春季リーグ戦では自身初となるベストナインに選ばれ、さらに高打率をマークするもおごらず、打撃フォームの改造を行うなどつねに努力を重ねる石井一成(スポ3=栃木・作新学院)。来季からは最終学年を迎え、チームを率いる立場になる石井は今何を思うのか。今回は数少ない下級生レギュラーに今季の成績について、そして4年生への思いをうかがった。
※この取材は10月23日に行われたものです。
「さらに上を目指すために」
言葉を一つ一つ選びながら取材に応じる石井
――きょうの朝は練習をされていたのですか
きょうは朝から学校があったので、練習はありませんでした。16時から練習です。
――これからの16時の練習はどのような練習を
きょうもいつものようにノックやバッティングだと思います。特別な練習はしないと思います。
――秋シーズンの前に、少し春と夏季オープン戦についてお聞かせください。春は日本一に輝き、たくさんのことを吸収したと思いますが成長した部分は
春はあそこまで戦えると思っていなかったので、自分でびっくりしているのと、変に考えすぎないようになったかなと。何も考えないと言いますか、何もプレッシャーを感じないで野球をすることができるようになりました。
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――1、2年生時代と変わった部分は
ホームランや長打がなかなか打てていなくて、その点を目標としてやっていたのですが、少しずつですが打てるようになってきたかなと思います。
――夏季オープン戦では打撃フォームの改良にも取り組まれたということですが
バットの出し方や下半身の使い方などいろんな人からアドバイスをもらいながら改良に励みました。
――春では高打率をマークしていましたが
同じ状態だと相手もしっかりと練習してくるのでいつまでも打率は維持できないと思います。また、自分の中でももっと打撃面でレベルアップしなければいけないと思っていましたし、さらに上を目指すために取り組みました。
――オープン戦終盤に行った取材の際には打撃に不安もあるとお話ししていましたがその点についてはどういった理由から
改造をして短い期間で取り組んできたので、形が定まらないまま試合に臨むことになってしまうと感じていたからです。
――その中でオープン戦終了から開幕まで1週間、時間がありましたが何か取り組まれたことは
1週間ではあまり変化はないと思っていたので、スイングの調整をしたいという思いで何か特別なことをするわけではなくいつもの通りコンパクトなスイングを心掛けて練習しました。
――秋シーズンはどういうシーズンにしたいと考えていましたか
春以上の結果を出したいと考えていましたが、なかなかそうすることは難しく、練習不足であったりメンタル面での弱さを感じました。
――メンタル面の弱さとは
春のイメージで入ってしまい、簡単に打てるだろうという気持ちがどこかであったと思います。そういったところが戦う時の隙になっていたと思います。
――開幕戦はどういった意気込みで臨みましたか
春は日本一になりましたが、秋はまた挑戦者として上を目指そうという気持ちで臨みました。個人としては春の結果におごらずに臨もうと考えていました。
――その東大1回戦ではノーヒットに抑えられてしまいました
4年生に頼ってしまっていた部分があって、4年生に任せてしまい、チームを引っ張っていくという姿勢とどこかしらでまだ自覚と責任が足りていなかったと思います。
――守備では失策もありましたどういった状況でしたか
打球がバットの先の方に当たってしまい、回転がかかっていてそれで前に出ることができずに足を使わずに投げてしまったために起こりました。
――それに対し、守備に不安は感じましたか
あの1点は痛いと思ったので、取り返してくれたので良かったですがあのようなことは絶対にないようにしたいと思います。
――東大2回戦では併殺に倒れる場面もありましたが、初打点も決めました
情けないバッティングばかりだったので、なんとか1点を取ろうという気持ちで試合に臨みました。
――二試合ともに早大は各試合5安打に抑えられましたが
苦しい試合でしたが、なんとか勝ち点を取ることができ、負けないことが大切なので勝ち点を取ることができて良かったです。
――明大戦は早大戦にとっては苦手意識もあったと思います
春から投手陣が進化しているなとは感じていたので、気を引き締めて戦いました。
――好投手がそろっていますが、打撃面で苦しい場面はありましたか
ピッチャーも良く、キャッチャーも良かったのでうまく振らされてしまいました。
――明大1回戦では延長10回、ランナーを背負った場面で打席が回ってきました
