9回1死からの同点劇 初の優勝決定戦再試合へ/早慶6連戦 優勝決定戦

野球
TEAM 10 11
早 大
慶 大
(早)安藤―野村
◇(三塁打)鈴木悳

 1960年秋の早慶戦は、当初劣勢と見られていた早大が2勝1敗で勝ち点を獲得。その結果早慶両校が9勝4敗の勝ち点4で同率首位となり、賜杯の行方は優勝決定戦へと持ち込まれた。早大はこのカードで既に2つの完投勝利を挙げているエース安藤元博(教3=香川・坂出商)が先発。対する慶大は2回戦で好投した角谷隆がこのカード初めて先発のマウンドに立った。

 先制したのは慶大だった。2回、この試合から4番に入っている渡海昇二主将が右中間を深々と破る三塁打を放ち好機をつくると、続く打者は前日まで4番だった大橋勲。内角の球を打ち上げると、打球はレフトの正面へ。やや浅い飛球だったが、早大の左翼手・伊田保夫(政経3=大阪・明星)は弱肩であるため、渡海は迷わずタッチアップのスタートを切る。伊田から遊撃手・末次義久(商2=熊本・済々黌)、そして捕手・野村徹(政経4=大阪・北野)へと送球が届いたものの渡海の足がそれを上回り、犠飛となって慶大に1点がもたらされた。

 反撃したい打線だったが、角谷の前に5回まで安打すら放てないなど苦しい攻撃が続く。6回には先頭の8番・所正美(4=県岐阜商)が右前打で出塁し、犠打で1死二塁の好機をつくったが、伊田、末次の上位打線が倒れて得点できず。7回には3番・石黒行彦(3=宮城・仙台一)が無死から中前打で出塁すると、4番・徳武定之主将(商4=東京・早実)が早慶戦4試合目にして初安打となる内野安打を放ち無死一、二塁の絶好機に。しかし二塁走者の石黒が捕手からのけん制で刺殺されると、後続も倒れてここも無得点に終わった。

 一方の安藤は3回以降粘りの投球を見せる。4回、5回には2死二塁と得点圏に走者を背負ったものの後続を断つと、6回から8回までは3人ずつに切って取った。そして1-0のまま試合は9回へ。好投を続ける角谷に対し、先頭の伊田は三ゴロに倒れる。慶大の優勝まであと2死――。ここで早大・石井連藏監督(昭30商卒=茨城・水戸一)はこの日無安打の末次に代え、打席に鈴木悳夫(教2=静岡・清水東)を送る。これが見事に功を奏すことになる。鈴木悳は初球のカーブを捉えると、打球はライナーで右中間へ。この三塁打で一気に同点機を演出すると、続く石黒が追い込まれながらも右前に適時打を放ち、土壇場で試合を振り出しに戻した。

 安藤はその裏のピンチを切り抜けると、10回、11回も慶大に得点を許さない。しかし打線も角谷の前にその後好機をつくることはできず、日没により1-1のまま試合は引き分けに。これによって2日後に、東京六大学リーグ戦史上初となる優勝決定戦再試合が行われることとなった。

優勝決定戦再試合の記事に続く(5/10更新予定)

(記事 池田有輝)

※学部は判明者のみ記載、名前と学年は当時

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