちろん打つことは難しいですが、リーグ戦だと(相手投手の)気合の入り方も違いますし、投手もしっかりと調整してくるので、そのようなところから焦りも生まれてしまったのかなと思います。

――一方で、四死球の数が試合数の割に多かったですが、この点はどのように考えていますか

中川卓 おととしのシーズンよりも、春の5試合だけですが球の見え方は少し良くなっていて、ボールを長く見られることが実感できました。それを秋につなげようと思っていましたが、ベンチに入ることすらできなかったので、春のイメージを持ちつつ、この冬にしっかりと自分の能力を高めていって来春につなげていきたいと思っています。

――続いて秋季リーグ戦のことを伺っていきます。春季リーグ戦が終わってからのオープン戦の当初から、スタメンを外れることが多かったですが、このことについて小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)から何かお話はありましたか

中川卓 特に言葉を掛けられたとかはなかったですが、「このままだと絶対スタメンを外れる」という危機感は自分の中であったので、そこは素直に現実を受け入れて頑張ろうとは思いました。

――秋季リーグ戦が始まってからのチームの戦いぶりをどのようにご覧になっていましたか

中川卓 最初の方は悔しさの方が強くて、あまり試合を見れなかったとうのは大げさですが、歯を食いしばりながらぐっとこらえながら見ていた部分はありました。それでも、勝つとうれしいし、打つとうれしいし、誰かが抑えるとうれしいという気持ちはあったので、今はメンバーではないけれど勝ちに貢献したいと思って、リーグ戦の終盤の頃には素直に応援できるようになりました。

――チームが優勝した瞬間はどのようなことを感じましたか

中川卓 自分の同期である蛭間(拓哉、スポ2=埼玉・浦和学院)が最後にホームランを打って、早川さん(隆久前主将、スポ4=千葉・木更津総合)が抑えて勝ってという試合だったので、そこに(試合に出られなくて)悔しいという気持ちは本当になかったです。同期の蛭間が打って、キャプテンの早川さんが抑えてくれて、とてもうれしかったです。

――蛭間選手の活躍をどのようにご覧になっていましたか

中川卓 多少複雑な気持ちはありますが、すごくうれしく思ったし、誇らしくも思ったしという感じです。

――それでは、東京六大学秋季フレッシュトーナメント(秋季フレッシュトーナメント)のことを伺っていきます。数少ないリーグ戦経験者として、チームを引っ張るために意識されていたことはありましたか

中川卓 フレッシュでは、ほとんどのメンバーがリーグ戦のベンチにも入ったことがない選手でした。自分はベンチに入らせてもらったことがある数少ない選手として、神宮のグラウンドの状況も試合展開によって変わってくることがあるので、そのようなところを(伝えることも)意識しながら試合をしていました。

――打撃について伺います。秋季フレッシュトーナメントでは、立大戦の3安打を含めて高打率を残されましたが、打撃をどのように振り返りますか

中川卓 法政戦と明治戦はあまり良くなくて、明治戦が終わった次の日に、同期の蛭間から「自分が、自分がになっている」と言われました。もっとチームのためにバッティングをするとか、メンバーに入っていない人のためにバッティングをするというふうにしたらどうかと言われて、気持ちが楽になりました。その時に「明日の立教戦は、蛭間のために頑張ろう」と思って、試合に臨んだ結果が3安打につながりました。自分のためばかりになっていた部分が正直あったので、そういう一言をくれただけですごい楽になって、立教戦は良い結果を残すことができました。

――チームの4位という結果をどのように感じてらっしゃいますか

中川卓 「強い早稲田をつくっていくにはフレッシュから圧倒的な差を付けていかない」と言って臨んだのですが、こういう結果(4位)になってしまいました。そこはしっかり受け止めて、これからあと2年間あるので、今の順位を上に持っていかないといけません。(フレッシュを通じて)1、2年にも危機感が生まれたので、フレッシュ自体は悔しい結果に終わったのですが、これから力を付けていけたらいいかなと思っています。

――最後に来季について少し伺っていきます。現在、打撃に関してどのような点が課題だと考えていますか

中川卓 やはり去年、今年含めてミスショットが多かったので、そこの改善です。あとはインコースもアウトコースも打てれば楽になると思うので、コースぎりぎりを打つことができるように工夫してやっていきたいです。

――来季に向けて、狙いたいと考えているポジションはありますか

中川卓 試合に出られるのであれば、どこでも出ますし、何番でも打つという気持ちではいます。

秋は真っすぐを素直に打ち返すことができた(熊田)

昨秋の法大2回戦で適時三塁打を放つ熊田

――ルーキーイヤーをどう振り返りますか

熊田 自分としては良い所もあれば、今後レベルアップしていかなければならない所も見つかったシーズンかと思います。

――高校野球と大学野球にはどのような違いを感じましたか

熊田 野球のレベルというか、一球の重みが全然違うと感じました。

――自粛期間に意識していたことはありましたか

熊田 その期間はとにかく体をいじめるというか鍛え直すという面で基礎からしっかり体を作ることをテーマにやっていました。

――春季リーグ戦までに見つかった手応えと反省点はありましたか

熊田 手応えとしては春のオープン戦は全然打てなかったのですが、夏のオープン戦になって少しずつ結果が出てくるようになりました。スイングスピードや、守備も送球が安定して、そういうところが夏のオープン戦ではよかったと思うので、そういったところで自粛期間のことがつながったと思います。

