早大のエース小島和哉(スポ3=埼玉・浦和学院)。今季はケガの影響でなかなか思うような投球ができずに苦しんだ。ベンチを外れたこともあったが、復帰戦となった立大1回戦で大学初完封。徐々に本来の姿を取り戻している。残るは早慶戦のみ。そこで今回はこれまでの振り返りと早慶戦への意気込みについて聞いた。
※この取材は5月19日に行われたものです。
「監督の期待に応えられず悔しかった」
ここまでの投球を振り返る小島
――まず、今季これまでの投球を振り返っていい点、悪い点を教えてください
東大戦の週を境にして、良かった点と悪かった点がはっきりしていたんですけど、足を捻挫していた分バランスが崩れて、四死球の数が多かったのが悪かった点です。その週以降は痛みもなくなってきて、球もまとまりだして四死球も自分で制御できなかった部分が少なくなり、あったとしてもそれは勝負にいった上でのものだったのでその点は良かったのかなと思います。
――実際に今季試合をしてみて、手応えを感じている部分はありますか
(自分の投球は)もともと真っすぐ中心なんですけど、カウントを取る時のツーシームやカットボールで打たせて取れることが昨秋に比べれば多くなってきたのかなと思います。そういう意味でも真っすぐを良くするための変化球がいい感じになってきたかなというのはあります。
――リーグ戦では1カード終わると1〜2週間空きますが、その間はどういった調整をしていますか
自分の場合、登板日にあまり照準を合わせようとせず、できるだけ自分を追い込んだ中でどこまでやれるか、という調整をしています。ハンデじゃないですけど、自分にそういうものを背負わせています。例えば土曜に先発だったら、木曜あたりまでがっつり追い込んでランニングだったりトレーニングをこなします。空き週の場合はトレーニングも強度を高めにしてやっています。
――ケガで何もできなかった期間はどういった調整をしていましたか
走ることができなかったので、エアロバイクで追い込んでいました。走るよりもきつかったです(笑)。
――ケガのことですが、どういった時にしてしまったんですか
開幕直前に2人組のトレーニングでバランスを崩して前の人に乗ってしまって。自分の不注意です。
――ケガをした時は「やってしまったな」という思いでしたか
その日は大丈夫だったんですけど、次の日に腫れがひどくなってきて。「これはやばいな」という感じでしたね。
――接骨院などで治療をしたのですか
いえ、トレーナーの方にみてもらっていました。試合の時はテーピングを巻いて投げるという感じです。
――では開幕カードの法大戦も何とか投げ切ったということですね
そうですね。まぁ内容を細かく見ていくと最悪の試合だったんですけど、それでも勝てたことはよかったかなと思います。
――明大戦の時にはかなり悪化していたのではないですか
そうですね。かなりひどかったです。
――明大戦では制球がまったく定まりませんでしたね
投げていて結構やばいなと思っていて。初回に4点取ってもらったんですけど、このまま投げてたら追いつかれるなと思い、自分から監督に交代を志願しました。
――そういったケガの影響で明大戦(3回降板)、東大戦(欠場)ではチームに貢献できませんでした
明大戦では投げられると思って投げたので、それ(ケガ)を言い訳にしたくないです。どこかが悪くても、投げると決めたからにはしっかり抑えるのがエースの役割だと思うので、そういった面で監督の期待に応えられなかったのが悔しかったです。
――明大戦は表情にはあまり出ていませんでしたが、かなり自分の投球に対していらだちがあったのではないですか
んー、いらだちというよりも不甲斐ないというか…。特にあの試合はロースコアの展開と思ってたところにいきなり4点入ったので、チームを勝たせることができなかったことが悔しかったです。
――ケガをしている時、チームの仲間、特に投手陣から何か声を掛けてもらったりなどということはありましたか
脇投手コーチ(健太朗、社4=早稲田佐賀)には細かく状態を報告していたのですが、他の人たちには言わないようにしていました。心配をかけてしまうと思ったので。
――食生活のことですが、春の対談では1日7食食べ、ピーナッツ類を摂取しているということを言っていました。これは今も継続していますか
そうですね。今もやってます。ただ試合前とかはある程度調整しています。
――やはり体重の調整なども意識していますか
