現状が浮き彫りとなった秋の沖縄

野球
TEAM
全早大
全慶大 x
(早)●小島、増田圭、今西、柴田、早川-小藤、重田
◇(三塁打)池田(二塁打)加藤、池田

 10月30日、神宮は慶大の歓喜に包まれ、その光景を目の前で見た早大は70年ぶりの最下位に沈むという歴史的な屈辱を受けた。あの日から約1カ月。今年も何度もしのぎを削りあった慶大との今期最終章が沖縄の地で行われた。そこで早大ナインを待ち受けていたのは、この試合を待望していた現地の観客とコザしんきんスタジアムに早大を圧倒するかのごとく吹き荒れる強い『風』であった。初回、2つの失策から先制点を奪われ、その流れを断ち切れぬまま、続く2回には疾風のごとき連打を浴び、3点を献上してしまう。一方、反撃に転じたい打線は、前チームからの課題である得点圏での一打が出ず、4、5回に内野ゴロの間に本塁に走者を迎え入れただけにとどまり、終わってみれば16三振。数字通り、キリキリ舞いにされた。窮地に追い込まれた時、その逆風をも追い風にし、勝利を収め、レベルアップをしていくのがこれまでの早大野球部であっただろう。しかし、今の早大野球部に今秋の東京六大学リーグ戦を制した慶大という最大の『猛風』に耐え凌ぎ、攻めに転じる器量はなく2-7と為すすべもなく敗れた。

 先発のマウンドに上がったのはやはり、新チームで背番号『10』を背負うこととなった小島和哉主将(スポ3=埼玉・浦和学院)だった。この日は直球に本来のキレがなかったが、なんとか打者をかわし、事なきを得るかのように思えた。しかし、城塞は内側から崩れ始める。一塁走者をけん制で誘い出した後の平凡な挟殺プレーで福岡高輝(スポ2=埼玉・川越東)がまさかの落球。その走者を得点圏に置いた状態で、今度はその悪いムードが、堅守と名のある真鍋健太(平29スポ卒=現JX-ENEOS)にも波及し、送球ミス。その間に走者の生還を許す。内部が乱れれば、その頃合いを敵に討たれるのが世の常だろう。2回には先頭打者を安打で出すと、長打に小技も絡み3点を失い、この回で小島は降板となる。マウンドを継いだ増田圭佑(文3=茨城・江戸川学園取手)は小気味良いテンポとマウンドさばきで凡打を築いていくが、制球を乱し走者をためると、代わった今西拓弥(スポ1=広島・広陵)が長打を浴び万事休す。その後は継投で0点に抑えたものの序盤の瓦解が痛かった。

2回に適時打を浴び、うつむく小島

 守りがダメなら攻め崩すしかない。しかし、相手の投手陣を好機に打ちのめす攻撃力。これが早大の最大のウィークポイントである。4回、先頭の福岡、加藤雅樹(社2=東京・早実)が連打でチャンスをつくり、木田大貴(平29商卒=現明治安田生命)の内野ゴロを相手がファンブルしている間に1点を返し、なおもチャンスが広がる。だが、ここに弱さが露呈し、後続は簡単に打ち取られ深い傷を負わせられない。そうなると相手も息を吹き返し、投手陣のギアは上がり、早大打線は反撃の端緒を開くことさえできず沈黙。最後は8者連続三振を喫し、天を仰いだ。

右翼線三塁打を放つ池田。スタメン定着へ向け、存在感を放った

 早大野球部の1年が幕を下ろした。きょうの試合同様華々しい成績とは到底言うことができない結果となった。しかし、きょうの試合を振り返っても収穫はある。今後の早大の中軸を担っていくであろう福岡、加藤の2年生コンビからは快音が聞かれた。また、これまでリーグ戦の出場機会がなかった池田賢将(スポ3=富山・高岡南)はコンパクトなスイングから2安打を放ち、柴田迅(社1=東京・早大学院)も伸びのある直球で打者をねじ伏せた。これまでの試合で経験を積み、確固たる力をつけてきた選手たちに、新戦力となる選手たちの新しい風が吹き込んだとき、圧倒的覇者再臨への可能性は膨大に広がる。そのためにもこの冬はどこのチームよりも肉体的、精神的に追い込んでいく必要がある。選手それぞれのあしたを向く視線には揺るぎない決意を感じた。新チームの主将、小島は言う。「この厳しい現状が半年の間にどれだけ成長できるかは見応えがある。」誰も今の状況に納得している者はいない。今はまだ暗雲に覆われたままかもしれない。しかし、早大は切り拓いてくれるだろう。新たな早大を再建し終えた先に見える紺碧の空を。

(記事 遠藤伶、写真 金澤麻由、宇根加菜葉)

黄字は打点付き

早大打者成績
打順 守備 名前
(遊) 真鍋健太 .000 遊飛    三振    二ゴ    二飛      
(二) 西岡寿祥 0 .000 一飛    三振    二ゴ            
  打二 古賀鉄盛 .000                   三振      
(一) 福岡高輝 .500 二ゴ       中安 中安    三振      
(左) 加藤雅樹 .500    四球    右2 四球       三振   
(三) 木田大貴 .000    四球    三失 三振       三振   
(中) 山田淳平 .000    投犠    投犠    三振         
  打中 宮崎廉太 .000                      三振   
(指) 岸本朋也 .000    三振    二飛               
打指 山岡仁実 .000                一ゴ       三振
(捕) 小藤翼 .000 左飛                        
  黒岩駿 .000          三振               
  重田慎太郎 .000                三振         
  中林健吾 .000                         三振
(右) 池田賢将 .500       三振    右3    右2    三振
早大投手成績
名前
小島和哉 13.50
増田圭佑 4.50
今西拓弥 4.50
柴田迅 0.00
早川隆久 0.00
コメント

