秋季リーグ戦開幕前特集『虎視眈々』 第5回 上條哲聖×早川隆久

野球

 今年の投手陣を支える二人の左腕がいる。投手リーダーとエース、上條哲聖(商4=東京・早実)と早川隆久(スポ3=千葉・木更津総合)だ。昨年までリーグ戦登板機会のなかった上條は今春、4年目にして念願のデビューを果たすと、慶大2回戦では重苦しい雰囲気が垂れ込めるなか堂々たる投球を見せつけた。また投手陣の長としても練習から常に背中で引っ張る姿勢を貫いている。一方の早川は今春、昨年までの大黒柱・小島和哉(平31スポ卒=現千葉ロッテマリーンズ)が抜け、先発としての一本立ちが求められるなか3勝を挙げ防御率は2点台。次シーズンにつながる成績を残した。誰もが認める早大投手陣の『中枢』。今回はそんな二人に様々なお話を伺った。

※この取材は9月8日に行われたものです。

『勝てる投手』

今春の立大1回戦、ピンチを切り抜けガッツポーズする早川

――まず上條選手はあす9日が22歳のお誕生日ですね

一同 おめでとうございます!

上條 ありがとうございます!

――抱負をお願いします

上條 自分はもう大学野球生活ラストシーズンなので、チームが優勝して日本一になること、そしてそこに個人としても貢献できたらいいなと思っています。

――22歳としての意気込みはありますか

上條 今年が大学四年間最後の年で、来年は社会に出ます。なので野球の面でも人としても成長できたらいいなと。

――上條選手は先日まで高麗遠征に行かれていました。思い出話はありますか

上條 自分は去年のゼミ合宿でも韓国に行ったんですけれども、高麗大の選手とレセプションの時に話したりとかして。個人的に韓国には思い入れがあったので、すごく楽しかったですね。

――球審が試合開始に間に合わなかったと伺いました

上條 そうなんですよ(笑)。審判の方が交通渋滞に巻き込まれたか何かでプレーボールに間に合わなくて。二塁審判がストライクボールのジャッチをするという、まさかの1審制で(笑)。

早川 それは新しいな(笑)。

――早川選手は侍ジャパン大学日本代表としてチームを離れる時期もありました

早川 自分はもう侍ジャパンというよりかは、この夏のオープン戦で全くいい結果が残せなかったので、そっちの方が思い出に残ってしまいましたね…(苦笑い)。

――全早慶戦では郡司裕也主将(4年)に適時二塁打を浴びました

早川 郡司さんには試合前にいろいろと話していて。「初球スライダーで入るんで絶対打たないでくださいよ」って話していたんですよ(笑)。

一同 (笑)。

早川 「んじゃその後真っすぐ勝負でしょ?」って言われて、「じゃあそうしましょ」ってなったので最終的に真っすぐ投げたんですけど、インコースに投げようとしたのが真ん中に入ってしまったので打たれてしまいました。でも(内角に)決まったら打ち取れていましたね(笑)。

――ここからは本題に。まずは今春をざっくりと振り返ってください

上條 優勝目指してやってきた中で3位に終わってしまって、そこは残念でした。ただ投手力としては、チーム防御率がすごくいい結果(2.33はリーグ2位)だったので、投手リーダーという肩書がある中では良かったなと思います。個人としては試合に出た時にしっかりと抑えることができたので、少しは貢献できたのかなと思います。

早川 大学入ってから初めて第1先発として1シーズンを投げ切って自信につながったんですけど、その中で『一球の重み』をすごく感じました。自分や西垣(雅矢、スポ2=兵庫・報徳学園)といった先発陣が降板した後に柴田(迅、社3=東京・早大学院)が逆転ホームラン打たれたりとか、徳山(壮磨、スポ2=大阪桐蔭)が決勝タイムリー打たれたりなどと。「あとアウト1個のところで」という場面があったので、そういうときには「いかに次に投げるピッチャーに情報を伝達できるか」だと思いました。そういうコミュニケーションの重要性に気付かされた春のシーズンでしたね。

