【連載】秋季早慶戦直前特集『雪辱』第2回 福岡高輝

野球

 今季念願のスタメンを獲得し、3割5分3厘という高打率を記録している福岡。ここまでコンスタントに安打を放ち続けている。1シーズンを通して活躍してみて、どのようなことを感じたのか。初めてスタメンとして挑む早慶戦を前に話を伺った。

※この取材は10月20日に行われたものです。

「(初の寮生活は)意外と困ってないです(笑)」

笑顔で取材に応じる福岡

――開幕直前に20歳になられたそうですね。おめでとうございます。チームメートや家族になにか声は掛けられましたか

 ありがとうございます。チームメートにはプレゼントをもらったりしてうれしかったです。家族からはまだプレゼントもらってないので、これから楽しみにしています(笑)。

――最近は雨が続いていますが、本日はどのような練習をしてきたのですか

 きょうは室内で守備の練習と、バッティングの確認をしてきました。最近はずっと室内です。

――高校時代の話を少し伺います。埼玉・川越東高出身ですが、高校まではずっと埼玉なのですか

 そうです。ずっとです。電車と自転車で通っていました。

――ということは、寮生活も初めてでしょうか。初めての寮生活で困ったことは

 想像していたよりは困ったことはないですね(笑)。

――高校時代は他校でソフトボール部を全国大会優勝に導いた監督の下で指導を受けていたそうですね

 そうです。緻密な野球を教えてくれる方で、他のチームとは違ったような、ソフトボールでのプレーを取り入れたりもしていて、すごく勉強になりました。

――野球を始めたのはいつ頃ですか

 小学校4年の時です。中学は硬式チームでプレーしていました。

――川越東高を選んだ理由は何だったのでしょう

 もともとは違う高校を目指していたんですけど、学力的な問題も考えてそこはやめて。それで中学時代のチームの監督に川越東を進められて、川越東に進みました。

――川越東高は進学校ですが、勉強と野球の両立は大変だったのでは

 周りは凄く勉強していましたね。野球部も関係なくクラスはみんな一緒なので。担任も勉強に厳しかったです。

――やはりずっと六大学志望だったのですか

 行くならやはり六大学かなとはずっと思っていました。

――その中で早大を選んだ理由は

 当初は立大に一般入試で行こうと思っていました。でも川越東出身の当時の学生コーチの方(岡田稔基新人監督、平28スポ卒)にセレクションを受けてみないかと誘っていただいて。

――早大入学のきっかけに早慶戦の存在はありましたか

 髙橋(佑樹、2年)が慶大に行くというのは知っていたので、対戦はしてみたいなとは思っていました。

――ご実家は神宮球場まで来れる距離にあるそうですが、ご家族が応援に来たりもするのですか

 そうですね。毎週来てくれています。試合後バスに乗る前に少しは話しますね。

――ご実家にはよく帰られるのですか

 最近は帰れていないですね。オフの間は帰りますが。

「首位打者狙いたかった」

――今秋はフル出場ですが、福岡選手にとってどのようなシーズンとなりましたか

 やっぱりスタメンでずっと出られたというのは、自分の中でもとても自信になったかなと思います。

――春のベンチ入りと代打での経験は、この秋どのようなところに生かされていると感じますか

 1打席に対する思いというのは結構強くなって、秋にも生きているかなと思います。

――開幕前には「3割は打ちたい」とおっしゃっていました。その目標は超えられましたが、打撃面での手応えはいかがですか

 欲を言えばもう少し打てたかなとは思います。まだ足りないですね。

――今の結果は開幕前のご自身の想像と比べていかがですか

 チーム、個人ともに想像よりは下ですね。個人の結果としては、守備は守れている方かなと思います。打撃はもう少し打つつもりではいました。

――数字としては、4割弱ぐらいはいけたのではないかと

 そうですね。それぐらい打ちたかったです。

――今シーズンこれまでの戦いの中で特に印象に残っている試合はどの試合ですか

 立教の1回戦ですね。(8回無死の場面で)檜村(篤史、スポ2=千葉・木更津総合)にエラーがついてその後に点数を取られて逆転負けしたんですけど、実際は自分のミスだと思っていて。この時はファーストだったんですけど、自分が(送球の)カバーリングできなくて。だから自分のミスで負けたと思っていて、結構印象に残った試合です。