打ってやろうという気持ちと、なんとしても次につなげようという気持ちで打席に入りました。ですが、気持ちが足りなかったのか、投手に押されてしまいました。
――この試合では5打数のうち3つの三振を取られました。要因は
やはり打ちたいという気持ちが先行してしまい、振ってしまったところがあると思います。
――2回戦では6回で犠飛を打って点数に貢献し、「安打だけでなく得点が取れるプレーをしたい」というプレーにはかなっているとは思うのですがどのように考えていますか
少し当てにいったところもあり、あの打球が抜けていれば逆転できたと思いますし、有利な試合展開にすることができずとても悔いが残っています。
――9回では代打を出されてしまいました
打っていないので仕方ないとは思います。まだ信頼されていないということなので、もっと信頼されるような選手になっていかなければならないと思います。
――明大戦から次の試合まで1カード休みがありましたが何か取り組んだことは
何か特別にできることはなかったので、やってきたことを原点に帰って見直そうということで正しいスイングの仕方などを確認しました。
――ことしでは初めて勝ち点を失う試合となりましたがチームの雰囲気は
ずっと勝ち続けることは難しいということをチームで話しました。だからこそ次のカードは絶対に落とさないという気持ちで意思統一ができていたのでそこまでチームの士気が下がることはありませんでした。
――その中で迎えた立大戦2試合を振り返ってください
自分自身でも納得のいく打撃はできなかったですが、試合には勝てて良かったですし、チームとしては粘り強さを出すことができ良い試合運びができたのかなと思います。
――後輩の投手陣の好投もありました
頼りがいのある後輩たちで自分たちが楽にしてあげたいという気持ちで試合に臨んでいました。
――続く法大1回戦ではワセダらしい打撃が見られました
みんながやっとスイッチが入ってきたといいますか、うまくスイッチを切り替えてプレーすることができていたのだと思います。
――ご自身は5打数無安打に終わりました
みんなが打っているにもかかわらず、自分で(流れを)止めてしまったりととてもつらい試合でした。
――クリーンアップとしてのプレッシャーもありましたか
プレッシャーはないです。ただ練習不足なのかなと自分では思っているので、まだまだ練習が足りないと言われているんだなということを試合後思っていました。
――ランナーがいる場面での打撃が多かったですが、その点のプレッシャーなどは
気負う場面はありませんが、基本的なバッティングであるつなぐ打撃ができていなかったので反省しています。
――早慶戦前の最終戦はどのような意気込みで臨みましたか
早慶戦へ良い流れを持っていこうということで変に考えすぎず、ワセダらしく、そして自分の打撃をしようということを意識していました。
――石井選手はこの試合4打数3安打の活躍を見せました
やっとボールが見えてきたのかなという印象ですが、まだまだ弱い打球ばかりなのでしっかりと打ち切れるようにやっていきたいです。
――打撃フォームの改良が実を結んできた実感はありますか
まだまだないです。
――3安打という成績に何かここが違ったという点は
やはり気持ちの面です。吹っ切れたと言いますか、考えすぎていると思っていたので、自分らしくということを意識した結果だと思います。
――今シーズンは不振が続くシーズンでしたが、中澤彰太(スポ2=静岡)選手の不振も見ており、誰よりもつらさも厳しさも知っていたと思いますが
自分が良くなれば中澤も良くなると思っていたので、打てないことへの責任を感じましたし、中澤も頑張っていますし一緒に頑張ろうという話はしました。
――いまでも中澤選手と自主練習はされていますか
しています。練習後のティーバッティングなどをしています。
――この試合ではまた2つの盗塁を決めました
自分なりに考えて、試合を楽しめていなかったなと思っていて。自分らしさってなんだろうと考えてみたときに相手の隙を見てプレーすることなので、走塁、バッティング、守備すべてにおいて相手の隙をみて付け込めればという思いで走りました。
――この盗塁はチームに流れを呼び込むプレーの一つだったと思います
いままで打てていなかったのはもちろんですし、5番として静かすぎたと感じていてもっとガツガツいこうという思いで走りました。
――今季チーム唯一の猛打賞という結果については
打球が飛んだコースが良かったということもあるので、猛打賞ということはあまり気にしていませんが、この猛打賞の勢いに乗っていけたらいいなと思っています。
――昨季は逆方向の意識をずっと意識されていたと思います。今季の成績を見てどのように感じていますか