していますね。自分は投げた次の日とかは2キロぐらい体重が落ちるので、その時はかなり食べるようにしてます。
――今季から早川隆久投手(スポ1=千葉・木更津総合)が加わり、試合にも登板していますが、何か投手陣の中で雰囲気が変わったりということはありますか
1年生であれだけいい球を投げているわけですし、あまりうかうかしてられないなという気持ちになります。また投手陣の練習のスタイルもことしから変わりました。
――それは具体的にどう変わったのですか
今まではランダムでグループに分けて練習していたんですけど、ことしは自分の立場を理解するという意味でメンバーを実力順に分けて練習しています。そうすることで隣同士にライバルがいるというなかで競い合ってできるのかなと思っています。早川はランニングも速いのでそういう点で競争意識のようなものは生まれるようになってきたかなと思います。
――今季はケガもありましたが、打ち込まれた日やうまくいかない時はその気持ちをどう解消していますか
悔しさはものすごくあるんですけど、あまり落ち込みすぎないようにというのは心掛けています。これまでは「自分が抑えられると思っていて、打たれるから落ち込むもの」と考えていたんですけど、「マー君(田中将大投手、ニューヨーク・ヤンキース)でもめった打ちにあうのだから自分だって打たれないわけがない」というふうに考えるようになりました。ましてや自分はさほど大したピッチャーじゃないので、打たれたら実力不足、勉強になったと考えて、もっと練習を突き詰めてやっていこうという気持ちを持っています。
――ムダ球を少なくする、余計な走者を出さないというのが小島投手の理想の投球だと思いますが、そのために必要だ、大事だと考えていることはありますか
同じ力でも100%で投げる力というよりかは、(捕手が)構えたコースに投げられる100%の力というのが大事だと思います。これはNHKの田中将大投手の『プロフェッショナル 仕事の流儀』を見てすごく納得したことです。ただガンガン腕を振ればいいってわけじゃないんだなっていうのは自分の中でしっくりくるものがありました。ちょうどそれを見て立大戦に臨めたのでよかったかなと思います。
――その立大戦ですが、大学では初完封とうれしさもあったと思います。やはりあの投球が理想とする投球ですか
そうですね。ただ今さら初完封じゃ遅いんですけどね…。
――あの試合は外角低めにいい球がたくさん決まっていました
そうですね。最初の方は(相手が)インコースをはっていると思ったので、外の変化球中心で投げて、試合が進むにつれ相手が外に踏み込んできたらインコースにいこうという組立てで投げていました。
――主にどの球種を使っていましたか
真っすぐと、ツーシーム、カットボールですね。
――その3つならどれでもカウントが取れたということですか
そうですね。取れました。
――あの日小島投手は「監督の期待に応えられてよかった」と言っていて、髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)も「復帰してからよくあそこまで投げてくれた」と評価していました。試合後直接何か言われましたか
いや、特には言われてないです。ただその前の週で自分が投げないなか早川、柳澤さんが抑えたのに一戦目で先発ということだったので、「ここで抑えられなかったら終わりだ」と思って頑張りました。
――ちょうど母の日でしたけど、ウイニングボールは渡しましたか
あげました。実は前にも1回あったんですよ。お金をかけないプレゼントということで(笑)。
「(早慶戦は)投げていて楽しいし、応援がすごく伝わってくる」
早慶戦もこれで5度目。楽しんで投げられるという
――「きょうは調子がいいな」というのは試合前のブルペンで投げた時などにわかるものなのですか
いや、自分はブルペンで調子良すぎると試合じゃ打たれるっていうジンクスがあって。悪いぐらいが一番良かったりするのであまり測れないですね(笑)。
――試合の勝負どころの場面で、髙橋監督は相手の打者や打順を考えて、歩かせる、勝負するなどのバッテリーの考え方に不満があるようです。バッテリーでそのあたりは考えての投球ですか
