吉納副将の2戦連続アーチで一時5点差を逆転するも最終回の好機を生かせずドロー

野球

夏季オープン戦 8月22日 安部球場

TEAM
筑波大
早 大

 

 東京六大学秋季リーグ戦(リーグ戦)の開幕を3週間後に控えた、この日の夏季オープン戦の対戦相手は、首都大学野球連盟に所属する筑波大。初回、前田健伸(商3=大阪桐蔭)の右前適時打で1点を先制する。先発の宮城誇南(スポ2=埼玉・浦和学院)は、初回こそ危なげない立ち上がりだったものの、2、3回に3点ずつ失い、5回6失点。追いつきたい打線は4、5回で計3点を返し、4-6と2点差に詰め寄る。6回から両チームが継投に入り、リリーフ陣がテンポよく抑え試合は膠着(こうちゃく)するが8回、1点差に詰め寄り、吉納翼副将(スポ4=愛知・東邦)に逆転2点本塁打が飛び出し7-6。9回は両チームともに粘りを見せ、9-9の引き分けでゲームセットとなった。

 かすかに雷鳴すら聞こえる曇り空の下プレイボール。この日の先発マウンドには春季リーグ戦でブレークを遂げた1人である宮城が上がった。1回表を三者凡退で片付けたその裏、2つの死球からチャンスを作ると、前田健がベルトの高さに浮いてきた球を仕留め1点を先制する。このままテンポよく投球を続けていきたい宮城であったが、2回、先頭打者を山縣秀(商4=東京・早大学院)の失策で出塁を許した後、安打と四球で満塁のピンチを背負ってしまう。1死を取るも、二者連続適時打を浴び3点を失った。続く3回も、1死からどん詰まりのゴロが三塁内野安打となってから続く打者にも安打を打たれ再びピンチに。2死までこぎつけたものの、ここから再び二者連続適時打を許し3失点。その後4、5回は被安打1、4奪三振と、直球の制球、変化球の精度ともに復調したようにも見えたが、全体として苦しい投球となってしまった。

先制の適時打を放った前田健

 打線は4回、5点のビハインドを追いかけ反撃を開始する。1死から梅村大和(教4=東京・早実)が二塁内野安打で出塁し、石郷岡大成(社3=東京・早実)の内野ゴロで2死二塁に。続く中村敢晴(スポ4=福岡・筑陽学園)が一、二塁間をゴロで破る右前適時打を放ち1点を返した。5回には、無死一塁から、印出太一主将(スポ4=愛知・中京大中京)が二塁手頭上への鋭いライナーとなる中前安打で無死一、三塁とチャンスメイクに成功する。迎えた前田健は初球を捉えてライトへの適時二塁打を放ち追加点。続く小澤周平(スポ3=群馬・健大高崎)の二ゴロでこの回2点を奪い5回を終えた。

4回に適時打を放った中村敢

 早大は6回から継投に入る。宮城の後を受け登板したのは絶賛売り込み中である右のオーバースロー・倉光条(教2=東京・早実)。先頭打者にヒヤリとする右飛を放たれるも三者凡退に退ける。7回にはサウスポー・梶田笙(スポ3=大阪・早稲田摂稜)が登板。1安打こそ許したものの左腕から威力のある直球と緩い変化球で打者を寄せ付けない。8回に登板した4年生・黃鼎仁(国教4=台湾・新竹)も、このリズムに乗り無失点で抑えた。

6回にマウンドに上がった倉光

 スコアが動いたのは、「次の1点」が勝敗を左右する、そんな雰囲気が流れていた8回だった。先頭の石郷岡が中前安打を放つと、中堅手が処理をもたつく間に、自慢の快足を飛ばして一気に二塁を陥れる。中村敢が遊直に倒れた後、打席に向かうのは尾瀬雄大(スポ3=東京・帝京)。初球を捉えると一塁手の頭上を鋭い打球が越えていく適時三塁打を放つ。この一打で5-6の1点差となり、なおも1死三塁と同点のチャンス。ここで打席に入るのは吉納副将。2ボールから甘く入った球を振りぬくも、バックネットを揺らすファウルに。しかしこのファウルが後の一発を予感させていた。フルカウントとなってから、迷いなくスイングした打球は、右翼フェンス上段へ突き刺さる逆転二点本塁打で、一時5点差となった試合をついにひっくり返した。

