4年ぶり名古屋での全早慶戦 打線振るわず全慶大に敗北

野球
TEAM
全慶大
全早大
(早)田中星、早川、●柳澤、上條、柴田―小藤、細山田
◇(二塁打)加藤、田口

 4年ぶりのナゴヤドーム開催となった全早慶戦。両校の現役選手とOBの合同チームで行われる伝統の一戦には、小さな野球少年から年配の方まで約1万3000人の観客が訪れ、神宮球場で行われる早慶戦さながらの盛り上がりを見せた。今年の東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)で勝ち点を献上した悔しさを晴らしたい全早大。初回に打撃好調の小藤翼副将(スポ4=東京・日大三)のバットで1点を先制する。しかし3回に同点に追い付かれると、6回には本塁打を浴び勝ち越しを許す。その後も追加点を許し1-4で敗北を喫した。

 試合は初回から動いた。2本の安打と四球で2死満塁の好機をつくると、打席には6番・小藤。「外のスライダーを待っていた」との読み通り、スライダー系の球を中前にはじき返し1点を先制した。一方、全早大の先発を任されたのは田中星流(スポ1=宮城・仙台育英)。試合前日に先発が決まったというルーキーだが、「緩い縦のスライダーが良かった」(小藤)。これに130キロ台後半の直球や得意とするカットボールを織り交ぜる。変化球中心の投球を展開し、2回無失点の好投を見せた。秋季リーグ戦のベンチ入りに向けて大きなアピールとなったことだろう。しかし後続の投手陣が踏ん張れない。3回からマウンドに上がった2番手・早川隆久(スポ3=千葉・木更津総合)が全慶大4番・郡司裕也主将(4年)に甘く入った直球を捉えられ、すぐさま同点とされた。

中前に先制打を放った小藤

 試合はその後、6回の攻防が勝敗を大きく左右した。5回から登板した早大OBの柳澤一輝(平30スポ卒=現Honda鈴鹿)が全慶大3番・柳町達副将(4年)に外角高めの直球を捉えられ、左翼ポール際に勝ち越しのソロ本塁打を許す。「完全に失投で(あり)自分の責任」と悔いの残る一球となってしまった。対する全早大もその裏に1死一、二塁と攻め立てるが後続が凡退。チームの課題である『あと一本』がまたしても出ない重苦しい展開が続く。

大学時代から対戦のある柳町に勝ち越しソロを許した柳澤

 さらに8回。今度は上條哲聖(商4=東京・早実)が慎重に攻めたあげく2つの四球などで1死満塁のピンチをつくると、押し出し四球を献上。後を受けた柴田迅(社3=東京・早大学院)も犠飛で1点を失った。3点を追う全早大は最終回に反撃を見せる。OB細山田武史(平21スポ卒=現トヨタ自動車)の粘りが相手の失策を誘い、先頭打者が出塁。その後併殺打で2死となるも、代打の田口喜将(商4=東京・早実)の二塁打と山田淳平(教4=東京・早実)の技あり二塁打で2死二、三塁と反撃の絶好機をつくる。早大勢が陣取る一塁側スタンドの応援も最高潮に達し、迎えるはこの日2安打の1番・瀧澤虎太朗(スポ3=山梨学院)。しかし、最後は一ゴロに倒れてまたしても反撃はならず。名古屋の地で勝利を飾ることはできず、全早慶戦5連敗となった。

痛恨の押し出し四球を与え、悔しさをにじませる上條

 夏季オープン戦を含め打線が好機をものにできないもどかしい試合が続く。OBの細山田は現役選手のポテンシャルを認めつつも、『何とかして走者を進める姿勢』の欠如を課題に挙げた。この試合、細山田の打席結果は四球、そして粘った末に相手の失策を誘って勝ち取った最終回での出塁。先輩の打席からはまさに出塁への『執念』が見て取れた。この日唯一の打点を挙げた小藤もそんな細山田の姿勢について「自分たちに足りていない部分」と口にし学び取った様子である。好打者ぞろいの稲穂打線。少しの意識の変化でチームが大きく変わる可能性もある。残り少ない調整期間ではあるが、課題を1つでも多く解消して秋季リーグ戦に備えたい。

(記事 杉崎智哉、写真 皆川真仁、池田有輝、岡田静穂)

早大打者成績
守備 名前
(左) 瀧澤虎太朗 .400
(一) 中川卓也 .000
(三) 福岡高輝 .000
(右) 加藤雅樹 .250
(遊) 檜村篤史 .333
(捕) 小藤翼 .500
  打捕 細山田武史 .000
  真中直樹 .000
(二) 吉澤一翔 .333
  金子銀佑 .000
(中) 山野聖起 .000
  田口喜将 1.00
  宮﨑大地 .000
(指) 米田圭佑 .000
  富田直希 .000
  山田淳平 1.00
早大投手成績
名前
田中星流 0.00
早川隆久 4.50
柳澤一輝 3.00
上條哲聖 1/3 27.00
柴田迅 1 2/3 0.00
コメント

OB細山田武史(平21スポ卒=現トヨタ自動車)