――慶大3回戦でも決勝点となったのが、甘く入ったスライダーをはじき返された適時打でした

早川 (打たれたのは)下山(悠介、1年)にですね。あそこもやっぱり(捕手の)小藤さん(翼副将、スポ4=東京・日大三)とあまりコミュニケーションがとれていなくて。下山が真っすぐに全然タイミングが合っていない中で、スライダーを要求されて、自分もそこでうなずいてしまったので。スライダーを使うにしても、あそこは一度間を取ったり、何回か首を振って(打者を迷わせて)から投げるべきでしたね。

――上條選手は今春の東大2回戦が念願のリーグ戦初登板でした

上條 緊張はしなかったのでマウンドでは楽しめたのかなと思います。あとはマウンドに向かう時に声援がすごく大きく聞こえました。自分は(応援部の)リーダーの4年生と仲がいいので、個人的な思いがあったというか。「応援の力ってすごいんだな」と一つ感じましたね。

――慶大2回戦でもマウンドに上がりました

上條 やっぱり早慶戦を目標にして大学野球を始めたので、一つの大きな目標を達成できたなと感じた一方、他の試合よりも応援がすごくて。負けた試合だったんですけど、投げているあの瞬間はすごく楽しかったです。

――慶大の押せ押せムードの中での登板だったと思いますが、相手の応援は気になりませんでしたか

上條 自分は左ピッチャーなので、セットポジションに入ったら(慶大応援席は)背中側で、よく聞こえてくるのは仲間の応援だったので気にならなかったです。

――先ほどもうかがいましたが、早川選手は第1先発として1シ-ズンを投げ切りました。技術面で得られた成果はありますか

 ペース配分ですね。ピンチの場面で三振を取ることも重要だと思うんですけど、リーグ戦というロングスパンの中で完投が一度もなかったので。球数を減らしつつ抑えていけるのが『勝てる投手』なのかなと思います。秋のシーズンはそこを目指してやっていければなと。

――春の早慶戦前に伺った際は「決めにいった球が若干甘く入りファウルされてしまう」というお話でした。この点、夏の期間はどのように詰めていらっしゃいますか

早川 ここはもう難しいと思ったので、決めにいくというよりかは、緩急つけて『打ち取る』という方向に考え方を切り替えました。やっぱり球数を減らすことを目標にしているので。ストライクゾーンで勝負し過ぎて打たれることもこの夏は多かったので、ストライクゾーンとボールゾーンへの球の出し入れを発揮できるようになれればと思います。

――春は西垣選手含め、バントで苦戦されているように見えました

早川 バントに関しても自分らが決めなきゃいけない場面でミスしてしまったことによってバッター陣のリズムも崩れてしまいますし、そういう面でバントはとても重要で。バントがそこまで多くないという自分たちのチームの中でも、自分たちがしっかり決めることで流れを呼び込めると思うので、バントは大事だなとすごく感じました。

――3月の沖縄キャンプで伺った際は「結構バント練習もしている」とおっしゃっていましたが、その時と比べていかかですか

早川 沖縄に比べたら少ないと思いますね。

上條 キャンプの時は練習時間そのものが長いので、ピッチャーもバッティング練習だったり、バントの練習に割ける時間が長かったですね。

早川 今はそんなにやっていないですけど、監督(小宮山悟監督、平2教卒=千葉・芝浦工大柏)には「(オープン戦などで)ランナーがいない場面でもバントしてみろ」と言われました。そこでうまく決まればいいことですし、決まらなければもっと練習しようと。そういう機会を与えてくださったので、いま自分がどれくらいできるのかというところは各人が理解していると思うので、そこは本人次第かなと思います。

――上條選手は投手リーダーを務められていますが、就任に至った経緯を教えてください

上條 投手リーダーは4年生の投手陣で話し合って決めました。1、2、3年生にも学年ごとの投手リーダーが存在するのですが、自分はそれをやっていて。そういう背景もあり、話し合いの時に自分がやりたいと思ったのと、周りの人も「上條でいいんじゃないか」と言ってくれたので、自分に決まりました。

