【連載】『真の王者への道』 第8回 大野大樹

野球

 昨シーズン、念願だったレギュラーを獲得するとともに、一年間スタメン出場を続けた大野大樹(社4=東京・早実)。2番打者として献身的な働きを見せ、チームの勝利に貢献した。最終学年として迎える今季は、副将として、外野の要として大きな役割を担う。そんな大野大に、昨季を振り返ると同時に、ラストイヤーへの思いを語ってもらった。

※この取材は2月13日に取材したものです。

「自分が責任感をもってやるべき」

一つ一つ言葉を選び話す大野大

――きょうはどんな練習をされていたんですか

午前中は室内でバッティング練習を、午後はノックと実践的なシート打撃をしました。

――チームはどのような雰囲気ですか

2か月経つと春季リーグ戦(リーグ戦)なのでそろそろ本格的にというかんじです。学校も終わって1日練習できるので、新しくベンチに入っている選手がいっぱいいるんですけど、ミスしてもいいのでとりあえず元気を出してやっていこうとしています。

――チームに手ごたえは

正直まだ全然ないですね。1人で15打点近く挙げていた杉山さん(翔大、平25スポ卒=現プロ野球・中日)の穴をどのように埋めていくのかとか、藤枝合宿(静岡)で出たんですけど足の速い方が3、4人抜けてしまった穴をどのように埋めていくのかとか課題はたくさんあります。結局は皆でカバーし合おうということなんですけど、まだまだな部分はたくさんあるので不安もあるし、いまのままでは勝てないなというふうに思っています。

――合宿で行ったのは基礎トレーニングですか

そうですね。とりあえず振り込んで数をこなそうというのと、後は守備の基礎ですね。実戦はそんなにやっていないです。やっぱり基礎的なものをもう1回、一からやりました。

――自身の調子は、まだ探り探りですか

そうですね。でもやっぱり去年のビデオを見てもっといやらしいバッターになりたいなと思ったので、いま徳武さん(定祐、昭36商卒)とかに教えてもらったことを昨年よりも意識してやっている気がします。昨年はすごくがむしゃらにやっていた記憶があるんですけど、ことしは一つ一つ意識してやっているのでそういう意味ではすごく自信があるというか、行けるぞっていう自信はすごくあります。

――チームのムードメーカー的存在は

去年と比べたら絶対的な存在がいないんですけど、誰っていうよりも4年生全員で盛り上げ役を担っています。メンバー外の人が中心となってやろうという話は4年生の中でしています。

――4年生が中心となってというのは、やはり昨年度を見て

やっぱり去年を見てそれが大事だなと思ったので、僕たちも引き継いでいこうという話になっています。

――代替わりをしてから何回も話をされている

月に1回ミーティングをしようというふうにはなっています。これからのことや個々の役割をどうしていくかとかそういう内容のミーティングを月1でしますね。

――4年生になって責任感が変わってきたりしますか

そうですね、言われる立場というより言う立場になっているので。外野であったら佐々木さん(孝樹、平25スポ卒=現JR東日本)や直樹さん(高橋、平25スポ卒)が抜けて、僕がやっぱり先頭に立ってやっていかなければと思っているので、自分が責任感をもってやるべきだなと思っています。

――最終学年は3年生までと全然違う

全然違いますね。野球には自分の時間も多いですし、やっぱり4年生は見られている存在じゃないですか。そういう意味では私生活から気を付けようというか、4年生になってから野球についてはすごく考えるようになりました。

――東條選手(航、文構4=神奈川・桐光学園)はどんな主将

やっぱり指定校で入ってきただけあって頭良いんですよ(笑)。ことしは人間性というテーマを掲げているので東條はすごく適していると思いますし、その分監督に言われることもたくさんあってつらいとは思うんですけど、それを出さずに皆をまとめられているのでこの代のキャプテンは東條なんだなと感じますね。

