入学直後から投手陣の主力の一角として期待を受け、昨年の東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)では8試合に登板した徳山壮磨(スポ2=大阪桐蔭)。しかし、夏以降はけがに悩まされ、1シーズン通して投球ができない挫折を味わった。しかし、ただ苦しい時間を過ごしてきただけではない。再び1軍のマウンドで投げるために、焦らずじっくりと取り組んできた、身体強化と投球フォームの改造。その成果が表れたこの春は、チームの守護神として春季オープン戦に登板。春季リーグ戦では主にクローザーとしての役割が求められる2年目の右腕は、真価を問われるシーズンに何を思うのか。その胸中に迫った。
※この取材はに3月29日に行われたものです。
「けが前よりは絶対に良くなってる感覚があります」(徳山)
取材に応じる徳山
――開幕が迫ってきましたが、今の心境はいかがですか
1年ぶりのリーグ戦ということでちょっと楽しみな部分が大きいです。
――楽しみというのは
公式戦から離れていたのでまた投げられるという喜びを感じているというか、その部分での楽しみがありますね。
――昨年を振り返ってみると、どのような年でしたか
春のリーグ戦は投げさせていただいたんですが、それ以降はけがで投げられない状態が続きました。自分にとっては今まで経験したことがないことが続いたので、すごくいい経験にはなったのではないかなと思っています。トレーニングもできましたし、すごく身になった年でした。公式戦では投げていないのですが、自分にとってはプラスになった年だと思います。
――ご自身が1年前に思い描いていた1年後の姿と、現在を比較してみていかがですか
本当はもっともっと投げてっていうイメージだったんですけど、けがで投げられなくて。今も後ろの1イニングとか2イニングを投げさせていただいているんですが、慌てずにじっくりやっていければいいのかなって思っています。
――高校野球と大学野球はどのように違うと思われましたか
高校生だと打ち損じが多いというイメージだったんですが、大学生や社会人になっていくごとに一球で仕留める集中力というものが高校野球と全然違うなと思います。ピッチャーのレベルも高校と大学では全然違うので、レベルの面で差を感じます。
――1年ぶりに先輩という立場に戻ってきたとかと思いますが、1年生の印象はいかがですか
今はまだあまり話せていないのですが、すごく頑張っているなという印象です。
――沖縄キャンプでの収穫はいかがですか
一番は実戦復帰できてけがなく終われたことです。試合も投げさせていただいているので、実戦の感覚を取り戻しているというのが一番大きいです。
――キャンプを通して意識したことは
東京でやる方が施設も整っているし、やりやすいという部分もあったんですけど、沖縄ではトレーニング室とかもない分限られた中で自分で考えて練習できました。肩のけがをしないように肩のトレーニングを継続できたので良かったのかなと思います。
――沖縄キャンプのオフはどのように過ごされていましたか
1日まるごとをオフというのはなかったんですけど、自分は国際通りに行きました。最終日と早く練習試合が終わった日に行ったんですけど、先輩と行ったり、最終日は同期とステーキ食べに行きました。
――東京に戻ってきてからは春季オープン戦や関西遠征などが続いていますが、今の状態はいかがでしょうか
状態としてはまだまだの部分もありますが、けが前よりは絶対に良くなってる感覚があります。登板もリリーフではあるんですけど、140キロ台後半が連発できるようになってきたので、けがの前よりもトレーニングの成果が出ているふうに思います。
――春季オープン戦はクローザーとしての登板が多くなっていますが、これはどのタイミングで決まったのでしょうか
小宮山監督(悟、平2教卒=千葉・芝浦工大柏)からは「先発させたいという気持ちもあるけれど、おまえの将来を考えたら無理をせずにやってもらいたい。ここでまたけがをしてしまったら、それこそ野球人生にかかわる」と言われて。「この春は後ろの短いイニングを投げてもらって試合を締めてほしい」ということを伝えられて、そこから練習試合で最終回を投げる練習をしている感じですね。リリーフの感覚もだいぶ分かってきたと思います。
――リリーフの感覚とは
気持ちの面ですかね。先発だと(ウォーミング)アップして「よし入るぞ」というふうに(試合に)入りやすいんです。でもリリーフだと試合の状況もありますし点差とか難しい要素も多いので、気持ちの持っていき方がすごく難しいなと思っていたんですけど、練習試合とかでは僅差とかでも平常心で投げられるようになってきたと思うので、気持ちの余裕ができてきたなと思います。
――小藤翼副将(スポ4=東京・日大三)が正捕手となってからはどのようなコミュニケーションをとられてきていますか
自分は特にストレートのキレで勝負していきたいので、リリーフだと登板が短くなる分、バッターを圧倒していきたいということをテーマにしています。勝負の中でスライダーとかフォークとか自分の持ち味を出していきたいというふうにはお願いしています。