――投手リーダーとして意識していることはありますか

上條 これまでは学年をまとめるということを考えてやってきたのですが、今年は全学年のピッチャーに目を向けなければいけないので、そこは大きく意識が変わりました。自分のために野球をやるというよりかは、練習にせよ自分が引っ張っていったり、背中で見せられればいいなと思っています。

――現状、早大の主戦投手は下級生ですが、この点についてはいかがですか

上條 4年生の投手陣は(リーグ戦で投げたのが)自分も含め少ししかいなくて、そんななか早川を筆頭に下級生が本当によく頑張ってくれたので、そこはこの春大きかったなと思います。この秋もピッチャーは下級生がメインになってくると思うので、今年に限らず来年につなげるためにも下級生には頑張ってほしいと思います。

――この夏の期間、小宮山監督から投手陣全体にゲキが飛び、お二人は体力強化のためポール間を70本も走ったと伺いました

早川 その数字は盛られているな…(笑)。

上條 盛られているね(笑)。まあ盛られていてもいいかもしれないですね(笑)。

一同 (笑)。

上條 自分は立場上、他より走らなきゃいけないなという思いもあるのですが、監督も「下手なやつが一番練習しろ」と言っていたので、自分もとにかく走ってやろうと。その週は毎日50本近く走りましたね。

――早川選手も元々練習量は多い方だと思いますが、ランメニューはこの夏どのくらいこなしましたか

早川 自分もオープン戦で結果が出ていなくて苦しんでいる時に監督からゲキをいただいて、かつ投手リーダーの上條さんが走るということだったので主戦で投げさせていただいている自分も走らなきゃなと。下級生たちにも示しを付けるために。上條さんが「50本走る」と言ったら、そりゃもう自分も50本走らなきゃいけないので(笑)。

一同 (笑)。

上條 だからそんなに走らなくても良かったのに(笑)。

早川 自分は監督にそう言われた時に30本(走ろう)と思ったんですけど、上條さんに「何本走りますか?」って聞いたら「50」って返ってきて、「50!?」ってなって(笑)。でも上條さんに付いていけば、何かいいことがあると思って走りましたね。やっぱり先輩のそういう姿勢は後輩にも影響を与えると学んだので、自分も今後そうやっていければと思います。

――早川選手は調子が悪いとのお話でしたが、直近の登板ですと青山学院大戦に先発し8回1失点。四死球は1つずつでした

早川 状態はだいぶ良くはなってきているんですけれども、その日は監督に「1試合130球くらいで(完投できるように)」と言われていて、自分の中でうまく球数を調整しながら投げていたんですけど、野手がなかなか点を取れなかったので、8回裏の自分が先頭打者の時に「代打出す」と言われて。でも正直、涼しかったのもありますが9回を投げる体力はあったので、もしかしたら走り込みが生きてきているのかな?という感じはありました。

――今夏のオープン戦では直球を痛打される場面が序盤目立ちました。春のオープン戦終盤では「球速が出ない」と首をかしげていらっしゃいましたが、その時とはまた別の感覚でしょうか

早川 いま球速は出るんですけれども、キレがあまり良くなので真っすぐをはじかれているんだと思います。真っすぐの使い方を上手く工夫しないと失点が多くなってきてしまうので、(調子が戻るまでは)変化球主体でうまくやっていかなければいけないと思います。

――侍ジャパン大学日本代表として戦った中で、印象に残った投手はいましたか

早川 やっぱり森下暢仁さん(明大主将4年)は完成度高いなと思いました。特にカーブで三振取れるのがすごいなと思っていて。その中でも真っすぐが150キロくらいで完成度の高さは感じますけど、驚いたのは伊藤大海(苫小牧駒澤大3年)ですね。あの人145キロくらいまでしか出ないのですが、真っすぐでバンバン空振り取っていて。「なんなんだろう」っていう不思議な感覚になりました。具体的に何がすごいのかっていうところは全く分からないですけど。しかも「真っすぐしか投げられない」みたいなこと言い始めて(笑)。「カーブ投げられない」とか言っていて(笑)。

