【連載】春季リーグ戦開幕前特集『奪還』 第2回 徳山壮磨

野球

 昨年の東京六大学リーグ戦では、春にクローザー、秋に第2先発として投手陣の中核を担った徳山壮磨(スポ3=大阪桐蔭)。今季も第2先発として、昨秋の成績『3勝1敗、防御率1.50』を越える活躍に期待がかかっていた。現在リーグ戦は1試合総当たり制での開催を目指しているが、連戦となった場合などにはやはり先発・徳山の存在は不可欠だろう。今回はオフシーズンに取り組んだ新球種についてなど、さまざまなお話を伺った。

※この取材は3月26日に行われたものです。

「緩い変化球で緩急をつける」

笑顔で質問に答える徳山

――今日の試合(春季オープン戦・横浜商大戦)ではブルペンで待機していましたが、練習の一環でしょうか

 今日はバックアップというかたちで、前のピッチャーに何かあった時にカバーするという役職だったので一応準備をしていました。

――それは毎回どなたかが交代で務めているのですか

 そうですね、試合ごとに回していく感じです。

――開幕予定日が近づいてきていますが、今の心境はいかがですか

 開幕(するのか)がわからない状態で、練習試合もあったやつがなくなったりだとか予定が変わっていっている中での調整ですが、それも自分としては勉強だと思って今は取り組めているので、調子も上がってきていますし、いい方向に向かっていると思っています。

――チームとしてそこまでモチベーションが下がっているということもないのでしょうか

 そうですね、けが人も多くて(モチベーションが)下がってもおかしくないのですが、みんながカバーし合って練習試合でも勝てていますし、いい方向にきていると思います。

――新型コロナウイルスが流行していますが、生活面で気をつけていることや変わったことはありますか

 自分は手洗いうがいは徹底しています。監督さん(小宮山悟監督、平2教卒=千葉・芝浦工大柏)も常日頃から「手洗いうがいだけは」と言われていて、それは徹底してやっています。

――オフシーズンの練習は順調に積めましたか

 そうですね、体力づくりもそうですし、フォームづくりもそうですし、いい方向にきているので、春はしっかり結果を出したいなと思います。

――昨年末のインタビューで「体の芯をしっかりつくりたい」とおっしゃっていましたが、具体的にどのような練習をされましたか

 体重を増やすとか筋力アップということではなくて、体幹トレーニングであったり肩のトレーニングであったり、体の内側を強くすることを目的にこの冬取り組んできました。その表れとしてフォームも安定するようになりましたし、そこは本当に芯が強くなってきたのかなという感じはあります。

――「投げ切る力をつけたい」というお話もされていましたが、体力面での手応えはいかがですか

 走るのはもちろん走ってきましたし、ウエートトレーニングとかもそういう意味ではやってきたので、体力はだいぶついてきました。後は1回から9回まで同じフォームでコンスタントに球速も変わらずに投げ切るということが先発の役目として大事です。今練習試合の中では最長6回までしか投げていないのですが、変わらず投げられているので大丈夫かなと思います。

――昨年までは後半になるとフォームが崩れていたのでしょうか

 そうですね、後半になると下半身が使えなくなって、上半身に頼ってボールが抜けてしまったり、という感じだったので、今は下半身をずっと意識していて、その効果が出ていると思います。

――この冬他に力を入れたことや、新しく取り組んだことはありましたか

 日頃から一つ一つのメニューをきっちりやっていくという目的でずっとやっているので、特に変わったことをしてはいないです。与えられたメニューと自分がやらないといけないメニューをしっかり毎日継続してやることで、冬にやってきたことが今になって出てきているので、積み重ねが本当に大事だなと思います。

――今年は沖縄キャンプが中止となりましたが、調整面で影響はありましたか

 暖かいところに行って野球ができるのが沖縄キャンプのいいところで、場所を変えるのは気分的にも違いますし、自分は楽しみにしていた方だったのですが、東伏見でやることになって。でも設備も整っていますしやりやすいので、変わらずいつも通り取り組んでいたことをしました。いい準備はそこでできたのかなと思います。

――キャンプがなくなった期間はどのような練習メニューでしたか

 そんなに変わってはいないですかね。沖縄だと道具とかも限られているのでやりたいことが限られてくるのですが、東伏見だといつも使っている道具もいっぱいありますし、トレーニング器具もあります。ピッチャーのトレーニングメニューに関してはやりやすい環境だったので、変わらず継続してできたのかなと思います。

――キャンプの中止によって春季オープン戦の初戦が早まったと思います(2月27日、東京ガス戦)。登板されましたがいかがでしたか

 寒い中で先発させてもらって、初実戦ということで結果よりも内容をすごく意識して投げました。自分はこの春新しくチェンジアップを練習していて。今まではフォークを投げていたのですが、フォークよりチェンジアップの方が負担も少ないですし、自分の場合は速い変化球ばかりだったので、緩い変化球で緩急をつけるというテーマでやってきました。東京ガス戦で投げてチェンジアップの感覚がそこで自分の中ではしっくりきて、そこからだんだんと変化の精度も上がっていったので、あの試合は自分としてはすごくいいきっかけになった試合かなと思います。