――今回の全早慶戦に選ばれた時の気持ちはいかがでしたか

うれしかったですね。小宮山監督(悟、平2教卒=千葉・芝浦工大柏)から直々に「出てくれ」と言われて、全早慶戦はいいなと思っていて出たかったので、初めて出られて良かったです。

――きょうは終始楽しそうにプレーされている姿が印象的でした。実際いかがでしたか

楽しかったね。やはり早稲田のユニホームは特別だと思っているので、それを着て慶大と試合できるありがたみ、感謝の気持ちはあふれましたね。応援団のエール交換や、チアが踊っているのを見るだけでも感慨深いものがありました。

――現在は社会人チームでプレーされていますが、きょう一緒にプレーした早大選手たちの姿はどう映りましたか

やはり能力は高いと思いましたね。野球のことに関してはプレースタイルも僕らがやっていた時とは違う印象だし、投手も能力は高いと思いました。

――きょうは惜しくも負けてしまいました。試合内容を振り返っていかがですか

やはり一球の怖さというか。本塁打もそうだし、あとは四球が失点に絡んでいるので、そこをバッテリー中心に抑えることができれば勝っていけると思います。野球はバッテリーだと思っているので、試合の中でこちらのミスから負けたのは悔しかったですね。

――今の早大が優勝するためには何が必要だと考えますか

やはり一球に対する思い。一球入魂という言葉があるように、一つの塁を進めるとか、自らが考えてやれる大人の集団になった方が勝てると。そこの思いがまだ少し足りないかなとは思いますね。

――細山田選手は早大時代には優勝を経験し、その後はプロでもプレーされました。その経験を還元できましたか

今回は期間が短くて思いを伝えるのは難しかったけど、投手のことはもちろんだし、最後の打席やその前の打席でも四球で出塁することができるよと。打つだけではないよと。それで投手を苦しめて、後ろにつないで何とか1点をもぎ取ると。そういう姿勢がまだまだ足りないし、そういうところを見てくれているといいなと思いましたね。

――最後に、今後の早大に向けてエールをお願いします

本当に早稲田は素晴らしいよ。プロを経験して今は社会人でやっているけれど、ミラクル早稲田だし慶應だと思うので、そこにいることにありがたみを持ってやってほしいなと。あとはやはり早稲田が野球界を引っ張っていかなければいけないなと。自分たちが大学野球を盛り上げていくという意識でやってほしいなと思います。

OB柳澤一輝(平30スポ卒=現Honda鈴鹿)

――久しぶりの早大での試合でしたが振り返っていかがですか

あの大観衆の中で投げるのが久しぶりだったので緊張した部分はありました。それでも後輩たちと野球ができたのはすごくうれしかったです。

――試合前、小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)からは何か声を掛けられましたか

イニングだけ言われて「頼むよ」と一言言われました。「頑張ります」と言いました。

――ロングリリーフでの登板となりましたが、振り返っていかがですか

柳町(達副将、慶大4年)に打たれたのは完全に失投で自分の責任ですけど、それ以外は要所要所で抑えられたと思うので、内容自体はそんなに悪くなかったと思います。

――柳町選手に打たれた球は外高めの真っすぐでした

2ストライク3ボールに追い込む前に空振りが取れていた球だったので、そこでチェンジアップだったり、ツーシームを投げていれば結果は変わったかなと思います。そこは自分自身の未熟さだと思うので、それを次に生かしていきたいです。

――大先輩の細山田武史選手(平21スポ卒=現トヨタ自動車)とバッテリーを組んだ感想はいかがでしたか

すごく緊張しましたね。登板前にいろいろな話が聞けたので、自分にとって収穫になった一日だと思います。

――具体的にどのようなお話をされましたか

配球であったり、自分自身の特徴を生かす投球の組み立て方であったり、自分にはない考えを持っていたので、勉強にはなりましたね。

――今のチームはOBの選手として見ていていかがでしたか

チーム全体は引き締まっていて、あとはどう一丸となって戦っていくかなので、秋(東京六大学秋季リーグ戦)は期待できると思います。

――アドバイスを送った選手はいらっしゃいますか

アドバイスというわけではないのですが、全体的にピッチャーの選手は話ができたので、それが一つでもアドバイスになればいいかなと思います。

――早大を卒業される際「プロで戦える力と技術を社会人野球でつけたい」とおっしゃっていましたが、今後に向けて一言お願いします

直近で日本選手権の予選があるので、まずはそこでしっかり結果を出せるように残り日数は少ないですけど、準備してマウンドに立てるようにしたいです。

小藤翼副将(スポ4=東京・日大三)

――ナゴヤドームでの一戦、観客も多く入りました

なかなかこういう球場でできないので、試合前はすごく楽しみにしていました。試合でも緊張することなく楽しむことができたのかなと思います。

――ナゴヤドームはマウンドが固いといわれていますが、投手陣の対応ぶりはいかがでしたか

確かに「固い」とは言っていましたね。

――先発の田中星流投手(スポ1=宮城・仙台育英)は変化球中心の投球でしたが、配球の組み立て方としてはどのような意識をしていましたか

普段はカットボールなどがいいピッチャーなのですが、きょうは緩い縦のスライダーでストライクを取れていたので。それを有効に使いながら、真っすぐを見せることもできたので、(田中星)本人も手応えを感じて投げることができていたと思います。

