今こそ『守り勝つ野球』の真価が問われる時/法大戦展望

野球

 東大戦では手に汗握る接戦の展開に持ち込まれながらも2連勝し、ようやく勝ち点を奪取した早大。第6週の対戦相手は、これまた東大戦で今季初めて勝ち点をつかんだ法大だ。東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)開幕前は優勝候補筆頭にも挙げられていた法大だが、早大と同じく開幕ダッシュに失敗し、優勝の可能性はついえてしまった。一つでも上の順位を狙うべく、互いに負けられない対戦カードで連勝し、早慶戦に弾みをつけたい。

 法大投手陣の大黒柱は今秋のドラフト候補・菅野秀哉(4年)。最速150キロの直球と多彩な変化球で稲穂打線を迎え撃つ。今季は本来の投球ができない試合が続いたが、東大1回戦では7回1失点で今季初勝利を挙げ、復調の兆しをうかがわせた。菅野は3連投の可能性も十分あるため、攻略できなければ勝ち点獲得は不可能と言っていいだろう。2回戦は高田孝一(2年)、石川達也(2年)らの継投策が予想される。高田は立大戦、慶大戦ともに試合序盤で失点を許しており、立ち上がりがやや不安定な印象。早い段階でたたみかけ、こちらのペースに持ち込むことができれば、継投策にも対応することができるはずだ。また、法大内野陣は今季未だ失策0と鉄壁の守備を誇る。その内野を抜ける鋭い打球を放つことも、打者には要求されるだろう。

4割7分1厘の高打率をマークしている岸本。規定打席まであとわずかだ

 対する早大打線。序盤から法大投手陣を打ち崩すためには、リードオフマンの出塁がカギをにぎる。起用が予想されるのは俊足のルーキー・鈴木萌斗(スポ1=栃木・作新学院)だ。そこから演出した好機で、東大戦では8打数5安打を記録した福岡高輝(スポ3=埼玉・川越東)、規定打席到達者の中ではチーム内打率トップの加藤雅樹(社3=東京・早実)に一打が出ればこちらに流れを引き寄せられる。特に加藤は昨季、菅野から3安打を放っており決して不得意な相手ではない。また、東大2回戦で5番に座った岸本朋也副将(スポ4=大阪・関大北陽)も開幕から出場した全試合で安打を放っており、好調ぶりをうかがわせている。それでも、六大学屈指の好投手である菅野相手に演出できる得点機はそう多くはないだろう。東大戦2試合で計28残塁と決定打を欠いた打線が数少ない好機をものにできるかが、勝利へのカギとなるはずだ。

 早大の第一先発はもちろん、エース小島和哉主将(スポ4=埼玉・浦和学院)。東大1回戦では打線の援護がない中で粘投を続け、勝ち投手とはならなかったものの8回無失点で勝利に大きく貢献。昨秋の法大1回戦では投手戦を繰り広げたものの、終盤に勝ち越しを許し無念の敗北となった。小島が昨季のリベンジを果たせるかにも注目だ。2回戦での先発が予想される早川隆久(スポ2=千葉・木更津総合)は好不調の波が大きいのが不安要素だ。東大戦では2回に本塁打を浴びるなど、不安定な立ち上がりが懸念される。早めの継投策として今季未だ無失点と好投を続けている今西拓弥(スポ2=広島・広陵)にマウンドを託すことも可能性として考えられるだろう。

六大学随一のパワーを誇る法大4番・中山

 法大打線は昨年からスタメンを務める実力者がずらりと並ぶ。東大戦では2試合で28安打27得点と打線が爆発した。その中でも要注意なのは、東大1回戦で史上8人目となるサイクル安打を達成した4番・中山翔太(4年)だ。豪快なフルスイングは投手にとってまさに脅威。主軸に座る中山を打ち取り、勢いに乗らせないことが重要だ。また、現在春季リーグ戦打率トップの4割7分8厘を誇る中村浩人(4年)やコンスタントに安打を重ねている主将の向山基生(4年)も確実に抑えたい。強打者がそろう法大打線の前で、これまでのような守備でのほころびを見せていては、大量失点につながりかねない。流れを渡さないためにも、投手陣の踏ん張りとそれに応える堅い守備が求められる。

 法大に2連勝を飾るには、やはり『守り勝つ野球』しかない。強力打線を抑え、数少ない好機で得点を挙げる。まさに早大野球部の真価が問われる戦いになるだろう。2つ目の勝ち点獲得で一つでも上の順位を狙うためだけではなく、現在首位を走る慶大との伝統の一戦で4季ぶりとなる勝ち点を上げるために、是が非でもこのカードは落とせない。

(記事 中澤紅里、写真 皆川真仁、林大貴)

東京六大学春季リーグ戦星取表
順位   慶 大 明 大 立 大 早 大 法 大 東 大 勝ち点 勝率
慶 大 5/19
5/20
●2-3
○1-4
○7-1
6/2
6/3
○6-3
○5-4
○15-3
○5-1
.857
明 大 5/19
5/20
●3-4
○8-6
○3-1
●2-3
○15-3
○9-4
5/26
5/27
○9-2
○7-0
.750
立 大 ○3-2
●1-4
●1-7
○4-3
●6-8
●1-3
○2-1
○4-2
○3-2
△5-5
○2-1
5/26
5/27
.600
早 大 6/2
6/3
○3-2
●3-15
●4-9
●1-2
●2-4
5/19
5/20
○1-0
○5-3
.429
法 大 ●3-6
●4-5
5/26
5/27
●2-3
△5-5
●1-2
5/19
5/20
○17-1
○10-2
.333
東 大 ●0-15
●1-5
●2-9
●0-7
5/26
5/27
●0-1
●3-5
●1-17
●2-10
.000

※【賜杯の行方】 優勝の可能性を残すのは、勝ち点4以上を獲得することが可能な慶大と明大のみ。今週両者は直接対決が控えている。そこで慶大が2勝0敗の成績を収めた場合、秋春連覇が決定する。