――チェンジアップを習得する上でどなたかにアドバイスをもらったりしましたか

 昨年11月の全早慶戦でトヨタ自動車の佐竹さん(功年、平18人卒)に相談した時に、「チェンジアップはこう握っているよ」みたいなことを教わりました。自分はチェンジアップを投げたいと思っていたのですが今まで中々投げられなくて。佐竹さんに教えてもらった握りとか投げ方とかを参考にしながら、自分のものに変えていって今自分のものになりつつあります。早川さん(隆久主将、スポ4=千葉・木更津総合)もそうですし、いろいろな人から吸収して今につながっているという感じですかね。

――ここまでの春季オープン戦の全体的な手ごたえはいかがですか

 結果的にはけっこう抑えられていると思うのですが、まだまだもっと(状態は)上げられると思いますし、真っすぐも変化球もそうですがもっと圧倒できるようなピッチングを目指しているので、そこに近づけるように頑張りたいと思います。

――中大戦で151キロを記録されたという報道もありましたが、ストレートの状態はいかがですか

 徐々に上がってきていると思います。アベレージで140キロ台後半とか高い数字が出るようになってきたので、そこは自分の力が出てきているのかなと思いますし、ストレート一本だけでもけっこうファウルとか空振りとかを取れているので。それをもっともっと圧倒できるような、そういうストレートを投げたいなと思います。

――読売ジャイアンツ3軍との試合にも先発されましたがいかがでしたか

 相手は野球でご飯を食べているような選手、という中で投げさせてもらって、パワーとかが明らかにアマチュアとは違って振りも強かったですし、そういうバッターに投げられたということは自分としてもいい経験になりました。もっともっとそういう高いレベルでやっていくには力が足りないと思うので、もっと練習していかなければいけないなと感じました。

――ストレートはどのくらい通用しましたか

 ヒットは5回投げて2本だったのですが、もっともっと抑えられたかなとは思うので、まだまだ力不足というのは感じています。

――奪三振2と普段より少なかったですが、プロの打者はミートしてくるのでしょうか

 早いカウントから強く振ってこられていたので、そこでファウルとか空振りとかが取れれば自分の決め球とかで勝負して三振とかも狙えたと思うのですが、あの試合に関しては自分もあまり調子が良くなかったのですが、簡単に強く当てられてフライとかもけっこう飛ばされたりといった感じでした。力で勝てた場面もあったのですが、外野まで持っていかれることもあったので、まだまだ力をつけないといけないなとは感じました。

――今小宮山監督やコーチから言われていることはありますか

 特にないですが、早川さんと自分が2枚看板の先発としてやっていかなければいけません。その面に関しては自分は1回から9回まで投げ切る練習をしてきて、それをリーグ戦でどれだけ発揮するかだと思うので、そこは本当に第2先発としてやるべきことなのかなと思います。

――第1先発を奪ってやろう、みたいな気持ちはありますか

 まあ思ったりもしますが…(笑)。いつでも投げられる準備はしていて、任されたところで力を出すだけだなと思うので、先発として頑張りたいと思います。

――今年から岩本久重選手(スポ3=大阪桐蔭)が正捕手となりました。高校時代からのチームメイトですがやりやすさなどは感じますか

 コミュニケーションは練習の中でも取れているので、リード面に関してはいい呼吸でてきているのかなと思います。自分の悪いところも隠さず全部言ってくれて。お互い高い目標があって、そこに向かって刺激し合って頑張っていかないといけないので、その面に関してはお互いいいところも悪いところも言い合えているので順調かなと思います。

――岩本選手は徳山選手から見てどういう捕手ですか

 肩が強くてボディーストップとかも上手くて、キャッチャーらしいキャッチャーというか、すごく助けられている部分もあります。そういう面で自分も岩本に負けないように、リードに関係なく自分の球をしっかり投げて抑えられるように、お互いいいところを出して0点に抑えていけたらと思います。

――投手陣全体としてここまで振り返っていかがですか

 初めは四死球が多かったりとかが目立っていたのですが、最近は最小失点でいいテンポ、いいリズムで投げられている投手が増えてきたので、そこは投手陣全体としていい面です。2年生の雪山(幹太、教2=東京・早実)とか原(功征、スポ2=滋賀・彦根東)とかも、下で経験を積んだ子たちが上で経験を積めているので、そこはあの子たちにとってもすごくいい経験になっていると思います。お互い刺激し合いながら投手陣は高め合っていけているなと思います。

