今季『台風の目』となる立大を攻略しリーグ後半戦へ勢いを加速せよ/立大戦展望

野球

 東京六大学野球秋季リーグ戦(リーグ戦)は前半戦を終え、早大はここまで勝ち点2を獲得。第4週は今季開幕カードで17季ぶりに慶大からの勝ち点を挙げた立大との戦いになる。2試合連続二桁得点で東大を圧倒し、法大との接戦に競り勝った早大は、明大と並んでリーグ首位に立っている。一方の立大は僅差の試合を勝ち切り、勝率5割で現在3位。3季連続5位と最近は厳しい戦いを強いられた立大だが、今季は粘り強さが光っている。昨季は早大から4季ぶりに白星をつかむなど、すべての大学から少なくとも1勝を挙げ、チームの勢いは上向いている。流れに乗る相手だからこそ、冷静に、そして確実に勝ち点をつかまなければならない。

 立大投手陣の中で注目は、やはり小畠一心(3年)だろう。今季はここまで4試合に先発し、防御率1.80でリーグ5位につけている。慶大3回戦では8回無失点の好投で、1点差を守り抜き勝利投手に輝いた。第4戦までもつれた法大戦では、10回149球を投げて2失点。チームを勝利に導くことはできなかったが、持久力と多彩な変化球が十分に証明された。早大との1回戦に先発されることが予想される小畠。甘い球を見極めてチャンスをものにすれば、早大打線は必ず攻略できるはずだ。また2回戦で先発が予想されるのは、大越怜(3年)。今春の早大2回戦では、5回58球1失点とテンポの良い投球を見せて勝ち投手に。今季の慶大2回戦は4回2/3で4失点と苦しんだが、法大2回戦は5回2失点と本来の調子を戻してきた。「早大キラー」にさせないよう、丁寧に攻略しなければならない相手だ。加えて、法大3回戦で先発し、7回1失点の投球を見せた竹中勇登(3年)にも警戒したい。中継ぎでの登板が多く、ここまで3試合に登板して10回1/3、1失点と隙のない投球を見せている。

1回戦での登板が予想される伊藤樹。法大3回戦では5回まで無安打の投球と好調だ

 一方、早大は伊藤樹(スポ3=宮城・仙台育英)が1回戦に先発することが予想される。法大1回戦は少ないチャンスを決められ、8回被安打6にも関わらず3失点を喫したが、防御率1.71と抜群の安定感を見せている。中1日で登板した法大3回戦は、法大打線を5回まで無安打に抑え、7回7奪三振1失点で相手を封じ込めた。2回戦の先発が予想される宮城誇南(スポ2=埼玉・浦和学院)は、東大2回戦を6回まで72球無安打に抑え、テンポの良さを発揮している。しかし法大2回戦は4回に一挙4連打を浴び、4回1/3、3失点と打ち崩された。今春の立大2回戦では、6回3失点で負け投手に。いずれも立ち上がりは好調なため、二巡目以降もその調子を維持できるかが鍵を握る。中継ぎ陣で注目は、今季ケガから復活を果たした田和廉(教3=東京・早実)。ここまで3試合に出場し、いずれも1回を無失点に抑えている。とくに法大3回戦では最速147㌔をマークした真っすぐを軸に、2奪三振無失点で相手打線を封じた。また、今春6試合に登板して無失点で切り抜けた安田虎汰郎(スポ1=東京・日大三)は今季も2試合に出場していまだ自責点0。ほかにも、香西一希(スポ2=福岡・九州国際大付)や髙橋煌稀(スポ1=宮城・仙台育英)などが控えている。六大学随一の投手陣が立大打線を封じ込める。

 迎え撃つ立大は、小林隼翔(1年)から目が離せない。今春の慶大戦から1年生ながらも正遊撃手に抜てきされると、今季はここまで2本塁打を記録。打率はチーム2位の.333、盗塁2つと、立大打線の中心を担っている。ただし1番で出場することが多いためチャンスで打席が回らず、今季の打点は本塁打による2点のみ。これまでと同様に、得点圏で出番を与えないことが早大の勝利につながるだろう。また今秋ここまで全試合に先発出場している鈴木唯斗(3年)は、チームトップの.350をマーク。9打席無安打だった今春と異なり、キャリアハイを更新する健闘ぶりだ。打率3割を超える小林隼、鈴木唯に加え、昨季に打率.353を記録した西川侑志(3年)も警戒したい。今春に続いて4番に君臨するも、ここまでの打率は.192。しかし慶大1回戦では二塁打を放ち、チームの勝ち越しに貢献した。無理に復調を恐れることはなく、確実に抑えたい相手だ。

法大3回戦で本塁打を放った前田。立大戦でも好調の前田に期待したい

 対する早大打線は、クリーンナップの勢いが止まらない。3番・吉納翼副将(スポ4=愛知・東邦)はここまで5試合で、早くも自己最高となる4本塁打を記録。法大2回戦では2点をリードされた7回、チームに逆転を呼び込む3点本塁打を放った。打点もキャリアハイとなる15点を決め、まだリーグ前半とは思えない活躍を見せている。続く4番・印出太一主将(スポ4=愛知・中京大中京)は打率をリーグ2位の.429とし、今季は全試合で安打を放っている。東大戦では、2試合合わせて5打点をマーク。副将と主将を担う3番・4番が、今春に引き続きチームを勝利に導いている。そこに加えて著しい成長を感じさせるのが、5番の前田健伸(商3=大阪桐蔭)だ。昨季から一塁手として先発している前田は、8月に行われた現役部員とOBとの試合である全早稲田戦で本塁打をマークし、好調の気配を感じさせていた。その勢いに乗り、東大2回戦では3安打1打点と猛打賞の活躍。法大1回戦ではエース・篠木健太郎(4年)から二塁打を放ち、チームの勝ち越しに貢献した。その後3回戦では、またも篠木から2点本塁打を放ち先制すると、6回にも追加点を挙げて3安打3打点を記録。打率は.421をマークし、印出主将に続きリーグ3位についている。また、今春の首位打者となった尾瀬雄大(スポ3=東京・帝京)も調子を戻しつつある。東大戦後は打率.167と苦しんでいたが、法大1回戦は犠打で追加点を演出。現在は.267まで戻し、昨季首位打者としての意地を感じされる。下位打線では石郷岡大成(社3=東京・早実)が現在打率リーグトップの.462をマーク。上位へのつなぎ役として役割を果たしている。

法大2回戦で本塁打を放った吉納副将。今、早大で最も勢いに乗る男が立大戦でも投手陣を攻略する

 六大学、いや大学野球界で最強のクリーンナップと、実力ある投手陣がそろっている早大。今季「台風の目」と称される立大が相手だからこそ、これまで通りの戦いを行える冷静さ、そして確実性が重要だ。それに加え、相手を凌駕する情熱が勝利を呼び寄せるだろう。

(記事 中村環為)