――では、良い意味で印象に残った試合はありますか

 良い意味では明大2回戦ですかね。4安打打てたので。

――明大2回戦は二塁打に単打が3本、3打点の大活躍でしたね。この試合で感じた手応えは

 開幕戦(明大1回戦)では打てなくて、このままこの秋やばいのかなとも思ったんですけど、2回戦は先発ピッチャーが森下(暢仁、2年)で。春も森下は打てていたので、悪いイメージはなくて。そこが良かったのかなと思います。

――以前も森下投手との相性は悪くないとおっしゃっていましたね

 そうですね。春打てていたので、やはり1回打つと、「いける!」と気持ちも盛り上がるので。秋もいけるというイメージがありました。

――明大2回戦の打順は2番でしたが、何か特別に意識することはありましたか

 2番は相手に球数を投げさせるという役割もあるのかなと思って。実際粘ることができて、それが結果につながったのではないかなと思います。

――3番で意識することは

 いや、特にないですね。出たランナーをきっちり返すだけです。

――今季の高打率は、日々振りこんだ成果だとお聞きしました。練習では1日に何スイングするなど、具体的に決めていることはあるのですか

 特に数字までは決めていないんですが、日中練習して、夜は自主練で(ボール)2箱分は打って、いつでも自分のスイングができるように準備はしています。

――開幕前に課題としていた変化球の見極めは、シーズンを通してどのように変わりましたか

 見極めきれていない試合も何試合かあるんですけど、次の試合の時には切り替えることができていると思うので、比較的見極めはできている方なのかなと思います。

――開幕前に熊田睦選手(教4=東京・早実)が「福岡は天才」とおっしゃっていました。同様に、加藤雅樹選手(社2=東京・早実)もミートセンスに関して称賛していました

 そうですね、ミートには少し、自信はありました。でも今季は三振が多いので、少し自信をなくしています。

――どのように立て直そうと考えていますか

 三振はある程度は仕方ないと思うので、ボール球の見極めですね。そっちを重視してやっていきたいと思っています。

――これだけの高打率を残せる理由はどこにあると思いますか

 早いカウントから積極的に振っている結果だ思います。

――調子の良い時にはファールで粘ってる印象があります

 そうですね。粘れる時は打てることが多いですね。

――調子が悪い時はどうでしょうか

 あまり粘れないことが多いですね。

――東大2回戦から法大1回戦までは、粘れずに打たされてしまっていたような印象があります

 そうですね。打率を意識しすぎてしまって。打ちたい打ちたいという気持ちが強くなってしまって。もっと打率を上げたいと欲が出てしまいました。それで結果的にボール球に自分から手を出してしまって。

――一時は打率リーグ4位にもなりました。首位打者を取りたいという気持ちもあったのでは

 そうですね。首位打者狙いたかったんですけど、今はそういった欲は捨てて、チームのために、と思っています。

――2試合安打が無かったのは、打撃の技術的な問題ではなく、精神的な問題ですか

 そうです。気持ちの問題でした。次の日には切り替えるようにはしているんですけど。

――法大1回戦の最終打席は左飛だったものの、「次回につながる、自分らしい打撃」とおっしゃっていました。その後2回戦では適時打が出ましたね。調子や感覚は戻ってきているのでしょうか。