――同級生では山下拓馬選手(法3=埼玉・早大本庄)が今年から1軍で登板していますが、徳山選手から見てどのような投手でしょうか

 体も大きいですし真っすぐも力がありますし、上で投げられるレベルまで山下自身も練習して上がってきたので、チームの力になるのではないかなと思います。

――山下投手は読売ジャイアンツ2軍との試合でも登板していましたが、重要なポジションを担いそうですか

 今西さん(拓弥、スポ4=広島・広陵)も徐々に上がってきている感じなので、リーグ戦を経験していた早川さん、自分、西垣(雅矢、スポ3=兵庫・報徳学園)、今西さん、柴田さん(迅、社4=東京・早大学院)の5人がどれだけ抑えられるかで、そこに山下が加わってきたりとかという感じだと思います。経験のあるメンバーが投手陣を引っ張っていかなければならないと思うので、経験を生かしていかないといけないなと思います。

――西垣選手は春季オープン戦で何度か先発されていますが、ここまでの投球を見ていていかがですか

 1巡目とかは持ち味を出して抑えられているのですが、2巡目という面で雅矢自身も今悩んでいるところです。そこを何とかしたいと西垣も話していたので、そこが西垣自身の課題だと思いますし、持ち味をしっかり出せれば全然先発でも抑えられる力はあると思うので、お互い刺激し合いながら頑張りたいなと思います。

――打線については今どういう印象を持っていますか

 けがとかで少し色々ある中なのですが、このチームはミスなく守り抜いて一つのチャンスをものにするというのがずっとテーマになっています。そういう面ではバントであったりエンドランであったり、かき回す、つなぐ野球ができているなとは思うので、いい打線になってきているのかなとは思います。

「何が何でもリーグ優勝」

昨秋の東大2回戦で力投する徳山。今年も先発として期待がかかる

――今年から上級生となりましたが、心境の変化などはありますか

 そんなに変わることはないですね。自分自身も1年生からやってきて、「上手くなりたい」と思って練習していますし、「もっとすごくなりたい」と思って練習しています。3年生になったからといって偉そうになるとかも絶対ないですし、自分のやるべきことをしっかりやりながら、周りにいい影響というか、自分が頑張っている姿を後輩たちに見せることで後輩たち(の意識)も上がってくるというか、そういう先輩でありたいですし、自分の背中を見て後輩がついてくる、そういう姿でいたいなと思います。

――最後に春季リーグ戦についてです。初戦は明大ですが、
印象はいかがですか

 この前の秋のリーグ戦で投げた時に盗塁を4つくらいされて、相手のデータなのか、自分のクセを見抜かれてあれだけ走られたので、そこは走者が出たら警戒しないといけません。かき回す野球やしぶとい野球をしてくるチームなので、そこにどう対応するかというか、いい準備をして入れるように調整したいですね。

――カードの順番を見て感じたことはありましたか

 去年の秋も法政明治で始まって、今年も明治法政で始まるので、去年の秋と似た感じだなとは思ったのですが、どこと当たろうが自分は全力を尽くして投げるだけなので、自分のスタイルを変えずにやりたいなと思います。

――近年スタートダッシュでつまずくことが多いですが、何かチームで話されていることはありますか

 全ては初戦に向けて今全員合わせています。初戦を勝つことで勢いに乗ることは間違いないと思うので、その初戦に全員がどれだけ準備をして臨めるか、けがをしている人もそこまでにどう直してどう(調子を)上げていくか、全員がそこにどれだけ持っていけるか、だと思います。

――優勝するためにチームとして必要なことは何だと思いますか

 メンバー、メンバー外関係なく、一戦必勝という気持ちを持つことが一番です。練習からメンバーが、メンバー外から「このメンバーなら勝ってくれる」と信頼される25人でないといけないですし、メンバー外もメンバーに入りたいという気持ちで全員がやらないといけないですし、そういう高め合える組織になればチームとして上がってくるのは間違いないと思うので、そこを目指してチームをつくっていくことが大切かなと思います。

――春季リーグ戦の個人的な目標はありますか

 この前の秋が3勝1敗防御率1.50という数字で、自分的にはもっと高い数字を目指さないといけないなと思っています。秋の成績を超えて最優秀防御率も狙いたいので、第2先発だったら5戦投げると思うので、5戦5勝して防御率は1.50以下というような高い数字を目指してやりたいですね。

――最後に春季リーグ戦への意気込みをお願いします

 もう優勝から遠ざかっているので、まずはこの春何が何でもリーグ優勝します。

――ありがとうございました!

(取材・編集 池田有輝、芦澤りさ)

緩急自在の投球で相手打者を圧倒してくれるでしょう!

◆徳山壮磨(とくやま・そうま)

1999年(平11)6月6日生まれ。183センチ、82キロ。大阪桐蔭高出身。スポーツ科学部3年。投手。右投右打。徳山選手が今回色紙にしたためた言葉は『一戦必勝』。1試合総当たり制での開幕となれば、今まで以上にその気持ちが大切になりそうです!