上條 すげえな…(笑)。

早川 でもその真っすぐで(米国の打者相手に)空振りが取れるので、そこが強みなんだなと感じました。

――上條選手は夏を振り返ってみていかがですか

上條 自分もこの夏あまり結果を残せていなくて、ふがいないオープン戦だったなと思っています。調子は悪くないんですけど、不運な所に飛んでヒットになってしまったこともあったりして。春でちょっと運使い切っちゃったかなとも思ったんですけど、ここから先はチャンスをしっかりものにできるようにと常に考えてやっていきたいです。

――慎重にコーナーを突こうとしてカウントを悪くしている場面も結構見られました

上條 そうですね。実際、春からコントロールちょっと良くなったなという感覚が自分の中にあって。しっかり(コーナーに)決められるという感覚があるからこそ、際どい所にどんどん攻めていった結果、ストライクゾーンから外れてしまったことが多かったので。そこはもう少し自分の心の中でゆとりを持って、ストライクゾーンで勝負できるようにしていきたいと、ここ最近ずっと課題にしています。

――全早慶戦で登板された際も四球を3つ与え、マウンドに来た小宮山監督と何やら会話をされていました

上條 「(ストライクゾーンに)入れよう入れようとするからボールになるんだ」と言われました。自分としても最初はそういうイメージじゃなかったんですけど、どうしてもランナーがたまってきた時に「やばい入れにいかなきゃ」という思いが少しあって、それが悪循環になっていたので、あの時に気付かされましたね。

――改めてご自身の課題は何でしょうか

早川 自分は真っすぐの球威がまだあまり戻ってこないので、そこをどう改善していくかと今いろいろと悩んでいる状態です。そこをいかにシーズンに向けて、あと1週間しかないですが、改善していけるかがポイントだと思っています。

――あとどのくらい投げられるのですか

早川 実際この夏一度も東伏見のブルペンで投げていなくて。球の質が上がってこないので、遠投とかで強いボールをなるべく投げるようにという心掛けで調整してきています。そこをいかにブルペンに入って戻せるかがポイントですね。水曜か木曜日に1回入って、最後金曜日に最終調整をしていこうかなと思います。

――上條選手はいかがですか

上條 自分はオール早慶戦でフォアボールが多かったので、改めてコントロール、ストライクゾーンで勝負することを課題にやっています。

ストイックコンビ

楽しげな様子で取材に応じる早川(左)と上條

――いきなりですが、お互いの他己紹介をお願いします

早川 他己紹介かー(笑)。

上條 早川はもう意識の高い、圧倒的に意識が高い後輩だと思っています(笑)。

――それは私生活からも感じますか

上條 私生活もやっぱり野球のために生きているというか、本当に敵わないなと一番思うのは早川です。意識が高くて、なおかつ野球もうまくて、顔もかっこよくていいなと思います。

早川 なかなか勉強(の話)が出てこない(笑)。

上條 勉強もちゃんとやっているので、すばらしいですね(笑)。

――早川選手はまだ教職は取られているのですか

早川 はい、まだやっています。

上條 すごいっす(笑)。尊敬してます(笑)。

――早川選手から見た上條選手はいかがですか

 正直自分は、上條さんとか上條さんの一つ上の熊切さん(達哉氏、平31スポ卒=兵庫・尼崎小田)とかがすごく努力される方がいるので、そういう先輩になりたいと思って目指してやっていて。今はもう上條さんしかおられないので、上條さんを見ています。3年生の時にめちゃくちゃウエートとかやっていて。そういう姿を見て、自分もこういうふうに練習だけじゃなくて自主練でも後輩にいい影響を与えることができる先輩になりたいと思っています。良い就職先にも決まられているので、本当に頭が良くて、努力家で、野球で自分と違う生き方をしている方です。自分は野球でずっと生きてきていますが、上條さんは勉強とかでちゃんとステップアップされている方なので、そういう面で自分と違う生き方ですが、努力される姿には敵わないなと思います。

