東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)で『4番・捕手』の大役を任された岩本久重(スポ3=大阪桐蔭)と4試合にスタメン出場した鈴木萌斗(スポ3=栃木・作新学院)。同級生であり、寮生活でも行動を共にする仲良しコンビだ。そんな2人は、変則的な試合日程となった昨季を振り返り、来たる秋季リーグ戦で優勝するために何が必要だと考えているのか。
※この取材は9月8日にオンラインで行われたものです。
「一球の怖さ、大切さを感じた」(岩本)
昨季の明大戦で先制打を放つ岩本
――春季リーグ戦は変則的な約1週間での1試合総当たり制でしたが、振り返ってみていかがでしたか
岩本 日程的にキツくて、準備するのが大変でした。その中で、勝てる試合を落としたり、優勝できなかったりしたことは悔しいです。
鈴木萌 連戦が続いて、猛暑の中で体力的にキツかったです。でも、その中でチームの中で手応えがあったので、そこは秋につなげられる部分かなと思います。
――炎天下での試合になりましたが、体調などに影響はありましたか
岩本 体力的にキツかったですし、連戦が続いて、集中力を保つのも大変でした。
鈴木萌 自分も体的にもキツかったですし、集中力を保つのがとても大変でした。
――春季リーグ戦で1番印象に残っている場面はありますか
鈴木萌 早慶戦(●3―5)で金子さん(銀佑、教4=東京・早実)が土壇場で追いついた時のタイムリーが印象的です。自分は一塁コーチャーだったんですけど、あまりのうれしさにタイムをかける前にセカンドに駆け寄ってしまって、審判さんに怒られました(笑)。
岩本 自分も一緒ですね。あえて他の場面を選ぶとすると、(立大戦で)徳山(壮磨、スポ3=大阪桐蔭)が8回までノーノーで行って、結果的に打たれてしまいましたが、しっかりと抑え込めたことです。手応えも感じましたし、すごく印象に残っています。
――では、ご自身の一番の課題は何だったのでしょうか
岩本 バッティングが課題かなと思います。自分は4番を打たせてもらっているので、もっとバットで貢献しないといけないなと思います。
鈴木萌 自分も同じくバッティングです。自分は足があるので、もっと塁に出て、ランナーとしてプレッシャーを与えていければと思います。
――春季リーグ戦ではタイブレークを2試合落としましたが、難しさなどは感じられましたか
岩本 ああいう場面ではミスをした方が負けなので、2試合ともミスがあって、それで負けたと思います。大事な場面での一球の怖さというか、大切さを感じました。
鈴木萌 ああいう場面でしっかり結果を残すことが大切なのかなと思いました。
――夏の間はどのようなことを意識して練習に臨まれましたか
岩本 さっき(の質問)とつながるのですが、一球をしっかり大事に扱うことをチームとして徹底しています。ゲームセットまで集中力を維持して、一球をおろそかにしないように意識しています。
鈴木萌 一球で仕留めることを意識しています。チームとしてもミスショットが多いというのを課題にしているので、バッティングでも一球の重さ、大切さということにチームとして向き合ってやっています。
――ご自身の中で特に強化したポイントなどがあれば教えてください
岩本 (開幕まで)1カ月弱しかないですが、課題のバッティングを一から見つめ直して、秋にしっかりつなげようと取り組んでいます。
鈴木萌 自分も同じく打撃です。フォームを見直して、しっかり1カ月間でつくり上げていこうと思って取り組んでいます。
――今年は春季リーグ戦と秋季リーグ戦の間が短くなっていますが、これについてはどのようにお考えですか
岩本 試合の間隔が短いので、データ面などでは直近のデータが手に入りますし、良い準備ができるのかなと思います。
鈴木萌 1カ月という短い期間なので、春季の結果や内容を頭に入れた状態で秋につなげられると思います。
――次に岩本選手の方からお話を伺っていきたいと思います。4番として全試合に出場されましたが、特に意識していたことはありますか
岩本 打点を稼ぐことを目標にやっていました。チームが落ち込んでいるときに一発打てたり、ここぞという時に一本打てるようなバッティングをしようと心がけていました。
――では正捕手という立場から見て、投手陣の様子などはいかがでしたか
岩本 六大学の中で見ても、一番良い防御率ですし、自分は六大学の中で一番良いピッチャー陣だと思っているので、状態なども含めてキャッチャーの責任になってくるのかなと思います。状態はすごく良いので、そこをどうリードするかが大事だと思います。
――では、そのリード面で何か意識していることはありますか
岩本 (春は)試合が進んでいて、リズムがいい時に簡単に打たれたりとかということがありました。流れ良く守備が行けばもちろんいいかたちで攻撃につなげられので、紙一重なところはありますが。でも、それでピッチャーが良く投げてる分、単調になった部分がありました。そこをもうちょっと一球一球の意図を考えて、秋はやっていこうと思います。