「犠牲心は常に持ち続けていく」

副将、外野の要としてチームをまとめる

――昨季はどんなシーズンになりましたか

1年の時にデビューをして2年生では全く出られなくなって、3年が野球をする上で一番大事な時期だなと思っていたので、シーズン通して出場できたというのはすごく自信になりました。もっと上手くなるためにはこうしていけばいいんだなというのも分かりましたし、やれば結果は出るなと思ったので、僕にとっては自信になったシーズンではありました。3割打ったとかじゃないんですけど、ことしのシーズン頑張ったら3割打てるぞと思ったシーズンでした。

――レギュラーを獲得できた要因

去年ダメだったら上で野球をするのは諦めようと初めて思いました。家族とも相談してことしダメだったら野球をやめると言ったのが一番大きかったですね。それによって必死さも芽生えたし、本当にやらなくてはいけないんだなと改めて感じました。練習一つ一つに対しても自分の域を決めないでできたと思うので、それが本当に大きかったと思います。あとは、4年生のためにというか。自分はすごく迷惑をかけてきたのでそのためにやろうと思いました。この2つのことがあったから1つカベを破れたのかなと思います。

――レギュラーに定着して新たに見えたこと

やっぱり3割ってすごく難しいなと思いました。打てそうで打てなかったです。去年を振り返ると、あそこでバント決めていたらなとかあそこでもっとああいう打撃をしていたらなとか思って…。ことしはそういったダメだったところを意識して取り組んでいます。

――昨年度の試合の中で一番印象に残っているものは

メイジ最終戦の8回裏に直樹さんがバントを失敗して、一塁ランナーだった僕は戻れなかったんですよ。あれが一番印象に残っていますね。完全に戻らなくてはいけない場面だったんですけど、どうしても次は杉山さんだから前に行かなきゃという思いが強くて周りが見えなくなっていました。自分のミスが絡んでいるので印象に残っています。あの後杉山さんが打ってくれたかもしれないですし、それはずっと思っていますね。

――毎試合安打を放っているという印象だったんですが

中村(奨吾、スポ3=兵庫・天理)が出たらとにかくバントしてクリーンアップにつなげる、あとは状況に応じたバッティングをしようというのをずっと思ってやっていたので、そういった意味では1試合に1本打てたというのはすごく良かったかなと思います。ですが逆を言えば1試合に1本しか打てなかったわけで…。去年は1試合に1本打てたのでことしは1試合に2本打てるように頑張ろうと思っています。

――バントをする機会が多かったのですが、練習は重ねていた

小学校のチームの監督がすごくバントをさせる監督で、4番でずっと打っていたんですけど、それでもバントをさせるチームでした。あの時に教えていただいてすごく良かったなと思っています。また2番打者になったときに、こんなにバントって大切なんだなと思いましたし、それと同時に当たり前のことを当たり前にやることの難しさを知りました。バント練習は、2番になってから一球一球真剣にやるというか、バッティング練習よりも多くやったかもしれないです。

――チームトップの犠打数でしたが、そこは自分で評価できるポイントですか

でもやっぱり慶大戦などで失敗しているので…。あれは1回の表か裏で先取点を取れるチャンスだったんですけど、(フライを)上げてしまいました。その後直樹さんがカバーしてくれましたけど、失敗してしまったのはダメなことですし全然満足していないです。バントっていうのは100%絶対できることだと思いますし、中村に助けてもらったり何回も危ない場面があったので、もっともっと精度を上げていかないとなと思います。

――昨秋のアンケートで『犠牲心』という言葉がすごく印象に残りました。掲げることになったきっかけは

一番は2番打者になったっていうことですね。打つ人というのは去年だとたくさんいたので、得点圏で回ってきたら僕も決められなきゃいけないですけど、やっぱりとにかくどうクリーンアップに得点圏で回せるかっていうことが僕には求められているんです。勝つためにやっているので、勝つためにはどういう2番にならないといけないのかということを考えたときに、その答えが『犠牲心』でした。打てなくても、最低限ランナーを進めるために100%バントを決めたり、塁に出たらいやらしいランナーになるとか、そういう部分ですね。『2番打者論』っていう本を読んだりもしましたね。