――復帰されてから球速がかなり上がっていますね
自分的にはそんなに力を込めて投げてるイメージはなくて、力感なく投げてるイメージなんです。でも今はすごくバランス良く投げられているんで、自然と球速が上がっているなという感じです。
――前回対談でフォームの改造についてお話を伺いましたが、意識している部分はどこになりますか
上半身というよりは下半身で、足を上げてから体重をしっかりお尻に乗せて並進運動を意識しています。この時間を長く持って踏み込んだ時にパンっと回転するイメージです。今までだとまだまだ貯めが甘くて、すぐに正面を向いて投げようとしていたのでシュート回転しちゃっていたんですけど、しっかり貯めて横の(動作の)時間を意識することで、ターンした時の力強さが増したところに自分の中で手応えがあります。まだまだですけど、もっともっと貯めを大きくしていければ150キロもどんどん出そうだなという実感があります。
――夏から秋にかけてはかなり体が大きくなりました。どのようなメニューをこなされましたか
月曜日がオフだったら火曜日は下半身、次は上半身、間隔を空けて下半身→上半身とやってました。空きの日は体幹トレーニングをやったりと、内容を継続してやっていたらお尻周りがすごく大きくなりましたね。太ったというより筋肉量が増えたことで体重が増えたのでいい感じです。
――体を大きくするにあたり意識したことはありますか
食べる量とかもそうですね。野球部で栄養の講習会があったので、いろいろと勉強させてもらいましたし、こういうときにバナナを食べると効果があるとかタンパク質はこう採って、みたいに自分でも勉強を実践できたのでプラスに捉えてやっています。
――普段のウエイトのメニューなどはトレーナーさんと一緒に考えたりされているのでしょうか
そうですね。提案していただいたものを、継続して行っている感じです。
――オープン戦では短いイニングながら三振をかなり奪っていらっしゃいますね。今目指している投球のかたちはどのようなものですか
それこそ三振を取るピッチャーです。自分としては大学生相手に打たせて取るというピッチングをしていたら、プロに行った時に絶対に抑えられないと思うので、自分の理想としては大学生からは空振りをいっぱい取りたいですね。大学生がバットに当てるのも一苦労だというふうになりたいんです。そして4年生になった時に「徳山のストレートはバットに当たらへん」って言ってもらえるように目指して、今取り組んでいます。
――ご自身の実感としてはいかがでしょう
けがの前と比べたら空振りがかなり取れるようになってきました。ストレートで空振りを取るということを意識して突き詰めて、ストレートだけでも大学生を抑えられるくらいのものを目指していきたいです。
――空振りを奪うにあたり配球で意識していることはありますか
特に意識というよりはいつもと変わらずアウトコース中心で攻めて、そこからインコースでファウルを取って空振りを奪ったりとかですね。ストレートメインにはなるんですが、リリーフだと圧倒することを意識して投げていきたいです。
――今までは真っすぐとスライダーで決める場面が多く見られていましたが、最近はフォークなども組み合わせていらっしゃいますね
フォークも調子がいいので試したりしています。一番は本当にストレートしか考えていないんですが…。
――ではここから変化球を増やすのではなく
とにかくストレートを磨いていきます(笑)。
――まだ上があるんですね
いやまだまだこれからですよ。もっともっといきます(笑)。
「『けがをしていた間、遊んでいたんじゃないぞ』って見せつけたい」
今春はクローザーを務める徳山。直球に手応えを感じている
――東京六大学でー年間戦ってみていかがでしたか
他のリーグと比べてもやはり六大学が一番ですし、早稲田という面で注目されているのはすごくありがたいです。、そこをもっとプラスにして「早稲田と戦うってなったら徳山が投げる!」っていうことを目的に、お客さんが球場に来てくださるようなそんな選手になりたいです。もっともっと早稲田のチームとしても注目されるように頑張りたいです。
――ここまで春季オープン戦を戦ってみて、ご自身の調子はどう思われますか
結果的には、けが明けの初登板の明治安田生命戦(△4―4)でホームランを打たれてしまったのですが、そこからはずっとゼロ点で抑えられていて順調です。でも、もっともっと上を目指すにはまだまだだと思いますし、満足せずに磨いていきたいです。
――チームとしての春季オープン戦の内容はどのように捉えられますか
去年と比べるとチームの雰囲気も変わってきていて。打者陣も本当にいい攻撃ができているなというふうに思っています。去年だと(春季オープン戦では)負けた試合も多かったんですけど、今年は勝ち越しているというか、社会人相手でも接戦が続いたり、十分に戦えているのでそこは自信になると思います。
――きょうの試合(〇13-0筑波大)ではとにかく打者の皆さんが活躍した試合になりました