――その投手陣について、春季リーグ戦で収穫や課題などはありましたか
岩本 相手バッターと比べて力負けせず、ピンチでも粘れていたので、手応えはあります。逆にもっと上手くリードすれば、もっと抑えられたと思うので、秋はデータの段階からしっかり準備して抑えていきたいなと思います。
――岩本選手は春の対談では、スローイングを武器にしていきたいということでしたが、ご自身の守備面を振り返ってみていかがでしたか
岩本 スローイングは、二塁で刺せたのが1回しかなかったので、もう少しスローイングの精度は上げていかないといけないと思います。また後逸もあったので、しっかり詰めてから秋は臨みたいと思います。
――次に鈴木萌選手に話を伺っていきたいと思います。初めて1シーズン通して試合に出場し続けられましたが、振り返ってみていかがですか
鈴木萌 前半は結構内容も良かったのですが、後半になるにつれて打撃の成績が上手くいきませんでした。なので、そこは見直す部分だなと思いました。
――法大戦では先制タイムリーを放たれました。あの場面を振り返っていかがですか
鈴木萌 あそこは1打席目で回ってきたときにチャンスを潰してしまっていて、2打席目だったので「何がなんでも打ってやろう」と思って打席に入りました。その結果、タイムリーにつながったのでとても良かったと思います。
――BIG6TVの解説者は「もえもえもえとのキュンキュンタイムリー」と表現されていましたが、あれを聞いて正直な感想を教えてください
鈴木萌 確か同じ解説者の人に初ヒットの時も名前でいじられたんですよね(笑)。だからまたこの人いじっているなという感じですね。複雑な気持ちでした(笑)。
――シーズンオフの時から打撃フォームの改善に取り組んでいるとおっしゃっていましたが、その手応えはある程度つかめましたか
鈴木萌 そうですね。それでも今もまだ自分の中ではまだ試行錯誤中です。2週間後に理想的なかたちのバッティングができるように、これからも取り組んでいきたいと思っています。
岩本選手が自粛中に始めたことは・・・
オンラインでインタビューに答える岩本(左)と鈴木萌
――続いてお2人の私生活についてお話を伺っていきたいと思います。普段から仲がいいとお聞きしましたが、これまでの学校生活で一番の思い出は何ですか
岩本 一番って難しいな(笑)。
鈴木萌 僕たち2人って常に一緒にいる仲なんですよね(笑)。自分の一番の思い出は仲良い8人のメンツで富士急に行ったことですね。
岩本 寮生活を一緒にしていて、ご飯を食べる時とかお風呂に入る時とかずっと同じタイムスケジュールで過ごすので、何気ない日常が一番面白いかなと思います。
――お互いに尊敬する部分はありますか
鈴木萌 かなりツッコミが的確なので、そこは本当に尊敬しています。関西人の中でも一際ツッコミには厳しいですね(笑)。それがすごく面白いので尊敬です。
岩本 逆に萌斗がすぐボケるので、拾ってあげないと面白くならないと思っています(笑)。常にツッコミのアンテナは貼りながらやっていますね(笑)。萌斗は日常面で言ったら、場の空気を和ませるのが上手かなと思います。誰とでも仲が良くて、先輩や後輩関係なく、どんな人からも慕われているので、そういった部分で場を和ませる力は尊敬しています。
――では野球に関して何か尊敬する部分はありますか
鈴木萌 やっぱり頼れるところですね。4番でキャッチャーというチームの要なので、チームを背負ってプレーしているのがすごいなと思います。
岩本 勝負強いところです。泥臭いようなバッティングや守備ができるので、いざという時に萌斗が打席に立っていたら頼もしいなと思います。
――お二人の第一印象はどうでしたか
鈴木萌 初めて会ったのは高3の早稲田の練習会で、第一印象は『大阪桐蔭』、『関西人』ぐらいですね。
岩本 今も細いんですけど、萌斗がその時はもっと細くて、「スタイルめっちゃええな、モテるやろな」と思っていました。
――出会った当初と現在とのギャップはありますか
鈴木萌 ギャップは特にないですね。関西人で話上手いし、本当に面白いなと思っています。
岩本 自分たちの我が強かったのかもしれないですけど、萌斗が最初は大人しいタイプなのかなと思っていました。それが仲良くなっていくにつれて、しょうもないボケとかをやっているので、第一印象とは全然違いますね。
――以前の対談で鈴木萌選手がルービックキューブにハマったとおっしゃっていましたが、岩本選手は自粛中何かハマったことはありますか
岩本 ルービックキューブはこいつ(鈴木萌)より先にハマりだして、萌斗に移ったというか萌斗が真似してやり始めた感じですね。
――今はどちらが早くクリアされるのでしょうか
鈴木萌 それは自分です(笑)。
岩本 いやいや、わからんわからん(笑)。あとは自粛中にプロスピを始めました。
――岩本選手が自粛中にボクシングを始めたという話も伺いましたが
岩本 誰が言ったん(笑)。
鈴木萌 俺言ってない(笑)。