――ここは直してほしいと思う部分はありますか

上條 本当にストイックすぎて、チームの投手陣のメニューをみんなで話し合って決めようということで最近やっているのですが、一人だけ意識の次元が違くて(笑)。早川がめちゃくちゃきついメニューを言って、みんなが「えっ?」ってドン引きするくらいの意識の高さなので、みんなでやるからにはもう少し穏便なメニューにしていただきたいなと思いますね(笑)。

早川 自分はそれこそ、その前のポール間じゃないですが、自分の想像をはるかに上回る数字を言ってきたりするところです(笑)。ポール間を走っている時は大体学年順で走るのですが、間隔が一定になるように走っていくんですよ。でもその時上條さん速すぎて、自分が若干離されているように見えて、離されると自分が遅いように見られちゃうんです。そこのスピードをちょっとだけ抑えていただきたいですね(笑)。見栄え的に(笑)。

――上條選手は長距離が得意なのですか

上條 そうですね、けっこう昔から得意でしたね。

――投手陣の中で走るのが苦手な選手は誰ですか

上條・早川 今西(拓弥、スポ3=広島・広陵)ですね(笑)。

――先日の対談で、柴田迅選手(社3=東京・早大学院)が今西選手は「意外と陰で努力するタイプ」とおっしゃっていました

上條・早川 え…?

早川 影なのかな(笑)。トレーニングしているかは分からないですけど治療院にはよく行っていますね。

――今タピオカが流行っていますが、お二人は普段飲まれますか

上條 自分はこっちにいる時にはあまり飲まないですが、韓国遠征に行った時は夜同期と一緒に観光したりしていたので、1日1杯ペースで飲んでいました。

早川 自分はスタバの新作の方が気になるタイプなので、タピオカはあんまりですね。

――早川さんには冬に読書をしているとお話していただきましたが、今もされているのですか

早川 読書は登下校の時に読んだことはありましたが、今は授業がないので、練習するか寝るかのどっちかです(笑)。あとは治療院に行くかですね。読書は今あんまりできていないです。

――お二人のマイブームを教えてください

早川 マイブームかあ…。ポール間はまずいっすよね(笑)。(趣味だと答えたら)「永遠に走っとけ」って言われそう(笑)。今はプロ野球選手の見逃し三振集を見ていることが多いですね。

――誰の三振が好きですか

早川 誰というか、審判のジャッチ集を見ることが多くて、それが大体見逃し三振のシーンという感じですね。

――上條選手はいかがですか

上條 逆にいま自分は読書がブームですね。

――どのような本を読まれるのですか

上條 来年から仕事が始まるので、ビジネス書にハマっていて(笑)。最近はそっち系の本が多いですね。野球だと体力で勝負できたのですが、頭の勝負となるとずっと野球をやってきた分、少しは追い付かないとやばいなと思っています。

――夏の思い出は何かありますか

上條 ピッチャー陣でバーベキューをしたのですが、全員参加して。自分は幹部をやっていたので、みんなが楽しんでくれていてすごく良かったなと思って。「ピッチャー陣いいなあ」と改めて思いました(笑)。

――全員参加は珍しいのですか

上條 珍しいですね。学年の飲み会とかも全員集まることはなかったりしたので、全員来てくれたことはすごくうれしかったです。

「推薦組じゃない子でも」(上條)

今春の慶大2回戦、「目標だった」という早慶戦のマウンドに上がった上條

――直近のオープン戦では11戦で2勝と投打がかみ合っていない印象ですが、チーム状況はいかがですか

早川 正直ピッチャーが打たれる時はありますし、バッターが打てない時もあるので、そこはお互い助け合いというか。正直自分たちも「打ってよ」と思う時もありますが、「抑えろよ」って自分たちに対して野手が思う時もあると思うので、そこは助け合いというか、オープン戦の悪いイメージをなくして、春どういうふうに勝ったか負けたかということを呼び起こして対戦した方がいいと自分的には思います。そこを意識して戦っていければなと思います。