――田中星投手は夏の間、サマーリーグにも参加されていました。春からの成長をどのように感じていますか

春のリーグ戦(東京六大学春季リーグ戦)では自信なさそうにというか、本来の力を発揮できていなかったと思います。でも夏のオープン戦では自信を持って投げられていると思うし、きょうも堂々と投げていました。自分の力を発揮できれば通用するピッチャーだと思うので、これから秋(秋季リーグ戦)もこのような感じで投げてくれればと思います。

――上條哲聖投手(商4=東京・早実)は3四球を出しましたが、沈む系の球を軸にして丁寧に投げている印象でした

ここ最近(の夏季オープン戦)でもコースを狙い過ぎてカウントを悪くしたりフォアボール出したりしていたので、ちょっと修正するべき点かなと思います。

――球を受けている身としては、もう少し大胆に攻めても良いのではないかと

そうですね、もう少し大胆に攻めてもいいと思います。

――小藤選手ご自身としては初回に中前適時打を放ちました。打ったのはスライダーでしょうか

スライダーかカット(ボール)か。スライダー系のボールですね。

――うまくバットを球に合わせていましたが、打席の狙いとしては

あそこはインコースに真っすぐ来たらカットするという気持ちで、外のスライダーを待っていました。実際その通りに来てくれたので、うまく反応できたと思います。

――徳武定祐コーチ(昭36商卒=東京・早実)から打撃のマンツーマン指導を受けたとうかがったのですが、継続しているのでしょうか

今はもう(スイングの)形をつくることができたので、バッティング練習のときにちょっと声を掛けていただく程度ですね。

――夏季オープン戦では長打もよく出ている印象ですが、その効果が出ているのでしょうか

バッティングはすごく調子が良くて。今までと比べてもよく振れるようになっているので、良くなってきていると思います。

――きょうは大先輩の捕手である細山田武史選手(平21スポ卒=現トヨタ自動車)も参加されました。言われたことや学んだこと、盗んだことはありましたか

僕が直接言われたわけではないのですが、(同じ球を)続けることを切り替えるタイミングだとか。そういう話は聞きましたね。あと打撃でも(きょうの細山田の)最後の打席みたいに食らい付いて粘って、最後に相手守備のエラーを誘うところなど、自分たちに足りていない部分を見せていただいたと思います。

山野聖起(法4=岡山・金光学園)

――初めてスタメンで出場する早慶戦でしたが、どのような気持ちで臨みましたか

初めてで緊張はしたんですけど、やっぱり出るからには責任を持って結果出したいなと思ってやりました。

――打席では3打数無安打という結果に終わりましたが、打席を振り返っていかがですか

状態は悪くはなかったんですけど、相手のピッチャーの方が上でしたね。

――最近の夏季オープン戦ではスタメン出場が続いていますが、ここまでの状態はいかがでしょうか

すごくいいわけではないんですけど、今はちょっと状態が上がっているかなという感じですね。

――現在のチーム状態はどのように見ていますか

正直オープン戦は負けが続いていますけど、(東京六大学秋季)リーグ戦で勝てればいいのでここから上げていければいいかなと思っています。

――次のシーズンはご自身にとって最後のシーズンになりますが、これから開幕までにどういったところをアピールしていきたいですか

自分は打撃がちょっと弱いので、打撃でアピールしてリーグ戦で開幕スタメン取れるように頑張りたいと思います。

田中星流(スポ1=宮城・仙台育英)

――先発が決まったのはいつでしたか

きのうの練習中に決まりました。

――先発が決まった際の心境は

正直驚きました。元々自分が投げる予定ではなかったのですが、先発を任されたので、頑張ろうという気持ちでした。

――きょうの投球を簡単に振り返っていただけますか

先頭をしっかりと抑えるという気持ちで初回投げて、(初回は)しっかりと抑えられて、三振も取れたので良かったです。ですが2回にヒットを許してしまい(相手チームに)流れを寄せてしまったので、そこが自分の反省かなと思います。

――投球の内容として、スライダーやカットボール等の変化球が中心のように感じました。それは小藤翼捕手(スポ4=東京・日大三)と事前に決めていましたか

変化球が多めなのは自分のピッチングスタイルなので、いつも通りの配球できょうは勝負しました。それがしっかりとはまってくれて、抑えられたので良かったです。

――きょうは社会人の投手2人も参加されていました。試合前後にお話されましたか

社会人の方は経験が豊富なので、自分が試合前にとても緊張している中で「やり切らないと後悔が残る」と言われました。ですので、きょうはやり切るという気持ちを持ってマウンドに上がりました。

――自分の中で後悔のない投球はできましたか

はい、できました。

――最後に東京六大学秋季リーグ戦に向けての抱負をお願いします

は早慶戦で投げさせていただいて、その試合は良かったのですが、その他の試合は悔い残る投球になってしまいました。秋はしっかりと自分が1年生の代表として投げて、チームに貢献できればいいなと思っています。