岩本 ボクシングは趣味ではなくて、トレーニングの一貫として始めました。世界最速の球を投げたチャップマンがボクシングをトレーニングとしてやっているというのをインスタで見て、俺も世界最速のセカンドスローを投げられるようにボクシングで肩甲骨回りを鍛えていました(笑)。
――外出自粛ブームが依然として続く中で、夏休みの思い出は何かありますか
岩本 ずっと寝てたよな。
鈴木萌 自分たちとあと徳山、西垣(雅矢、スポ3=兵庫・報徳学園)の4人で集まって食堂でアイスを食べたことですね(笑)。あと自粛期間に誕生日の人が多かったので、寮内で誕生日をお祝いしたのが思い出です。
岩本 僕もアイスは思い出に残っています。あまり遠くには行けないので、近くのコンビニに行って男気ジャンケンをして楽しんでいました。
――新型コロナウイルスが収束して、自由に移動ができるようになったら行きたい場所はありますか
鈴木萌 どこだろう。今までも色んなところに行っているので・・・。
岩本 自分はどこか遊びに行くというよりは美味しいものを食べに行きたいです。最近ではみんな食の方に関心が寄っているので、海鮮やお肉などを美味しいところに行って食べたいなと思っています。
鈴木萌 いつも日帰りでどこかに行くことが多いので、どこか美味しいところを食べに泊まりに行けたらなと思います。
「ここぞというチャンスでの1本を」(鈴木萌)
昨季の法大戦で先制打を放つ鈴木萌
――秋季リーグ戦に向けてチームの雰囲気はいかがですか
岩本 春にあのようなかたちで負けて、みんな悔しい気持ちを抱えながら、秋に何としても優勝するんだという強い思いは持っていると思います。練習や試合でもいい空気感を保てているので、何としても秋は優勝したいなと思っています。
鈴木萌 春は結果が出なかったのですが、チームとして手応えを感じた試合がとても多かったです。それを踏まえてこの1カ月間の練習試合も勝ち切れていて、チームの雰囲気がいい試合がとても多いと感じています。このまま秋のリーグ戦に向かっていけたら戦えると思います。
――キャッチャーの岩本選手から見て投手陣の様子はどのように見ていますか
岩本 オープン戦でも抑えてる部分が多く見られますし、ピンチの場面でも腕を振って投げているので、状態はとても良いと思います。春は1球で悔しい思いをしたので、秋は気を抜かず一球一球真剣にバッテリーで試合をつくっていきたいなと思います。
――お2人の現在の調子はいかがですか
岩本 今調子良いと言っていたらダメなんで、ピークはリーグ戦に持っていこうと思っています。まあぼちぼちですね。
鈴木萌 自分も良いという状態ではないので、今はしっかり準備期間としてリーグ戦に向けて調整していきたいと思っています。
――秋季リーグの中で目標にしている数字やタイトルはありますか
岩本 ベストナインを取りたいなと思っています。
鈴木萌 自分も欲を言えば、ベストナインを取りたいなと思っています。春に打率も岩本くんと勝負していて負けてしまったので、岩本くんに勝ちたいなと思います。
――優勝を目標にしていく中で、チーム全体としてどのようなことが必要になると考えていますか
岩本 実力はあると思っているので、どれだけミスを減らせるかですね。そのために色んな準備が必要だと思うので、いい準備をして試合をしたいなと思います。
鈴木萌 ここぞというチャンスでの1本をしっかり出せれば、勝ちにつながると思っています。
――その中でキーマンになる選手はどなただと思いますか
岩本 やっぱり4年生が最後は頼りになると思います。どの代も、4年生が最後に気持ちでつないでくれたり、抑えてくれたりしていました。その面で4年生がキーマンだと思います。下級生たちもそれについていくかたちで頑張りたいと思います。
鈴木萌 自分も4年生だと思います。その中で自分たち3年生も4年生に負けずに戦っていけば勝てると思うので、3年生も頑張っていきたいと思います。
――最後に秋季リーグ戦に向けての意気込みをお願いします
岩本 春はすごく悔しい思いをしたので、秋は圧倒的に勝ちたいと思います。
鈴木萌 やはり優勝の二文字だと思います。優勝できるように頑張っていきたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 瀧上恵利、松下瑞季)
◆岩本久重(いわもと・ひさしげ)
1999(平11)年4月21日生まれ。181センチ、82キロ。大阪桐蔭高出身。スポーツ科学部3年。捕手。右投右打。普段はキレキレのツッコミでチームメイトを笑顔にしている岩本選手。今年は4番で正捕手という重圧のかかる立場を任されました。キレのあるスイングと、鋭いスローイングでチームに勝利を呼び込みます!
◆鈴木萌斗(すずき・もえと)
1999(平11)年6月25日生まれ。180センチ、77キロ。栃木・作新学院高出身。スポーツ科学部3年。外野手。右投左打。普段はボケ担当で、場の空気を和ませているという鈴木萌選手。今季に向けてさらに打撃フォームを磨いてきたそうです。自慢の快足と粘り強いバッティングに注目です!