――オープン戦の勝ち負けは気にしないということですか

早川 はい、こだわらなくていいかなと思います。

――対戦カードが法大、明大、東大、立大、慶大の順番です。今秋は最初の2カードの勝ち方、負け方で順位が決まってくると思うのですが、この点いかがですか

上條 そうですね、リーグ戦優勝となると一戦一戦の勝利だったり、勝ち点が優勝に関わってくるので、本当に最初の法大戦は大事なカードだなと思っています。だからこそこれまでの結果ではなくて、法大戦のためにリーグ戦のために自分たちはやってきたので、全力で勝つしかないかなと思います。

――法大にはいい打者がたくさんいますが、どう抑えましょう

早川 野手陣にはもうある程度打たれることは分かっていてもらいたいなと思います。それで抑えたら逆にラッキーというくらいの気持ちで試合展開も予想してもらいたいです。バッター陣は六大学の中でも圧倒的でトップクラスなので、抑えたらラッキーくらいの気持ちで戦えたらいいかなと思います。

――何点勝負になると思いますか

早川 5点勝負ですね。自分たちが3、4(失)点に死ぬ気で抑えます。

――三浦銀二投手(法大2年)には1回戦での対戦でいまだ勝てていません。野手陣も苦戦されると思いますが

早川 ピッチャーは相性の部分がけっこうあって。自分は去年慶大と相性が悪いと思っていたので、それは打たれるに決まっていると考えていて。銀二もけっこう自信持って投げてくると思うので、そこでいかに初回から打っていけるかがポイントだと思います。

――徳武定祐コーチ(昭36商卒=東京・早実)が「4年生はこの秋で早稲田に何を残すのか」と夏前に話されたそうですが、上條選手は早稲田に何も残したいですか

上條 自分としては後輩にいい影響というか、何か自分の姿だったりを示せたらいいのかなと思っていて。自分も入部した頃は主力の選手ではなくて、背も小さくてリーグ戦で投げられるか分からない選手でしたが、何とかリーグ戦のメンバーに入って、いい結果も残すことができました。そういう姿というか、早川みたいなすごい選手がいる中で、推薦組じゃない子でもベンチに入って活躍できること自分が示せたらいいなと4年目のシーズンをやってきたので、最後自分が出なくても後輩たちに何かいい姿を見せられたらなと思います。

――そういった意識がポール間の本数に結び付いているのですか

上條 そうですね、やっぱり自分にとってこの四年間を通して自主練というのが一番真剣にやってきたところで、早川も言っていたのですが熊切さんは(部訓の一つである)『練習常善』を体現していた方なのですが、自分もそういう姿にあこがれて。今年は熊切さんみたいな人になろうと思ってやっていたので、ポール間の話はそこにつながるというか、改めて気付かされて自分が一番走ってやろうと思って50本という数字を決めました。

――早川選手は来年、名実ともに早稲田のエースになると思いますが、改めてどのような投手になりたいですか

早川 個人的には「早川が投げたら勝ってくれる」という安心感の与えられるピッチャーになりたいです。逆に相手チームからは「早川かよ」と怖がられるピッチャーになりたいと思っています。そのためにはこの秋は圧倒したいですが、いかにいいピッチングを相手の後輩や同期に見せつけられるかがポイントになると思います。

――春の早慶戦前には「早稲田のエースは相手を圧倒するようなピッチャー。その中でタイプ的には大竹さん(耕太郎、平29スポ卒=現福岡ソフトバンクホークス)を目指したい」と話されていました。球数を減らしていきたいという話もありましたが、そこのバランスについていかがですか

早川 それこそ大竹さんの場合は、スピードは速くないですが「何で打てないんだろう」という不思議なピッチャーでした。逆に自分は大竹さんと反対というか、自分の持ち味のスピードを使って、緩急を使って「あれは手が出ない」という不思議な感じではないスタイルの中で球数を減らして投げていければなと思います。

――「この秋、俺のここを見てくれ!」ポイントをそれぞれお願いします

早川 自分は降板した後のベンチワークを頑張ろうと思っています。早稲田のベンチは浮き沈み激しい方で、慶應みたく負けていてもひっくり返してやろうというよりは、「うわ、負けてるよ…」みたいな感じの雰囲気が出てきてしまうベンチなので、いかにいいムードに持っていけるような声出しをしていけるかがポイントというか、細山田さん(武史、平21スポ卒=現トヨタ自動車)がそういう声掛けをしていて、そういう選手になりたいです。