――あるんですね

はい、あるんですよ(笑)。母が買ってくれたんですけど、それを読んだりしました。宮本慎也さん(現プロ野球・東京ヤクルト)が昨年2000本安打を達成したんですけど、その時も「犠牲心」とおっしゃっていて、自分もああいう選手になりたいなと思いました。

――それはことしにもつなげていきたい

そうですね、やることは変わらないので。ことし何番になろうがランナーを進めるべきところは進塁打を打つとかバントを決めるべきところはバントを決めるとか、犠牲心は常に持ち続けていくと思います。そういう意味では去年すごく良い経験をさせてもらったなと思いますし、それをもっと生かせるように頑張りたいなと思います。

――普段岡村監督から声を掛けられることは

自分の役割というか、どういうものを求められているのかよく考えろと言われます。だから、さっきも言いましたけどいやらしい打者とか犠牲心というのをまず監督に言われました。助かったというか感謝しているというか、その言葉がなかったらいままでと同じ打撃をしていたかもしれないですし、監督がそういうことを言ってくれたので、こういうことをしないと試合に出られないんだなと分かりました。

「悔いを残さないシーズンにしたい」

――3月からの沖縄キャンプで意識したいこと

暖かくなって実践的なことも多くなると思うので、とにかく投げるにしても打つにしても走るにしても準備にしても率先して全部やって、個人としてはワンランク上のレベルで何事も行えるように意識してやりたいです。チームとしてはこのチームがどうやったら勝てるのかというのを皆で話し合いながら、勝てるチームになるために野手では東條と一緒に引っ張っていきたいなと思います。

――勝負強い打者が抜けてしまうが、どんな打線になる

杉山さんが4番を打つというのは想像できたんですけど、いまはそれができないです。そこをどういうふうに埋めていくのかっていうと、そこまで打点は叩き出せないので3点取ってそれを守備で守ろうっていう。投手陣はまるまる残っているので、先取点を取ってその点を守りきろうという感じです。ことしは守備のチームだと監督は言っていたので、皆で犠牲心を持ってつないでつないで泥臭く一点を取りたいです。意識を高く持って、長打を打てる打者が少ないので、内野安打でも1点、スクイズでも1点と、とにかく1点にこだわってことしのチームはやっていきます。

ことしはどこが強いというのがなくて全チームが均衡していると思います。一番頑張ったチーム、一番勝ちたいと思っているチームが強いと思うので、その部分で負けないようにやりたいなとは思います。

――個人の目標

打率としては3割5分を目標にしてベストナインも狙っています。自分の成績が良ければ良いほどチームを優勝に導けると思うので。また2番を打つ可能性が高いと思うんですけど、とにかく塁に出てホームを踏みたいです。得点回数が多ければ多いほどチームに良いと思うので1つでも多く出塁できるようにというのを目標にしています。

――チームの目標は

完全優勝です。

――ラストイヤーはどんな年にしたい

とにかく悔いは残したくないというか。そりゃもちろん優勝したいんですけど、例えば負けたときにもっとこうしておけば良かったなとか思うのはすごく嫌です。負けたとしてもこんだけやって負けたんだったら相手チームが強かったんだなくらいの思いで、とにかく悔いは残したくないです。4年生らしく4年間の集大成として悔いを残さないシーズンにしたいです。

――最後に春季リーグ戦に向けての意気込みをお願いします

下の学年に良い選手がたくさんいるのでそれを支えられるように、野手では自分と東條が中心となってやっていきたいです。主役じゃないので脇役としてできることをやっていって、そしてやっぱり優勝できるように頑張りたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 植田涼介)

大野大

◆大野大樹(おおの・ひろき)

1991年(平3)7月3日生まれのA型。174センチ、80キロ。東京・早実高出身。社会科学部4年。外野手。右投右打。以前は、東條選手、横山貴明選手(スポ4=福島・聖光学院)と3人で遊ぶことが多かったが、東條選手が主将に就任して以来その回数もめっきり減ってしまったとのこと。「付き合い悪いっす」(大野)と嘆いていらっしゃいました。