昨春に初めて正捕手の座を射止めた岸本朋也副将(スポ4=大阪・関大北陽)。ことしは例年になく激しい正捕手争いが繰り広げられているが、1年前と同じく、その座をつかみ取ることができるか。最高学年として挑む東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)への意気込みを伺った。
※この取材は3月28日に行われたものです。
「守備は100パーセント」
調整は着々と進んでいるようだ
――2月の終わりの春季オープン戦に出場がなかったのはけがの影響だと伺いました
そうですね、大けがってわけではなかったんですけど、腰に疲労がたまって少し痛みが出てたので、トレーナーの方に相談したら、沖縄キャンプもあるので、今は少し休めておくかということで、試合に出ない期間が何日かありましたね。
――もうけがは良くなったのでしょうか
今はもう全然大丈夫です。
――実戦を振り返って、ご自身の状態はいかがですか
良くも悪くもないっていうのが正直なところなんですけど、感覚としてどん底って感じではないので、あと2週間ちょっとあって、リーグ戦に向かっていくに当たってはいい仕上がりになっているのではないかと自分では思ってます。
――春季オープン戦での起用のされ方を振り返って、自分には何を求められていると感じていますか
いま出場機会が減ってるんですけど、自分のやることは基本的には一緒だと思っていて。どんな場面でも出たらスタメンだって思ってるので、常にどんな状況でもベンチから「いくぞ」って言われたらいきますし、スタメンに名前があったら一発目から全力でプレーをできるように、準備はしてますね。
――春季オープン戦では同学年の中林健吾選手(スポ4=三重)や、1年生の岩本久重選手(スポ1=大阪桐蔭)の起用が多かったと思いますが、岸本選手から見てお二人はどのような選手ですか
中林はキャッチャーワークが良いのかなって思いますし、ステップとかも上手いので、そういった面で見習う面はあると思います。岩本は結構イケイケな感じで、それが態度とか動きとかにも出てて、肩も強いですし、チームを盛り上げていくにはすごい良い面を持ってると思います。
――代打で安打を放つ場面もありましたが、打撃面での仕上がりはいかがですか
本調子ってわけではないですね。きょう(鷺宮製作所戦)もいい当たりってわけではなくて、芯では捉えられていたんですけどショートの正面でクリーンヒットではなかったので、そういった捉え方っていうのはもう少し詰めていかないといけない部分があるかなと思います。
――代打は勝負どころで起用されることが多いと思いますが、そのときに意識していることはありますか
代打とかだと試合に急に入っていくので、自分を高ぶらせるというか、試合にのめり込んでいくっていうことですね。それが準備できてたときはやっぱりしっかり結果が出るので、その準備はするようにしてます。
――スタメンで出られないもどかしさなどはありましたか
それはありましたね。もどかしさはあるんですけど、自分は4年生なので、ベンチにいる限りはそれなりの仕事があると思いますし、チームが勝つためにやるっていうのが一番だと思うので、試合に出たときは精一杯プレーしますし、出るための準備は常にしてるんですけど、出られなかったときはベンチワークだったり声出しだったりをやっていくのが仕事だと思うので、そこの切り替えっていうのはしっかりしてます。
――捕手の立場から見て投手陣の仕上がりはいかがですか
きょうもちょっと打たれてたんですけど、いい感じではあるのかなと思います。冬に入って春先って投手は結構抑えていて、ここ数日間点を取られてるのでリーグ戦前にいい課題を見つけて、残りの期間でそこを埋めて、リーグ戦に向かえれば、またいいピッチングができるのかなと思っています。
――下級生の投手のリードをすることも増えると思いますが、そのときに意識していることはありますか
下級生は思い切り投げさせるというか、自分のスタイルでのびのびやれるとおのずと結果もついてくると思うので、下級生が背負い込んできつい状況で投げるっていうのは苦しいというか投げにくいと思うので、そこは上級生として引っ張ってあげなきゃなとは思ってます。
――この冬を通して成長したと思う点はどこでしょうか
監督さん(髙橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)もよくおっしゃってるんですけど、打撃面は芯で捉える確率を上げるっていうのを自分の中でも目標にやってきて、芯でしっかり捉えることはできてきていて、確率も少しずつ上がってきてるので、成果として出てきてるかなと思います。守備面では配球で試したいことはいろいろあるんですけど、出場機会が少ないので、考えてはいるんですけど正直やり切れていないですね。でもそこを出せれば、実際に試して詰めていければいいかなと思います。
――以前打撃に積極性が足りなかったとおっしゃっていましたが、冬を通してその点についてはいかがでしょうか
秋とか調子が悪くなってくるとどんどん消極的になって、初球のカウント球を振りにいけなかったので、きょうの試合とかでもファーストストライクは絶対打ちにいくっていうのは自分の中であって。配球を読んだりしてファーストストライクを当ててどう打つかっていうのがその一打席の重要なところだと思うので、そこはこれからも続けていきたいと思います。