監督さん(髙橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)にも逆方向にということで指導いただいて、逆に打てるようになったことは収穫かなとは思います。
――今季の成績を「ふがいない」とアンケートでおっしゃっていましたがどういった理由でですか
やはりクリーンアップとしてまったく仕事ができていないということです。
――苦悩などありましたか
打てていないのは自分の責任なので特にはありません。打てるボールが来てることは間違いないのであとは自分次第だと思います。
――先ほども猛打賞から流れに乗りたいとお話しされていましたが、調子も上向きになっているのでは
ホッとしている部分もありますが、これからさらに引き締めてやっていかなければいけないなと思います。
――ご自身の今季の成績を改めて振り返ってください
自分が打っていれば何点も入っていた場面もありますし、4年生がつくって下さったチャンスを潰してしまったこともありました。4年生が最後のシーズンということで有終の美を飾ってもらいたいと思っていたのですが、なかなか結果を出すことは難しくて。これから残り2試合ですが全力で戦っていきたいと思います。
――守備面では東大戦では失策はありましたが、安定性は増したように感じます
守備面に関してももっと意識高くやっていかなければいけないと思っているので、これを当たり前にしてさらにレベルアップを図っていきたいです。
――ファインプレーもいくつか見られました
集中していた結果だと思います。ファインプレーというよりはタイミングが良かっただけで、野手としては打たれてしまった打球を普通に捕ってアウトにできるようなショートストップになっていきたいです。
――来年以降も遊撃手として試合に臨む予定ですか
はい、ショートでやっていきたいです。
――春は三塁手としてのスタートでしたが、遊撃手の方が合っているなと感じる部分は多いですか
守備範囲が広いというのと、周りを見て声を出したり、センターラインを守ることができるので、ショートの方が合っていると感じています。
――一方、打撃面では右投手に対しては打率は3割である一方で、左投手には一本も安打が出ていません。悪いイメージなどありますか
悪いイメージはないので、ボールの見方だと思います。
――今季のチームの成績を振り返ってください
粘り強く戦っていけているなと思います。
――髙橋広監督になって2季目が経ちました。どういった監督ですか
とてもシンプルな考えを持った方です。負けないことが一番大事なことで、投手は四球を出さないことであったり、打者であれば点を取るバッターは良いバッターという認識なので僕たちとしては分かりやすいです。
――ご自身でも度々『一戦必勝』という言葉を口にされていますが、これは高橋監督の影響でしょうか
そうですね。まさに『一戦必勝』は理にかなっていると思います。
――今季は4年生がチームを引っ張る場面が多いように思います
自分自身もすでにああいう選手になっていかなければいけないのですが、まだまだ頼っている場面が多いのでもっとやっていかなければいけないと思います。
「先輩方のような存在になっていかなかればいけない」
――きのうはドラフト会議もありました。ご覧になられていましたか
見ていました。
――重信選手(慎之介副将、教4=東京・早実)、茂木選手(栄五郎、文構4=神奈川・桐蔭学園)が選ばれた瞬間どのようなことを感じましたか
1つ上ということもあり、より親近感もあり緊張して見ていました。選ばれた瞬間はとても嬉しかったです。
――公私ともに仲の良いという茂木選手とはお話ししましたか
少しだけ話しました。
――具体的には
おめでとうございますということだけ伝えました。
――茂木選手に伝えたいことはありますか
順位は3位ですが、あれはドラフトの順番なので入ったら即戦力になることができる選手だと思います。なのでそれを十分に発揮して開幕一軍にいてほしいと伝えたいです。
――刺激を受けることもたくさんあったと思います
茂木さんに負けないように、追い越せるように目標は高く持ってやっていかなければプロの世界は厳しいと思います。そういった意味では茂木さんや重信さんがプロに行ったことはとても刺激になりました。
――プロへの意識もありますか
もちろんあります。
――大学を卒業するまでにどのような選手になりたいですか
プロで通用する選手になりたいと思います。まずは即戦力で行けるような力をつけなければいけないと思うので、まだまだ実力が足りないですし、結果として出していけたらいいなと思っています。
――茂木選手が主軸として活躍されていますが茂木選手の尊敬できる点は
何事にも動じない精神面です。チャンスでも自分のスイングができる強さというのはとても参考にしていますし尊敬しています
――アドバイスを受けたりはしますか