小島和哉主将(スポ3=埼玉・浦和学院)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

自分も含めて、ケイオーとの地力の差じゃないですけど、そういうのを少し感じた試合にはなりました。

――序盤守りのミスなどが目立ってリズムがなかなかつかみづらい投球になったと思います。そのあたり意識されたことはありますか

こういう雰囲気で試合やるのもたぶん自分たちメンバー入ってない選手が結構多かったので、そういう雰囲気に飲まれてしまってる部分もあったので、やっぱりそういうところは経験しないと分からないところだと思うので結構勉強になったと思います。

――主戦投手としてどういった投手を目指していきたいですか

ピンチの場面でしっかり抑えて点をやらないのが一番大事だと思うんですけど、味方の失策とかで崩れてしまったので、やっぱりそういうところが今後もどうにか粘らないといけないかなというふうには思います。

――東京六大学秋季リーグ戦は悔しい結果となったことを受けて、主将として今後チームをどのような方向に持っていきたいなど考えはありますか

そんなたくさん点を取れるようなチームではないので、どちらかというとやっぱり一点を大事に守って、一点をどう取るかっていうチームになると思うので、もっと守りの面とかを強化していけたらなというふうには思います。

――主将という立場から今のチームを見て、どのような雰囲気でやっておられますか

みんなが、結局まだ自分のことが全然管理できてないというか、しっかりできてないのでやっぱり周りに目を配ることっていうのを忘れてしまったりとか、できなかったりするところがあるので、まずはしっかりと自分自身も含めて地力をちゃんとつけて、そこからチームワークとか連携だと思うのでそれをちゃんと冬のこの時期にレベルアップしたいなというふうに思います。

――今年の最終戦を終えられて、この1年を振り返ってどう総括されますか

ワセダの歴史的にも秋も70年ぶりに最下位だったりとか、すごい今厳しい状態なんですけど、これを逆に半年でどれだけ成長できるかっていうのを、見ごたえはあるとは思うので、みんなが細かいところから意識して変えていこうかなと思っています。

――これからオフシーズンとなり、冬場を迎えるにあたって、来季に向けて個人、そして主将として、チームとしてどのように取り組んでいきたいですか

個人としては、自分もドラフトとか関わってくるので、そこでは相手チームをちゃんと圧倒できるようなピッチングをしなきゃいけないのと、主将として、今の現状として下級生がすごいメインで出ているので、上級生がしっかりと下から押すじゃないですけど、下級生をもっとのびのびプレーできるような環境づくりをできるようにやっていきたいと思います。

池田賢将(スポ3=富山・高岡南)

――沖縄での全早慶戦でしたが、雰囲気はいかがでしたか

早慶戦というだけあって、やっぱり独特の雰囲気はありました。あと子どもたちがいっぱいいたので、そういった声援が大きかったなっていう印象です。

――スタメン起用されましたが、きょうの打撃はいかがでしたか

きょうはバッティング練習のときから調子いいかなっていう感じはしてたんですけど、振り抜いた結果がちょっといいかたちになったかなって感じです。

――内野手登録から外野手登録に変わりましたが、外野手として心掛けていることはありますか

守備にまだ自信はないので、練習でいかに本番を想定してやるかってことを、特に意識してやってますね。

――今後アピールしていきたいポイントは何ですか

打撃をやっぱり極めていきたいですね。打順をもっと上げれるようにしていきたいかなっていうのはあります。

――オフの間に取り組みたいことは何ですか

身体がそこまで大きくないので、ラストシーズンの最後に追い込めるまで追い込んで、春のシーズンを迎えたいな、と思います。

加藤雅樹(社2=東京・早実)

――リーグ戦では悔しい結果となりましたが、来季への意気込みを教えてください

チームとしても個人としてもすごく悔しい結果となったので来季は変わった姿を見せられるように頑張ります。

――4番としてこれからどのような打撃をしていきたいですか

やっぱり、状況に応じた打撃というか、チームを勝ちに導くというのが仕事だと思うので、目立った球を打つことも大事ですけどそれ以外の部分でもチームに貢献できるように、無駄な打席は1打席もつくらないようにしていきたいと思います。

――新チームが始まってからの打撃の調子はいかがですか

新チームが始まってからここ3試合あったんですけど、すごく結果も出ていますし、状態もいいと思うので、でももっともっとできると思いますし、そうですね、これから実戦はなくなっていきますけど目の色を変えてこれからも頑張ります。

――慶大相手にきょうの試合で6連敗となりましたがそれについてはいかがですか

そうですね、慶大に全然勝っていないことは早大として情けないことですし、来季からは変われるように頑張りたいと思います。

――きょうの二塁打の打席を振り返っていかがですか

走者一塁で、しっかり引っ張ろうという気持ちで打席に入って、甘い変化球を(バットの)先でしたけど、上手く当てられたと思います。

――最後に、オフの間に取り組みたいことを教えてください

打撃に関して言えば、フォームを1から見直して、しっかりと、(打)率を残せて長打も打てる打者になれるように、身体も変えていきたいです。