――春だと立大の田中誠也副将(4年)がそのような振る舞いしていた印象です

早川 誠也さんに近いと言われれば違うかなとは思うのですが、森下さんもベンチワークをけっこう徹底している方で、エースというのはそういう存在とジャパンを通じて自分の中で描けたので、そこはやっていければと思います。

――これまで好機で打てないと落ち込んでいた場面があったと思いますが、そこで重田慎太郎選手(文構4=佐賀西)とかが声を出されていたと思います。声で盛り上げていきたいというところでしょうか

早川 そうですね。声とかで下がっている選手をいかに持ち上げるか、支えてあげられるかということで、ポジティブな声掛けをどんどんしていければなと思っています。バントを失敗してネガティブになっている選手には「切り替えていこう」とか守備にいく時に下を向いていれば声掛けをしていきたいです。そういう声掛けを自分がしていければ、チームにとっていい影響になるのかなと思います。

上條 自分のここを見てくれというか、ピッチャー陣の結果を見ていただければなと思います。自分はリリーフで、必ずしも勝利の方程式ではないし、自分が投げないことがチームにとって実はベストだったりすると高校の時から思っているので、自分の姿だけじゃなくて投手陣としていい結果が出ればいいと思っています。そこを見てほしいです。個人としては出たら頑張ります! 出たら応援してください!

――秋の個人目標はありますか

早川 春は防御率が2点台だったので、1点台に持っていければなというところと、数字というよりは結果を求めて、チームの順位を見てくれと思います。負けたらしゃーないですし、どっちかなので、この世界は。そのためにも順位を見てくれと言っておきます。

上條 自分は個人としては一応ここまでリーグ戦の成績として防御率0.00なので、そこは大学生活でキープできればなと思います。なおかつ失点もゼロでいきたいですね。自責点も失点もゼロでいきたいです。それがリリーフの役割だと思います。あとはチームの順位を見てください、そこが一番なので。

――最後に意気込みを一言お願いします

上條 やっぱり秋のシーズンも春のシーズン同様でピッチャー陣は下級生が中心となると思いますが、その中で自分たち4年生が何とかして後輩に姿を見せられたらなと思うので、試合の中でも外でも背中で見せることをいっていきたいです。それが後輩の結果だったり自分たちの結果に影響すると思っているので、そこは4年生として徳武さんが言っているように何かを残すことを第一目標にやっていきたいと思います。

早川 やっぱり1つ上の先輩というのは入学してからずっと長く一緒にいる先輩で、野球部はこういう存在であるべき部活であると教えてくれました。一番近い存在ではあったので、そういう先輩方が有終の美を飾れるように、自分たちが精一杯全力で戦うことをこの秋恩返しじゃないですが、しっかりやっていければなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 石﨑開、永池隼人)

それぞれ役割は違えど、『投手王国』形成には二人の存在が欠かせません!

◆上條哲聖(かみじょう・てっせい)(写真左)
1997(平9)年9月9日生まれ。167センチ、65キロ。東京・早実高出身。商学部4年。投手。左投左打。社会人に向けてビジネス書を読んでいる上條選手。早川選手に負けないくらいストイックな一面を兼ね備えていました。『有終の美』を飾るべく、投手リーダーとして、4年生として最後の最後までチームを支えてくれることでしょう!

◆早川隆久(はやかわ・たかひさ)
1998(平10)年7月6日生まれ。180センチ、77キロ。千葉・木更津総合高出身。スポーツ科学部3年。投手。左投左打。この夏、ツーシームの使い方を小宮山監督に尋ねたという早川選手。ところが「投げ込みが足りていないんだからツーシームなんか使えるわけがない」と言われてしまったそう。現役時代は魔球シェイクをはじめ数多くの球種を操っていた小宮山監督。偉大な先輩投手の言葉に「ツーシームを投げにくくなってしまった…」と苦笑いでした。