考え方の部分ではあります。打席に入ってランナーを返せないことよりも自分のスイングができないことが一番悔しいので、打席に入ったらどんなことよりも自分がやってきたことをやった方が良いということは言われました。
――茂木選手との一番の思い出は
やはりリーグ戦の前日に「明日頑張るぞ」ということで食事に連れて行ってもらっていて。これがルーティーンになっています。あの食事がないとリーグ戦で戦おうという気になれないというか(笑)。日課になっていますね。
――いつのリーグ戦から連れて行ってもらっているのですか
僕が1年生のときは東條さん(航元主将、平26文構卒=現JR東日本)に連れて行ってもらっていて。東條さんが卒業してからはずっと茂木さんに連れて行ってもらい、2人で食事しています。
――そしたらかなり長い間、茂木選手との食事がルーティーンになっているんですね
そうですね。後継者を見つけないといけないなという感じです(笑)。
――いまは見つかっていないですか
今はいないです(笑)。見つけている段階です。
――茂木選手の立場を継承していくということで不安などはありますか
4年生がかなり抜けて、レギュラーの3年生は自分と中澤しかいないのでチームを引っ張っていく思いは2倍も3倍もないと無理だと思います。なので、自覚と責任を持ってやっていかないといけないなと思っています。
――4年生が卒業してしまうということで、4年生の方々への思いをお聞かせください
やはり寂しい気持ちが第一にあります。自分もチームを引っ張っていくという気持ちでやってきたので、いざ四年生が抜けたらということは考えられませんが、少しずつイメージしながらやっています。
――4年生はどういった存在ですか
本当に頼りになりますし、チームを救ってくれる方々ばかりなのでこれまで自分も助けられながらやってきました。自分も先輩方のような存在になっていかなかればいけないと思います。
――特に1年間部をまとめてきた河原右京主将(スポ4=大阪桐蔭)はどういった存在でしたか
チームで一番練習もしていますし、だからこそ勝負強いバッティングができるんだと思います。一方で、チームをまとめる力もありますし、右京さんは面白いのでチームを和ませることもできますし、本当にキャプテンらしいキャプテンでとても尊敬しています。
――来年度は石井選手も最上級生となり、チームをまとめていく立場になります
チームをまとめることはもちろんですが、チームが駄目な時にチームを救っていけるような選手になっていかなければいけないと感じています。またもっと信頼される選手になりたいと思っています。
――先輩方を見て見習い点は
試合での勝負強さですかね。あとは練習の雰囲気づくりで毎日練習することなので練習の際に厳しい雰囲気を作っていければいいかなと思っています。
先輩方に「有終の美を飾ってもらいたい」
5番打者として、チームに欠かせぬ存在となった
――早慶戦は絶対に負けられない一戦だと思います。いまのチームの雰囲気は
絶対に2連勝するぞという雰囲気です。
――以前、ご自身にとって早慶戦は「憧れの舞台」とおっしゃっていました。いまはどういう印象を持っていますか
やはり負けられない戦いですし、あれだけ大勢の方々が応援しているにもかかわらず、やっている僕たちが強い気持ちでやらなければ申し訳ないと言いますか、けじめがつかないので、しっかりと勝って良いかたちで締めくくりたいです。
――今季の慶大の印象は
バッティングがいいという印象です。
――投手に対しては
いいピッチャーがたくさんいるので、打たされないようにしたいです。
――警戒する選手は全員とおっしゃっていました
少しの気の緩みが試合にも出ると思います。全員が線となって戦い向かってくると思うので、隙を見せないプレーをしたいです。
――レギュラー6人が4年生ですが、ご自身の役割は
有終の美を飾ってもらうには勝利しかないと思うので、三年生が頑張って最後にチームを救うことができたら、支えることができたらいいなと思います。
――中澤選手とお話ししたりしますか
余計なことを考えると自分のプレーができなくなってしまうので、余計なことは考えず、やってきたことをやろうということを話しました。
――最後に早慶戦への意気込みをお願いします
必ず2連勝します!
――ありがとうございました!
(取材・編集 三上雄大)
早慶戦で注目して欲しいところを書いていただきました!
◆石井一成(いしい・かずなり)
1994(平6)年5月6日生まれのO型。180センチ78キロ。栃木・作新学院高出身。スポーツ科学部3年。内野手。右投左打。早慶戦で注目してほしいところはとの問いに『肩』と一文字。負けられない一戦で流れを呼び込む打撃と自慢のスローイングに期待しています!