8回に2戦連続の本塁打を放ちベンチへ迎え入れられる吉納副将

 7-6となった9回、1点を守る早大のマウンドに上がるのはルーキー・岡村遼太郎(教1=東京・早大学院)。早大学院高在籍時、チームを全国高等学校野球選手権西東京大会ベスト4へ導いた好右腕だ。先頭打者を投ゴロに打ち取るが、続く打者には中前安打を浴びる。1死一塁から続く打者にも中前安打を許すと、この打球を中堅手の尾瀬が後逸してしまい同点とされる。その次の打者には打った瞬間それとわかる右翼への勝ち越し2点本塁打を浴び7-9の2点差で最終回の攻撃を迎えた。

 全日本大学野球選手権大会準優勝校として簡単に負けるわけにはいかない早大ナイン。先頭の梅村が左翼線への二塁打で出塁すると、石郷岡の中前適時打で1点差に。中村敢も右前打で続き、チャンスで打席に入るのは直前に悔しい失策があった尾瀬。初球をうまく合わせ中前に運ぶ適時打で同点に追いつく。無死一、二塁から続く山縣が進塁打となる遊ゴロを放ち、1死二、三塁に。吉納副将は申告敬遠で歩かされ、一死満塁のサヨナラの大チャンスが訪れた。この場面で主砲として、主将として、一本が期待された印出主将は打ち上げて一邪飛。その後の前田健も右飛に倒れサヨナラとはならず。引き分けで試合終了となった。

9回に同点の適時打を放った尾瀬

 夏季オープン戦3連戦の2戦目となったこの試合は3時間に及ぶ熱闘となった。この悔しさも残る一戦で各選手が様々な収穫を得ているに違いない。次戦は『戦国東都』でしのぎを削る亜大。リーグ戦制覇とその先への挑戦に向けての調整はまだまだ続いていく。

(記事 石渡太智、写真 飛田悠那)

◆コメント

吉納翼副将(スポ4=愛知・東邦)

ーー今日の試合を振り返ってどのように感じていますか

 負けなかったと捉えることはできますが、もっと上を目指している段階のチーム状況としてミスもしましたし、最後勝ち切れなかったのは良くなかったなと思います。負けなかったことの捉え方は人それぞれですが、あまりいい試合ではなかったなと感じています。

ーー一時5点差となりましたが、何とか同点まで追いつきました。どのように感じでいますか

 先発の誇南(宮城、スポ2=埼玉・浦和学院)が代わった後のピッチャーのテンポが非常に良かったのが打撃につながり、しっかりと自分たちの攻撃のペースに持っていけたと思います。点は取られるものなので、ある程度予測していた中でみんなしっかり仕事ができたので、そこに関しては良かった点だと思います。

ーー8回の2試合連続の本塁打を振り返っていかがですか

 1死三塁の時点で、前のバッターが山縣(秀、商4=東京・早大学院)が最悪のケースでは2死三塁になる想定をある程度していました。(山縣の二ゴロで2死三塁となり)打席に入るに気持ちがある程度落ち着いていました。ホームランは出来すぎだと思いますが、まずは同点にするために三塁のランナーをしっかり返す状況の中で、自分のバッティングができて良かったなと思います。

ーー明日の試合への意気込みを教えてください

 明日も熱中症に気をつけて頑張ります(笑)。

尾瀬雄大(スポ3=東京・帝京)

ーー今日の試合を振り返ってください

 序盤に点を取られて点差を離された中でも、投手が粘って、野手がしっかり守って、その中でしっかり得点を重ねて、逆転したっていうのはすごい良かったなと思います。

ーー点差が離れた中で何とか同点まで追いつきました。このことについてどのように感じでいますか

 バッティングはみんな追い込まれてからもしぶとくヒットを打ったり、チャンスで一本出したり、粘りが出てたなと思います。

ーー本日猛打賞となりました。現在のご自身の打撃の調子を分析していただけますか

 正直あまり調子は良くなくて、ずっとよくなかったところが少しずつ良くなってきたかなという感じです。

ーー具体的にはどのようなところがよくなかったのか聞かせてほしいです

 春のリーグ戦の打撃が自分の理想のバッティングで、それに比べると一球で仕留めきれなかったり、自分の持ち味である逆方向への打撃ができずに、ひっかけて一ゴロ、二ゴロや空振りになってしまっており、自分の思ったようにバットが出ていないなと感じていました。そのあたりに関してはまだまだで、今日3本出ましたが、内容的にはまだまだです。ただ結果が出ているのを見ると少しずついい方向に来てるのかなとも思います

ーーこの夏取り組んでいることは

 自分はとにかくバットを振ることが大切だと思っているので、自分の形を変えずに秋のシーズン、神宮大会でも続けていけるようにとにかく振り込んでいます。

ーー明日の試合への意気込みを教えてください

 毎試変わらないのですが、一打席ずつ内容にこだわってやっていければいいのかなと思います。