――正捕手争いが激しくなってきていると思いますが、その獲得に向けて取り組んできたことはありますか
守備は100パーセントっていうのが自分の中であって、セカンドスローのタイムを早くするっていうのが目標で、少しずつ早くなってきています。あとその面はもちろんなんですけど、ピッチャーとの信頼関係が一番大切だと思うので、ピッチャーの特徴をどれだけ理解してどれだけうまく生かしていけるかが、いいキャッチャーになることだと思うので、そこをよりやっていけたらなと思っています。
――投手の皆さんとのコミュニケーションは意識してとるようにしているのでしょうか
そうですね、普段の寮の生活でも、ピッチャーだけではなくて下級生とかとも話したりします。特にピッチャーとは意識的にピッチングについて話すようにしてます。
――リーグ戦中もスタメン争いはあると思いますが、どうアピールしていきたいですか
リーグ戦になるとチームが勝つことが一番だと思うので、自分自身のアピールっていうよりは、チームが勝つためにどう貢献できたか、打撃であったり、守備でのチームを救うプレーだったりを重点的にやっていって、勝ちにつながれば、それが自分のアピールになるかなと思います。
――キャンプや日々の練習の中で副将として取り組んできたことはありますか
まず元気がないとチームの雰囲気も悪くなるので、チームが元気であることは意識してました。あとは、試合に出てるのは下級生が多いので、下級生に発言権を持たせるというか、下級生から話を聞くことも意識的にするようにはしてきました。下級生から言ってくれるやつは言ってくれるんですけど、まだ聞き切れてない部分もあると思うので、自分の力不足でもあると思いますし、チームとしてもそこはもう少し詰めた方がいいかなとは思います。
「チームが勝つことが一番だと思う」
副将として、チームへの献身を誓う
――チーム全体の仕上がりはいかがですか
結果が結果なので仕上がってるって言っちゃうと駄目なんですけど、いい段階を踏めてはいるかなと思いますね。
――いい段階というのは
一つ一つの目標をつぶしていこうってことで、それは順番につぶしていってリーグ戦にいいかたちで向かっていけるんじゃないかなと自分では思います。
――ではチームとしての課題はなんでしょうか
チーム力というか、攻撃面では全員で何としても1点を取るっていうところ、チャンスまではいいかたちでいくようにはなったんですけど、あと一本出ないとか、中押しダメ押しとかの面でまだ課題が残っているかなと思います。
――それは勝負どころで一本が出ないということでしょうか
一本出てもその後のダメ押しというか追加点、相手を突き放すような攻撃ができないので、序盤はいいかたちで入れても、中盤後半で逆転されて後半は点差が開いてしまうっていう試合が結構あるので、そこは詰めていかないといけないなと思います。
――このリーグ戦のチームとしての目標はなんでしょうか
やっぱり早慶戦で勝って、リーグ戦優勝。で、その後日本一を取るっていうのは絶対ぶれない軸だと思うので、その目標は変わらないですね。
――その目標を達成する上でカギとなるのはなんだと思いますか
少ないヒットでも1点を取るとか、1点に全員がよりこだわっていけるかとか、泥くさいプレーでも一つアウトを取るっていうのが、当たり前にできるというか、誰でもできることを全員ができてくると、チーム力が高まって、そういうことがカギになるのかなと思います。
――初めて正捕手として臨んだ昨春のリーグ戦から1年経ちますが、今の心境をお願いします
去年と勝ちたいっていう思いは変わらないんですけど、ことしは4年生ということで自分が勝ちたいっていうだけじゃ駄目だと思って、どれだけチームが下級生を中心に、より一緒になって戦えるかが重要だと思うので、そこは去年とは違う面かなというふうに思ってます。
――対戦してみたい選手や負けたくない選手はいますか
去年完璧に抑えられたのが立大の田中誠也投手(3年)で、完全に抑えられたので、そこはもう打ちたいなっていうのはあって。あとは同級生には負けたくないので、法大の菅野秀哉投手(4年)とかは打ってやりたいなという気持ちはあります。
――最後に、リーグ戦の目標をお願いします
個人としてはベストナインっていうのは去年の秋のリーグ戦が終わってから思ってるので、そこをしっかりと取れれば、チームもおのずと勝ってくるかなと思うので、個人目標としてはそこにあります。でもやっぱりチームが勝つことが一番だと思うので、そのために自分がどれだけ貢献できるかっていうのが自分としては大切なことだと思ってます。
――ありがとうございました!
(取材・編集 村田華乃)
フォアザチームの精神を見せてくださいました!
◆岸本朋也(きしもと・ともや)
1996年(平8)9月11日生まれ。172センチ、81キロ。大阪・関大北陽高出身。スポーツ科学部4年。捕手。右投右打。色紙に『優勝』と書いてくださった岸本選手。勝利をつかみ取りたいという強い思いが感じられました。副将として、また捕手として、チームの勝利に貢献する姿に期待です!