監督には監督なりの考え方があって、自分たちには自分たちなりの考えがあるんですが、結局は抑えれば何でもいいと思うんです。ただ実際打たれてしまっているわけで、それは自分たちの考え方が間違っていたということだと思います。試合を見てきた数も全然違いますし、「野球は確率のスポーツ」とよく言われますが、もっと自分たちが監督に「あの場面はどうすべきだったのか」というのを聞いて意思疎通しなきゃいけないなと思います。
――立大3回戦もそういった場面が数回見受けられました
あの日は1回戦で完封したってこともあり、そのままの組立てでいこうと話して、初回に取られてしまいました。あの1点が本当に悔やまれます。
――ピンチの場面で監督がマウンドに行くことがありますが、あの時も勝負するかどうかなどを話しているのですか
「どうしたいか」というふうに聞かれて、基本的には任せるぞというふうには言われます。難しいところではあるんですが、例えば当たってるバッターなら、監督は球数なども考慮して、歩かせるのであれば4球で、とういうふうに考えているのですが、自分的には厳しいコースを攻めていった結果歩かせるという考えなので。そういうところも考えを擦り合わせないといけないなと思います。
――開幕前はカーブを多用していこうというふうに言っていましたが、投げていますか
ほぼ投げてないですね(笑)。ケガしてコントロールがついていなかったので。
――ご両親は毎試合観に来てくれているのですか
そうですね。来てくれています。
――試合後に何か話をしたりというのは
いや、それはないですけど、試合前日とかは「頑張ってね」と連絡が来たりします。
――明大戦からグローブを新調されたようですが、今回も赤系統の明るい色ですね。高校時代からそうですが色へのこだわりは何かありますか
自分は黒が絶対似合わないと思っていて。派手めな色じゃないと違和感があるような気がしてずっとそういう色にしています。黒に変えるのは怖いです(笑)。
――同級生のライバルに打たれたくないと言っていましたが、今季戦ってみてどうですか
明大の渡辺(佳明、3年)や法大の小林(満平、3年)には打たれてしまっていますね。しかも渡辺にはタイムリーも打たれて。悔しいですね。
――結構プライベートでも交流はありますか
そうですね。結構LINEしてます。
――高校時代から見ていて思うのですが、試合はいつも七分袖ですよね。こだわりがあるのですか
あれ実は七分袖じゃなくて長袖なんですよ。長袖を少しまくっています。なんか投げてて肘のあたりが締め付けられてないと嫌で、かといってピチピチのアンダーシャツとか七分袖も嫌なんですよ。変な感覚ですよね(笑)。
――早慶戦は3年目になりますが、あの雰囲気というのはかなり独特のものがありますか
そうですね。優勝の懸かっている早慶戦も懸かっていない早慶戦もどちらも経験したんですけど、すごく応援が伝わってきて。だからこそ不甲斐ない試合はできないなと思っていっそう身が引き締まりますね。
――3年目ということでかなり慣れたのではないですか
慣れというかすごく投げていて楽しいです。
――今季の慶大打線は強力です。特にクリーンナップはかなり打っていますがそういった打線をどう打ち取ろうと考えていますか
真っすぐでどんどん押していこうかなと思っています。逃げるのは嫌なので、強気に攻めていきたいです。
――過去には岩見雅紀(慶大4年)、郡司裕也(慶大2年)などに本塁打を打たれていますね
そうですね、打たれないようにします(苦笑)。
――苦手意識とかはありますか
そういうのはあまりないですね。
――昨秋は負け投手になっています。あの時はどういった心境だったか覚えていますか
すごく悔しかったです。慶大相手となるとなおさら悔しさが倍になります。
――最後に早慶戦への意気込みをお願いします
優勝の有無にかかわらず、とりあえず自分たちがやらなくてはいけないのは早慶戦連勝なので、出遅れてしまった分自分がきっちり抑えてまずは初戦を落とさないように0に抑えたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 田原遼)
エースとして責任を全うします!
◆小島和哉(おじま・かずや)
1996(平8)年7月7日生まれ。177センチ、79キロ。埼玉・浦和学院高出身。スポーツ科学部3年。投手。左投左打。Twitterで『小島和哉』を検索するとそれらしきアカウントが3つヒット。しかしこれらはすべて偽物。「焼肉行ってないのに焼肉のツイートとかされているんですよ」と困った表情の小島選手。これも小島選手の人気、知名度があってこそのものですね!