――この点が秋季リーグ戦にはどう生きましたか

熊田 真っすぐに対して秋は振り負けることなく素直に打ち返すことができていたと思うので、それはやってきたことがつながってきたのではないかなと思います。

――秋季リーグ戦の個人成績はどのように感じていますか

熊田 打率でいえば、自分は3割以上打つことを目標にやっているので、確実性だとかパワーとかこの冬でしっかりと身に付けていかないといけないと思っています。守備は春のリーグ戦が終わった後にコーチから「ショートがしっかりすれば強いチームがつくれる」というふうに言われたので、そのことを忘れずに秋はエラーは1つでしたが、毎シーズンゼロでいけるように頑張っていきたいと思います。

――秋季リーグ戦で収穫だと感じた点はありますか

熊田 守備では春のリーグ戦では4つエラーして、そのエラーが負けにつながることがありました。その後の守備は準備というか練習から試合を想定してっていうことを一球一球意識してやっていたので、それが秋のリーグ戦にはつながったのかなと思います。

――秋季リーグ戦で法大・鈴木投手(昭汰、4年)、立大・中﨑投手(響介、4年)慶大・木澤投手(尚文、4年)など他大学のエースから多くヒットを打ちましたが、その要因はありますか

熊田 試合の前日からピッチャーのイメージを持ってスイングをしたり、試合で実際に打席に立って、割り切って打席に入ることができたので、それがヒットにつながったのかなと思います。

――改めて早慶2回戦の最終回に木澤投手から放ったヒットを振り返ってください

熊田 あの時は初球打ったか分からないくらい集中していたので、それがいい結果になってくれたのがよかったと思います。

――熊田選手にとって4年生はどのような存在でしたか

熊田 自分が一番(学年が)下なのですが、自分がやりやすい環境というか、ミスしたら声を掛けてくださりますし、いいプレーをしたらお前のおかげだとか声を掛けてくださって、憧れというか頼もしい先輩方でした。

――来年度は2年生になり、後輩が入部してきますが、学年が上がることについてはどのように考えますか

熊田 いや、特に何も(笑)。ですが後輩が入ってくるので、悪い先輩にならないように(笑)、お手本になるような先輩になりたいです。

――高校の後輩の吉納選手(翼、愛知・東邦)が入学してきますが、何か連絡を取られたりはしましたか

熊田 吉納からは早稲田に来たいとずっと聞いていたので、それがかなっておめでとうと連絡はしました。

――来季に向けて強化したいポイントはありますか

熊田 自分は特にバッティングを強化したいと思っています。率もそうですけど、パワー不足ですし、ピッチャーを見下ろせるくらいの力をつけないと3割以上打てないので、そこをテーマに取り組んでいます。

――昨年2月の対談の際に「プロの世界に入って活躍したい」とお話されていましたが、早川前主将や対戦した選手がプロ入りを果たして感じたこと、心境の変化はありますか

熊田 プロに行きたいというのは変わっていません。ですが早川さんの練習している姿、他大学でプロにいった選手たちを見て、今のままじゃ全然プロなんか無理だというのを感じます。

「何でもいいからチームの勝利に貢献する」(中川卓)

――最後に再びお二人に伺っていきます。来季のチームスローガンが『一球入魂』に決まったということですが、このスローガンについてどのように感じてらっしゃいますか

中川卓 『一球入魂』は飛田先生(穂洲初代監督、大正2法卒)の言葉であって、名前の通り一球に全てをかけてプレーをしろ、ということです。この冬も毎日毎日基礎練習の繰り返しですが、『一球入魂』というかたちで一つの守備にしろバッティングにしろ取り組んでいるので、成果の上がる冬になっているのかなと思います。

――来季のことを少し伺います。来年の春季リーグ戦の優勝に向けて、どのようなことが必要になると考えていますか

中川卓 自分はスタンドから客観的に見て、なんで優勝できたかを考えたときに、無駄なアウトが少なかったというのと、走塁で点を取れたことがあったのかなと思っています。打つことはもちろん大事ですが、(東京六大学リーグには)いい投手が多いですし、打撃は水ものとよく言うので、なかなかそう簡単には打ちまくって点を取ることはできないと思っています。だからこそ、一つのバントであったり、盗塁であったり、ランナー二塁から(ヒット)1本でホームへ返るという本当に細かいところで勝敗が決まってくると思います。今はまさにそのような練習を積み重ねているところなので、この冬の成果を春に出して、秋春連覇を達成したいと思っています。

熊田 自分も1点取ることが難しいということを大学野球では感じたので、無駄な点を与えることをなくしていかないといけませんし、どうやったら1点取れるかを全員が考えて、やっていくことが大切かなと思います。

――最後に来シーズンに向けた意気込みをお願いします

熊田 来シーズンは3割を打って、無失策でベストナインを取ることを目標にやっていきたいです。

中川卓 これは昨年のミーティングの時にも言ったのですが、「何でもいいからチームの勝利に貢献する」ということが目標です。打って守って走って、チームの勝利に貢献することはもちろんですが、大事な時の声掛けなど、プレー以外のところでもチームの士気は変わってくると思います。技術面だけでなく、チームの士気を上げるなどの面でも、優勝に貢献できる選手になっていきたいと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 杉﨑智哉、高橋優輔)

◆中川卓也(なかがわ・たくや)

2000(平12)年7月25日生まれ。175センチ、75キロ。大阪桐蔭高出身。スポーツ科学部2年。内野手。右投左打。入学以後は悔しい時間を過ごしている中川選手。この日の対談からも苦悩する姿を見て取ることができました。来季は、中心選手としてプレーで、そしてプレー以外の面でもチームを優勝に導きます!

◆熊田任洋(くまだ・とうよう)

2001(平13)年4月15日生まれ。174センチ、76キロ。愛知・東邦高出身。スポーツ科学部1年。内野手。右投左打。1年生ながら早慶戦で大活躍し、優勝に貢献した熊田選手。来季は目標に向けて更なる高みを目指し、今季以上に輝きを放ってくれることでしょう!