中川(卓也、スポ1=大阪桐蔭)とか蛭間(拓哉、スポ1=埼玉・浦和学院)とかどんどん出てきてくれているし、この子らは本当に力があるからまだまだこんなもんじゃないと自分的には思っています。中川はずっと見てきた後輩でもありますし、もっとできる子だなというふうには思っています。
――今の攻撃陣の様子をみて印象は
バッターとしては本当にそろっていると思います。他の大学と比べると個々の力が本当に強いので、本領発揮したら一番強いチームだと思います。そこはチームとして自信にしていいと思いますし、どれだけ公式戦で発揮できるかがカギだと思います。
――春季リーグ戦に向けてチームとしてはどのように仕上がっていると思いますか
投手陣もすごく安定していて全員よく投げているのでそこそこいいのかなと思いますし、打者陣も(調子が)上がってきているので、優勝も狙えると思います。獲りに行きたいです。
――投手陣の編成は、第1先発は早川隆久投手(スポ3=千葉・木更津総合)、第2先発は西垣雅矢投手(スポ2=兵庫・報徳学園)になりそうですか
そうですね。
――では、リリーフは
今西さん(拓弥、スポ3=広島・広陵)、柴田さん(迅、社3=東京・早大学院)が中に入って、9回に自分がというかたちになります。
――安定感のある投手陣になりそうですね
そうですね。5回まで先発の方が抑えてくださったら。それが理想です。
――今年の投手陣はとても層が厚い印象を受けます
いいことです。きょうの試合も打者が13点取った中で、投手陣の失点はゼロなので。
――投手陣の仕上がりはいかがですか
全員いい状態だと思います。
――今季のリーグ戦日程が発表されましたが、カギになる対戦はどこだと思いますか
自分はそんなに…。どことやるにも変わらず全力でやりたいと思っています。
――先ほど山田淳平選手(教4=東京・早実)を取材させていただいた際には、明大戦で森下暢仁主将(明大4年)を打てれば流れに乗れるというお話を伺ったのですが
僕はとりあえず初戦の東大戦ですよね。どこが相手でも第1カードで勝てれば波に乗れると自分では思っているので。去年は第1カードを落としたりしていたので、第1カードがカギになるんじゃないのかなと特に思います。
――怖いと思う打線はありますか
自分はあまり思わないですね。(春季オープン戦で)社会人相手に投げていたことも大きいかもしれないんですけど、それ(社会人)よりは…と思って大学生相手に投げれるかもしれないので。
――頼もしいですね
ただ公式戦という空気の中で、どれだけ気持ちをぶつけていけるかというのが大事になるとは思います。
――昨年までと求められる役割が少し変わってくるかと思うのですが、 ここを見てほしいというポイントはありますか
やっぱりストレートすかね。そこはやっぱり六大学を見てくださっている方には「けがをしている間、遊んでいたんじゃないぞ」って見せつけたいです。登板ができなくてもしっかりトレーニングをしてけが前より、いいピッチャーになって帰ってきたぞって、きちんとアピールしたいんで。見せつけたいと思います。
――リーグ戦は長丁場ですが、どの辺りで100パーセントの状態にもっていこうと考えていますか
どの辺りというよりも、リーグ戦始まってから最後まで100パーセントであり続けるのが理想です。でも修正すべき点が見つかったら、試合までの月曜日から金曜日の間できちんと自分で考えて調整をして、試合に100パーセントにもっていけるように、その期間でしっかり微調整していきたいなというふうに思います。
――コンディションの整え方はありますか
月曜日はオフで、リフレッシュしたり接骨院に行ったりケアして、火曜日はメニューをこなして、水曜日と木曜か金曜かどちらかぐらいに少し投げてっていう感じです。
――今季の個人の目標はありますか
失点をゼロにすることです。徳山が投げたら全部ゼロって言ってもらえるように。点は取られない。その上で三振を取りにいきたい。その二つを目標にしています。徳山が出てきたら「あっ。完敗や」 と思ってもらえるくらいを目指して頑張りたいです。
――1、2回戦のどちらでもクローザーとして投げることになるのでしょうか
僅差の試合だったらそうなると思います。そこは気持ちも入り込んでしっかり準備したいと思います。
――春季リーグ戦への意気込みをお願いします
優勝しかないです。自分たちは優勝を味わったことがないので、味わってみたいですし、パレードもしてみたいですし、優勝して喜びたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 柴田侑佳)
自慢の直球もついに150キロ超え。クローザーとして三振の山を築きます!
◆徳山壮磨(とくやま・そうま)
1999(平11)年6月6日生まれ。183センチ、82キロ。大阪桐蔭高出身。スポーツ科学部2年。投手。右投右打。対談中、頼もしい言葉を発する姿からは自信があふれていました。恒例のサイン色紙をお願いすると少し考えてから『親孝行』とペンを走らせた徳山選手。「けがのことでも心配掛けてしまったので、神宮のマウンドで投げてる姿を見て安心してもらいたい」と語る姿が印象的でした。