 打撃の調子がめちゃくちゃ良いってわけではないんですけど、でもあの場面で1本出たというのは、自分的にもプラスになるかなと思います。

――打てなかった時の切り替えなどは早い方ですか

 基本的には寝ればリセットされる人間なので、大丈夫です。

――法大1回戦では以前仲が良いとおっしゃっていた檜村選手に本塁打が出ました。自分も打ちたいという気持ちもあるのでは

 いや、自分はもう打率も落ちてしまっているので、とりあえずヒットをいっぱい打てるように、後ろにつなげるように頑張りたいです。

――夏に体重が増えた影響で飛距離が伸びたとおっしゃっていましたが、その成果は出ていますか

 立教の1回戦だったと思うんですけど、田中誠也(2年)から打った逆方向への打球は結構飛んだなと思いました。体重が増えたおかげですかね。

――今シーズン一番良い当たりだったなと思う安打はありますか

 田中からの安打もそうですけど、同じ立教の手塚(周、2年)から打ったセンター前への当たりは、自分としては一番うまく打てたなと思いました。変化球だったんですけど、体が上手く反応して、すごく良いヒットだったなと思います。

――福岡選手にとっての理想のバッティングとは

 広角に単打も長打も打てるのが自分の中では理想ですね。

――目標とする選手はいますか

 最近は青木選手(宣親、平16人卒=現ニューヨーク・メッツ)の動画を見て勉強しています。バッティングや考え方がちょっと似ている感じがするので、そういったところを参考にしています。

――守備についてお伺いします。春は代打での出場のみでしたが、これは守備面で課題が残っていたからなのでしょうか

 そうですね。守れないというところが大きかったと思います。

――開幕前には「腰が高いと言われます」とおっしゃっていました

 きょうも監督さん(髙橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)に言われました。少しずつ直していますが・・・。

――秋は一塁も三塁も守っていますが、これは当日伝えられるのですか

 一塁の時は当日です。三塁を守る日は前日に言われるんですが、法大1回戦では代打で選手が多く出てしまったので、サードがいなくなってしまって、急に出たりもしました。

――一塁と三塁で何か準備が変わったりするのですか

 いや準備は特に変わらないです。

――守りやすいのはどちらですか

 今は一塁の方が守りやすいですね。守り慣れてきた感じがあるので。

――先ほど立大1回戦での話がありました。やはりまだ守備面に不安は残りますか

 ゴロとかはあんまり気にならないんですけど、自分は送球のカバーがまだあまりできていないので、そこは直していかなければと思います。

――法大2回戦では一二塁間を抜けそうな打球を上手くさばきました

 あれは自分的には全然好プレー何かではなくて、自分の中ではちょっと恥ずかしいプレーというか。ちゃんと飛び込んでいなくて、相手バッターも良いスイングしたんですけど、バットの先だったので打球が意外と来なくて。膝をついてそのまま倒れた感じになったので、自分的にはそんな、むしろ恥ずかしいです(笑)。全然好プレーではないです。

――立大1回戦でのお話もありましたが、記録上は無失策ですね

 意外と守れてるのかなというのはあります。想像よりは良いです。

――シーズンを通して、神宮で守ることに慣れなどもあるのですか

 そうですね。連携とかも慣れてきて、今はファーストが1番守れるかなという感じです。

――シーズンを通してみて、課題だと感じる部分はありますか

 守備面ではやっぱり(ファーストでの)カバーリングですね。打撃面ではやはり気持ちの問題ですかね。打席での気持ちの持ちようが課題です。

――第1打席で打てなかったりしたら、次の打席での切り替えはどうしていますか

 次の打席までに切り替えっていうのがあまりできなくて。打てないとその試合中は引きずってしまうことが多いですね。

――明大1回戦は第1打席に併殺でそのまま打てませんでしたね

 そうですね。法政の1回戦でも第1打席でゲッツーしてしまいました。その後、(2回表の先頭打者の)加藤がヒットを打っていたので、加藤までつないでいれば点が入ったのではないかなと。ゲッツーはなるべく打たないようにはしているんですけど。あの場面はサインミスがあったりもしましたが。

「観客がいた方が楽しめる」

初めてスタメンで臨む早慶戦だ

――高校時代に早慶戦を見にきたことはありますか

 高校野球引退後にあります。秋ですね。人が多いなと思いました。応援の盛り上がりがすごかったです。

――春も代打での出場がありましたが、早慶戦にはどのようなイメージがありますか

 応援がすごいので、応援に飲まれないようにしたいですね。でも相手の応援も結構聞こえたりするんですけど、楽しいですね。攻撃の時なので、集中してしまっていて、早大の応援があまり聞こえないのは残念ですが。

――大勢の観客の中での試合ですが、プレッシャーや緊張などはありますか

 夏に愛媛と熊本であった全早慶戦も結構観客が多かったのですが、いつも通りできたので、たぶん緊張はしないと思います。観客はいた方が楽しめるので。

――友人が応援に来てくれる予定などはあるのですか

 SNSでチケット欲しい人いたら声掛けてくださいと呼び掛けたんですけど、誰からもコメントが無くて・・・。悲しかったです(笑)。来てくれなさそう(笑)。

――やはり戦ってみたいのは川越東高時代の同期生・髙橋佑投手ですか

 そうですね。ボンバー(髙橋佑の愛称)とはやってみたいです。高校の時は全然打てなかったので、大学では自分が打ちたいなと思います。

――髙橋佑投手はそんなに打てなかったのですか

 高校時代はもう全然でした(笑)。でも大学には他にも良いピッチャーがたくさんいるので、見慣れてきたはずなので、今度こそは打てるかなと。

――川越東高の同期といえば、立大の藤野隼大選手(2年)が大活躍していますが、刺激を受けたりしますか

 バッティングでは負けたくなかったんですけど、ちょっと悔しいですね。打率はリーグ3位とかでホームランも3本打ってますからね。すごいなとも思います。高校の時は打率も同じぐらいだったんですけどね。

――六大学には川越東高時代の同期も多いですが、シーズン中にもやりとりしたりはするのですか

 法政の友達とは、試合前のバッティング練習の時に少し話しました。

――慶大のチームとしての印象は

 一発が多いなと思いますね。どこからでも点が取れるので、やっぱり怖いなと思います。

――そのようなチームを相手に、どこに勝機を見出しましょうか

 (早大は)ピッチャーが良いので、何とか最小失点に抑えて、接戦になると思うんですけど、ロースコアの戦いをするしかないかなと思います。

――髙橋佑投手以外に戦ってみたい投手はいますか

 津留﨑(大成、2年)と髙橋亮吾(2年)ですね。特に髙橋亮吾は愛媛の全早慶戦の時に三振しているので、今回は絶対に打ちたいと思います。津留﨑は高校時代にも対戦していて、とても良いピッチャーだったので、また対戦してみたいなと思っています。

――早慶戦で守りたいポジションは

 うーん。最近はファーストに慣れているので、サードはちょっと怖いですね。ファーストでいきたいですね。

――4年生は最後の早慶戦、最後の試合になりますが

 順位は今5位ですけど、早慶戦で2連勝して、良いかたちで送り出せればいいなと思います。

――特にお世話になった4年生の先輩はいますか

 皆さんお世話になりましたけど、岡さん(大起、社4=東京・早実)には一度、リーグ戦の最中に自分と檜村がダメだった時に、励ましみたいな感じでご飯に連れていってもらいました。次の日二人とも結構活躍できました。

――一塁で一緒にノックを受けたりしていましたが、福岡選手にとって佐藤晋甫主将(教4=広島・瀬戸内)はどんな方でしたか

 すごく尊敬しています。無口なんですけど、背中で語りかけるような。かっこいいです。

――吉見健太郎副将(教4=東京・早実)はどんな副将でしたか

 声とかすごく出してくれるので、チームを盛り上げてくれます。

――チームの雰囲気は

 雰囲気は悪くないです。

――初めてのスタメンでの早慶戦となりそうですが、意気込みをお願いします

 自分が打って、2連勝したいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 當間優希)

「2連勝」で4年生を送り出します

◆福岡高輝(ふくおか・こうき)

1997(平9)年9月8日生まれ。174センチ、80キロ。埼玉・川越東高出身。スポーツ科学部2年。内野手。右投左打。体重が増えたというお話をしてくれた福岡選手。事前のアンケートでは『熱盛』のつけ麺を食べたと答えてくれました。仲良しの山田淳平(教2=東京・早実)とはよくご飯を食べに行くそう。山田選手は「デブ仲間」だと、笑顔で語ってくれました。